三週間もすると野乃も少しずつここでの生活に慣れてきたようで、つい先週まではきっちり制服に着替えて階段を下りてきたのに、今週はパジャマの上にカーディガンを羽織った格好で朝食の席に下りてくることも増えてきた。


 気を許しはじめてくれたんだろうなと思うと素直に喜ばしいが、寝起き直後の無防備なパジャマ姿を見るにつけ、渉は申し訳ないような、多少の居心地の悪さを感じるような気がするのもまた、確かである。


 家族にしか見せたことのないだろう姿をこんなおじさんなんかに見せて、野乃が後々、後悔する日が来ないといいんだけど……。


 などと、少々斜め方向かと思われる心配をしつつ、渉は野乃の前に焼きたてのトーストを二枚乗せた皿を置く。


 テーブルにはすでにスクランブルエッグとコップに注いだ牛乳が二人ぶん、準備を整えてある。


 あとは渉用にトーストを焼くだけなので、ひとまず席についてパンにバターを塗っていくことにする。