「なあなあ見ろよこれ。図書室の本棚に反対になって入ってたんだけどよ」


「どれどれ? ……なんだか絵本みたいだな」


「タイトルは【だれかの】? 変なの!」



「誰だよ、自作の絵本なんて、ださいよな」


ギャハハハ、と下品な笑い声が教室に響く。


そうやって話す男子たちの手には、案の定、私たちの【だれかの】と書かれたノートが握られていた。

彼らは、私をいじめていた人たちだった。


私は教室のそんな状況に、愕然とした。


怒り、悲しみ、そして悔しさ。


いろんな思いが渦巻く。

男子たちは、回してそれを読んでは、大笑いをしていた。





……私がいじめられたり馬鹿にされるのは、いい。

実際、私は物語を読むことしか能のない人間だ。


でも、彼は違う。


いじめに困る私のことを助けてくれる優しさがあるし、彼が描く絵には見る人を幸せな気持ちにする力がある。

それ以外はちょっと不器用なところがあるけれど、それが彼のよさでもある。


その絵を描き始めたときだって、きっともう私の物だってことには気付いていたはずだ。


それをわかって、私に理解者がいるんだよというメッセージを伝えるつもりで描いてくれたんだ。

その気持ちに私は気づいていた。


立樹くんがいたから、私は心が折れることなく、学校に来れた。


それなのに……。




そんな大切な、立樹くんの絵を、馬鹿にするなんて、許せないーー