計算しない女子なんていない。

 それが詩の持論である。

 けれど、この突発的な衝動は、なんとなく想像がついてしまったし、残念なことに、おおかた察しもついてしまった。

 ……ただ。


「今さらって、そんなのありなの!?」


 数分後、駅まで走りきった詩は、息つく間もなく、そう叫ばずにはいられなかった。

 まったく意識していなかった相手。しょっちゅう目が合うから、絶対に私のことが好きだと高を括っていた相手。だから、彼女になりたいではなく、彼氏にしたいと思っていた相手を――晄汰郎を、まさか今さら、自分のほうが意識してしまうようになるなんて。


「嘘でしょ。え、ちょっと待って。ほんとにフラれてんじゃん、私。これからどうしたらいいっていうの。……ああ、もうっ」


 突如として芽生えてしまったリアルな恋心を盛大に持て余しながら、詩は考える。

 本当にどうしたらいいんだ私は、なぜ今なんだと、くるくる、くるくる、と。


 スカートのポケットにねじ込んだままのお守りが、カサリと鳴る。中から取り出したハニーレモン味の飴を悔し紛れに口に放ると、全然ハニーじゃなくて余計悔しかった。