職場ではまだ元気に見えないのだろう。
妙にみんなが僕に気を使う。
作る人がいなくなったから弁当も持てず
社食を食べる日々。

「豪華弁当は止めたの?」
和食ランチを食べる僕の元に、中岡と木之内さんと課の女の子達がゾロゾロやって来て一緒に座る。

「うーん。作るの飽きた」
簡単に言うと

「わかる気がする」
「マイブームが去ったんですね」と、素直に受け取る女子の賛同がありがたい。

「でも美味しかったから、また気が向いたら作って下さい」
木之内さんが斜め前で僕に言い
僕は「そうだね」と返事した。
二度と僕には作れないけど。

「今度さー。みんなで親睦会って感じで温泉一泊しない?いい宿見つけたんだけど」
中岡がiPadを持ち出してそんな話をすると、女子達が大盛り上がり。

「三ヶ月間休業してたんだけどさ、先週からやっと営業再開して、ここの宿の料理が本気で美味しいんだって。今から予約だけでもしておかないと半年は待たされるから」

「えーっそんなに人気なんですか?」

「これから絶対クル!人気になる前に予約取ろう」

中岡が言うなら間違いなく流行る宿だろう。
僕はあまり興味もなく箸を動かしてご飯を食べていると

「ここさ、亀ちゃんの故郷じゃない?」
iPadがにょきっと僕の前に飛び出す。
画像を見ると
どこかで見た景色。

「懐かしいね」
僕の生まれ育った町。
空気の美味しい海の見える町。