ヨウカイ・イセカイ・キキカイカイ





「おめでとさんどす~
今夜はぱーっとお祝いしまひょな。ぱーっと!」



宿に戻ると、小餅さんがひとりで盛り上がっていた。
まぁ、確かにお祝いしてもらえるのは嬉しいけど、小餅さんはただ飲んで騒ぎたいだけだから。



「ご馳走の前に、まずは温泉に浸かりまひょか。」

「そうですな。
では、そうしましょう。」







「いやぁ、ええお湯じゃな。」

「そうだね。
俺、温泉なんて久しぶりだよ。」

「慎太郎とこんな風に温泉に来るのは、おまえが子供の頃以来じゃな。」

「そういえば、そうだね。
じいちゃんと旅行するのは本当にひさしぶりだもんな。
……あ、こないだ、旅行したばかりだったね。
安倍川さんの家まで……」

「あれは旅行とは少し違うからな。」



そういえば、あっちの世界でも一度だけ温泉に行ったんだって、ふと思い出した。
美戎と知り合って、まだ間もない頃、二人で露天風呂に入ったっけ。



「ゆかりさんとうまくいって良かったな。」

「うん…まぁね。」

「これから先、ゆかりさんはこっちで暮らすのか?」

じいちゃんのその質問は、俺の一番の悩み事だ。



「問題はそこなんだよ。
俺としたらやっぱりこっちで生活したいけど、でも、ゆかりさんはこっちの世界の人じゃないし……」

「そんなことは気にすることでもなかろう。」

「じいちゃん、ゆかりさんには戸籍もないんだよ。
だから、俺達は戸籍上の結婚は出来ない。
それはまぁ良いとして、もしもこの先、子供でも出来たら…
それに、父さんや母さんになんて言ったら良いのか……」

「そうか……そういう問題があったんじゃな。」

これはこの先避けては通れない大きな問題だ。
それを考えれば、あっちの世界で暮らした方が良いとは思いつつ、両親のことを考えるとそう簡単にも決められない。