電話を切ると同時に、タクシーが不動産屋の前に着く。手早くカードで支払いを済ませ、高嶺はその足で不動産屋へと入っていく。
「ちょっ、ちょっと待って! 明日って何!? どういうことなの?」
莉央は慌てて高嶺について不動産屋へと足を踏み入れた。三軒目も莉央も名前をよく知っている大手不動産会社だ。
「いらっしゃいませ」
莉央とそう変わらない歳のスーツ姿の青年が愛想よく立ち上がる。
「ご夫婦のお部屋探しですか? ちょうどいい物件がございますよ」
だが高嶺は青年を見下ろしながらぴしゃりと言い放った。
「先ほど電話をした結城だが」
「えっ!?」
「明日にでもと言ったが急に予定が空いた。明日よりも早いほうがいいだろう。今から頼む」
「えっと、あの……こちらで少しお待ちいただけますか?」