実際に朱夏も、もし万が一、渡すなら金曜日の放課後が一番の狙い目だと思っている。

 去年の様子を思い起こしてみても、前日の放課後が一番人気なようだった。

 放課後が近づいていくにつれて浮き足立つ校舎内。女子も男子もソワソワしていて、見ているこっちのほうが落ち着かない。


 部活にちょっと遅れてやってきた先輩が、『さっきひとりで帰るところに渡してきた』と顔を真っ赤にしながらチームメイトに報告する場面を見たし、朱夏には考えられないけれど、強者(つわもの)なんかになると『私は昼休みに渡した』とか『私は机の中にこっそり入れて、向こうが気づいたときに〝頑張ってね〟って言ったよ』などと、放課後ではなくとも本命お守りを渡せるようになるらしい。


 そのときの朱夏には別に好きな人もいなかったので、男バレの同級生や先輩に〝女バレ一同からの気持ちです〟と、女バレ部員みんなで作った赤のギンガムチェックではないお守りを、はいはいはい、と流れ作業的に渡しただけだった。

 それでもまんざらでもなさそうだった男バレ部員たちを見て、男子って単純だな、と朱夏は思った記憶がある。