肝心な結論は未だ出せなかったけれど、遥のお陰で気持ちだけはスッキリした。

午後から店に顔を出すという彼を、玄関まで見送った後──ボクは、急に時間を持て余してしまう。

 暇だな…何をしよう?
当初の予定通り、あの広大な庭を散策してみようか?

 庇の下から覗き見た庭は、ゆらゆらと陽炎が揺れている。

外は、まだ暑そうだ。
夏の盛りを過ぎたアブラゼミが、暑苦しい声で鳴いている。

 季節の変わり目とは云え、まだまだ残暑は続いていた。空は蒼く澄んでいるのに、蒸れた風が鬱陶しい。

 散歩は、やめて措こう。
また熱中症で倒れたりしたら洒落にならない。
祐介辺りに、強(シタタ)か嫌味を言われる事になるだろう。

 ブラブラと回廊を渡り、西の対屋に向かいながら、ふと思い出した。

そう云えば──。
昨夜、祐介が言っていたっけ。

『東の対屋には行った?』
『面白いよ、伸之さんの部屋』

…………
…………
ちょっとだけ。
ほんの少しだけ、覗きに行ってみようかな?

──それは、そんな些細な好奇心からの行動だった。