穏やかな笑顔と、ほんの少しの涙が混在する神崎家の道場。皆が各々の想いを抱いて佇む中、ボクは、ゆっくりと瑠威の元に歩み寄った。

 囲んでいた人垣が自然に解けて、輪の中心にペタリと座り込む瑠威が、ゆっくりと此方を見上げる。

その手には、鞘に納められた宝剣 《霧風》が、大切に握られていた。

「瑠威。」

 声を掛ければ、虚ろだった瞳が、みるみる大きく見開かれる。

「薙…。」

「約束だ。お前を《六星》としてボクの配下に置く。」

「解っている。オレの完敗だ。アンタの言うことは、何でも聞くよ。」

「……。」
「約束は約束だ。二言は無い。」

 真っ直ぐな眼差しで言い放つ少年に、ボクは、堪らなく哀しくなった。込み上げる想いに突き動かされる様に、膝を着いて瑠威を見据える。

「瑠威。本当言うとボクは、こんな強引な方法で、君を従えるのは嫌だった。君とは、解り合えると思っていたから。」

「知ってる。」
「えっ?」

「知ってるよ。この立ち合いも、オレが一番納得する方法を、アンタなりに考えた結果なんだろう?」

「どうして解ったの?」
「アンタの考えそうな事だ。バレバレなんだよ。」
「バレバレ──」