翌朝から、莉央は高嶺のために食事を作る以外は、完全に個展の準備にかかりきりになった。
高嶺としては莉央の手を止めさせるのが申し訳なく「自分の食事はいらない」と遠慮したのだが、莉央は莉央で「食事を作ることで頭を切り替えられるから」と譲らなかった。
そうやって、普通の夫婦とは違う同居生活が本格的に始まったのだが……。
「で、かれこれ二ヶ月以上経つわけだけど……マジで手出してないの?」
ここはタカミネコミュニケーションズ社長室。時計の針は昼の一時を回ったところだ。
テーブルの上には莉央お手製のサンドイッチと、コンビニで買ってきたホットコーヒーが湯気を立てている。