彼は知っている。
ユウキのこともナナミのことも、私のことも。
当たり前。高校で同じクラスだから。
でももっと入り組んだ事情も知っている。
当たり前。私が話したから。
その代わりに、私も知った。
坂田はナナミのことがずっと好きだったらしい。
そして私を憎んでいるのだ。
ユウキとナナミの仲を取り持った、私のことを。
「……帰る」
腰を拘束する坂田の腕を解いて、立ち上がる。
すると彼は、面白くなさそうに眉をひそめた。
「帰んの?」
「もう遅いし」
「それ、俺のシャツだよ」
「知ってる」
肩幅も袖の長さも、何もかもが合っていないカッターシャツを脱いで坂田へ放り投げつけると、微かに香水が香った。

