「う、うわぁ!」

「ええっっ!」

「ひゃ~~……」



次の日の朝、家を出てからというもの……ゆかりさんは、ずっと驚きっぱなしだった。
まずは、家に迎えに来たハイヤーに驚き、外を走る車に驚き、駅前の高い建物に驚き…ゆかりさんの目と口はあんぐりとずっと開きっぱなしだった。
それも仕方のないことだ。
こっちは、向こうの世界とはずいぶん違うのだから。

駅前のデパートで、ゆかりさんと美戎の服やバッグ等を買い、そこから電車に乗り、さらに新幹線に乗り換えて、俺達は安倍川家を目指した。
服を着替えると、ゆかりさんはどこからどう見ても、現代の女の子に見えた。
俺達は女の子の服なんて全然わからないから、美戎がコーディネイトしてくれたんだけど、真っ直ぐな黒い髪と薄紫色のワンピースがすごく似合って、俺はあらためて惚れ直した。
本当に綺麗な人なんだから。

それにしても、美戎はすごい。
下着屋さんにも平気で入って行くんだから。
俺なんて、店の方を見るだけでもなんだか後ろめたいような気がして直視出来ないっていうのに、美戎は平気な顔で下着を手に取って、店員さんとなんだか楽しそうに話して……
でも、俺なんかが入っていったらきっと不審者扱いされるんだろうな。
同じことをしても、見た目で差別されるなんて、本当に不公平だ。



「ゆかりさん、もし具合が悪くなったりしたらすぐに言うんじゃぞ。」

「はい、おじいさま。」

初めての乗り物だから酔うんじゃないかと心配したんだけど、幸いそんなこともなく、お弁当を食べたり、わいわいと話をしているうちに、新幹線は美戎の家の近くに着いた。



「ここもまたすごい建物だな。」

駅を歩きながら、ゆかりさんがポツリとつぶやいた。



「そうだね。」

ゆかりさんは何度か乗っただけでエスカレーターにもなんとか乗れるようになり、まわりを見る様子にもどこか少しずつ余裕が出て来たように思えた。



「もうすぐだよ。
ここからは歩いてすぐだからね。」



美戎の家に行くのは初めてだ。
今日はまだ早百合はいないようだけど、小餅という祖母がいるらしい。
他にも悪の組織の者達がいるかもしれないから、気を引き締めていかないと…!