「おいっ…」
「セクハラされた。」
「セ…!?」
動揺する宮を見て少し口許が緩む。
「わざわざ言って、さらに暗くするのもどうかと思った。だから言わなかった。
けど…それを隠すのに私の動かない表情が役立ってて、すごくみじめになった。そっちのダメージの方が大きいかな。」
「みじめ…って?」
「私はあのくそ男にされたことを隠すために不眠と戦ってるんじゃない。
なのに結果的に役立ってて悔しい。
私の不眠は、きっと私の中の何か大事なものを守るためのものなのに…。」
宮は黙ったまま私の話を聞いていた。
話し終わって、宮の目を覗くと
「今日はよくしゃべるな。」
と言って私の頭をポンポンと叩いた。
図らずも触れられた頭のてっぺんから熱が発生し下降していく。
「ごめん。私、遊園地楽しみにしてたから、空気悪くしたくなかったんだ。
結局気ぃ使わせたね。」
「いつもの添い寝に比べりゃチョロいっつの。」
宮は私に手を差しのべ、私はそれに掴まって立ち上がった。
「戻るか。」
「うん。」
私たちは結たちの視界に映るギリギリまで
つないだ手を離さなかった。
そんなことが今日一番嬉しくて、涙がにじむ。
宮に関するそんなちっぽけなちっぽけなことで、
私の強大な理性はしぼむのだ。