「ううん。朱里のせいじゃないよ。ほかにどうしても考えちゃうことがあってさ。どうしたもんかなーって思ってたら、目の前のことに集中できなくなっちゃってたんだよ」


「え、それって……もしかして、部活を辞めようかなとか、そういう系……?」


「まさか、そんなわけないじゃん! ほら、この前、一緒にギンガムの生地を買いに行ったでしょ? 作りもしないのに去年のと合わせて二枚も溜めちゃって、いったい私はなにしてんだろ、とか思うとさぁ……。時間差でどんどん虚しくなってきちゃったわけよ」


 潜めた声で慎重に尋ねる朱里の、真面目な彼女らしい、とんちんかんな勘違いを激しく否定し、朱夏はほんの少しだけ本音を織り交ぜた嘘をついた。

 実は二枚目のほうは、もうお守りに化けている。めちゃくちゃ気合いの入った、本気の本命お守りだ。


 ただ、どうしても、好きな人がいることは打ち明けられなかった。

 デカくてがさつで、男子はみんなだいたい友達、みたいなキャラを作ってきた私に恋は――しかも自分より一センチ背の低い相手に片想いをしているなんて、どう考えても似合わない。可愛らしいサイズの朱里ならともかく、私なんて……。


 そう思うと、どうしても言い出せない。