次の日から、試合を見る目が変わった。

相手のチームはどんな特徴を持っているのか。
自分だったら、その場面でどうするか。

イメージしながら心の中でどんどん判断を下していった。

転機が訪れたのは三日目の試合のとき。

このときも僕は、途中からの交代だった。
状況は一対一の引き分けだ。
 
相手の選手の多くはスピードがあり、速攻を得意とするチームだった。

それまで試合を見ていて、長いパスが多いと感じていた。

縦にも横にも、大きくパスを出してディフェンスを散らせ、そこから瞬足のフォワードに切り込ませる、という戦法だ。


僕はピッチに立つと、ひとつ深呼吸をした。

外でイメージしていたことをやるだけだと自分に言い聞かせる。

ーー姿勢がいいからさ。
体幹がしっかりしてる証拠だよ。
そういう奴って、身体のバランスを取るのがうまいから、長く走れるんだ。


ーーサッカーって、走ってなんぼの競技だよ。強いチームは選手の運動量が圧倒的に多い。


相良と初めて会ったときに言われた言葉だ。そう、僕にはこの走りがある。


僕は、攻撃の中心となっている相手の選手をしつこくマークし続けた。


 
相手の選手から飛んでくる長いパスを奪うことは考えなかった。

意識したのは、相手のボールを奪うことではなく相手にスピードを出させないことだ。

ひたすら、相手と自チームのゴールとの間に身体を入れ続けた。