奴隷である青年を買ったら何故か溺愛されました!

 翌日の午後。
 イレーネは側近のランドル、ラディと共にラディの洋服、靴、その他の生活に必要な物を買い揃える為、王都へと訪れていた。

「此処が王都ですか、凄い、色々なお店がありますね」
「ラディ様は王都に来るのは初めてなんですよね?」

 イレーネの左隣を歩くランドルがイレーネを挟んだ右隣にいるラディにそう問い掛ければラディはランドルを見て頷き返す。

「はい、初めてですよ」
「そうなんですね」
「じゃあ、今日はラディの生活必需品を買い揃えながらラディが気になったお店も見て周りましょうか?」

 イレーネの言葉にラディは弾んだ声で『いいの?』と問い掛けてくる。

「ええ、いいわよ~!」
「ありがとう」

 幼い頃両親に捨てられた後、奴隷商人に捕まり、闇市場に連れて行かれ、奴隷売買をする店で奴隷として売られたラディ。長い年月、店の牢屋で過ごしたラディにとって、外の世界で見る景色は何もかも新鮮であった。

「それにしても桜が綺麗ね」

 イレーネは両道にある満開の桜が咲いている桜の木を見上げてそう呟けば、イレーネの左隣を歩くランドルは頷いてから口を開く。

「そうですね、ラディ様、これは桜並木と言うんですよ」
「桜並木、綺麗だな」

 満開の桜が咲き誇る桜並木を見つめているラディを横目に見ながらイレーネは優しい声色で話し始める。

「この場所はフィアルゼ王国の春のおすすめ観光スポットとしても有名な場所なのよ」
「そうなんだ」
「ええ、だから、初春は他国からの観光客が結構訪れるのよ」

イレーネは行き交う人々の中にいるちらほらいる観光客らしき人達を見つめてから、ラディの方を見る。

「ラディ、これからは行きたい時に王都へ行けるわ。私は貴方の自由を奪うことはしないから」
「うん、ありがとう。イレーネ」

 ラディはイレーネにお礼の言葉を伝えてから、王都の景色をまた瞳に映したのであった。



 王都の店々を周り終え、ラディの生活必需品を買い揃えたイレーネ達は空が茜色に染まり始めた夕方頃、エルディア伯爵家の屋敷に帰って来た。

「ただいま、帰ったわよ」

 イレーネが家の中へと入るなり、目と鼻の先にあるリビングのドアが勢いよく開かれ、青い髪をしたランドルと同じくらいの高身長であろう男が帰ってきたばかりのイレーネの元へと駆け寄ってくる。

「イレーネ!! 元気にしてたか〜? 俺がいない間に恋人が出来たそうだな? 何処の誰だ? お兄ちゃんにも会わせろ!」

 相変わらずである兄《クリス》のシスコン振りにイレーネは少しばかり引きながらも口を開く。

「お兄様、お久しぶりですわね。恋人は私の隣にいる方よ」
「初めまして、イレーネと付き合っています。ラディと言います。よろしくお願いします」

 礼儀よく挨拶したラディのことをクリスはじーっと見つめてから、にこやかな笑みを浮かべて挨拶の言葉を述べる。

「初めまして、イレーネの兄のクリスです。こちらこそよろしく」

 クリスの礼儀正しい挨拶にイレーネは少しばかりの嫌な予感を感じ始めていた。
 そして、イレーネのその予感は見事に的中してしまう。

「イレーネには勿体無いくらいの美形だな。俺の恋人にしたいくらいだ!! どうだ? ラディ、イレーネではなく俺と付き合わないか?」

 クリスの言葉にラディは困惑しつつも首を横に振り丁重なお断りを告げる。

「すいません、俺はイレーネと付き合っているので、お兄様とは付き合えません」
「そうか、それは残念だなぁ」
「ちょっと、お兄様、ラディは私のなの!! 他の男にしてくださる?」

 ラディとイレーネの言葉にイレーネの目の前にいるクリスは何故かニヤニヤし始める。

「ほう、そうなんだな。大丈夫だ、安心しろ。イレーネ、お前の彼氏を取るつもりはないからな。冗談だよ」
「それならいいのだけど」

 兄妹の再会は感動的な物にはならず、いつも通りの賑やかな会話で終わり。イレーネとラディはその場を後にした。



 自室へと戻って来たイレーネは白いふかふかのベットに腰を下ろしてから、向かいの茶色の机と共に置かれている椅子に座るラディを見て話しかける。

「ねえ、ラディ、凄い気になってたことがあるのだけれど聞いてもいいかしら?」
「うん、いいよ、何?」
「ラディは誕生日いつなのかしら?」
「誕生日? 7月10日だよ」
「夏生まれなのね」
 
 イレーネはまだあまりラディのことを知らない。偽であっても恋人としてこれから知っていく必要があるだろうとイレーネは思っていた。
 ラディはイレーネの思いなど知るはずもなく
優しい笑みを浮かべて問いかけてくる。

「イレーネは誕生日いつなの?」
「私は5月20日よ」
「え、もうすぐじゃん!?」
「ええ、そうね」
「じゃあ、お祝いしなきゃね!」

 イレーネは優しく笑いそう言ったラディを見て微笑み返す。

「ありがとう、ラディ」
「うん!」
 翌日。
 ラディはイレーネの側近であるランドルに『イレーネの誕生日にプレゼントを渡したいから一緒に選びに行きませんか?』と誘い。
 ランドルはラディの誘いを受けて、ラディとランドルは王都へと訪れていた。

「ランドルさんはイレーネが何を上げたら喜ぶか知っているんですか?」
「イレーネ様が貰ったら喜ぶ物は知ってますが、今も変わらずそれを上げたら喜ぶのかは微妙な所ですね」
「なるほど、因みに何ですか?」
「クマのぬいぐるみです」
「え……?」
 
 あまりにも予想外な物すぎた為、ラディは思わず聞き返してしまった。
 ランドルはそんなラディを見て可笑しそうに笑う。

「はは、予想外な物すぎましたか?」
「はい、俺、洋服とか、髪飾りとかそっち系だと思ってました」
「あー、なるほど。思い返してみれば、今までイレーネ様の誕生日プレゼントはずっとぬいぐるみでした」

 今に至るまでのイレーネの誕生日の日に両親と兄から渡されていたプレゼントは全てクマのぬいぐるみであった。 
 毎回、誕生日のプレゼントがクマのぬいぐるみであった為、そんなにクマが好きなのかとランドルは思っていたのだ。 

「そうなんですね、じゃあ、クマのぬいぐるみは貰い飽きてるかもしれないか……」
「まあ、それはあるかもですね」
「んー、上げるなら使ってくれる物がいいしな」
「それなら髪飾りとかどうですか?」

 イレーネは髪が腰辺りまであるから、髪飾りは実用性があるだろうと判断したラディはランドルの提案に頷く。

「いいですね、そうしましょう」
「はい、では、お店に行きましょうか」
「ですね!」

 ラディとランドルは髪飾りやイヤリング、洋服などが売られている、イレーネ行きつけのブランド店へと向かい始めた。  
 そんなラディとランドルの姿を春の暖かな日の光が照らしていた。



「イレーネ、喜んでくれるといいんだけど……」

 イレーネへの誕生日プレゼントを選び終えたラディはランドルと共に帰り道を歩きながら自信なさげに呟く。ランドルはそんなラディの肩を優しくポンポンと叩いてから言葉にする。

「ラディ様、大丈夫ですよ。イレーネ様はきっと喜んで下さります」
「それなら良いんだけど」



「ただいま~」
「イレーネ様、おりますか?」

 家へと帰ってきたラディとランドルの声に気付いたイレーネはリビングから出て来て、玄関へとやって来る。

「ラディ、ランドル、おかえりなさい。王都に行くと言っていたけれど、何処かのお店に行っていたの?」
「まあ、そんな感じですね」
「そうなのね」 

 ランドルとイレーネの会話をランドルの真横で聞いていたラディは少し焦りながらもイレーネが深く詮索してこなかったことに安堵する。

「ラディ、もうそろそろしたら夕飯だから、部屋で一緒に食べましょう」
「うん、わかったよ」
「ええ、ランドル、貴方もゆっくり休みなさいね」
「はい、イレーネ様もゆっくり休んで下さい。では、俺はこれで失礼します」

 ランドルはイレーネにそう告げて会釈をしてから玄関のドアを上げて立ち去って行く。
 イレーネとラディはランドルの姿を見送ってから再び会話を再開する。

「ラディ、手を洗って部屋に来なさいね。待ってるから」
「うん、わかったよ」



 手洗いを済ませたラディがイレーネの部屋へと入るとイレーネは優しい笑みを浮かべてラディを見てから、イレーネが座る椅子の向かい側に置かれている椅子に座るようラディに促す。
 イレーネに座るよう促されたラディは椅子に腰を下ろしてからイレーネを見て口を開く。

「お待たせ、イレーネ」
「ええ、じゃあ、食べましょうか」
「うん、そうだね」

 今まで誰かと一緒に食事をすることがなかったラディにとって、イレーネと一緒に他愛のない会話をしながら、こうして食事をするこの時間はとても幸せに感じる瞬間であった。

「イレーネ、俺、イレーネに買われてよかったよ」
「ふふ、いきなりどうしたのよ」
「いや、何か言いたくなっちゃって」
「そうなのね、私もラディ、貴方と出会えてよかったと思っているわ」

 ラディは優しく笑いそう言ったイレーネの顔を見て気付いてしまった。
 イレーネのことを好きになりかけていると。

「うん、ありがとう。イレーネ」
「ええ、」
 自室のカーテンから差し込む穏やかな日の光でイレーネは重たい瞼を開けて、白いふかふかのベットから身体を起こした。

「今日は誕生日ね」

 イレーネは独り言のようにそう呟き、ネグリジェから緑色のワンピースに着替え始める。
その後、一通りの身支度を済ませたイレーネはリビングへと向かう為、自室を後にした。



 イレーネがリビングへと入るなり、両親のカルラとアルフ。兄のクリス。側近のランドル、侍女のエリザ。ラディに迎えられる。

「イレーネ、18歳のお誕生日おめでとう!」
「ありがとう、ラディ」
「うん、イレーネ、これ誕生日プレゼント。受け取ってくれる?」
「ええ、あれ、この紙袋って……」

 ラディから手渡された紙袋は先週、ラディがランドルと共に王都に行って帰ってきた時に手に持っていた紙袋と同じであった。
 紙袋が同じであることに気付いたイレーネを見てラディは柔らかい笑みを浮かべながら説明する。

「実はランドルと王都に行った日。ランドルと一緒にイレーネの誕生日プレゼントを選んでいたんだ」
「イレーネ様、中を開けてみてください」

 ラディとランドルにそう言われ、イレーネは頷き、紙袋の中に入っているそれほど大きくない四角い黒色の箱を取り出し、箱に付いた白いリボンを解いて箱を開ける。

「これは……!?」
「イレーネ様、良くこのお店の髪飾りを買っておられるので。ラディ様と二人で選びました」
「気に入ってくれたかな……?」
「綺麗な青色の蝶のバレッタ。これ、結構前から私が欲しかった物よ! 結構前にこのバレッタ目当てでお店に行った時、売り切れてしまっていて買えなかったのよ……」

 イレーネは青色の蝶のバレッタを大切そうに両手に持ちながら嬉しそうにラディとランドルを見る。

「ありがとう…… ! ラディ、ランドル。大切にするわ」
「喜んで貰えて何よりです」
「そうだね、よかった」

 そんなラディ、ランドル、イレーネの3人の会話が一区切りついた所で兄のクリスが口を開く。

「よし、じゃあ、朝食にしようか」
「そうね、エリザ、お皿の準備してお願い」
「はい、わかりました」

 イレーネの侍女エリザはカルラから頼みに頷き、お皿を出す為、食器棚へと足を運んで行った。
 イレーネは両親のカルラ、アルフ。兄のクリス。側近のランドルに侍女のエルザの姿を見つめてからぽつりと独り言のように呟く。

「ありがとう、皆んな」

 こうして、イレーネの18歳を迎えた1日が始まったのであった。
 
 ラディがイレーネの家へとやって来て、同じ家で暮らす様になってから5ヶ月が経ち、季節は春から夏に移り変わり、蒸し暑さを感じさせる日々が続いていた。

「あー、暑いわね……」
「そうだね、あ、イレーネ、明日の夏祭りどうするの?」
「夏祭り……? あー、そういえば明日は王都で行われるaqua carnival《アクアカーニバル》祭だったわね」

 aqua carnival《アクアカーニバル》祭は年に一度、フィアルゼ国の王都で8月14日に行われる祭りである。
 イレーネは毎年、側近のランドルと共に行っていたのだが、今年はラディがいる為、ランドルと3人で行くことになりそうだ。などと思いながらイレーネは自分と同じように向かいの椅子に座っているラディに目を向ける。

「ラディはaqua carnival《アクアカーニバル》祭に行きたい?」
「勿論、俺、行ったことないから行ってみたい!」
「じゃあ、行きましょうか。ランドルも一緒に来ることになるかもしれないけれど」
「うん、全然構わないよ! 楽しみだなぁ」

 嬉しそうに弾んだ声でそう返答してきたラディを見てイレーネは優しい笑みを溢しながら、『明日が楽しみね』と心の中で呟いた。



 翌日。
 イレーネとラディと共にaqua carnival《アクアカーニバル》祭に行くはずだったランドルは急遽予定が入ってしまいイレーネとラディの2人でaqua carnival《アクアカーニバル》祭が行われているフィアルゼ国の王都へとやって来た。

「うわ〜! 凄い人が沢山いるね!」
「そうね、他国からの観光客も結構いるわね」

 イレーネとラディはいつもよりも倍の人々で賑わう王都の街並みを見つめながら歩いていた。
 今日がお祭りの日であるせいか、他国からの観光客も沢山訪れていた。観光客をガイドする
女性の声が賑やかな人々の声に混ざってイレーネの耳にも届いていた。

「時間も沢山あるし、ゆっくり見て周りましょう」
「そうだね!」

 ラディとイレーネは賑やかな王都の街に溶け込みながら、人混みの中へと消えていった。



 イレーネとラディが王都の街並みを周っている途中、イレーネの侍女であるエリザを見掛けたイレーネはエリザの元へと駆け寄り声を掛ける。

「あら、エリザじゃない」
「イレーネ様、こんばんは。あら、ラディ様も」

 エリザはイレーネとラディを見てにこやかにそう言えば、エリザの隣にいた茶髪の青年はラディとイレーネを見てからエリザに問い掛ける。

「エリザ、この方々は?」
「私が侍女として働いているエルディア伯爵家のご令嬢のイレーネ様と、イレーネ様の恋人のラディ様よ」
「おお、この方達がよく話しに聞く。いつもエリザがお世話ななってます。俺はエリザの婚約者のディリックといいます」

 爽やかな笑顔でそう挨拶した青年の言葉にイレーネは驚きの声を上げてしまう。

「エリザ、貴方、婚約者いたのね!?」
「はい、あら、言ってませんでしたっけ?」
「言ってないと思うわよ」
「そうでしたか。まあ、そういうことなので。イレーネ様もラディ様、私達はこれで失礼致します」

 エリザはラディとイレーネを見て優しく微笑み、軽く会釈をしてから婚約者のディリックと共に立ち去って行く。
 イレーネとラディはそんな2人の姿を見送ってから再び歩き始めた。

「驚いたわ、まさかエリザに婚約者がいたなんて……」
「婚約者の方、優しいそうでしたね」
「ええ、そうね。爽やか好青年って感じだったわ」



 空が茜色に染まり始めた夕方頃。
 イレーネとラディは賑わう王都の街を後にして家へと帰って来た。

「ただいま帰りました。お母様、お父様」

 イレーネはラディと共にリビングに入るなり、夕食の最中の父《アルフ》と母《カルラ》に声を掛けるとアルフとカルラはイレーネとラディを見て口を開く。

「おかえりなさい、イレーネ、ラディ」
「aqua carnival《アクアカーニバル》祭に行っていたそうだな。どうだった?」
「ええ、今年も凄い賑わいだったわ。楽しかったわよね、ラディ」
「うん、初めて行ったけど、凄かったし、楽しかったよ!」

 初めてお祭りという行事に行ったラディは終始とてもはしゃいでいた。
 そんなラディのことを側で見ていたイレーネは自分より年上であり、普段はしっかりしているラディの子供のような無邪気な一面を知れてとても満足していた。

「そうか、それならよかった」
「ほら、2人とも、手を洗ってきなさい! 2人の分の夕飯用意しておくから」
「ありがとう、お母様」
「カルラさん、ありがとうございます」

 ラディとイレーネの2人はカルラにそう言ってから手を洗う為、リビングを後にしたのであった。
 数ヶ月後。
 いつも通りの静かな夜、イレーネは中々寝付けず、自室のベランダへと出ようとしたその時、イレーネの部屋のドアが2回程、ノックされる。

「イレーネ、起きてる?」
「ラディ? ええ、起きているわ。入ってきて大丈夫よ」

 ラディはドア越しにイレーネの声を聞いてから部屋のドアを開けて部屋へと入る。

「イレーネ、夜遅くにごめんね」
「ええ、大丈夫よ。どうかしたの?」
「うん、中々寝付けなくて。あと、今夜は星が綺麗だから起きてたら一緒に夜空を見たいなって思ってね」

 ラディは柔らかい笑みを浮かべながら、イレーネがいるベランダの窓の前までやって来る。

「私も中々寝付けなくて、ちょうど今ベランダに出ようとしていた所だったの」
「そうなんだね」
「ええ、」

 イレーネは窓を開けて、ラディと共にベランダへと出る。
 静かな夜の空気がラディとイレーネの身体に当たり、ラディはイレーネを気遣い自身が羽織っていた黒いジャケットをイレーネに羽織らせる。

「ありがとう、ラディ」
「うん、もう、風が寒く感じる時期だから」
「ええ、ラディを買ってから大分経ったわね」

 両親が取り付けたお見合いを拒否する為に
偽の恋人を作ろうと決めたイレーネ。
 闇市場に行って奴隷として売られていたラディと出会い。イレーネはラディの容姿に惹かれてラディを買った。
 最初は偽の恋人でいいと思っていたのに、今では本当の恋人になりたいとイレーネは思ってしまっていた。

「イレーネ、俺さ、イレーネとこれから先も一緒にいたい。偽の恋人じゃなくて、イレーネの本当の恋人になりたい」

 ラディは星が瞬く夜空から、隣に立つイレーネに視線を移し、真剣な顔で自身の気持ちを言葉にした。

「私もラディと本当の恋人になりたいと思っているわ。一緒に日々を過ごす中でいつからか偽の恋人じゃ満足できなくなっていたの」
「そうだったんだね」
「ええ、これからは本当の恋人として一緒に居てくれるかしら?」

 イレーネがラディの顔を見て問い掛ければ、目の前にいるラディは優しく笑い、イレーネからの問いに答える。

「ああ、これからも一緒にいるよ。イレーネ、俺の婚約者になってくれないか?」
「ええ、いいわよ」

 ラディとイレーネは互いに見つめ合ってから、少しぎこちなく手を繋ぎ、星が瞬く夜空へと再び視線を移した。
 
「私、ラディと出会えてよかったわ」
「ああ、俺もだよ。イレーネ」

 ラディとイレーネは互いの手の温もりを感じながら、これからは偽の恋人ではなく、本当の恋人として一緒に居られるということに嬉しさと幸せを感じていた。



「久しぶりの外だ〜!」
「もう、まだ風邪の治りたてなのだから、走り回らないの!」
「まあ、もう走れ回れるくらいには元気になったってことだよ、イレーネ」

 金髪の青年は中庭を走り回る少女を見つめてから、自分の後ろに立つ茶髪の女性に視線を移す。

「まあ、そうね」
「ああ、俺達も行こう」
「ええ、」

 金髪の青年は茶髪の女性の手を優しく握り、こちらを見て『早く来て』と手招きする少女の元へと向かう為、茶髪の女性と共に歩き出した。
 そんな3人の家族の姿を春の穏やかな日の光が照らしていた。

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