四年越しで動き出す決心をつけたなんて、香魚ちゃん、すごい頑張ったなぁ……。

 月曜のときと同じように、体育館のステージ下の壁に背中を預けて体育座りをしていた朱夏は、恥ずかしそうに俯き、けれどはっきりとした口調で「……実はね」と報告をしてくれた香魚を見て、素直にそう思った。


 隣では、キラッキラに目を輝かせた朱里が「ほんと!? 絶対頑張ってね!!」と勢いよく香魚の手を取り上下にぶんぶん振りながら、「ありがとう。……が、頑張る」と、はにかむ彼女に満面の笑みで大きく頷く。

 香魚の親友の優紀も、彼女の変化に満足げに、にこにこ笑っていて、いよいよ明後日が夜行遠足本番となってようやくついた決心に、香魚の成長を実感しているようだった。


 今日の体育もバドミントンだ。そして時間割は、体を動かすにはちょっとばかりエネルギーが足りなくなっている四時限目。

 例のごとくネットで体育館を二分割している向こうでは、大声で「腹減ったー」と空腹を訴えた男子が「言うな。先生だって腹減ってんだよ」と若い体育教師に叱られている。