その後、御崎さん本人に話を聞いたのだが、2―2の教室をこっそりと覗いていた所、突然阪南が話しかけたらしい。御崎さんは阪南がこの教室に入った事で彼女がこのクラスだと知ったのでこれはチャンスだと思って手伝ってほしいと話をしたらしい。


 それは、生徒会長である田月豊との仲を取り持ってほしいという話だった。


 夕方の帰りの電車の中、俺は今日の事を思い返す。あの後、阪南の行動によって俺がいつの間にか彼女の手助けをする事になってしまったのだ。流れから考えると頭が痛くなる。

 一方、彼女はぐっすりと寝ていたのだ。疲れたのかもしれないが、呆れてしまう。

 その場の流れで田月と御崎さんの仲を取り持つ事になってしまい、これは面倒な事になったのを実感する。

 あの時電車の中で

『それなら、いいんだけど』

 と言った理由も御崎さんから聞いた事で納得がいった。服屋に行ったのはもしものためにおしゃれ慣れしておいた方が良いという阪南の考えで決まった事。そして、彼女の独断で俺に手伝いのために服を買おうとしていた事を内緒にして一緒に行ったのだ。

 そこで、俺に悟られたらまずいと思った阪南はとにかく別の場所でじっくり見てくれる様にどこか良いかを聞いた。それで本屋を選んだ時に彼女はあまり好意的ではなくあの言葉を発した事、服屋にいた時に何故彼女が一人で自由に見る事を促したこと、そしてハンバーガーショップで俺から逃げる様に後をし、俺に気づかれない様に御崎さんと合流しようとしたという事。

 こんなに回りくどい事をしなくてもいいのでは……と思うかもしれないが、彼女の性質上あり得た事ではある。

 入学式のようになるのが余計に納得いく程であった。


「じゃあね~!」

 電車から降り、駅から出た後に阪南は手を振って歩いていく。俺は阪南が手を振らなくなるまで手を振り続け、そしてそれが終わった後、俺も帰路についた。

 しかし、これはどうするべきか。断るという選択は阪南が居る以上難しい。しかし、協力するとなると、ひとつ問題があった。

田月豊とはクラスが同じなのだが、接点が一つも無く彼が一体どういう人物かイマイチ良く分からない。下手に接すれば避けられる可能性がある。

 突然目の前に突き付けられた難題に、頭を悩ませる。いくら考えても答えは結局家に帰った後も出る事は無かった。