最終を逃す、というかこんな時間まで外にいたなんて初めてだし、こういう場合どうすればいいんだろう。
歩く?いやいや、家まで何時間かかるやら。
バスとかタクシー?はお金間に合うか心もとない。
あれこれ模索していると、背中に水戸さんの手が添えられる。
「タクシーで帰ろう」
「でも……」
「……俺んち、黒川と家の方向一緒だから相乗りした方が助かるんだ」
肩を竦めてみせはにかんだ表情に、つい吹き出した。
「そうなんですね。じゃあ、その方が私も助かります。ご一緒させて下さい」
2人で改札を出て、タクシー乗り場へ向かった。
タクシー乗り場では、既に何人か居て、私達も後ろに並ぶ。
ぼうっとしていたけど、不意に思い出した。
「あのっ、昨日も家まで送っていただいたみたいで。すみません、続けて今日も……」
深々と頭を下げた。
どうして私は自分の事ばかりで、迷惑かけてお世話になってばかりなんだろう。
本当、自分が情けない。
「あ、いや、その……黒川覚えて……?」
「え?」
「あぁ……何でもない。気にしなくていいんだ。えっと……ところで、赤ちゃん、何カ月?」
「7週目なので……2カ月です。もつすぐ3カ月」
「結婚、するの?」
「いえ……。1人で、育てようか、と」
「はぁ!?」
突然水戸さんの間の抜けた声が静かな夜に響いた。
瞳を白黒させて水戸さんを見上げた。
「なんでそれを相手に言わないんだ!大事な事だろ!……1人で、どうするんだ……」
「それは……これから考えます」
「これからって……」
呆れたような、叱責するような眼差しが向けられ、私は俯いた。
だって、仕方ないじゃない。
私だってさっき妊娠を知ったばかりで、どうしたらいいのか解らないんだから。
痴話喧嘩かと、前の人から迷惑そうな視線を向けられ、ますます俯き、水戸さんも軽く会釈をして周囲に謝罪をした。
「1人で子供を育てるなんて大変だぞ。小さいうちは手を離されないし……仕事はどうするんだ?」
「それも、これから……」
隣から深いため息が聞こえた。