□
「ここはどこだ?」
牛丼屋に入るのを諦め、いつもと違う料理を食べたいと目的なく歩き続けていた和田は、いつの間にかまったく知らない場所にいた。
十年以上住み続けた、最寄り駅周辺の見慣れた面影は欠片もない。一度も来たこともない場所だ。
正直、途中ちょっとぼんやりしていた。
周囲の光景はあまり見ていなかったし、瞳には少し涙が滲んでいたかもしれない。
とはいえさすがにこんな場所に迷い込むのは異常だ。
何せ前を向いても後ろを向いても、竹、竹、竹。竹祭り。
竹林に四方を囲まれた道。
中央だけはかろうじて人が通れるよう、石畳みが敷かれている。
背の高い竹林は果てしなく、懸命にみあげても、どこまで伸びているのか分からない。
何となく京都かなあ、と思った。
実際に行ったことはないが、観光地に有名な竹林の道があるのは知っていた。
ここ数年ゆっくり旅行に行く機会もなかったので、和風な雰囲気イコール京都という乏しいイメージしかない。
竹林の道は昼間なら美しいのかもしれないが、灯りのない夜中に歩くのは少し不気味だ。
その上辺りにはうっすら霧まで漂っている。
和田は背筋が寒くなるのを感じ、自分の腕をさすった。
――意味が分からない。
「ここはどこだ?」
牛丼屋に入るのを諦め、いつもと違う料理を食べたいと目的なく歩き続けていた和田は、いつの間にかまったく知らない場所にいた。
十年以上住み続けた、最寄り駅周辺の見慣れた面影は欠片もない。一度も来たこともない場所だ。
正直、途中ちょっとぼんやりしていた。
周囲の光景はあまり見ていなかったし、瞳には少し涙が滲んでいたかもしれない。
とはいえさすがにこんな場所に迷い込むのは異常だ。
何せ前を向いても後ろを向いても、竹、竹、竹。竹祭り。
竹林に四方を囲まれた道。
中央だけはかろうじて人が通れるよう、石畳みが敷かれている。
背の高い竹林は果てしなく、懸命にみあげても、どこまで伸びているのか分からない。
何となく京都かなあ、と思った。
実際に行ったことはないが、観光地に有名な竹林の道があるのは知っていた。
ここ数年ゆっくり旅行に行く機会もなかったので、和風な雰囲気イコール京都という乏しいイメージしかない。
竹林の道は昼間なら美しいのかもしれないが、灯りのない夜中に歩くのは少し不気味だ。
その上辺りにはうっすら霧まで漂っている。
和田は背筋が寒くなるのを感じ、自分の腕をさすった。
――意味が分からない。