異世界の国々が驚いた異界国家日本は本当にすごーいデス~ネ

西暦2030年 5月20日。博多港の出航から約8時間。



 コヨミ半島の周辺の海底の地形と海流に注意しながら日本異世界外交大陸調査派遣団たる護衛艦隊は、遂に目的地である万代藩、万代港に到着しました。





 現地に到着しからの予定では、竜史ら日本国使節団一行は紅葉の案内で、万代藩の居城である万代青葉山城に登城する事に成って居ました。



 その万代港ではコヨミ水軍東部方面軍・万代藩水軍所属の高雄瑞樹水軍大将と愛宕千棘水軍中将に出迎えられ事に成るのです。



 上陸するのに当たって各輸送艦からは、第1師団と第10師団。



 そして、全国から集められた陸自混成派遣師団の車両と物資が下ろされて行きました。





 日本国使節団一行は、チャーターした民間船から、陸自隊員等が続々と下りて居り、主力を担う第2師団、第7師団、第5旅団からなる北部方面隊混成派遣師団は、輸送艦に乗船させていた車両と共に戦車を中心とした車両部隊を降ろし、南の自衛隊基地の駐機場へと移動させ、宿舎へと移動をしたと防衛省の映像記録が残って居ます。



 自衛隊北部方面隊の派遣は、ソ連時代から続いて居たロシアの仮想敵国として意味が消えた事と北方の大陸国家がコヨミ皇国の同盟国家と判明した事での大規模な機甲師団の派遣が決まったのです。



 この日、日本国使節団を出迎えた高雄瑞樹は、後にコヨミ皇国海軍大将と成り、愛宕千棘はコヨミ皇国海軍中将と成る。



 この二人は、後に行われる日帝東洋戦役と言う日本近海海戦の戦争に措いて、日本を中心とした連合艦隊の一員として参加する事に成ります。



 特に彼女達が有名と成る切っ掛けは、異世界各国が初めて配備される近代式戦艦の指揮を取って戦い、歴史に知られる存在と成るのです。





 特にこの時の面白いエピソードとして、愛宕千棘と言う人物は、見る人に由ってはバインバインと言った擬音やティンパニーを叩く音にも聞えてしまうほどに豊満なバストを有して居ました。





 それ位の印象に残る女性将校だった為か、そんな彼女の容姿に対して、だらしなく見とれている陸海空の若い自衛官を叱責する自衛隊統合派遣隊の最高指揮官・羽佐間道直海上幕僚長が怒鳴り声を上げと言う記録が残って居ます。





 コヨミ皇国の現地自治藩政府と現地駐留軍らの出迎えを受けた日本国使節団は、万代藩の政治中心地たる万代城へと向かえました。



 再開発前の万代市と万代城の様相は、日本国の仙台市市立博物館の記録資料に残る江戸時代の仙台とそっくりそのままだったと言われて居ます。



 今は旧市街地と万代城周辺地域を除く万代市市街地は、高層ビル等が立ち並んでいる近代化都市では在りますが、竜史・紅葉・愛美らの尽力により江戸時代の様な街並みは、文化遺産として保存され、今もなお万代市民と観光客らに親しまれて居ります。





 さて、その万代城へと向かう道すがらでは、万代市民達が物珍しそうな顔つきで、日本国使節団と自衛隊護衛車両部隊の後進を見て居り、日本と関わり合いが薄かった市民達でごった返して居たそうです。



 当時、万代市では、紅葉の仲介で始まった日本国との国交開設へ向けての準備に措いて、南西国藩の藩都・加古島市と同じく、日暦合同での近代化沿岸都市として再開発事業の真っ最中でした。



 この時、多く万代市民やコヨミ皇国国民達が、日本国の技術者から指導を受け、日本国の国家資格を取得し、同時にコヨミ皇国で制定された国外特定技術資格保持者法によりコヨミ皇国も認可した認定証を受けて居ました。





 この人々が後にコヨミ皇国の近代化を担う人材に成ったのは言うまでも在りません。
 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月21日・午前9時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



港では漁師組合に来ている者や商会の事務所や店舗の船乗り、商人達が所要で訪れている。


その彼らが木造帆船よりも巨大な鉄の灰色船が万代港へと繰り返しやって来る度に、その目を丸くしながら見ていた。

 そして、大通りの入り口、港と市場の境付近の場所で、市井の人々が日本の使節団を見ながら、互いに感じた事を語り合い始めた。


「此処最近に成ってやって来る様に成った鉄船の船団は相変わらず、すっげぇ~なっ!!」

「ああ、本当にな。」


「見たか、あの巨大な鉄船を?」


「ああ、何て言ったか、あのデケェ鉄船を造ったって言う国の名は?」

「ニホホン、いいやニッコンだったか?」

「いいやどれも違うぞっ!確か・・・・・ニホンとか言ってたな。」


「ニホン?それって・・・・・一体、どの辺りに在る国だっ?!」


ここ数日の間に、万代市に訪れた者や戻ってきた出稼ぎ労働者や商人達らは、日本の存在を知らないのである。


「主上様と藩主様の発表じゃ、東に海に現れた異世界の国とか言う発表が有った筈だっ!」


「異世界?何言ってんだ。そんな御伽噺みたいな所なんて、在る訳ねぇだろよっ!!」


「それが在るらしいぞっ!!」


「南西国藩の藩主で在らせられる嶋津義隆様は、既に交易準備に入ってるとか言う話を万代市に商売にやって来た南西国藩の商人が言ってたぞっ!!!」


「おいおい、そりゃマジか?」


「ああ、それと龍雲海沖で帝国海軍が、ニホン客船の拿捕と領海権を巡って、ニホン海軍と紛争を起して、帝国海軍がコテンパンにやられてとか・・・・・・・・」


「何だって?!」


「帝国東洋領でも、ソコソコ有名な辺境侯爵であるアディーレ・グレッサは死亡したか、コヨミ皇国か転移して来た異世界の何処かの国の捕虜になった噂が流れてるぜっ!」


「ええっ!?アディーレ辺境侯爵がだと?」


「そう言えば、ここ数週間の間に港を始めとして見慣れねぇ連中や見たことねぇ鉄車を良く見掛けるよな。」


「それもニホンの発明らしいぞっ!」


「俺も見たぞ、馬や牛、果ては竜すら無いのに自走するんだっ!」


「俺もっ!俺もっ!見たぞっ!すっげぇっ!重たそうな鉄の柱を持ち上げてた。」


「ええーっっ!それは違うわよっ!土砂を沢山掘り返す奴と運搬する乗物よっ!」


市民達はどれも要領得ない情報に振り回されて居る。


 確かにどれもニホンの鉄の車だが、彼らが話して居る車を整理すると以下の通り。


 普通車と軽自動車、自衛隊の各移動用車両に施設科の各種車両。


 クレーン車にパワーシャベルに、特大ダンプカー等の民間建設会社の車両の事である。


 更に港には、クレーン船やコンテナクレーンまでもが在るので、今まで見たことも無い乗り物と道具を見た彼らが混乱しないのも無理は無いのだ。


沿道では賑やかに日本の噂話が続いていた。


「そうそう、ニホンの乗り物中には、鉄の箱の乗物が空を飛んでたぞ。」


「嘘だ~っ!空を飛べるのは亜人の連中か魔法使い。龍族や大国の魔導兵器だけだぜっ!」


「お前の情報は遅れてるな。」


「ニホンじゃ訓練次第で、お国から特別な許可証さえ有れば、空飛ぶ乗物に誰でも乗れるらしいぞっ!」



「そんな事を言って、どうせ位の高い貴族様や武家の人しか乗れない物に決まってる。」


「それもバカ高い金を支払って、手に入れる乗物だろう?」


「実はそうでも無いんだな。」

「俺が聞いた噂話じゃ、日本は皇帝以外の身分が全く無いらしい。」

「全ての市民が平等で、法に触れさえしなければ咎められる事は無い。」

「だからどんな乗物でも訓練して、国からの許可証を貰えば、乗りたい乗物に誰でも乗れるらしいぞっ!」


「おいおい、それは本当か?あんな便利な代物が手に入れば、今ある仕事が一変して一儲けが出きるぞっ!」


「俺は、あの鉄車が欲しいな。あれに乗って稼ぎが良くなれば田舎の家族が少しは楽に成るかも知れないな。」


「そりゃ、そうだがよ・・・・・・」


「ニホンの工匠商会で働いている奴が居るんだが、そいつが言うには、相当高い代物らしいぞ。」


「鉄車や空飛ぶ鉄の箱の許可証は日本政府しか発行してない。コヨミ皇国政府が許可証を発行するには、ニホンの制度と教官の育成にかなりの時間が掛かるんじゃないか?」

「それに許可証を取るにもお金が掛かる。一発で試験に受かれば良いが、落ちると数回分の試験費用が掛かるらしいぞっ!」



「そうか、それは残念だな。」



「そう落ち込むな。何年掛かるか分らないが、日本との貿易が盛んになれば何れチャンスは有るさ。」


落ち込む若い出稼ぎに来ている青年を励ます中年の漁師。


 すると違う男が声を上げた。


「おい、見てみろよ。日本軍の乗物がやって来るらしいぜっ!ありゃ何なんだ?」


男が指を指した方向の大通り入って来たのは、陸上自衛隊が誇る第一師団の第一偵察隊、普通科連隊の3部隊、特科大隊、第一高射特科隊、第一後方支援隊、第一通信大隊。

 16式機動戦闘車隊、89式装甲戦闘車隊、第一戦車大隊の74式戦車隊、90式戦車隊、10式戦車隊が支援車両共に市内の大通りを通行する。


もし、日本国民が見れば護衛にしては、やり過ぎだと言うだろう。


日本政府の思惑は、第一師団を含めた陸海空自衛隊の各部隊に、いっぱい目立って貰い。

 日本国の軍事力と国力を目立たせて、帝国に対する抑止力が有ると帝国にもシベリナ連合各国にも示す事だった。


 後は自衛隊の装備には、日本国の日本製品の凄いぞって所がたくさん使われいる。


 これをアピールすれば、民生品の売れ行きが何れ良くなると踏んで居るのであった。


「すげーっ!!これが日本軍か?」


「あれは・・・・使節団の護衛かな?世界各地域の諸外国に比べれば少ない気がするな。」


「バカか?それだけ強いって事だろっ!それにしても大砲の数が尋常じゃないぞ!」


「ああ、それに良く見てみると、部隊の半数が大砲だ。」


「大砲って、確か最近作られたばかりの兵器だろう?連射がし辛い代物って聞く。」


「第一、そんな物が役に立つのか?」


「そうだな。火薬式の大砲は、魔導砲が作れない国が持ち始めた代物だ。言わば魔導砲の代用品に過ぎない。」

「それにどちらも荒野や城塞防衛に海上での撃ち合いを目的に使用されて居る。」

「魔導砲と違って火薬と砲弾の装填に時間が掛かり過ぎるから、魔導兵器の前には殆んど役に立たないと来ているしな。」

「何しろ火薬式大砲はかなりの重量が在るから重いしな。」

「運用するには牛か重騎龍を使用するしかない。」


因みにこの世界では、火薬式の大砲と魔導式大砲が最近に成って作られたと言われているが、それは間違いだ。

 600年以上前にも、その二つは存在してたいが、当時の各国諸勢力の文明の差と、度重なる戦争のせいで、一時的にロストテクノロジーと化していた時もあるらしい。

 それを世界中の国々が必死に成って復刻再現させて、今日に至っているのである。


 そして、そんな大型で重量のある兵器は牛や馬、重騎龍と言う竜が運搬を担っていた。


 重騎龍の見た目は恐竜のトリケラトプスに似た竜で、この世界で言う戦車やトラックの代わりとして飼育されている生物である。

 だが、日本の転移後に出現した自動車に、その活躍を奪われ行くのである。


特に帝国がニホンと戦った陸自主力部隊と成った機甲師団である第7師団、最新式の戦車を持つ第2師団、第5旅団、第11旅団、東部方面隊の各戦車大隊と各特科火砲大隊に駆逐されて行く姿は帝国に取って悪夢であり。世界史上に残る出来事であった。


 だが、重騎龍を始めとする竜は、この世界全土で飼育されていた。


 全ての竜種が戦場で死絶え始めると、帝国は野生種の乱獲を続けて行く。

 
 その結果、竜種は戦場で死滅し消えて行った。


 その後、竜種の全てが絶滅危惧種にまで成ってしまう。


 戦後になって日本の環境省が各国に保護を訴え、竜種の保護をする国立公園を整備する等をした特別地域でしか見られなくなると言う悲劇が待っていた。


 それはさて置き、話は万代市内の大通りに戻る。

「じゃ、何でニホンは、こんなにも大砲を持ってるんだよ。」


「そりゃ、知らねぇけどよ。」


「ふふっ・・・・・・」


近くの行商の若い男が含み笑いをしながら語り始めた。


「そんな事も知らないのか?」

「俺が南西国藩の軍や軍出入りの商人から聞いた話しだが、何でもニホン軍の大砲命中率は、100発100中らしいぞっ!」


「それこそ嘘くさい。第一どんな人間が撃ったって、大砲の弾と言うは、明後日の方向へ命中するんだぞっ!!!」


「それがそうでも無いんだな。ニホン戦艦の大砲は高性能なカラクリ仕掛けで、撃ったら必ず狙った的へと中るって話だ。」

「更に陸軍の大砲も高性能で確実に敵に命中させる訓練を積んで居るらしいぞっ!!」

「だ・か・らっ!それは何故なんだっ!?」


「そんな事は俺でも、流石に其処までは知らないぞっ!又聞きの又聞きだからな。」


「何だよっ!結局の所は、何も真実を知らぇねのかよ。」


「南西国藩で水軍に入ってる兵士や出入り商人の連中からの話しを俺は又聞きしただけだからよ。詳しい事は知らないんだよ。」


「そりゃ多分、本当だな。」

「南の海・・・龍雲海の海戦の噂は、このコヨミ半島では知らない者はいない程の衝撃的な出来事だ。」

「なんだけどよっ!ニホンについての情報が少ないからな。」

「ニホンに付いての真実を知らない連中が多い。」


日本から帰国してきた南西国藩の水軍と嶋津義隆によって龍雲海での海戦に実情が又聞きの噂として市民らに広まっていたのである。


「おいおい、つて事はもしかして・・・・・」


「ああ、コヨミ皇国はニホンと同盟を組んで、帝国と本気で戦う積りかもしれねぇな。」


「そりゃっ!10年ぶりの大戦争に成りそうだぞっ!」


「と言う事は・・・・・・徴兵の件どうなるかな?」


「何を不安がってるんだ。戦で手柄を上げて名を上げられる好機だぞっ!」


「でもな、北西の藩主が帝国との戦争を避ける為に、密かに和平交渉してるって聞いて安心してたんだ。」


「その話は帝国に降るって話だろっ!冗談じゃないっ!」


そう、帝国に降れば、宗主国へたくさんの税金を納め、更に自国に税金を取られ、兵役や労役に男手を取られれば10年は帰ってこない。


 最悪、死んでる事が殆んどだと言う噂が立って居るが、大半が真実だった。


 例え戻ったとしても家族や知人の方が死絶えて居る事もある。

 若いを女は、通りすがりの貴族や兵士に奴隷や愛人として持って行かれる。

 性質の悪い奴は赤ん坊から10歳の子供を貴族や帝国商人に人身売買すると言う不届きな連中がいる。


それでも戦で死ぬよりはマシと考える者も少なからず居た。


 結局、何所の世界、何所の国でも事なかれ主義であり、厄介な事から目を背ければ自身には被害を受けない。

 此処に居る異世界の市民達もまた、日本の反戦平和主義者と変らない考えを持って居た。

帝国に飼われて死ぬか、帝国に歯向かって死ぬかと・・・・ 生き抜く、生き残ると言う少ない選択肢の考えしか彼らには無いのだ。


 対して日本での戦争に対する感情は、見えない、関わらない、知らないとしか言わないだろう。

 且つて、2010年代に就任していた総理が打ち立てた積極的平和主義は、今の日本では張りぼてに成って居るのだった。


2030年までに負傷自衛官が300人を駆けつけ警護や陣地防衛、日本の国境紛争で出て居るが、奇跡的に殉職者を出していない。


 その後に起きた政界の大政変で政党が分裂新生し、反戦運動が続いた。


 以前よりも酷くなったと言わざる終えない。

 ロシアによる民族・砲艦外交主義と中国覇権主義が世界中で台頭し続けている中で、日本だけが保守党中心に彼の国々に対して、米国を中心とした諸外国らと共に一歩も退かずに居たのは奇跡だろう。


 万代市内に住まう市民やコヨミ皇国民らが見て居る中で、日本使節団と自衛隊の一団は大通りを通り抜け去って行った。


「ふーっ、凄かったな。」


「ああ。」


「これからどうなるのかしら?」


「ひょっとしたら、俺達は歴史の生き証人に成ったのかもな。」


「そんな事はどうでも良いよ。大丈夫かなこのコヨミ皇国は・・・・・・・・」


 また、万代の町に賑やかさが戻り、互いを見知らぬ市民達は仕事や日常へと戻って行った。 

 この日の記録が後に瓦版に書き記されて居る。

 そのタイトルは、巨大鉄船の来航と題していた。

 後でこの瓦版を見た日本政府の関係者やこの話を聞いた学会のお偉方たちは、苦笑したと言う。

 何故なら200年くらい前に自国での体験そのままだったからである。

 皮肉にも異世界の黒船来航は、異世界の産業革命と維新革命を起す切っ掛けに成ったのである。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月21日・午前9時30分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代市・万代青葉山城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


城に着いた使節団一行は車を下りて、紅葉と侍女達の案内で本丸御殿へと通された。

 その歩く最中の途中で、女性外務官僚の一人がふと何かに気が付き呟く。


 それは此処まで来る間に感じて居たある疑問に気が付いたからである。

「そう言えば、このコヨミ皇国の女性は良く働いて居るのを多く見受けられますよね。」


「それはきっと女性の就業率が良いのよ。とっても良い事だわ。」


「そうですわね。我が国にも取り入れる政策が有れば見習いたいてずわね。」


使節団に同行している女性議員と女性外務職員が感心して居た。


 たが、竜史が違う意見を述べた。

「それは違うと思いますね。もし、就業率が良いなら男性も同じくらい居ないと可笑しいでしょう?きっと別の事情が有るんだろうと思います。」


「そんな事ないわよ。」


「そんな考えが多いから、女性の社会進出が、何時まで経っても、中々前へと進まないのよ。」


そうよ、そうよと大合唱する女性陣。

 彼女達の主張も分からなくは無い。


 けれども彼女達の考え方は、平和で泰平の世を過ごして来た日本人独自の考え方から来た物で有るとも言えた。

 何せ平和ボケって、色々な要素が有っても無くて染まる時は染まる物と言うのが現在世の中にも言えるからだ。

 例えば、国防装備品の定期更新を怠って福祉や社会インフラに投資額を増やし過ぎて居たりする事で、気がつけば専制覇権主義国家に軍事力の一部が追いつかれ始めて居たなんて話は近年では良く聞くニュースの一つだろう。

 増して世界大戦の最中に在る地方国家の就職率が良く見えるのは、その国の政策が良いからと限らない。

 そう言った事に疎くなるくらい、このアースティア世界へと転移してきた 日本は・・・日本国内は余りにも平和だったと言う事である。

「高見君、あまり女性に対しての差別的な発言は良くないよ。」


  言い争いに成りそうだったので、透かさず諏訪部が竜史を嗜めた。


「諏訪部さん、竜史の言った事は事実です。」


「我が国の一般女性の就職率が良すぎるのは、全く異なる事実から来る物なのです・・・・・・」



 紅葉が暗い顔付きで、話し掛けて来た。


「一体、それはどう言う事ですか?」


「はい、実は600年もの長きに渡り世界各地で戦争が続いたせいで、世界規模で男女別の人口が、かなり偏った形で減っています。」

「10年前のシベ帝戦争での話です。帝国軍600万人とシベリナ連合軍270万人が激突しました。」

「その結果は敗戦。友好国にして強力な同盟国である南方の大国、ドラグナー皇国(おうこくに)200万人の大軍を送り込んで、彼の国を従属占領しましたわ。」


「この戦以来、帝国は更なる力を付けて、反帝国戦線を次々に討ち破り、各国の兵力は、全盛期の半分以下に落ち込んでしまいました。」

「この時に将校や佐官に兵士と成る多くの男手を引き抜いた事も原因ですが、長い戦争が続いた事も祟って反帝国同盟の各国側の男性の出生率が極端に下がりました。」

「それとは反対に帝国の方はと言うと、逆に男女共に出生率が格段に上がり、人が溢れ過ぎて就職口が兵隊か闇組織系の職業に偏ると言う事態に陥って居ます。」


思いも寄らぬ理由に日本の面々が黙り静まり返った。


 特に安易な発言を述べていた女性陣らは、平和な日本の在った地球世界は、争い事の種や大きな騒動は在っても、ある程度の安定的な世界だった事を痛感してしまうのであった。

特にアメリカと言うマンパワーのある大国を中心として先進国と国連と言う制御機構の在った世界とは、全くの違う世界に居るのだと言う事を嫌と言うほど思い知らされるのだった。

 転移災害に遭う直前でも、世界最大の国土を持った大国と人口率の高い共産主義国との対立は、第三次世界大戦が起きてしまうのでは無いのか?と言う心配する声も多かった。

 そう、日本使節団の者達は紅葉の説明から、このコヨミ皇国を含め、この世界の各国が抱える人口問題の一端を垣間見たのである。

 女性が戦場や裏社会の荒事の仕事。

 国の重要職や店先で多く働いて居る実情は、戦争が酷くなって来ている証でも在るのだ。

 あの城下の賑わいは、有る意味、偽りの平和の光景でも在るのだった。



「諏訪部さん。」



「何でしょうか?」



「このアースティアの国々や多種多様な種族・部族が居る地域では、一夫多妻制を法的に認める事や慣習的な地域も珍しくありません。」

「王侯貴族から庶民に、亜人種族なども含む慣習的に多婚制度が多いのも事実です。」

「それに加え、戦争が激しさを増すに連れて、人口問題が表面化している手前、一夫多妻と成る家庭も多く成って来て居ります。」

「好きな男性に10人の女性が結婚を申し込んだり、見合いをした上で数人で結婚して一緒に居る夫婦も、そう珍しくない話なのです。」



「ですので、戦争が終結し、アースティア世界の世界人口が安定する前後の期間の間だけ、どうかこの事実を見逃しは貰えないでしょうか?」


「貴国が人権や女性の権利を尊重する貴国には、誠に聞き入れ難い事ですが、私を含め、多くの民が子供を欲して居ますが、戦争や飢餓と病で多くが死んでしまって居ます。」

「人が居なければ何れは国が自然に消えてしまうでしょう。」

「そして、貴国との国交が開設されれば、必然的に貴国と地球系転移国家の人々との繋がりが生まれるのは必定です。」

「そうなれば、当然ながら地球系国家とアースティア世界国家の国々との結婚観の違いが生まれでしょう。」

「そして、互いの制度と習慣の違いから、すれ違いと成ってしまう方々を大勢現れてしまう。」

「それはこの世界に取っても、実に不幸で勿体ない事なのです。」


「どうか、どうか、日本国の皆様には、こうした事実を踏まえも世界人口の回復の一助と、異文化習慣としての多婚を認めた上での、国交開設した際に是非とも、アースティア世界の文化習慣制度に出来る限り、この世界文化風習に擦り合わせた形での国際婚姻法の整備をお願いします。」


深々と皇女である彼女は頭を下げる。

 アースティア世界ならではの諸事情が有るので、成るべくハーレム婚を容認する事は、出来ないかと一国の皇女が言うのだ。

 この世界のどの土地、どの国でも人々は追い詰められて居るし、文化・習慣・風習・制度の観点から認めらて居る。

 それにいい加減な理由で多重婚をして居る訳でも無いと説明している。

地球では、一部の国と地方部族が一夫多妻の法律と慣習が有る国が在るが、日本でなら、ふざけるなっ!と言って日本国内では、人権デモの大合唱が始まるのだろう。


「う~ん、でもな~ぁ・・・・・・・・」


 流石に、これに関しては「うん」とは言えない諏訪部。


「諏訪部さん。此処は彼女とこの世界の実情に一歩譲りましょう。」


「それは、多重婚を認めろと言うのか。それは簡単には出きないぞっ!」


「それ分かってますよ。だったら現行の結婚の制度に関しては変えなくて良いんですよ。」

「但し、異世界の人口問題が解決、そして出身地域に措いて文化・風習・慣習・制度が一夫多妻である事や、結婚出きるのが、異世界転移して来た日本国の国土や地球系転移国家の国土の生まれでは無く。」

「純粋な異世界出身者の一世人に限ってと言う話では、如何でしょうか?」


「詰まり、新たに色々な特別な法律を作って対処しろと言うのか?」


「はい、地球系転移国家とその国土地域以外の土地で生まれ育った人々限定で許可するんです。」

「但し、面倒が見切れる範囲の良識を持つ事が前提であり、地球系列の国家人が国籍を異世界国家に変えたりして、現地人に成り済ましての違法結婚を禁止にしたり、親族権の範囲と遺産相続問題、亜人種の遺産相続時限法の制定。」

「新たに編入されるかも知れない新国土の住人が当たり前としている土地の多婚制度の法律制定や整備。」

「最後に身分証と出自や後見人がしっかりして居る事が求められますが。」


「なるほどな。先に法律を整備してしまえば、面倒な騒動も少なくて済む。」


「何れ日本人と交流が深まれば、この世界の人々のとの国際結婚問題は避けられない。」

「新国土の住人達の文化・習慣・慣習を日本国の法律で一括りにして、ぶち壊し過ぎても争いの種に成る。」

「我々の国の法律も大事だが、話し合いの席で我々が合わせて欲しいと求めれば、逆に此方側の常識や習慣にも合わせて欲しいと求められる事も有り得る。」

「分りました。紅葉殿下、貴国との基本条約の際に話し合い。帰国した後に国会で会議をしてみます。」


「宜しくお願いします。」


 変な話をする事に成ったが、男女の人口率がマトモな地球系国家郡。

 何れ大陸との交流が深まる中で、異世界の各国に取って、たくさんのお婿さんは、先進技術並に欲しいものでも有るし、外の交流が活発に成れば、男女の交わりも当然ながら多くなるのだ。

 異世界人の結婚観の違いから悲しい想いをするカップル達をなるべき無くす為も、ある意味、制度的な譲歩が日本国をはじめとする地球系国家群には求められる事と成る。

後に合法ハーレム国際婚法と多くの物議と討論を呼び、揶揄され続ける事に成る。

 この制度で誕生した初期カップルの数は数億人単位で増加し、多くの国家で人口増加の一助と成る。

 アースティア大戦後には、制度の見直しが行われ、一定の人数制限を設けた形で認められる事に成る。

 そして、この制度やろうと言ってしまった本人が、この数年後に成って、まさか・・・女難の災難が直接本人に降り掛かろうとして居る事を知らずに居るのであった。



 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月21日・午後10時00分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代市・万代青葉山城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


御殿前の廊下での暗い話が終わり、先へと進む一行は、コヨミ皇国の特有でもある和風建築の粋を集めて作られた本丸御殿を見て感動していた。


「いやー、見事な物ですね・・・・・・」


 諏訪部が見事な作りに呟く。


「ええ、愛美は、コヨミ皇国内でもかなり商売が上手い藩主の娘なので・・・・・・・」



「聞いたところによると、とても変わっていらっしゃるとか言ってましたね。」


「家の官僚や職員が、上手い事丸め込まれそうに成ったと言って居ましたよ。」


「済みません。あの子は、新しい事と珍しい物に関して、とても目がなくて、親友としてお恥ずかしい限りですわ。」


「お友達なんですか?」



「はい。幼い頃は、我が国に訪れた各国大使と王姫や貴族、それに官僚の息女と一緒に成って、良く皇都を駈けずり回って居ました。」

「あの頃は短い期間では有りましたが、毎日がとても楽しかったです。」


「良く同じ年頃の子達を振り回して、他国の年上の姉達に怒られてましけど・・・・・・」


紅葉は幼い頃の記憶を思い出して、感慨に耽っていた。

 諸外国に居るであろう幼友達たる親友達。

 鉄よりも堅い絆とも言われ、供に歩み築き上げたその功績は、後に歴史書に書かれる事になる者達ばかりであった。

 その誓いは、彼の三国志演義内でも有名な名シーンたる桃園の誓いの結束に似ていた。

「相当お転婆で、いらしたんですね。」


「その頃に比べて、付き合いが良かったお友達との交流が、随分と減りましたわね。」


  更に何かを思い出して暗い顔している紅葉。


「それは戦争のせいですか?」


「ええ、これから会う娘は、先の大戦で兄を失った人物です。」


「そうなんですか?分かりました。愛海さまの事を気遣う様に心掛けます。」


「いいえ、違うのです。中途半端な受け答えは、返って後悔しますので気を付けて下さい。」


「ええっ?」


諏訪部らは狐に摘まれた顔で呆けていた。


「それはどう言う意味ですか?」


「彼女は、打倒帝国派であると同時に、伊達家の事を一番を考えて居ます。我がコヨミ皇国が、帝国に勝てないと思ったら・・・・・・」


「まさかっ!寝返ると言うのですかっ?!」


「うふふっ、大丈夫です。心配は要りませんよ。」


「あの子は限ってそんな事しないですよ。」

「まぁ・・・彼女なら・・そうですね・・・この万代市がもうダメと言うまで追い詰められたら最後には自決するでしょうね。」

「でも、その前に逃げられるなら万代藩の財貨と兵力全てを持って、新天地に撤退する位はするでしょうね。」


紅葉の答えに一同は呆れていた。

 逃げ切れるギリギリまで戦い。


 場合に由っては撤退も辞さないとは、やはり変わり者とは名ばかりでない様だ。


「詰まり、色々と気を付けないと、帝国との戦争で上手い事、利用されて大儲けされてしまいますよ。」

「ご注意くださいね。」と笑顔で言う紅葉。


伊達愛海は、死の商人ならぬ、死の領主と言った所だろう。


「良く、そんな人と親友で居られますね・・・・・・」


 諏訪部にそう指摘されると、急に嫌な顔付きに成る紅葉。


「私が親友で居ないと、誰が愛海を止めると思いますか?」


 其処に居る全員が、彼女の考えと同じ答えに至った。

「ああ、そう言う人か」とね。




謁見の間に入ると伊達家の家臣達が畳の上で座って藩主が現れるのを待っていた。

 此処でも半数の重臣が女性だった。


 やがて陣太鼓がドン、ドン、ドン、ドンドンと叩かれ、当主である伊達愛海が現れた。


 竜史はテレビの時代劇で見た光景を目の当たりにしている事を楽しんで居たりする。


 そして、決まり文句の一言が愛海から発せられる。


「一同者、面を上げていいわ。日本国の使者の方々もよ。」


「お久しぶりね。愛海、機嫌が良いようね。」


「ええ、確かに、とても機嫌が良いわ。」


「物凄く気前の良い国から、良い商売と港や街道の改装改築の工事をやって貰ったかしらからね。」


「今度はニホンから何を買おうかしらね。」


諏訪部と外務省の一同は、愛海から睨みと彼女から発せられる、宇宙世紀の新人類が発するプレッシャーの様な威圧感に思わず、誰もが「ひっ」と言ってしまったのであった。

 会うのが初めての面々の日本使節団も、同じく威圧感に似た雰囲気を感じ取り、思わずたじろぐ。


 間違いなく化物みたいな変わり者で有る事は、その彼女から発せられるプレッシャーから感じ取れていた。


「それより紅葉、最近は家に遊びに来ないわね。」

「皇都でも我が領内にも、新年の挨拶くらいしか会えないのは寂しいわ。」


「幼い頃に、一緒に寝て居た時に、確か・・・・・・・」


「ごめんなさい。今は時間が押してるから、日本国の方達との会談を優先させてくれる?」


「ちっ。」


 愛海は一瞬だけ嫌そうな顔して舌打ちをしたのであった。

 竜史は「今ちっ、と言ったよね。言ったよね。」思い。

 竜史は気に成ってチラリと紅葉の横顔を覗くと、美人で大和撫子な感じの表情が真っ青に成って引きつって居たりしていた。


「ちぇっ、分ったわよ。」


更に愛海は、からかう相手である紅葉に対して、玩具にして遊べない事に舌打ちして居たのである。


 諏訪部も二人の掛け合いに、たじろいていた。

 そんなやり取りを仕切り直す様にして、両者は初対面としての挨拶を交わす。


「伊達愛海様。お初にお目に掛かります。日本国外務大臣の諏訪部純二です。」


「諏訪部ね。片隅にでも覚えて置くわ。」


 諏訪部が挨拶をすると興味の無さそうな顔している愛海。


 本当に興味が無いと言った感じて、軽い挨拶程度の会話で済ませてしまう。


「高見竜史です。日本国が異世界転移した事に伴い、多種多様な対応を行う為の省庁である交援大臣をして居ます。」


「ふ~ん。貴方が相談役権雑用大臣ね。」


愛海は立ち上がって珍獣を見るような目でキョロキョロと見ると席に戻り、金ぴかの扇子をバッと開くと、その近くにする紅葉に向かって話しかけた。


「ねぇ紅葉、こんな子が良いの?」


「なっ!?ななななっ!何言ってるのよっ!」


「パッとしないし、平凡だし、それーにーっ!このわたしとは相性最悪の男よね。」


竜史を見た愛海は、自分の思い通りに転ろばない人物だと見抜いて悪態をついていた。


 それに手紙でのやり取りで御告げの件を愛美には伝えて有るのだ。

 愛美は、そんな事情を知って居るので、当然の事ながら紅葉を玩具にしてからかう。


 紅葉は、ハッキリとした事実を竜史には告げて居ないので、動揺して居る事を隠す様にして、話を逸らそうと必死だった。


「いい加減にしなさい。もうっ!お客様で遊ぶのも、その辺にしないさいよね。」


(やっぱり、遊んでたんだ)と竜史は思った。


「はい、はい。分かったわよ。」

「初対面の挨拶が済んだんだから、万代市と藩政関係の内合わせは、お互いの部署関連の部下同士で決めなさい。」

「それ以外は皇都とに着いてからの筈よね。」

「あっ!でも皇都での会談の準備が、まだ掛かるって連絡が来て居たわ。」

「あっ、そうだわ。折角だから諏訪部と竜史、それと位の高い軍人の方々達は、この後わたしの私室に招待するわよ。」

「お茶でもご馳走するわ。」

「では解散っ!」


 愛美がサッと会談の席を終わらせ、一部を残して、伊達家家臣と日本国使節団の官僚や省庁の職員達は、それぞれの仕事の話し合いの為に案内人に連れられて、席を下がって行く。


「私は呼ばないの?」


「言わなくても勝手に来るでしょう?」


ハラハラとした雰囲気が漂う万代国藩主である愛海との会談を終え、日本使節団の主要な面々は、愛海の私室に招待を受ける事になった。

 諏訪部と竜史、今度は何を言われるかとビク付いていた二人であった。

アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月21日・午前10時40分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代市・万代青葉山城・伊達愛海私室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



伊達愛海の私室と言っても、個人的にお客を持て成し、迎える為の部屋である。


 案内された一同は、部屋では円を囲む様にして座っていた。

 右から愛海、紅葉、諏訪部、竜史、羽佐間、家中、池田の7人が座って居る。


 愛海は緑茶と茶菓子の饅頭を出すと、その態度は相変わらずな態度で話を始めた。



「さっきは失礼したわね。」


 ギョッとする紅葉と竜史以外の面々。直に諏訪部が疑問を尋ねた。


「では、さっきのは・・・・・・・」


「勿論、本音も有るけど殆んどが冗談よ。」

 竜史は「本音も有るかよっ」と心の内でツッコミを入れつつ、周囲の者等は、性質の悪い冗談だとも思った。


「重臣達と他所の藩やその他の勢力が送り込んで来ている間者に対する牽制よ。」


「では、この万代藩も割れて居るのですか。」


「いいえ、違うわ。どちらかと言うと、考えが割れて居るのはわたしよ。」


「えっ、愛海様がですか。」と竜史が言う。


「率直に本当の事を言うわね。日本は何処までやってくれるの?」


「何処までと言いますと?」


「諏訪部、中途半端な受け答えはやめなさい。」

「政治家として貴方は、わたしの先輩かも知れないけど、国家首脳関連の執務経験での長さは、わたしの方が先輩よ。」

「地方大名君主の地位は、他国の大臣や地方長官と同じなの。」

「わたしに対して年の功と経験で考えるのは止めてくちょうだい。」


諏訪部は言い返せなかった。


 現在彼女19歳、10年前に彼女の兄であり、先代の万代藩主である伊達政実が戦死して、4年が経ってから伊達当主に成って居る。


 それ以来、万代藩主を務め上げて居るのだから、大した物だと誰しもが言うだろう。

 そんな人物に、日本政府の外務大臣が翻弄されている上に説教して居たりするのだから面白いと言える。

 一方の諏訪部は、25歳で衆院選で国会議員に当選、現在35歳になる。

 議員歴10年目に当たり、外務大臣に成ってから3年目。

 大学出の平民の政治家が帝王学を叩き込まれ、異世界の学業の遅れた学校出身の大名の小娘に風格的な面で威圧され、負けている光景は滑稽だった。


「失礼を致しました。」

「愛海さん、お聞きしたい。我が日本国に何をしろと言うのですか?いや、何を求めているのですか?」


「諏訪部、貴方は愚かではない様ね。」

「貴方の所の部下は、特にからかいがいが有るわ。」

「それでは駄目よ。交渉で相手に簡単に譲歩するようでは、幾ら国力と先進的な技術と文物を持って居ようとも、外交で負けて居ては国家の程度が知れるわよ。」


愛海は、何度か日本の外務省を始めとした各省庁の皇国の対応している担当官僚らと面談をしていた。

 その内の何人かをからって居たのだが、どの官僚も愛海の事をふざけた人物とは言って居ないのである。

 寧ろ、若いのに油断の成らない人物と評している。特に手痛い交渉強いられたのは外務省の者らであった。

万代市の再開発事業での資金面に関してかなりの譲歩させれた日本は、代わりに北方方面の藩主らへの口利きと、万代藩の全土のでの開発の一任を任される事と成った。


「お恥ずかしいです。」


先の部下達がしていた交渉に関して諏訪部は思い出して居た。

 実に日本として弱い外交交渉でもあった。

 頼まれると嫌と言って断れ難い。

 弱みを突かれると、実に弱い国家なのだ。


「まぁ、小娘の説教はこれくらいにしましょうか。」

「日本については親友からの手紙と日本政府からの資料で理解して居るわ。」


「一番に心配なのは、日本国民達の厭戦気分よね。」


今も続く反戦運動。福岡市内を含めて主要な都市では、反対運動が常態化しつつあった。

 事もあろうに帝国との和平をすべきだと言ってる団体もある。

 異世界大戦に半ば巻き込まれているにも関わらず、戦争をやる前から止め様と言ってる国を信用としろ言うのは、無理ではないだろうか。


特に2010年代の安保法制の改正が始まる頃から大学生を中心にして、活発に活動を続けている反戦反政府系団体ピース・シールドの動きは、公安でも神経を尖らせて、危険視して監視している団体でもある。


 初期のメンバーよりも反政府的な反戦活動している派閥が幅を利かせて居るらしく、膨大な寄付金が給料に成りつつ有ってか、当初の反戦を訴えて世の中を良くしようと言う理念は、消えつつあった。

参加している者の中には、子供の養育すら放棄までして居るほど、熱中している人たちも居るらしいとの報告が入っていた。

 近年は、金で集めた浮浪者や金に困った失業者、ヘイト主義者にヤクザと半ぐれ組織の類も入り込んで居るらしい。


 中には赤旗の国や北の某国の工作員に加えて、半島国の南の民族主義団体の黒い影と資金が入り込んできな臭い噂が絶えないらしいとの話だ。


「あなた達の国の思想である民主主義、それを聞いて驚いたわ。」

「王室が権威を振らず、貴族も武士と騎士もいない世界で平民が政治を行い戦争も戦う。」


「古代の世界に有った共和政治体制の国が衰退の一途を辿って消え去り、今や都市国家や商業国家くらいしか、その体制を維持して居ないと言うだけで、今では殆んど有り得ない出来事なのよ。」

「日本国の憲法明記を聞いて、ホンと耳を疑ったわ。」


「そんな法律が機能している状態で、良く前の世界では、他国に喧嘩売られなかったものね。」

「でもこの世界では、平和主義と戦争放棄と専守防衛は幻想よ。」

「その主義を帝国に突きつけたいなら戦いなさい。」


「どんな犠牲者が出て死んだとしても、決して一歩も退かないと言う決死の決意の覚悟が必要よっ!」


 この異世界では、過去に異世界から大規模な国家転移が在ったらしく、民主・共和政治の国家は、後に起きた大規模な戦争の後に、国家の合併と共に政治体制の衰退が在ったと言うのだ。

 その際に民主・共和政治体制と科学技術の殆んどほ失って居たのである。


「それはアメリカ合衆国と言う強力な同盟国と世界中の国々と友好条約を結んだお陰です。」

「これまで戦争を避けて来れたのは、先輩方の外交努力の賜物だと思ってます。」


「それでも国民を無視してでの、政治と戦争を好き勝手に出きません。」


「先の大戦から80年以上が経過し、我が国は今、正に時代の分水路に差し掛かっている事は分って居ます。」

「軍国主義の行き着く先は何も残らない。」

「それが先の戦争からの答えでした。」

「だからこそ、どんな世界でも悲惨な侵略戦争は、即刻終わりにすべきです。」

「そして、多国間の争いは、国家間の話し合いで決着を付ける事と考えて居ます。」


そう、戦争やるのも、止めるのも難しい物だ。

 しかし、ある程度の計画を立てやるのも一つの考え方やり方だと思う。

 無計画に彼方此方に戦争を仕掛けると、今日のアメリカ見たいに四面楚歌に成るし、何の落ち度もない某国に薄汚い手と方便で喧嘩を吹っ掛けた某国の様に手痛い目にだろう。


 今の日本は、自衛隊も防衛省も装備開発生産を担って居る企業らは、何所もちゃんと組織統制が取れて居るし、法律も守っている。


 先の大戦での前後の徹を二度も踏まないと決意して居る日本。

 そして、諏訪部は自分なりの考えと答え言った。それを聞いた愛海は満足した様である。



「わたしはね、引越しの準備前だっのよ。」


  突然、何を言ってるのか思った日本の面々。


「領地を返上して南方の亜人国家郡地域に逃げたいと言う国民を連れてね。」

「有るだけの財を投げ打って逃げる積もりだっのよ。」

「でも、そんな時に貴方達が現れた。」

「鉄の船で現れて港や土地を貸してくれって。」

「それと主上に会わせてくれとね。するとやる事と成す事が全部、全部が無茶苦茶凄いじゃない。」


「だから、此処での席で試したの。」

「貴方達がこの世界全ての国家国民と世界平和を築く為に一緒にやりましょうと言えるかをね。」


「その結果は、如何でしたか?」


「まだまだね。ギリギリのおまけで及第点ね。」


「諏訪部、貴方に問うわ。日本国の代表として反帝国戦線をどう処理するの?」


「万が一、我が国との交渉中か、これから行われるかも知れない国際会議の間に、帝国が戦争を貴国か周辺地域に仕掛けて来たら如何するの?」


「それらの場合は、戦争を仕掛けられた。」

「または仕掛けられそうだと言う状況となった場合は、内閣と国会にて対応を決めますが、外務大臣としては、集団安全保障を説き、国会内で賛同を多く募って、必ず対帝国戦争を承認を成功させる事を努力したいと思います。」

「万が一、政府機能がし難い状態に陥った場合の緊急時には、此処にいる高見竜史交援大臣の最高司令官代理権限にて対処する予定です。」



 愛海は後ろに控える幕僚幹部もに話を振った。


「日本国の将軍らに問いたい。貴官らは命令、もしくは眼前に迫る敵に対してどうするのかしら?」


 愛美の問いかけに羽佐間が代表して答えた。


「我々自衛隊は、勝手な行動は取れませんが、日本国と周辺国とで決められた範囲と自衛隊法に置ける対処範囲で敵勢力を排除します。」


「中々良いわね。日本の将校は出きる人材が多く居そうね。喜多、地図をお願い。」

 
 側に控えていた喜多に、大陸東側の地図を皆の前に広げさせた。


「此処から本題よ。さっきの評定の席では、只の挨拶だけで済ませる積りだったけど、少し前に西方に忍び込ませた間者から繋ぎが有ったわ。」


羽佐間達の表情が変った。その横で家中陸将が愛海に聞いた。


「帝国が動いたのですかな。」


「ええ、流石は陸軍の将軍ね。」

「正確には、これから動くらしいの。」


「先の龍雲海沖での海戦での敗戦のせいらしく。国境での兵の増強と失った軍艦の補強と増強を図って居るらしいわ。」


愛海は更に話を続ける。


「わたしは商売をする傍らに、商人に間者の真似事をさせて居るわ。」

「商人は出入りが自由と言う、この世界の慣例的な国際ルールがあるの。」


「この事に関しては日本は何故と思うでしょうね。」


「その答えは簡単よ。東側勢力と西側勢力には、お互いに欲しい者が有るからよ。」

「東側の交易品として作られて居るのは、茶葉、絹、木綿、麻布、暦酒(日本酒と同じ米酒の名前)、胡椒、香辛料、岩塩、漆器、磁器、陶器、鉄細工、米、大豆、暦式調味料、(味噌や醤油等の加工食品)、薬剤なんかが有るわね。」


「それに対して西側の交易品には、真珠、銀細工、金細工、ガラス製品、絨緞、塩、ワイン、大麦、小麦、麦酒、香料、貝細工、林檎・オレンジ等を含む各種果物、宝石、砂糖、植物油、化粧品等が上げれられるわね。」

「他にも色々と有りそうだけど、取り敢えずはこんな物かしら。」


「この東西貿易の関係が有るお陰で、互いに戦争して居ても、最低限の収入と足りないものが相手国に入る様に成って居るのよ。」

「帝国が自国と他国の商人達の貿易を止めさせないのは、帝国自身が税収と不平等な交易で、自国の利益を得る為なのよ。」



そんな話の最中で諏訪部が、地球でもお馴染みでもある国家の伝家の宝刀たるアレの存在を聞いて見た。


「詰まり、地球世界に有った経済制裁と言う考えが無いのですか。」


「無いわね。そんな方法が出きるなら、やってやりたいけど、帝国の国力と軍事力との差が在る前で、それをやろうと考えた国は居ないわよ。」

「わたしですら考えていないわ。」

「寧ろ、それをやると逆に交易が滞って、こっちの経済がガタガタになる上に、食料自給率の低い地域では、欲しい物が手に入り難く成るから、多くの失業者と餓死者を出してしてしまうのよ。」


  竜史が何気なく言った。


「愛海さん。今し方言われた交易品ですけど、作ろうと思えば、全部を家の国で引き受けますけど、いやつ!寧ろっ!全部作らせて下さいっ!」


「何ですって!?全部ですって!?」


 愛美は竜史が余りにもサラッと重要な事を言ったので、愛海は、間抜けな表情と声を荒げて叫んだのだった。


「はい。」


「海産物や地下採掘物、一部の畑作の作物なんかは、限られた地域しか作れないのよ。」

「特に果物は南方から船を使い。」

「魔導式冷蔵庫で運搬をしないと手に入らないし、時期を逃すと、一年は入荷出きないのよ。」


「やろうと思えばですけど、原料の仕入れも有りますが、生産と加工を含めて全部です。」


「諏訪部、本当なの。」


「嘘は言ってませんよ。農業生産は減ってますが、我が国は一部の作物や加工品を除いて基本的に作れない品物は無いですし。」


「竜史。それじゃ聞くわよ、最も大事な調味料である塩と砂糖は?」


「日本の塩は輸入に殆んど頼ってました。」

「国内の製造方法は海水を直接工場で汲み上げて加熱処理加工をして乾燥させて袋詰めするだけです。」

「その国内生産数は120万t前後らしいですね。」

「1kg約110円くらいで買えますね。」

「ライバルが消えたり、輸入先が途絶えたので、これからは自給しなければいけませんから・・・これからたくさん増産するでしょうね。」


「塩田を使わず、海水を直接加熱するの?」

「しかも価格が一袋1kgで100エイリスううぅぅぅぅっっ!信じられないっ!」

「10キロ買っても1000エイリスよ。塩がこの世界で一袋1kg5000エイリスはするわ。」


「塩田で作った物も美味しいですけどね。」


「僕らが普段使ってる塩は、工業製品であるから、天然の塩と違って塩辛いです。」


「それでも良いわよ。」

「塩田モノも作らないとは言わないわ。」

「寧ろ売る相手を変えるだけよ。国内の料亭や外国の店に売り付ければ良いし。」


「砂糖も輸入に頼ってますよ。でも沖縄県と鹿児島県、南方の離島と北海道で作っていますね。」

「原料はサトウキビとてん菜をブレンド加工したもので、年間100万tは自給しています。」

「お店で買えば1kg一袋で200円くらいで買えますよ。」

「これも輸入が途絶えたので値段が上がるかもしれません。」


「200円? シベリナ連合共通通貨で200エイリスよ。」

「私達が仕入れたら、1kgなんて6000エイリスするわよ。それにてん菜って何?」


「てん菜は白い根菜で主に寒冷地でも育つ作物の事ですよ。」


「農業の連作障害を避ける為にも植えて居ますので、大変にお勧めな作物ですよ。何より砂糖が作れますしね。」


「てん菜ね。全く聞いた事が無いわ。」

「砂糖の原料であるサトウキビは、主に南方や西の暖かい地域でしか取れないからコヨミ皇国やシベリナ地方の各国は、高いお金と物交換の貿易でしか手に入らないのよ。」


「だったら作りませんか?種か苗を用意しますよ。」

「麦や大豆なんかと輪作すれば田畑が荒れずに済みますし、我が国も砂糖の高騰が防げますしね。」


「勿論よ。砂糖が自給できれば、帝国産や帝国勢力産の馬鹿高い砂糖を買わずに済むわ。」


「それどころか庶民達がお菓子を気軽に食べれるわよ。」


因みに日本の一般の人々は、てん菜の生産と存在を余り知られて居ないのと、北海道が日本最大の砂糖の生産地に成って居る事実を殆んど知らない。

 それ故に「へぇー」と言うトリビアな事実だったりする。実の所、サトウキビよりも、てん菜の方が世界各地でたくさん作られて居る定番な農作物だっりする。


 北国では、台風等の自然災害が少ない事も起因して居るからだ。

 更にサトウキビと砂糖の原料の産地のイメージが南国風な離島地域と沖縄と鹿児島県のイメージが強いからである。

 次に竜史が言った事実に、愛海がまた驚いたのは胡椒である。


「胡椒は流石に作れません。」


「そうよね。あれは熱帯地域が主ですもの。」


「ですが輸入先は在りますよ。」


「えっ、在るの?」


「ええ、丁度、異世界に来てしまった国家が3カ国ありまして1200万トンまででしたら作れるようです。」

「加工は現地の会社と我が国の企業が請け負いますので大丈夫です。」


「因みにお幾らなの?」


「僕は100グラムの便詰めしか店先で見た事がありませんが、およそ400円で変えます。」

「これから値が上がるかも知れませんけど。」


「それでも安いわ。胡椒は此方で買うと成ると、同じ量でも5万から10万はするのよ、安くてもね。」

「生産する畑が足りないって言うなら考えがあるわ。南方の亜人国家連合に伝手が有るから後で相談しましょうか?」


その昔ローマ帝国でも胡椒を扱うだけで大金が入るくらい貴重だった。


 胡椒をふんだんに使う肉料理は高級品で贅の極みだとも言われている。

 特に海賊や盗賊の襲われた時にも胡椒を渡すだけで命が助かったらしい。


 中には胡椒を渡さずに金品や商品を渡して身を助ったケチな輩も居たとか。


「なんて事なの。あれ程お金を掛けて買って居る物が半額以下なんて・・・・・・塩や砂糖は、人が生きる上での生命線なのよ。」


「お茶も各種加工を変えれば紅茶も緑茶も作れますし、真珠は養殖をしてます。」


「ええええーっ!お茶も作ってるの? そ、そそそっれに真珠が養殖ううぅぅぅぅぅっ!有り得ないわよ。」


「ああ、そう言えば創業者が言ってましたっけ、この養殖真珠で世界のご婦人たちの首を締め上げるって。」


「締め上げたの?」


「はい。最近は売り上げは落ちて居るらしいですけど。」


「多分、その売り上げは、また上がるわね。」


「詰まり、日本には、私達が・・・・いえ、この世界で高級品や日用品の類は安い値段で売ってくれるのね。」


「そうですね。ですが、生産過剰に成ると国内の余剰分が無いと、日本国民の皆さんが困るので、全部は売れませんけどね。」


愛海は憔悴しきった様子であった。日本の国力の底が見えないと思って溜息を付きながら話を続けた。


「はぁ~、詰まりは、生産場所と原料が欲しいのね。」

「それなら安上がりよ。」

「此方は原料と場所を提供すれば、東側諸国は帝国にぼったくりされずに儲かるばかりか、帝国の売り上げを追い落として経済に大打撃を与えられるわ。


「(ついでに、わたしの伊達商会の売り上げを得られれば一石二鳥よね。うふふふふ・・・・・・・・・・)」


 伊達愛美のその目が、丸で忍者の卵、略して忍○○のお金大好きなドケチ忍者少年みたいに、小判に所か大判の目付きに成っていた愛海である。

この娘は、やはり商人であった。



「愛海、その目、良くないわよ。そろそろ話しを戻してくれない?」



 紅葉に注意され愛海は、慌てて金と商売で、ニヤケた表情を元に直したのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月23日・午前10時30分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本国・九州島地方・福岡県・福岡市・臨時捕虜収容所にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「移転ですか?」

 帝国海軍の指揮官であるアディーレとミルディーナは、法務省と外務省の職員から来月には、福岡市の郊外にある4棟のマンションに周辺の境を大きな壁を囲って仮設の捕虜収容所として使われている施設から移転すると説明をされていた。

 次の移転先として、広島と岡山の間にある備後灘と呼ばれる瀬戸内の海域にある島々を一括りに纏め上げた場所が在る。

 今その島々は、過疎化の影響で人が1人も住んで居らず、完全な無人諸島と成っている諸島が在った。

 人口減少と若者などが中心に都会へと移動して行く。


更に高齢化で徐々に過疎化の進んでる小さな島には、利便性の悪さから人が徐々に消え去っていた。

 無人と成ったせいで、使われなくなった役場関係の建物や数多くの民家が残っていた。

今やその管理が国に委託される始末。

 管理の都合から、それらの諸島を合併区画とし、その名を瀬戸内諸島と命名していた。大小の八つの島からなる群島で、人が去ってから今年で丁度12年。

 島の土地を相続する者は誰も居らず、時より近くの小学校から高校までの学生が何らかの行事で使われたり、夏の間だけ宿泊施設としての利用以外に使い道が無いの所であった。

 政府は此処を捕虜収容所として使う事を閣議で決め、国会でも承認を得ていた。

小笠原の近くにも新たな島が発見され、近々新領土として宣言をする予定で居るのだ。

 其処を捕虜収容所にすると本土からの距離と長く、島の生活維持の為に、多くの予算経費が掛かり過ぎると言う事で、協議の結果、此処に決まったのであった。

「はい。ですので身の回りの荷物が溜まって居ましたら、7日後まで纏めて置いて下さい。来月の1日の午前9時には、この場所を出発しますので・・・・・」

「分かりましました。皆に伝えておきます。」

アディーレとミルディーナの二人は、引越しの準備に入った。荷物はそれほど多くは無いが、最低限に揃えて貰っている日用品と家財道具など、何時でも運べる様にするのであった。


 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月1日・午前9時30分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・日本国・備後灘近海海域付近・瀬戸内海・瀬戸内諸島・捕虜収容所にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 荷物は運び出され、残っている物は日本の有名な引越しアートセンターと言う会社が丁寧に運んでくれるそうだ。


 帝国の軍人らは、用意された大型バスで福岡駅まで移動する。

 警察が厳重な警備をし、報道陣もシャットアウトされ、新幹線で岡山駅まで移動させられると、下車してからまたバスで移動する。

 港に着くと政府がチャーターフェリーに分乗して、海保と陸自の護衛を受けて島に向った。

道中の彼らは、同じように、この地を通り過ぎて行った皇国の姫君と同じ反応をしていた。高速鉄道に地下トンネル、海に架かる巨大な橋を目を丸くして見ていた。

 まぁ、日本の町並みには、大分慣れて来てはいるのだが、それでも新しい物を見た彼らのカルチャーショックは相当なものであった。

「我らは本当にトンでもない国と戦ってしまったのだな。」


「はっ!本国の者達が、次にどんな行動を取るのかが心配で有ります。」


「領地に残った妹達が、何かの騒動に巻き込まければ良いが・・・・・」

 アディーレには妹が3人ほど居る。


 何れもローラーナ帝国の首都である帝都・ローラマ市から付いて来た者達で、彼女の事をとても慕って付いて来て居た。

 帝都の方には、法衣貴族としての役割も在るので、両親と兄の二人が居残って居た。

 アディーレは、大陸の辺境領に残った妹達が帝国の戦争政策に巻き込まれるのを恐れていた。


その事に関して、何も出きないのを悔やんで居るのであった。




 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月14日・午前10時00分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・皇都・星都市・星都城・皇王執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「しかし困ったものだ。」



先月から始まった連日の会議、会議。

 其処では、帝国講和派の提唱する皇国の3姉妹の帝国の有力者への政略婚の話である。

 その事に頭を抱えている力仁は、何か良い手は無いかと苦心していた。


 特に紅葉は、講和派との諍いを起しているし、彼の者らからは国を意のままに出きない厄介な邪魔者としての扱いで、帝国へと厄介払いする積もりなのだ。

 更には、厄介なコヨミ皇族の血の力の力を持っている血筋の直系者を外へと放り出そうとして居た。


力仁は紅葉が我が身を守れる程に腕が立つ事は承知して居るし、いざと成れば日本の保護下に入れば良いと考えていた。


 しかし、下の・・・・紅葉の妹達はそうはいかない。


 長女は何とか言い訳をつけて、実家に居られ様にすれば良いし、何時でも逃げ込む為に、日本がこの世界で困らないように相談役・・・アドバイザーとして日本の影響下のある所へと居ろと言ってある。

 その為にも、紅葉の身を出向の扱いで、今はコヨミ皇国日本使節団として、福岡市に設置されたコヨミ皇国外務連絡事務所に出向させる手続きを済ませ、派遣させていた。


 紅葉自身は、日本政府によって竜史の側に置かれていた。


 日本政府は彼女の扱いに困り、面倒なので交援省の大臣に押し付けていた。

 それも含めて紅葉は、その状況を面白がり、話し相手兼相談相手の竜史をからいながら交流を深めていた。


 しかし、紅葉の下の姉妹達となると嫁か何らかの職に就けなければ、只の部屋住みとして厄介ものだ。

 彼女達が厄介者として扱われば、講和派等の者達は、コヨミ皇室とコヨミ皇国政府に圧力を掛けた上で、帝国への平和の使者を謳い、紅葉の妹達を帝国との非戦の証にと、政略婚を目論む可能性は大いに高いと言えた。


 紅葉の妹らの内、次女の清香は17歳で、黒髪のポニーティルで、ちょと気が強いクールな毒舌さん。「くっ、殺せっ。」と言うセリフが似合いそうな子である。

 三女の麻衣はツインテールで、小悪魔的な性格をしたおませさんで、耳年増の14歳。この二人とも紅葉と違って、並みの兵士より強いが、数に押されて囲まれると遺憾ともし難い。


 悩んでいる力仁の其処へと、彼が結婚前に男して喰われて以来、最も苦手な怖~い奥さんが現れた。


「あなた。」


「ああ、葛葉か。なぁ、清香と麻衣の二人をどうしたら良い。このままでは講和派の提唱する外交政策に使われてしまうかも知れん。」


「そうねぇ・・・・・・・・」


 葛葉が暫く黙り込んだ。先読みの力で、何かを未来の先を事を見ている様だった。


「あなた、お告げの結果が出ましたわ。あの二人の娘達を養子に出してしまいしょう。」



「はぁ?養子だとぉ?」



 奥さんの予知能力と突飛もない発想に驚く所か、呆れてた感じの顔付きをして居る。


「そうよ。どうせならニホンにでも頼みましょうよ。」


「しかしだな、ニホンには預かって貰える様な貴族や良家と言った家柄の家や、友人や知り合いとすら呼べる者すら居ないのだぞ。」

「それに急にそんな話を持ち込まれても、頼む相手やニホン政府にも迷惑だろう。うーむ、取り敢えずだ。お前の予知では、どんな人物がいるのだ?」


「行き先に付いては、複数の可能性が在るので何とも言えませんわね。」

「それでも問題ないと私の先読みの力では出て居ますわ。」

 ハッキリとした人物は分からないらしい。


 引き受けてくれる家が複数ある可能性なので、出きるとしか言えない葛葉。

「う~む。まぁ、大事な娘の為だと言えば、彼の国も相談くらい乗ってくれるだろう。言うだけ行ってみるか。」

「とても良き縁で結ばれているとも出て居ますし、きっと大丈夫よ。」


そんな訳で紅葉の妹の二人を日本の何処の家に養子か、疎開したいので、何とか預けられないかを聞いて見る事にしたのである。

 その翌日、コヨミ皇国の皇都である星都市の東にある日本大使館に、力仁国皇と葛葉皇后の名前で、皇国宰相である四条由美が日本の外務省に皇女である次女と三女の二人娘を養女として預けるか、疎開者とする形で、何処かで預かって貰えないかと、問い合わせたみた。



 すると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うーん。コヨミ皇国の皇女二人を養子か、疎開させらないかだと?」


  総理の安元は、皇国の国皇と皇后から突拍子もない事を言われて、どうして良いのかが分からずに居たのである。

 話している相手は、高橋官房長官と諏訪部外務大臣の二人だった。


 諏訪部は、外交使節団の出発前の忙しい中で、最後の詰めの会議をするべく、首相官邸に来ていた時の事だった。


「安元さん。俺もこの件は、如何するのかの判断に困ります。」


「そりゃ、そうだ。俺だって困る。それにしても、何でまた、養子なんだ?留学や疎開なら理解が出来るんだが・・・・・・・・・」


「諏訪部さんの話を聞く限りでは、政情が良くない上に、皇室や徹底抗戦派閥勢力と敵対する派閥が居る様ですね。」

「国皇としての立場は在りますが、親としては、大事な娘さんを安全な土地へと、逃がしたい様ですね。」


高橋は、一通りの話を聞いた上で、大方の事情を察した様である。


「うーん。でもなぁ・・・・・・・・・」


 其処に諏訪部が更に付け加えて言う。


「先方も養子にしたいのは、何も身勝手な理由で無いようです。」


「それって、あれか、例の力か?」


「それも有ると思います。それは兎も角として、周辺国の王族や諸侯に養子として行かせるには不安が有るのでしょうね。」

「その点、日本なら安全な上に、全てが平民の国である為に、娘達が日本の庶民の家の子として養子出されれば、皇女としての価値が下がると考えた苦肉の策の様ですね。」


「なるほど、別の意味で傷物とする算段ですか?」

「無茶で突拍子も無い発想ですが、良く考えていますね。」


 高橋が納得した顔付きで頷く。


「それに必要な養育費や経費も持つと言って居ます。」

「家も手狭なら建て替えの予算を組むと、これまた親バカ・・・・・・と言うか、娘思いな事で・・・・・・・・」


どうやら力仁国皇と葛葉皇后の二人は、迷惑を掛ける事に成る引取り先に対して迷惑料と娘達に対する為のお金は惜しまない様のであった。


「だが、誰でも良いと言う訳にも行かない。しかも莫大なお金が絡む事柄だ。お金は政府が責任を持って預かるとしてもだ。」

「行き先は俺達の中で、探したほうが良いな。」

「万が一にも養育費をねこばばをされたりしたら大変だっ!!」

「ついこの間のニュースでは、誤入金した地域支援の給付金が、数千万円がネットカジノでスッカラカンにされると言う珍事も起きて居る。」

「預けるなら裏が取れている家柄と信用の措ける人物でないとな。」

「なぁ、高橋、諏訪部。お前達の親戚か閣僚の誰でも、その親戚で良い。受け入れても平気そうな家は在るか?」

「申し訳ありませんが、どの閣僚も年老いた両親がいる位で、とても学生くらいの、それも年頃のお嬢さんを預かれる様な人達は居ませんね。」

「閣僚関係の親戚でも無理かも知れません。俺達も、もう直ぐ60代後半の両親がいますし・・・・」

「だよな。みんなは、もう直ぐ40歳近い者達ばかりだ。とてもお預かりできる家は・・・・・・・・・・」

「家が・・・・・・・」


 安元は何かを忘れている様なと少し言葉を無くす様にして、考えて行く。


「こう成ったら、国内の資産家の家でも当たり・・・・・・・」と高橋が言い掛けた時である。


「あっ、一人だけいたぞっ!」と、暫しの沈黙の後に、安元はハッと気が付く。

3人が皇国の国皇と皇后の無茶な頼みに真剣な表情で悩みながら「うーん。うーん。うーん。」と言いながら眉間に皺を寄せて悩んで居ると、突然、安元が声を上げたのであった。


「そんな人が居ましたっけ?」


「ああ、俺もそんな人物は思い当たらないな。」


高橋と諏訪部の両名は誰なのか分からない様だった。


「居るだろっ!!流石に今回の案件は無茶かも知れんが、彼の家は丁度、子育ても終えたばかりだ。」

「それに迷惑料も含めた多額のお金が支払われる。」

「決して、悪い話では無い筈だ。」


「それって・・・・・」


「まさか・・・・・・」


二人は、流石に此処に来て何所の誰なのかが、ようやく気付いたらしい。 


「取り敢えず連絡をしてみよう。」


 安元は決断すると、手元の電話で電話帳から見つけ出した電話番号に電話を掛けるのであった。


 アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月23日・午前11時00分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・日本国・ 群馬県・霧野市・高見家にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




この日、高見家の側に黒塗りの公用車と引越しのトラックが業者が来ていた。


 竜史の身の回りの荷物と家財の一部を仕事先の福岡市の官庁関係者専用寮に運ぶ為である。

 しかし、当の本人は今日は来ていない。

 この一月ほど、東京と福岡を行ったり来たりとして居るし、最低限の仕事のレクチャーと、挨拶周りに追われていた。

それに紅葉の相手で、視察と称する国内の物見遊山の相手すらさせられて居た。

 内閣のお歴々の面々からは皇女接待、皇女接待と冗談めいた事を言われて若い彼を揶揄って居た。

 何所の職場でも若者は弄られるのは、宿命みたいなものである。

 さて、黒塗りの車で来ていたのは、何と皇女の紅葉であった。


 日本で目立たない様に、東京のデパートで購入した薄い赤い色のスカートと白い上着を着ていた。

 そして、高見家に挨拶に訪れていた。


 訪問がアポ無しの行き成りだったので、紅葉が訪問すると竜史の母親であるすみれは、何も言わずに迎い入れてくれた。

「テレビで見た写真より実物で見る方が、ずっと可愛い子ね。」


高見家の一階の居間で向かい合い、初めて会った二人。

なのに紅葉は、すみれのサッパリとした性格と自由さに、何故か初めて会う気がしないのである。

「えっと、今日お伺いしたのは、霧野織が大変に歴史ある物だと聞いて居たので祖国の役に立てないかと、近くまで立ち寄った事も有りまして、視察の序でに、竜史のお母様に、ご挨拶をと思いまして。」


「でも建前でしょ、それ。」


 笑顔で言い当てられた紅葉は、思わず「えっ」と思ってしまった。丸で母である葛葉と話している感じがしていた。

 
(そうか、お母様と似た性格の方なのね。)


「失礼しました。息子さんを厄介な事に巻き込んでしまった事と、私が胸を張って息子さんをお守りしますと言いたくて・・・・・・」


「ふ~ん。まっ、良いわよ。あの頑固でめんどくさがりのドラ息子を宜しくね。紅葉ちゃん。」

「序でに言うと、あの子の一生なんかの面倒を見てくれると助かるんだけど・・・・・・」

ちゃんづけで呼ぶのは、最初の親友の姉くらいで久方ぶりであった。


 すみれは冗談で一生なんて言ったが、何と無くそんな気がして居たりする。


 この子は近い将来、家に嫁としてやって来そうだなと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「堅い話はもう、良いわ。其れよりも、お昼くらい食べて行ける?」


「はっ、はい。」


「外に居る人達は?」


「護衛の人達は近くの食堂に行きましたわ。」


「そう。多分筒元食堂かしら?じゃ、ふたりで食べましょうか?」


「はい。でっ、できればお手伝いを・・・」


 恥かしそうに昼食の手伝いを申し出た紅葉。


「良いわよ。皇女様でも出来る事をさせるわね。」


「できれば、此方に来た時や、暫く居るので時間の有る時にでも料理を習いたいのですが・・・・・・・・」


「ふーん。」


 すみれは何かを感じ取って居た。


 何かあると・・・・・・でなければ、嫁に来ない赤の他人のお嬢さんが料理を習いたいと言い出す筈がないのだ。

「これからもニホンとは行き来する機会も有りますし、祖国から特別外交官として出向扱いと成ったと父からも手紙で知らせが来ております。」

「騒動に巻き込んだ身としては、良く顔合わせをする竜史に、せめて彼の食べなれた物でも作って上げたらと考えて居ます。」

「故郷の味なら、忙しい彼の力に成れるかも知れませんし・・・・・・」


「そうね、あの子は向こうで、自炊すらせずにロクな食事をしなさそうだしね。」


「良いわよ、貴女に仕込んで置けば、あの子の食事の偏りも防げそうね。」


「はいっ、頑張らせて頂きますっ!」

丸で嫁入りするかの様な意気込みの感じで気合の入る紅葉。


ぱあっと満面の気合の入った笑顔でやる気十分な顔付きをしていた。

其処へ電話が呼び出し音が鳴り響く。


慌ててすみれが出ると安元だと言うのだ

「もしもし、お久し振りです。安元です。すみれさん。」


「はい、安元さんお久し振りですね。あの子は頑張って居ますか?」


「はい。徐々にですが、本人なりに頑張って居ますよ。」


「所で今日は折り入って頼みたい事が有るのですが・・・・・・・・」


急に余所余所しくなる安元。


「何でしょう?」


「実はコヨミ皇国の紅葉皇女殿下の妹君の二人をご養女か疎開先として件を高見家でやって頂きたいと思いまして、お電話した次第でして・・・・・・・・」


「・・・・・養女?流石に私でも、急にそんな話をされてもね。」


「そうでしょう。コヨミ皇国の国皇と皇后のお二人は、是非、日本で頼みたいと言われて居りまして・・・・」

「こんな頼み事は、内閣の閣僚か、その親族ではと、一旦は考えたのですが、どの家も高齢者が多く、唯一、高見君の家がそれに該当すると思い至ったと言う訳でして・・・・・・・」


「ああ、そう言う事ですか?」

「あっ、そうだわ。ちょっと待ってて下さいね。」


「はい。」


 すみれは電話を中断して居間に向った。


「ねぇ、紅葉ちゃん。貴女の妹達が、家の子に養女しませんかって、安元さんが言ってるんだけど、どう思う?」


「えっ?」


流石に優秀な先読みの力を持つ彼女でも、読もうとする気が無ければ、その未来は見えないのだ。


「知らなかった?」


「その事は流石に知りませんでした。多分、お母様が思い付いたのかと・・・・・・」


「なら、問題無いわね。」


「えっ、でもご迷惑では・・・・・」


「困ってるんでしょ、貴女達のご両親は?」


「恐らくは・・・・帝国へ嫁に差し出せって息巻いてる講和派の領主達が居るのが問題かと、私もその対象ですが、長女なので、色々と言い訳が出きますし、でも・・・妹達は・・・・」


「それだけで十分よ。」


 紅葉から聞いた事情を察したすみれは、即決だった。


「もしもし、安元さん、その話をお受けします。」


「ああ、やっぱりダメでしたか・・・・って、えっ?受ける?」


 安元はやっぱりダメだと思い諦めの言葉を言いかけると、お約束の乗り突っ込みの言葉を言ってしまう。


「はい。」


「でしたら、此方で必要な手続きをして置きます。」


「日本に来る期日が決まりましたらお報せします。」


「詳しい事は、決まり次第と言うことで、それでは失礼します。」


受話器を置くとすみれが居間へと戻った。


「あの~」


「気にしないでね。あの子が居なくなって、家も人寂しくなるから丁度良いわよ。」


「済みません。もっと巻き込んでしまって。それと多分ですが、多額のそれも国家予算並みの養育費が支払われると思います。迷惑利用込みで・・・・・・・・」


申し訳なそうに言う紅葉。


「お金持ちね。それって税金なの?」


「いえ、コヨミ皇室で持ってる各種貨幣等に使う鉱山からのお金です。」


「ふーん、まっ、良いわ。それよりも私達、これから家族になるんだから料理をしっかり仕込まないとね。」

「はっ、はい!。」

こうして高見家は、何故だかコヨミ皇国の親戚に成ってしまったのである。


 すみれが受け入れを決めた決定的な理由として、すみれと紅葉の出会いが有った事とすみれが紅葉の事をとても気に入ったからでもあった。

「貴女のお母様とは良い友達に成れそうね。」


「あはは・・・・・」


 不吉な事をサラリと言われた紅葉は冷や汗を掻いていた。


 そして、養女の一件の事を、肝心の竜史は義妹達に出会うまで知らされる事は無かったのであった。

西暦2030年 5月20日・午後・19時20分。



 日本異世界外交大陸調査派遣団は万代城に到着し、万代藩主である伊達愛美と対談したと両国の公文書り記録に残って居ます。



 此処で使節団の女性達は、コヨミ皇国の女性は良く働いて居るのを多く見受けられると関心して居ると口々に話して居ましたが、これは違うと竜史交援省大臣は否定して居ます。



 彼は「もし、就業率が良いなら男性も同じくらい居ないと可笑しいだろう?きっと別の事情が有るんだろうな。」と言い当てる目線は。プロの目線では決して見えて居ない物を見る見る目が在った事を物語る物だと、多くの歴史学者や脳科学者たち等の高い関心ず寄せられて居るエピソードと成って居ます。



 紅葉はその通りだと言われると、それを聞いた日本異世界外交大陸調査派遣団の一行は、とても驚いたと言われて居ます。



 アースティアの国々や多種多様な種族・部族が居る地域では、一夫多妻制を法的に認める事や慣習的な地域も珍しく。



 尚且つアースティア大戦の影響で、600年もの長きに渡り世界各地で戦争が続いたせいも在る事から、世界規模で人口が、かなり偏った形で減って居たと言われて居ます。



 竜史は以下の提案と見解を使節団長だった諏訪部純二外務大臣へと上申したと言われて居ます。





「このアースティアの国々や多種多様な種族・部族が居る地域では、一夫多妻制を法的に認める事や慣習的な地域も珍しくありませんし、王侯貴族から庶民に、亜人種族なども含む慣習的に多婚制度が多いのも事実です。」







「それに加え、戦争が激しさを増すに連れて、人口問題が表面化している手前、一夫多妻と成る家庭も多くなって来ております。」







「好きな男性に10人の女性が結婚を申し込んだり、見合いをした上で数人で結婚して一緒に居る夫婦も、そう珍しくない話なのです。」







「ですので、戦争が終結し、アースティア世界の世界人口が安定する前後の期間の間だけ、どうかこの事実を見逃しは貰えないでしょうか?」





 これが後に異世界特別婚姻法の成立する切っ掛けと成ったと言われて居ます。



 続いて南洋亜人種族居住地域地帯・日本国編入法案に伴う異世界特別風習・慣習・多様性・認可申請提示法へと繋がる事にも成り、また紅葉・竜史の二人は、地球系転移地域での異世界習慣・風習の保護と多重結婚の法案整備にアドバイザーとして関わって行くにも成るのでした。







 後に合法ハーレム国際婚法と多くの物議と討論を呼び、揶揄され続ける事に成る。この制度で誕生した初期カップルの数は数億人単位で増加し、多くの国家で人口増加の一助と成るります。







 アースティア大戦後には、制度の見直しが行われ、一定の人数制限を設けた形で認められるのです。







 そして、この制度やろうと言ってしまった本人が、この数年後に成って、まさか・・・女難の災難が直接本人に降り掛かろうとは夢にも思わなかった苦笑交じりのコメント残しました。







 さて、伊達愛美との対談で話し合われた事は、主にローラーナ帝国に対抗して行くには、如何すれば良いのかと言う議題でした。



 日本国政府からコヨミ皇国へと提案は、地球系転移国家群と貿易・ODA(政府開発援助)を通じての富国強兵政策方針を決定し、推し進めて行く事だと言い。



 コヨミ皇国は、いざという時には援軍要請をお願いしたいと言う意見でまとまったと言います。





 この当時、アースティア世界の東西地域では、東側と西側に措いて異なる産物取引で税収入半分が成り立って居ました。



 東側の産物として、茶葉・絹・木綿・麻布・暦酒(日本酒と同じ米酒の名前)。



 胡椒・香辛料・岩塩・漆器・磁器・陶器・鉄細工・米・大豆・暦式調味料(味噌や醤油等の加工食品)・薬剤





 西側では真珠・銀細工・金細工・ガラス製品・絨緞・塩・ワイン・大麦・小麦・麦酒・香料・貝細工・林檎・オレンジ等を含む各種果物。

 

 宝石・砂糖・植物油・化粧品等が流通されて居たと言います。



 でずがねこれらの産物は場所と技術力が在れば、地球系転移国家地域だけですべてが賄えられると聞かされた愛美は、卒倒する程に驚いたと言うです。



 この日の対談で万代市のその後を決める重要なターニングポイントと成ったのだと愛美は回顧録で語って居ます。

アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月24日・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代市にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


万代市に着いてから4日目。

 遂に皇都からコヨミ皇国政府の使者がやって来ていた。

 同じ頃に日本使節団と自衛隊にも、コヨミ皇国在日本国臨時大使館から無線連絡が入っていた。


 皇都からの連絡を受けた伊達愛海と日本国使節団は、次の日に皇都である星都市に向うのだった。


 再び、自衛隊の長い行列が、万代市内を経由してコヨミ半島の中央の大動脈であるコヨミ中央街道の東の街道、 コヨミ中央東街道を通って西へと向う。


 愛海と万代藩の従者達は、日本側が用意したバスに乗って移動していた。

 これはコヨミ皇国側が騎馬や徒歩で移動し、日本側は公用車と自衛隊の車両と一緒の移動では効率が悪い為である。


万代市から西へ150キロ、其処にコヨミ皇国の皇都である星都市に着いたのは、夕方頃であった。


 皇都に付くと自衛隊は、皇都郊外の日本大使館と併設されている駐屯地に入る。

 ちなみに、この地から50キロ離れた草原に自衛隊の統合航空基地も在るのだ。

 この航空基地は、コヨミ皇国の防空や日本側が必要な物資や人の乗り入れを行う者である。

 戦後は、万代市の自衛隊基地がコヨミ皇国に一部返還され、星都市と並ぶコヨミ国際空港と国連軍の空軍基地とし使われる様に成って行く事に成る。

 これから行われる予定の皇都での謁見に付いては、国皇である力仁国皇の公務と諸侯を集めた御前会議が終わり次第、宮廷から日本大使館に報せが来る予定だった。


力仁国皇が、日本の先遣艦隊が来た直後に、御前会議を召集した。

 会議は紛糾し、コヨミ皇国内では、1ヶ月以上もの間、対帝国と日本との外交を巡って主戦派と講和派が互いを牽制しあう謀略合戦をして居るのだった。


 その御前会議は、日本使節団が来てしまっても続いて居たのであった。


 そして、コヨミ皇国政府が、最終予定日としている5月25日の事である。

 皇都では、連日の会議、会議、会議で疲労困憊の中、遂に国家方針を決める重要な決断を出そうとしていた。


力仁は日本国を迎えるのに必要な万代港の港湾の設備の改修と皇都である星都市まで街道の改修を日本主導で、日本式に行う事を国皇権限で認めると関係各位に通達をしていた。

 そして、国内の講和派と主戦派、それに中立派を集め、国論を纏め様として居るのである。

 序でに不穏な言動や行動の目立つ諸侯を押さえるか拘束する積もりでも居た。

 つまり、この御前会議は、皇国に措ける不穏要素の目立つ人物を一斉掃除する絶好の機会で有るのだ。


そもそもコヨミ皇国の国内が、此処まで会議が拗れるのは、帝国との外交政策に措いてコヨミ皇国内には、二つの勢力が有って、コヨミ皇国は二つに割れていた。

 皇国の西側と最前線の北西に領地を持ち、帝国と貿易を通じて、帝国とは多少の国交の有る講和派の藩主達。

 それに対して東と南、南西と北東に領地があって、帝国に対して誇りと独立を守ろうと言う主戦派の藩主達である。

 しかし、そのどちらにも付かない各地で日和見をしている中立派の藩主も居るが、最近に成って中立派閥の藩主達の風向きが変わりつつあった。


龍雲海沖海戦が起こり、その後、南西国藩主の嶋津義隆と皇女紅葉からの報告で、その存在が明らかと成った国家、そう、異界からの転移してやって来た日本国だ。

 コヨミ皇国の船舶の船足で約5日から7日の距離にある島国は、彼らの想像を遥かに超える超大国であった。

 そして、その異界国家が複数この世界に転移して来ていると言う事実も、更なる衝撃的な事実でもあった。

 コヨミ皇国は、これらの異界国家との国交樹立と軍事同盟の成立は、コヨミ皇国だけでなく、この世界のパワーバランスの有り様を根幹から覆すものであるのは明らかである考えていた。


この事態に慌てたのは、講和派とその筆頭の相州国藩主である北条正成であった。

 彼は兼ねてより、自分の私腹と藩国の利益の為に、帝国との戦を避けるべく動いていた。

講和派の主張はこうだ。「帝国に戦で勝てないのは火を見るより明らかである。ならば、紅葉皇女殿下等、3姉妹を帝国の王子か名のある貴族と婚姻し、姻戚関係を持って穏便に済ませるのが妥当だ。」と正成らは強硬に主張している。


たが、先に供述した通りでもあるが、当の本人である紅葉がこれを大変に嫌がり、政略結婚を言い出した本人を斬り付け、いや、殴り付ける等をした。

 如何なる理由が有ろうと望まぬ結婚を嫌がるのが当たり前であるが、彼女が嫌がる理由は有った。

 それは嫌な噂が絶えない帝国とその王侯貴族らは、他国の全ての身分に関係無く、女性に対して何をして来るのかが分らないからだった。

要するに下種な輩が多いと言われていた。

 それに暦の巫女としての直系の血筋たる紅葉を差し出すのも、国としてコヨミ皇家としても有っては成らない事だし、紅葉は大事な可愛い妹達や、皇族に連なる親族の娘達を生贄の様にして、差し出す等とは言語道断であり、決して許せないと講和派を徹底的にぶちのめしていた。


一方で主戦派は、当初は、足柄一葉を筆頭にして、徹底抗戦だけを主張する猪集団だったが、日本が現れるとそれまで唱えていた戦争一辺倒の政策を転換する。

 そして、日本国の元で交易を通じて彼の地の優れた技術と経済力を吸収しつつ、日本式の軍隊を編制し、帝国と戦おうと言う冷静かつ、理知的な物へと変わって行った。

 それだけではなく、日本国の国防軍である自衛隊なる組織を国内に駐留させ、抑止力とするとある。

 更には、この日本国との関係をシベリナ連合だけでなく、反帝国同盟の全てに拡大としようと言う広大な計画を訴えていた。


これに講和派が真っ向から反対した。「得体の知れない国家に何が出きる。チョッとばかり国力の高そうに見える国ではあるが、軍隊の数が少なすぎるから大した事は無い。」


「全ての国家に対して、ニホンの経済支援を行い、技術を取り入れ、軍隊の庇護下に入る等と言う考えは妄言に過ぎず、貴公らは錯乱して皇国を混乱に陥れ様としている。」

更に付け加えると「我がコヨミ皇国をニホンの傀儡国家にしようと企む奸臣であるっ!恥を知れっ、この痴れ者共っ!」と言って来ていた。


 要するに彼らの持っている自国領地の既得権益や私腹を肥やす事を戦争や他国に侵されたくないのが本音なのであった。


それならば、領土安堵を早期から確約してくれる覇権国家に依存した方が良いと考えて居るのである。

 なのに、日本とか言う何処ぞの馬の骨とも知らぬ輩の国に、自分達の邪魔をされるのは我慢が成らないのであった。


 これに対して主戦派は、日本から送られた分厚い資料を片手に反論をしたのであった。

「講和派の主張している事は根拠が全くない。このニホン国の国内の資料が描かれている物の本は紛れもない事実だ。」

「写真なる絵は精巧な技術で、現実の風景を写し取るカメラなるからくりで採られた絵図は、海の向こう側にあるニホンの姿であり、真実だ。」

「更に紅葉皇女殿下がニホン国の九州島地方を自らの目で視察をされた。」

「殿下が自ら撮影された写真もあり、殿下の書状とニホン政府からの資料は真実である。」

「この事実を噓つき呼ばわりする事は、皇室への不敬であり、講和派は何某かの不都合な事実を隠しているとも見て取れる行為だ。」

「我が国は早急に、この国との国交を結ぶ事を急ぐべきだ。」

「更に皇都には、ニホン国の使節団の先遣隊が既に入国を主上さまご自身が既に、許可をされている。」


「そして、彼らが扱う乗り物や道具の多くは、我が国の兵士や市民らの目に留まり、臣民達は驚きの声を上げている。」

「それに貴様らは、帝国との癒着の噂が囁かれている。奸臣と言うのは、何方の事なのかな。」


お互いの主張を一歩も譲らず、国皇の前で開かれていた御前会議は紛糾し、最後は力仁国皇が臣下の者達の議論をさせて機会を見て自分の意見を言おうとしていた。

 力関係の勢力の弱い講和派が中立派の切り崩しをしようと言う情報が持たされると、御前会議の最終日に成って、臣下達に言ったのである。


「我が娘の忠言を全面的に受け入れる。これまで我が国は、コヨミ皇族のお告げの力に助けられて来た。」

「紅葉の見た未来と、紅葉が視察見聞して来たニホン国の内情は皇国の未来を決める重要な決断に間違いは無いだろう。」


「成らば、ニホン国との国交樹立は正しいと言える。」

「更にニホン国の国力の高さは、紅葉と南西国藩の藩士らの手によって下調べをして来た資料で明らかだ。」


「正成、お主の意見も一理有ると言いたいが、これだけの物的証拠が揃って居るのに、ニホン国が大した国でないと強引に主張を通すのは無理が過ぎるぞっ!」


 賺さず正成は反論をし様とした。


「しかしですぞ、主上さまっ!このままではコヨミ皇国は、ニホンの傀儡国家に成り下が・・・・・・」



「くどいぞっ!下がれ、正成。わたしは既に決めて居る!」

「貴様の今の発言は、帝国の講和を受け入れた時の条件下での我が国の状態を言っているのだぞっ!」

「ニホン国は、民が偽政者を選挙なる方法で決めて居る。」

「彼の国の宰相は、市民から選ばれた元老院議員の中から選出された者だ。」


「それ故に、間違いは余程の事がない限り起こらない。」

「独善的な政治も勝手が出来ない政治体制だ。帝国の体制とは根本的に違うのだぞ。」

「既にわたしは、紅葉を通じてニホン国に、国防軍たる組織である自衛隊の派遣要請を出した。」

「更にニホン国は多数の技術指導者と貿易の基本条約するとも言ってくれている。」


「だから帝国とは一戦を交える所か、帝国が降伏するまで我がコヨミ皇国は一歩も退かぬぞっ!」

「他の講和派の者達も如何なる理由があろうと反対は許さぬ。そこで貴公らに此度の件で申し渡す。」


「帝国との癒着が有るとの噂の絶える事の無い貴公達は、その罪状がハッキリとするまでの間は、皇都の邸宅で謹慎しておれ、貴公ら自領の兵達も自領地へと退かせよ。」

「貴様らの見張りの指揮は近衛隊の加藤清忠と陸軍大将軍補佐の細河夕らの兵の任せる事とする。」 


突然、現れたのは近衛師団長である加藤清忠が率いる近衛隊と細河夕が率いて陸軍大将軍の直属配下の武士や兵士達である。

 控えていた二人と直参の兵士達に囲まれた正成達講和派は、槍や刀に突きつけられた。


 正成を始めとした講和派は、真っ青な顔になり、自分達が進めて来た和平工作(降伏従属条約)の締結計画がご破算と化していた事に成ってしまう。


 それ処か、主上である力仁の怒りを買い、国政に関わる事を禁じられ、会議室から閉め出されてしまった。


力仁は会議が講和派によって荒れる事を予測して居た。

 会議その物を無理やりに中止する動きや武力蜂起によるクーデター等の万が一に備えて、近衛隊で講和派の首魁を取り押さえる算段を付けていた。


 更に日本使節団の護衛と開発支援として来ている自衛隊も、帝国と自国の反乱に対する抑止力として駐留して欲しいと要請を御前会議の最中にコヨミ皇国政府首脳陣と決めて居たのである。

 古来より安定した政権を作るのに話し合いで決まった例は少ないと言える。


 力仁は、この国の王として、覚悟を持ってこの決断を取ったのである。

 だが、皇国内での火種は、まだ鎮火はしていないのである。


 どの世界、どの国でも変革の際は、片方の派閥勢力が反発するのが世の習いだからである。

 かくして一月以上にも及んだコヨミ皇国の日本に対する外交方針は、ようやく決まったのであった。

 だが、この無理やりな鎮圧行為が、後に大きな内乱を呼ぶ事に成る。それはもう少し先の話に成るのだが・・・・・・・・・・・・・・



 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月27日・午前10時00分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・皇都・星都市・星都城・謁見の間にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 5月27日 コヨミ皇国 皇都・星都市



荒れに荒れたコヨミ皇国の御前会議から二日が経過した。コヨミ皇国政府は、慌しく日本使節団との会談の準備を進めていた。


 御前会議の最中も準備は進められて居たが、会談を行うに相応しい内装準備などは、講和派の居る手前では進めらない。


 25日に終わった御前会議の直後から一気に会議場や謁見の間の内装など飾り付けや、段取りの打ち合わせを進める時間が皇国側に必要だった。

27日の午前9時頃、コヨミ皇国の近衛隊の先導の元で、日本国使節団が皇城たる星都城に入城する。

 星都市の名の由来は、星の都と言う意味である。北斗星と南宝星を神の一つとして信仰して居る意味も有るからだった。


 この国は星を神として信仰している。国旗には太陽と月が重なり合い北と南の星を飾った模様をしている。

 星都市は日本の平安京、その手本と成っている中国の古き時代の都である長安の町並みにも似ていた。


 都はコヨミ皇国の本土であるコヨミ半島中央に位置している。

 東西約10キロ、南北10キロ位の広大な平野に位置して作られていた。


 星都城は近い将来、帝国との対峙する時を想定して150年前に、この平野の南に星都山を中心に築城された城である。

 都の市民は、北大路門から入京する見慣れない鉄の車を珍しそうに眺めていた。


 日本使節団は、古の日本や中国の都も、この様な姿をしていたのかと思い珍しがりながら自国と良く似た異世界の半島国家の首都を見ていた。


日本使節団は、この日、護衛である少数の陸自隊員と供に、星都城内の謁見の館へと通された。


 城内風景はまるで日本の江戸時代以降の城か京都御所等の建築物に良く似ていた。


 様々な装飾が施されていて豪華絢爛の美しい建物である。

 謁見の間にて、使節団の一行は着座をする事を許されると、程なくして、ドーン、ドーン、ドーンと言う太鼓の叩く音が城内に響き渡る。

 日本の時代劇で描かれているワンシーン見たいで、彼の暴れまくっている将軍が出てきそうな感じだった。


「力仁国皇陛下のお~な~り。」


従者が国皇の入室を知らせると謁見の間にいる全員が一斉にお辞儀をし、礼を採っていた。



 力仁が謁見の間の一番奥に在る指定の着座位置に座ると使節団に声をかけた。


「良う来られたニホン国の使節団の方々、私がコヨミ皇国の国皇、力仁である。」


「そして、我が家のじゃじゃ馬な娘が大変に世話になった。心より御礼を申し上げる。」


諏訪部外務大臣が一歩前に進み頭を垂れて、日本使節団を代表して挨拶をした。竜史も一つ下がった位置へと後に続いた。


「ご拝謁を賜り光栄の極みです陛下、日本使節団の団長の諏訪部純二で有ります。」


「副団長の高見竜史です。」


「そして、この度のニホン国からの格別のご支援、御礼を国を代表して御礼申し上げる。」


「貴国の天皇陛下と安元宰相殿に良しなにと、お伝え下され。」


「はっ。此方こそ、末長いお付き合いお願い致します。」


 挨拶を終えると国交樹立の議題へと移る。


「それでは国交を樹立する為の提案だが、我がコヨミ皇国からは、次のように提案したいのだ。詳細な説明は宰相の四条由美から説明させよう。」


力仁が右側の位置で着座して控えていた宰相である四条由美を呼び、日本国への要求を改めて説明させる。

 事前に決めている両国の協定と要請内容は、あくまで仮の物である。此処で改めて両国が合意する事で本格的な国交方針が決まるのである。


それと此処で四条由美に付いて少しだけ語って置こう。

 四条由美、コヨミ皇国の古い貴族の出自で、真面目で沈着冷静な性格。眼鏡を掛けたクールな雰囲気のお姉さんである。

 その性格が災いして婚期を逃してい「こほん」あっ、失礼した。誰かに突っ込まれたような?

 それはさて置き。その真っ直ぐな性格から鉄の宰相と言われていて、脅しを掛けた位では、簡単には屈さない人物である。力仁から絶大な信頼を寄せられていた。


「では、ニホンの皆様へ提案させて説明さて頂きます。最初に互いの国家の承認、不可侵条約の締結。」


「但し、日本国からの導入された新技術と乗り物などを含めた物を運用する為の制度と法律の整備に関して、ニホン国からの法律と制度の原案の提案と各種技術指導者の指導と活動は、我が国の主権を侵すには当たらないと解釈します。」


「次に貿易における関税に付いてですが、当面の間、特に我が国が日本の最低水準に達するまで関税等を掛けずに置き、関税が必要と提案された場合は互いの実情に合わせた関税を設けます。」

「これは帝国との戦争で、兵器生産を始めとする各種産業品の生産が過剰になり、日本での生産が間に合わない場合が想定されます。」

「そうなると日本からの良質な輸入品を仕入れている各国と日本が互いに関税を掛けていると生産コストが関税によって過剰に掛ってしまいます。」

「これ等をスムーズとするには、関税を当面の間は撤廃し、互いの国の雇用を促進し、雇用した人達の所得から長期的な所得税を元に、それまで国庫で掛けた資金の元を取ろうと言う提案です。」

「我がコヨミ皇国は、これらの事業を国を挙げて推奨したいと考えて居ます。」


「次に諸外国と仲介に付いても、問題なく進めて行きたい考えて居ます。」

「そして、最後ですが、我がコヨミ皇国及び反帝国勢力に対する軍事協定の取り決めです。」

「本来は軍事同盟と表記したい所ですが、ニホン国の憲法とこの世界に転移して来ている異界国家各国との間には、我々の世界独自の国交と国際協定に批准していない貴国と異界国家群には無理が有ります。」

「其処で二ホン国を中心とした異界国家の国々と反帝国同盟各国との間に、個別軍事協定を結び、当座を凌ぎたいと思います。」


「そして、その間に何らかの形で大きな国際会議の席を設け、其処で本格的な取り決めを決める協議を行いたいと提案致します。」

「ですが、流石にその席を設ける為には、色々と外交上の根回しが必要と成りますので、当面は無理と我が国は見て居ります。」

「この事に関しては、新たな動きが有り次第、改めてご連絡させて頂きます。」


「次に我が皇国からの貴国に要請する軍事協定は、貴国の防衛軍である自衛隊の派遣と駐留、陸・海・空軍基地の提供、戦時における共同戦線、我が国の軍事改革と人材育成、武器と兵器の輸入です。」

「なお武器と兵器に付いてですが旧式な物で構いません。」

「両国の都合が付きやすく、初めてである我が国の将兵でも扱いやすい品物を中心に仕入れて行きます。」

「現行使用している武器や兵器の改良版でも、何でも結構ですので、御一考下さいますようお願い致します。私共からは以上と成ります。」


コヨミ皇国からの提案は終わった。お次は日本の番である。


 コヨミ皇国からの提案は概ね予想通りと思った日本側。提案の説明は諏訪部外務大臣が行う。


「日本国側からの提案は、外務大臣である私から説明させて頂きたいと思います。」

「先ず、国家承認と不可侵条約に付いてですが、問題ないと考えています。」

「次に貿易に付いてですが、政府との協議とお互いの省庁での協議で進めて行きたいと思います。」


「関税に付いても前向きに検討を致したいと思います。」


「それと食料と原材料の輸出に付いても出きる範囲でお願いします。各国との外交における仲介も改めてお願い致したいと思います。」


「最後に安全保障の協定に付いてですが、ご要望通りに自衛隊を派遣致したいと思います。但し、当面の間だけ一定数の部隊を派遣をする予定でおります。」


「特に帝国が周辺地域に、戦争をこれ以上仕掛けて来るまでの間のみとし、それ以外では派遣人数を限定的とします。」

「駐留予定の自衛隊は、日本国外苑地域での専守防衛と事前驚異の除去防衛、大使館と在留民間人の護衛する事を目的とする事を法的な根拠とします。」

「これは今現在日本と帝国が互いに本格的な宣戦布告をしていない事に基づきます。」


「先のあさくら号襲撃事件は、偶発的な国境警備の争い的な延長と言うのが我が国の見解です。」

「まだ、あの時までは、我が国は帝国なる存在を知らなかったと言う事に成って居ます。その認識を貴国にも分かって頂きたいのです。」


「承知致しました諏訪部大臣。貴国は、先の帝国が行った民間船襲撃事件に付いての見解はあくまで戦争に当たらない。」

「あくまで民間船の保護のにおいて発生した偶発的な戦闘と言う事で周辺国に発表する様にと各所と世界各国に伝達します。」


「有難う御座います。四条宰相。」


「議題は以上と成ります主上陛下。」


由美宰相が、力仁国皇に両国の提案の提示が終わったと告げた。


「うむ、後は互いの官僚同士が話し合い細部を詰めて纏めるが良い。」

「最終判断はこの場に居る国家代表同士が確認すればよいが、諏訪部大臣と高見大臣の両名は必要とあらば帰国しても構わない。」

「早急に纏めたいと思うが、両名の判断では勝手に出きないと判断した場合は安元宰相に、案件を諮って貰っても良いぞ。」


「それと頼みたい事が、もう一つ有るのだが・・・・・・・」


「何でしょうか?」


 諏訪部が聞き返す。


「実は国内の諸侯に、貴国の国力と軍事力を疑う者が多い。」

「其処で貴国の実力を我が国の諸侯や臣民、各国の大使らに見せて欲しい。」


「本当の貴国の力を見れば、ニホン国を侮る者らも黙らせる事も容易であろう。」


 竜史が言った。


「実力・・・軍事力ですよね。」


「そうだ。この世界は強い軍隊が無いと舐められるのも仕方の無い事だ。」

「特に見た事も聞いた事も無い異世界の国は、我々に取って謎が多く、知らない事だらけである。」

「無知で有る事は、お互いに不幸な事でもある。」

「其処でだ、貴国の力を我が国の演習場で見せて欲しい。」


「力を示せか・・・諏訪部さん。」


「分かりました。安元総理に連絡を取り、検討したいと思います。」


「あの~諏訪部さん。」


「何だい竜史くん?」


「演習が全て終わったら日本の物産展でもやりましょうか?」


「竜史くん。それはどうしてだい?」


「我が国をより一層、売り込むチャンスかと・・・・・・・・」


「ああ、そうか。我が国の実力が、軍事力だげてなく、優れた品物を作り出すだけの技術力を持って居るとコヨミ皇国の市民と諸外国の大使に知れ渡れば、それはこの異世界での世界市場に対して、一層の売り込みのチャンスと言う訳か。」

「よしっ、政府と経産省に掛け合ってみよう。」


「中々面白そうな事を思い付くではないか。その企画、決まったら知らせて欲しい。」


「それでは、この度の日本国との会談は一先ず終了する。皆の物、大義であった。」



 力仁国皇が退出して行く。

 周りの人達は一斉に礼をして行った。

 事が終わると、由美が諏訪部に近付いて来た。


「諏訪部さん、これからの会議の間、宜しくお願いしますね。」


「はい、此方こそ。」


 諏訪部と由美が握手を交わしていた。諏訪部は彼女の印象を好意的に思っていた。


 四条由美、皇国宰相にして、とても美しいと評判のお肌の曲がり角のにじゅう「死にたいんですか貴方?」えっ!?はい、スミマセンです・・・・・・

 けれど文章の間に突っ込まないでください、はい。


 ととっ、取り敢えずっ!両国の第一回会談は終了した。日本の異世界での波乱の日々は、まだまだ始まったばかりである。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月25日。



 この日、コヨミ皇国の皇都である星都市、星都城ではコヨミ皇国の国家の行く末を決める最後の御前会議が開かれて居ました。



 力仁国皇を前にした主戦派と講和派と言った二大派閥は、激論を交わすこと、一月余り事です。



 遂に最後の結論を出す決定的な出来事は日本国使節団の到着であったと言います。



 この頃のコヨミ皇国は、日本国と地球系転移国家諸国の出現により国内情勢と国論が真っ二つに割れていました。





 主戦派と呼ばれる者達は、ローラーナ帝国の属国か、又は支配下に置かれるの為らば最後の一兵に成るまで戦うと言う物でした。



 コヨミ皇国と皇室に忠義的な派閥で構成される中で、その筆頭人物として名高った足柄一葉を筆頭にして、徹底抗戦だけを主張する猪集団だったが、日本と転移国家諸国が現れると、それまで唱えていた戦争一辺倒の政策を転換する事と成ります。





 この時の力仁国皇は、日本国を迎えるのに必要な万代港の港湾の設備の改修と皇都である星都市まで街道の改修を日本主導で、日本式に行う事を国皇権限で認めると関係各位に通達をして居ました。







 そして、国内の講和派と主戦派、それに中立派を集め、最終的な国論を纏め様とする判断材料とする積りで居たのです。



 それら現実論的に事実を反戦派閥たる講和派に見せ付ける事で、ぐうの音も出させずに、不穏な言動や行動の目立つ諸侯の動きを押さえるか、拘束する積もりでも居たのです。







 つまり、この御前会議は、皇国に措ける不穏要素の目立つ人物を一斉掃除する絶好の機会で有るのだ。











 そもそもコヨミ皇国の国内が、此処まで御前会議が拗れるのは、帝国との外交政策に措いてコヨミ皇国内には、二つの勢力が有って、コヨミ皇国は二つに割れて居るのが原因と言うの先に説明した通りです。







 講和派と言うのは、コヨミ皇国の西側と最前線の北西に領地を持ち、帝国と貿易を通じて、帝国とは多少の国交の有る講和派の藩主達。





 それに対して主戦派と言うのは、東と南、南西と北東に領地があって、帝国に対して誇りと独立を守ろうと言う主張する藩主達の事である。







 しかし、そのどちらにも付かない各地で日和見をしている中立派の藩主も居るが、最近に成って中立派閥の藩主達の風向きが変わりつつ在りました。





 その切っ掛けと成った龍雲海沖海戦が起こり、その後、日本国へと渡った南西国藩主の嶋津義隆と皇女紅葉からの報告で、その実情が明らかに成って行く事により、中立派閥は次第に主戦派と強調体制を取る様に成って行くのです。



 力仁国皇とコヨミ皇国政府は、これらの異界国家との国交樹立と軍事同盟の成立は、コヨミ皇国だけでなく、この世界のパワーバランスの有り様を根幹から覆す事を決めて居ました。





 この事態に慌てたのは、講和派とその筆頭の相州国藩主である北条正成であったと言います。



 彼は兼ねてより、自分の私腹と藩国の利益の為に、帝国との戦を避けるべく動いていた。



 

 講和派の主張は以下の通りでした。



 「帝国に戦で勝てないのは火を見るより明らかである。ならば、紅葉皇女殿下等、3姉妹を帝国の王子か名のある貴族と婚姻し、姻戚関係を持って穏便に済ませるのが妥当だ。」と正成らは強硬に主張して居ました。





 ですが当の本人である紅葉がこれを大変に嫌がり、政略結婚を言い出した本人を斬り付け、いや、殴り付ける等をしたのです。







 如何なる理由が有ろうと望まぬ結婚を嫌がるのが当たり前であるが、彼女が嫌がる理由は有った。







 それは嫌な噂が絶えない帝国とその王侯貴族らは、他国の全ての身分に関係無く、女性に対して何をして来るのかが分らないからだった。



 要するに下種な輩が多いと言われて居たのです。



 それに暦の巫女としての直系の血筋たる紅葉を差し出すのも、国としてコヨミ皇家としても有っては成らない事。



紅 葉は大事な可愛い妹達や、皇族に連なる親族の娘達を生贄の様にして、差し出す等とは言語道断であり、決して許せないと講和派を徹底的にぶちのめしたのでした。





 一方で主戦派は、当初は、足柄一葉を筆頭にして、徹底抗戦だけを主張する猪集団でしたが、日本国が現れると、それまで唱えていた戦争一辺倒の政策を転換する事にしました。







 そして、日本国の元で交易を通じて彼の地の優れた技術と経済力を吸収しつつ、日本式の軍隊を編制し、帝国と戦おうと言う冷静かつ、理知的な物へと変わって行ったと言います。





 それだけではなく、日本国の国防軍である自衛隊なる組織を国内に駐留させ、抑止力とするとまで決めて居ました。



 これに講和派が真っ向から反対しました。



「得体の知れない国家に何が出きる。チョッとばかり国力の高そうに見える国ではあるが、軍隊の数が少なすぎるから大した事は無い。」





「全ての国家に対して、ニホンの経済支援を行い、技術を取り入れ、軍隊の庇護下に入る等と言う考えは妄言に過ぎず、貴公らは錯乱して皇国を混乱に陥れ様としている。」





 更に付け加えると「我がコヨミ皇国をニホンの傀儡国家にしようと企む奸臣であるっ!恥を知れっ、この痴れ者共っ!」と言って居ます。





 要するに彼らの持っている自国領地の既得権益や私腹を肥やす事を戦争や他国に侵されたくないのが本音なのでしょう。



 それならば、領土安堵を早期から確約してくれる覇権国家に依存した方が良いと考えて居るのです。



 そんな理由から日本とか言う何処ぞの馬の骨とも知らぬ輩の国に、自分達の邪魔をされるのは我慢が成らないのであった。





 これに対して主戦派は、日本から送られた分厚い資料を片手に反論をしたのでした。







「講和派の主張している事は根拠が全くない。このニホン国の国内の資料が描かれている物の本は紛れもない事実だ。」







「写真なる絵は精巧な技術で、現実の風景を写し取るカメラなるからくりで採られた絵図は、海の向こう側にあるニホンの姿であり、真実だ。」







「更に紅葉皇女殿下がニホン国の九州島地方を自らの目で視察をされた。殿下が自ら撮影された写真もあり、殿下の書状とニホン政府からの資料は真実である。」







「この事実を噓つき呼ばわりする事は、皇室への不敬であり、講和派は何某かの不都合な事実を隠しているとも見て取れる行為だ。我が国は早急に、この国との国交を結ぶ事を急ぐべきだ。」







「更に皇都には、ニホン国の使節団の先遣隊が既に入国を主上さまご自身が既に、許可をされている。」











「そして、彼らが扱う乗り物や道具の多くは、我が国の兵士や市民らの目に留まり、臣民達は驚きの声を上げている。それに貴様らは、帝国との癒着の噂が囁かれている。奸臣と言うのは、何方の事なのかな。」





 両者はお互いの主張を一歩も譲らず、国皇の前で開かれていた御前会議は紛糾し、最後は力仁国皇が臣下の者達の議論をさせて機会を見て自分の意見を述べました。





 力仁国皇は諜報部の事前の情報から得た話に措いて、力関係の勢力の弱い講和派が中立派の切り崩しをしようと言う情報が持たされる聞き付けると、御前会議の最終日に成って、臣下達に言ったのである。











「我が娘の忠言を全面的に受け入れる。これまで我が国は、コヨミ皇族のお告げの力に助けられて来た。紅葉の見た未来と、紅葉が視察見聞して来たニホン国の内情は皇国の未来を決める重要な決断に間違いは無いだろう。」











「成らば、ニホン国との国交樹立は正しいと言える。更にニホン国の国力の高さは、紅葉と南西国藩の藩士らの手によって下調べをして来た資料で明らかだ。」











「正成、お主の意見も一理有ると言いたいが、これだけの物的証拠が揃っているのにニホン国が大した国でないと強引に主張を通すのは無理が過ぎるぞっ!」











 透かさず正成は、反論をしました。











「しかしですぞ、主上さまっ!このままではコヨミ皇国は、ニホンの傀儡国家に成り下が・・・・・・」





「くどいぞっ!下がれ、正成。わたしは既に決めている!貴様の今の発言は、帝国の講和を受け入れた時の条件下での我が国の状態を言っているのだぞっ!」







「ニホン国は、民が偽政者を選挙なる方法で決めている。彼の国の宰相は、市民から選ばれた元老院議員の中から選出された者だ。」







「それ故に、間違いは余程の事がない限り起こらない。独善的な政治も勝手が出来ない政治体制だ。帝国の体制とは根本的に違うのだぞ。」





「既にわたしは、紅葉を通じてニホン国に、国防軍たる組織である自衛隊の派遣要請を出した。更にニホン国は多数の技術指導者と貿易の基本条約するとも言ってくれている。」











「だから帝国とは一戦を交える所か、帝国が降伏するまで我がコヨミ皇国は一歩も退かぬぞっ!他の講和派の者達も如何なる理由があろうと反対は許さぬ。そこで貴公らに此度の件で申し渡す。」











「帝国との癒着が有るとの噂の絶える事の無い貴公達は、その罪状がハッキリとするまでの間は、皇都の邸宅で謹慎しておれ、貴公ら自領の兵達も自領地へと退かせよ。」







「貴様らの見張りの指揮は近衛隊の加藤清忠と陸軍大将軍補佐の細河夕らの兵の任せる事とする。」 



 この日を境にコヨミ皇国の国論は一つに成り、主戦派は拘束され皇都・星都市内に幽閉される事と成ったのです。



 ですが、これが後にコヨミ皇国の内乱を招く切っ掛けと成った出来事でも在りました。

アースティア暦・1000年・西暦2030年・5月27日



 荒れに荒れたコヨミ皇国の御前会議から二日が経過したコヨミ皇国政府は、慌しく日本使節団との外交会談、後に日暦国交開設外交会談と呼ばれる会談が、コヨミ皇国の皇都・星都市に在る星都城内にて執り行われました。





 実は御前会議の最中内も外交会談の準備は進められて居ましたが、会談を行うに相応しい内装準備などは、講和派の居る手前では進めらません。





 其処で25日の御前会議が終った直後に講和派の取り締まりを一気に終わらせ、それが終わった直後から一気に会議場や謁見の間の内装など飾り付けや、段取りの打ち合わせを進める時間が皇国側に必要でした。



 そして、27日の午前9時頃、コヨミ皇国の近衛隊の先導の元で、日本国使節団が皇城たる星都城に入城を果たしたのです。





 コヨミ皇国の皇都である星都市の名の由来は、星の都と言う意味が有ります。



 その名の意味の由来と成って居るのは、北斗星と南宝星を神の一つとして信仰して居る意味も在るからです。







 この国は星を神として信仰して居り、国旗には太陽と月が重なり合い北と南の星を飾った模様をして居ます。







 そんな星都市は、日本の平安京や平城京と言った街並みと酷似して居り、その手本と成っている中国の古き時代の都である長安の町並みにも似て居ます。



 日本国内の日本史・歴史考古学達は、その星都市モデルとした日本の平安京や平城京と言った街並みの再現CG映像を製作して、当時の面影をこうだったのでは無いかと、参考資料として広く関連研究者たちに向けて開示して居ます。



 また、星都市は今現在でも日本の平安京や平城京と言った街並みが色濃く残ると、日本国内から沢山の観光客で賑わう大都市であり、多数の文化財が残る文化都市として賑わって居ます。







 星都城内では、力仁国皇と日本国使節団一行が対面し、対ローラーナ帝国へとの対応で協力体制を確認し、今後の在り方に付いての話し合いをするとの事で両国の外交交渉がスタートしました。



ですが、力仁国皇が・・・「実は国内の諸侯に、貴国の国力と軍事力を疑う者が多い、其処で貴国の実力を我が国の諸侯や臣民、各国の大使らに見せて欲しい。本当の貴国の力を見れば、ニホン国を侮る者らも黙らせる事も容易であろう。」との話が出て来る事に成ります。



そして力仁国皇の言葉は続きました。



「そうだ。この世界は強い軍隊が無いと舐められるのも仕方の無いことだ。特に見た事も聞いた事も無い異世界の国は、我々に取って謎が多く、知らない事だらけである。無知で有る事は、お互いに不幸でもある。」







「其処でだ、貴国の力を我が国の演習場で見せて欲しい。」











「力を示せか・・・諏訪部さん。」











「分かりました。安元総理に連絡を取り、検討したいと思います。」と諏訪部外務大臣は、日本国政府に持ち帰るとして、その場での返答は差し控える事に成ります。



そんな中で交援省大臣である高見竜史が、咄嗟のアイデアを言い出します。





「あの~諏訪部さん。」











「何だい竜史くん?」











「演習が全て終わったら日本の物産展でもやりましょうか?」











「竜史くん。それはどうしてだい?」











「我が国をより一層、売り込むチャンスかと・・・・・・・・」











「ああ、そうか。我が国の実力が、軍事力だげてなく、優れた品物を作り出すだけの技術力を持って居るとコヨミ皇国の市民と諸外国の大使に知れ渡れば、それはこの異世界での世界市場に対して、一層の売り込みのチャンスと言う訳か。」





「よしっ、政府と経産省に掛け合ってみよう。」











「中々面白そうな事を思い付くではないか。その企画、決まったら知らせて欲しい。」との事に成り、それが何故かアースティア世界の反帝国同盟諸国中立地域諸国にまで広がると、ローラーナ帝国が盟主と成って居る西方バルバッサ帝国同盟と対立又は中立地域の国々が集まる東京サミットへの開催へと繋がり、 やがてはアースティア国際平和維持連合への設置へと繋がって行くのです。