翌日。
 ラディはイレーネの側近であるランドルに『イレーネの誕生日にプレゼントを渡したいから一緒に選びに行きませんか?』と誘い。
 ランドルはラディの誘いを受けて、ラディとランドルは王都へと訪れていた。

「ランドルさんはイレーネが何を上げたら喜ぶか知っているんですか?」
「イレーネ様が貰ったら喜ぶ物は知ってますが、今も変わらずそれを上げたら喜ぶのかは微妙な所ですね」
「なるほど、因みに何ですか?」
「クマのぬいぐるみです」
「え……?」
 
 あまりにも予想外な物すぎた為、ラディは思わず聞き返してしまった。
 ランドルはそんなラディを見て可笑しそうに笑う。

「はは、予想外な物すぎましたか?」
「はい、俺、洋服とか、髪飾りとかそっち系だと思ってました」
「あー、なるほど。思い返してみれば、今までイレーネ様の誕生日プレゼントはずっとぬいぐるみでした」

 今に至るまでのイレーネの誕生日の日に両親と兄から渡されていたプレゼントは全てクマのぬいぐるみであった。 
 毎回、誕生日のプレゼントがクマのぬいぐるみであった為、そんなにクマが好きなのかとランドルは思っていたのだ。 

「そうなんですね、じゃあ、クマのぬいぐるみは貰い飽きてるかもしれないか……」
「まあ、それはあるかもですね」
「んー、上げるなら使ってくれる物がいいしな」
「それなら髪飾りとかどうですか?」

 イレーネは髪が腰辺りまであるから、髪飾りは実用性があるだろうと判断したラディはランドルの提案に頷く。

「いいですね、そうしましょう」
「はい、では、お店に行きましょうか」
「ですね!」

 ラディとランドルは髪飾りやイヤリング、洋服などが売られている、イレーネ行きつけのブランド店へと向かい始めた。  
 そんなラディとランドルの姿を春の暖かな日の光が照らしていた。



「イレーネ、喜んでくれるといいんだけど……」

 イレーネへの誕生日プレゼントを選び終えたラディはランドルと共に帰り道を歩きながら自信なさげに呟く。ランドルはそんなラディの肩を優しくポンポンと叩いてから言葉にする。

「ラディ様、大丈夫ですよ。イレーネ様はきっと喜んで下さります」
「それなら良いんだけど」



「ただいま~」
「イレーネ様、おりますか?」

 家へと帰ってきたラディとランドルの声に気付いたイレーネはリビングから出て来て、玄関へとやって来る。

「ラディ、ランドル、おかえりなさい。王都に行くと言っていたけれど、何処かのお店に行っていたの?」
「まあ、そんな感じですね」
「そうなのね」 

 ランドルとイレーネの会話をランドルの真横で聞いていたラディは少し焦りながらもイレーネが深く詮索してこなかったことに安堵する。

「ラディ、もうそろそろしたら夕飯だから、部屋で一緒に食べましょう」
「うん、わかったよ」
「ええ、ランドル、貴方もゆっくり休みなさいね」
「はい、イレーネ様もゆっくり休んで下さい。では、俺はこれで失礼します」

 ランドルはイレーネにそう告げて会釈をしてから玄関のドアを上げて立ち去って行く。
 イレーネとラディはランドルの姿を見送ってから再び会話を再開する。

「ラディ、手を洗って部屋に来なさいね。待ってるから」
「うん、わかったよ」



 手洗いを済ませたラディがイレーネの部屋へと入るとイレーネは優しい笑みを浮かべてラディを見てから、イレーネが座る椅子の向かい側に置かれている椅子に座るようラディに促す。
 イレーネに座るよう促されたラディは椅子に腰を下ろしてからイレーネを見て口を開く。

「お待たせ、イレーネ」
「ええ、じゃあ、食べましょうか」
「うん、そうだね」

 今まで誰かと一緒に食事をすることがなかったラディにとって、イレーネと一緒に他愛のない会話をしながら、こうして食事をするこの時間はとても幸せに感じる瞬間であった。

「イレーネ、俺、イレーネに買われてよかったよ」
「ふふ、いきなりどうしたのよ」
「いや、何か言いたくなっちゃって」
「そうなのね、私もラディ、貴方と出会えてよかったと思っているわ」

 ラディは優しく笑いそう言ったイレーネの顔を見て気付いてしまった。
 イレーネのことを好きになりかけていると。

「うん、ありがとう。イレーネ」
「ええ、」