結局、野乃とまとまった時間が取れたのは、それから数週間後のことだった。


 わけあって半年ほど学校に行っていなかった野乃と、卒業してもうかれこれ十年も経った渉はすっかり忘れていたのだけれど、学校というところには『期末試験』というものが存在し、体調が回復し火曜日から行きはじめたその週の週末には、恐ろしいことに期末試験の範囲が各担当教科の先生方から言い渡されたのだという。


 これは渉の失恋の謎を解いてもらっている場合ではない。


 それからは放課後、例の四人で図書室に寄って試験勉強をしたり、店でも四人で教科書とノートを広げ、額を突き合わせるようにしながら、ああでもない、こうでもないと勉強する毎日が続き……。


 やっと試験から解放されたのは、七月も十日過ぎ。採点済みの答案用紙が全部揃ったその日の夜、ようやく野乃とまとまった時間が取れたというわけである。


「すみませんでした、あれからもう何週間も経ってしまって……」


「ううん。俺も期末試験のことはすっかり忘れてたから。そういえば、あるんだよねぇ。甲子園の地方予選のこともあるから、一学期ってけっこう早めに試験をしちゃうところもあるし。どうなの? 今年の邦陽高校はいいところまでいけそう?」