颯ちゃんは私を家族として大事にしてくれている。
りこと会わない日は私の様子を見にきてくれてたし、連絡もくれて決してリリーを疎かにはしなかった。
昔から、娘や妹を慈しむように、いつも寄り添ってくれたよね。
容姿に悩む時も、夜泣いてる時も、抱きしめてくくれたのは友人でも両親でもなく颯ちゃんだった。
受験勉強をみてくれたのも颯ちゃん。
いつも傍に居てくれた。
そんな家族に想いを寄せられ、挙句、騙されて男女の関係を結んでしまったと知ったら、気持ち悪いとか思うよね。
香織さんに『オオカミ少女』と罵られ、全くその通りだと思った。
イソップ童話の、オオカミ少年。
羊飼いの少年が、退屈しのぎに「狼が出たぞー!」と嘘をついて騒ぎを起こす物語。
村の大人達は武器を持ってオオカミを追い払おうと出てくるけど、実際オオカミはおらず徒労に終わる。
それでも懲りない少年は、繰り返し何度も同じ嘘をつき続け、本当に狼が現れた時は誰も少年を信用せず。
誰も助けに来なかったから、羊は全て狼に食べられてしまった。
私も同じ。
婚約者がいると知っていて、いつか別れるんだから少しくらい許されるだろうと、自分勝手な言い訳に胡坐をかいていた。