……あれ? どうしてこうなった?

 思いのほか冷たかった、うなじのあたりを撫でていった秋風と、晄汰郎から注がれ続ける圧に軽く身震いしながら、詩は思う。


 晄汰郎のことは、もう好きだと認めざるを得ない。自分でも気づいてしまったし、友人たちに一部始終を話したときの彼女たちの感想も、もう付き合っちゃえよ、だった。


 彼女たちは、晄汰郎のほうも詩のことが好きだから、みんなが見ている前で教室を連れ出したり、お守りをくれとせがんでいるのだと言って聞かない。どこからそんな発想が生まれるのか、詩にはとことん理解できないけれど、しかししっかり相談までしてしまっている手前、もうあとには引けない雰囲気だ。


 ああもう、自分のことじゃないからって、みんなして超楽しんじゃってさー……。

 詩の気分は、今週中、ずっと浮かない。それに、月曜日の「計算、なの?」「なにが」から端を発してしまった気まずい空気の対処法もさっぱりだ。もうお手上げである。


 でも、別の方向から考えてみれば、この気まずい空気のおかげで、金曜日からの一連のことも、いい感じにうやむやにできるかもしれないと、詩はほのかに期待した。