そして今も、どうしてこんなに責められているのか、わかるようでいて、実は詩はわかっていない。

 自分で言ったんじゃないか、お守りなんてただの願掛けだって。じゃあなんで、くれくれ言う? 意味がわからない。


「なあ、宮野。俺はどうすればいいの?」

「……ど、どうって。別にどうもしなくていいよ。野球部って時間にうるさそうだし、遅くなる前に行ったほうがいいと思うよ」

「あのな」


「だって、計算され尽くした感じで渡されるのが嫌なんでしょう? でも私には無理だもん。気に障るような渡し方しかできない私のことなんて放って行っちゃっていいって」

「……」


 あからさまに眉をしかめた晄汰郎の顔をちらりと見て、詩はぎゅっと唇を噛みしめた。

 ゴリラ坊主なところが腹が立つ。いつも冷静沈着なところが腹が立つ。動揺なんてしないで常に真顔で毒を吐くところが腹が立つ。私にばっかりきつい言い方をするところが腹が立つ。どうすればいいのって、いちいち聞いてくるところが腹が立つ。

 そんなの自分で考えてよ、私だってさっぱりなんだから。


「……ごめん。今のは嫌な言い方すぎた。でも、ほんと行っていいって。私のことは気にしないで、さくっと行っちゃってってば」