莉央の言葉に、キーボードの上を滑らかに指が動く。


「……この時間に面会のご予約はいただいていないようです」



 インターネット事業業界で彼の名を知らない人はいない。
 そのため社長に合わせて欲しいという来客も多い。そんな人間を追い返すのも、受付の彼女の仕事である。


「待って。結城莉央が来たと言ってくれればわかります」
「結城、莉央様……」


 身なりも容姿もとびきり美しい女性の訪問だ。
 CEOである高嶺正智は派手な美男子で、当然女性にもヒドくモテる。だがきれいに遊んでいるのか、未だかつて女性がこうやって会社にやってきたことはない。

 社長室にこもっている社長に素直に連絡するべきか。
 外出している副社長に指示を仰ぐべきか。
 それとも警備員を呼ぶか……。