いったい私はどうなっちゃったんだろう。

 自分の感情の目まぐるしさに疲れてしまって、詩は泣き腫らした顔を上げて、遠く上空を漂う雲を見つめて深いため息をついた。


 たかだか〝恋〟という名前で片づけてしまえるだけの感情なのに、中身がこんなにも思いどおりに進まなかったり、相手の気持ちが読めなくて、いちいちイライラしたり苦い気持ちになったりするものだったなんて。


 ……今まで知らなかった。というか、考えたこともなかったかもしれない。もうこの一週間、ずっと踏んだり蹴ったりの展開ばかりで、夏でもないのにすっかり食欲不振だ。


 たかだか恋。されど恋。

 こんなにも思い悩むことも、常に情緒不安定なことも、詩にはすべてが初めてである。


「はあ、もう……。もしかして、本当の恋ってこういうものだって教えてもらえただけ、好きになった価値はあるのかなぁ……」


 上空の雲から目を離し、スカートのポケットから、持ち歩きすぎてくたびれてしまった本命お守りを取り出し、じっと眺める。

 詩にはこれは重すぎる。ちょくちょく目も合うし、そろそろ本格的に動き出すか、もうすぐ夜行遠足だし。そうやって完全に計算ずくで作ったものだから、なおさらだ。