アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後11時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・南西諸島・沖縄諸島・沖縄県・那覇市内郊外にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この日、夜間の当直勤務を終えた航空自衛官の長谷川健児一尉は、二つ年上の早瀬美加一尉と一緒にデートをしながら帰える所だった。
相手の早瀬は空自基地の航空管制官の通信士で、真面目な性格だが気遣いも出来る女性で、頑固な一面をも持ち合わせて居る人物であった。
翌日は非番予定だある為に、やや眠いが空自隊員として忙しい日々を送って居る二人に取って、偶にある休日は貴重なデート時間であり、長谷川はあわよくば早瀬を何方の家に入り込んでそのままベットへと・・・考えていた。
そう二人は、付き合い始めて3年が経とうとして居るのだが、肉体関係はと言うと・・・・・・まだである。
本人達もそろそろ肉体的関係も欲しい所だが、気がつけば口論になり、仕事でのすれ違いも多々あったが、ケンカするほど仲が良く、二人の周囲からは、もう夫婦で良いんじゃないか?と揶揄されて居た。
そんな長谷川は、今日こそはと家に連れ込む決意を固めていた。
そんな二人の出会いは最悪で、早瀬のしっかりした大人びた感じの雰囲気が通信を通じて感じて言った長谷川の一言が「何です?このおばさんっ!」と言う恐れ知らずな一言であった。
当時の長谷川の自衛官としての階級は二尉たったので尚更である。
そして、とうとう、やっとやっと・・・この日がやってきたと長谷川は思って居たのだった。
一方の早瀬も数日前から非番の日や朝からそわそわして居るを見て、ひょっとしてと思って期待していた。
「みっ美加っ!きょっっ!今日さ・・・・家にこなぁ・・」
「えっ?」と赤らめる早瀬。
「ぴーっぴーっぴーっ」と無情にも、二人のスマホが鳴り響く。
ええーーっっ!!何なんだよっ!この空気を読まないオチはっ!!
天は二人をラブコメから大人の世界に連れ込もうとはしないかっ!!
二人は不機嫌な顔してスマホをとる。
手にしたスマホ画面を見ると、先輩であり自養子でも在る神谷一佐の名が出て居る事に、嫌な予感しかなかった。
「よぉっ!健児ぃっ!今日はこれから非番だったな?」
「先輩?・・・・・そうですけど・・・・・・」
電話の主は自衛隊学校時代の先輩の神谷晶一等空佐であった。
パイロットとしての腕が良く、出世しまくって居る空自航空隊のエースで、あの青い彗星と称さる池田秀三空将補の後を継げるかも知れないとの評判が立って居る。
だがしかし、酒癖の悪さとと豪快な性格の性もあって曲者扱いに成って居る人物であった。
一方の早瀬の方には、同僚の小野原一尉から残業扱いで戻れと言う命令が来ていた。
「どうしたぁ、何やら不機嫌そうだな?」
「ああ、そうかっ!そうかっ!早瀬の奴とヤル寸前だったか?そいつは残念だったな?がははははははっ!!」
「せっ、先輩っ!今は酔ってませんよね?」
「バーローっ!!!酒が怖くて戦ができるかっていっ!!!」
「だが、此処は日本だっ!」
「アニメか映画でもない限りそんな非常識ができるかぁっっ!!!」
「其れよりもだっ!ツイさっき家の部隊に、スクランブルが入った。」
「それもマジもマジ、大マジで戦闘付だぞっ!!」
「分かったら、とっと早瀬と基地に帰ってい来いっ!」
「分かりましたよ~」
「あっ!そうそう。」
「見っとも無いから、早瀬の下着姿で鼻を伸ばした顔を治して来いよ。それじゃな健児。がははははははっ!!」
神谷は下品な捨てセリフを最後に電話を切った。
お互いに電話を終えて振り返ると、二人はゲッソリとした顔に成り、ガックリとして肩を落として居た。
「ひょっとして、神谷一佐?」
「そう、ごめん行かなきゃ。」
「絶対に帰って来てね。私まだあなたと・・・・・」
「そっから先はパイロットに取っては、物凄く縁起が良くないから言わないでね。」
「昔からパインサラダと恋人の帰える約束と結婚話は戦闘機パイロットの禁句だからさ。」
「うん。」
「じゃ、もどろっか。」
この二人の結婚と夜の営みは何時に成るのだろうか?
こうして、航空自衛隊那覇基地は戦闘態勢に移行したのである。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後12時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・南西諸島・沖縄諸島・沖縄県・那覇市・航空自衛隊・那覇基地・格納庫内にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
デート先から長谷川健児一尉が大急ぎで那覇基地へと戻り、パイロットスーツに着替えて格納庫に来ると、既に戦闘機のパイロット達が集まって居た所だった。
直ぐに神谷一佐が集合を掛けると、そのままブリフィーングが始まる。
「遅れました。」
「構わんっ!さっさと並べっ!」
「敬礼っ!」
「休めっ!」
「さて、今回は安元総理や小西防衛大臣から直々の命令が出て居る。取り敢えずはこれを見てくれ。」
本来なら危険と判断したなら即断するのが国防組織の使命である。
その国防組織たる我が国の自衛隊は 陸海空の各地方部隊が自己判断の自主出動と言う事態は、他国の制度や体制に世論等の事情とは異なるのだ。
そう、我が国の国民の目はとても厳しく、余り良い体裁では無い為に、素早い対応が迫られ、それに即応対処するべく、日本政府は緊急事態と言う建前を使って即時出撃を決めたらしい。
神谷がパソコンを操作して、隊員達の目の前に用意されて居るスクリーンに映し出したのは、防衛省が今回の一件に伴い、調べられる限りの資料を掻き集める過程で入手した資料である。
其処には那覇基地に送られた民間フェリーあさくら号の写真と詳しい概要の項目とこれまでの経緯が書かれて居た。
「コイツは民間船フェリー・あさくら号だっ!」
「このあさくら号は、一週間も前から突然に行方が分からなく成って居たが、つい最近に成ってから、救難救助要請を寄こして来た。」
「最初にSOSをキャッチしたのは、海保の巡視船だったが、現場に向うのに準備と空きの巡視船を現場に回すのに手間取って3日ほど掛かって居た。」
「そして、ようやく救助が向う事が可能な巡視船が見つかったんだが、今日に成ってあさくら号に向かって来る不審な帆船船団が確認された。」
「あさくら号は現在、異世界転移の影響のせいか、エンジンを損傷して居るが、故障具合は軽微で、応急処置で航行して居る。」
「さて、此処で問題なのは、その帆船船団だっ!」
「帆船船団は、武装して居るらしく。その武装して居る姿をあさくら号の船員が双眼鏡などで確認して居る。」
「武装は西洋風な甲冑姿で、帆船には多数の大砲も在るらしい。」
「最新の情報では、件の船団はあさくら号に接近するなり、行き成り発砲して来たと、先ほどあさくら号から続報での救援要請での通信にて、連絡して来て居る。」
「政府は既にあさくら号の護衛と救助をさせるべく、海自にも臨時の救援艦隊を二日前に結成させて出港させて居る。」
「その二日前に出発して居る護衛艦隊に対して、防衛省は新たに命令変更を伝えた。」
「詰まり、救助から救援に切り替える事と成った。」
「だが、どんなに頑張ったとしてもだ、護衛艦隊が現場への到着には、今暫くの時間が掛かるだろう。」
「俺達の任務は海自の都合次第たが、二通りを想定して居る。」
「一つは俺達が先に突入して武装船団をある程度、黙らせる事と。」
「二つ目は海自の艦隊が間に合い、俺達が支援に回る事だ。以上が今起きて居る状況説明だ。」
「何か質問は有るか?」
「有りません。」
「そうか。奇しくもこれがお前達と俺に取っても初の実戦だっ!」
「気が引ける奴、迷いの有る奴は、今からでも遅くない腹痛でも何でも良いっ!」
「悪い様にはしないから、出撃を止めて置けっ!」
本来ならこんな事を言うのは不味いし、組織的にご法度な事だろう。
神谷は気を利かせて初の実戦前に際して、部下らに出撃拒否の温情かけた積もりだった。
「居ないか?成らばヨシっ!」
「全員搭乗準備に掛かれっ!整備班は念入りに機体を整備をしてくれっ!」
「それでは解散っ!!」
「くくっ、心配は要らない様だったな。」
自衛官の任務とは言え、自衛官らも一人の人間でも有るのだ。
上は総理から下は命令権持った上官等は、人を撃ち殺すと言う命令を部下達に言わなければ為らない。
それも遠距離から・・・・引き金やボタン一つで・・・・ 神谷は隊員らの精神状態を心配しての問い掛けだったが、如何やら要らぬ心配だったらしい。
整備隊員らが整備を終わらせると、トーイングカーでF-15J戦闘機を倉庫から引っ張り出し、全ての機体にパイロットが乗り込む。
第9航空団那覇基地所属のF‐15J戦闘機から成る航空隊は、出動が掛かって居る15機で編制された101小隊・202小隊・303小隊から成る小隊部隊は、正午を回った日差しが強く照り付ける中の滑走路に向って、一機づつ走しり出して行く。
「こちら那覇基地管制塔の小野原一尉です。」
「進路クリア、滑走路の使用を許可します。」
「101小隊、発進どうぞっ!」
「了解っ!サシバ01っ!、神谷晶一佐っ!101小隊っ!出撃するっ!」
神谷一佐と彼が率いる第一小隊は、青い空へとアフターバーナーを勢い良く噴かして大空へと飛び立って行く。
「続いて202小隊、長谷川一尉っ!サシバ02どうぞっ!」
声の主は早瀬一尉である。しっかりとした声で管制官としての役目を果たそうとしているが、少しだけ長谷川の部隊の時だけ声が震えている感じが出ていた。初の実戦に赴く彼が心配で堪らないのだ。
「了解っ!長谷川一尉っ!。202小隊っ!サシバ02発進しますっっ!」
「気をつけて・・・・・・」
早瀬は小さく呟いて、彼の乗るF-15J戦闘機が飛び立つのを見送ったのだった。
続く202小隊の隊員も大空へと出撃して行き、その後に速水勝二尉と303小隊と共に後に続いて出撃して行った。
飛行隊は光り輝く太陽に照らされながら戦い赴いて行くのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月1日・早朝未明・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・ロートレア地方・ドラグナー皇国(おうこく)・首都・新王都・ニューサリヴァン市・ニューサリヴァン港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
此処は日本の沖縄県から南西へ約1300キロ。
台湾から約250キロの位置に在る大陸国家、ドラグナー皇国。
この国は聖なる龍と呼称されて居る聖龍と契約を結び、互いを支え合う聖龍騎士のパートナーとして戦う屈強な騎士達が活躍し、ドラグナー地方と国家を守る国としての名が、諸外国を知られて居た。
この日、帝国東方領土であるシャッポロ領から龍雲海の帝国側領海の警戒をする為に、定期警戒任務に向かう艦隊が来訪して居た。
新王都サリヴァン市・サリヴァン港を訪れたのは、アディーレ・グレッサ辺境侯爵艦隊司令官(少将)が率いるローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊・第120艦隊は、30隻の艦隊と7隻の竜空母艦を率いて、サリヴァン港に寄港して来て居た。
北には龍雲海の内陸海が広がり、シャッポロ領まで広がる景色は絶景で、その名はシャッポロ湾と呼ばれて居た。
良く晴れた日には、対岸であるコヨミ皇国の北西部地方が、良く見える事もあり、稀に蜃気楼も見える事も在った。
港に入港したアディーレら一行は、この国の第一皇女にして姫将軍たるヴァロニカ・サークラ・レアモンの出迎えと歓迎の言葉を受ける。
軽い挨拶を交わした後に、ヴァロニカと別れたアディーレは、警戒任務前に行う為、最後の補給準備に追われて居た。
この国は10年前に帝国に敗戦して属国の扱いを受けて居る。
そして、現在は従属同盟に格上げこそ、されては居る物の、従属国と変わらぬ尚も酷い扱いを強いられて居た。
港の半分や旧都、更に国内には帝国軍の軍事要塞や軍事施設が多く在り、ドラグナー皇国は自国内では、帝国に由って如何なる施設をも、好き勝手に建てられ事を強いられて居るのであった。
その姿は丸でガン細胞に蝕まれた病人とも言えるだろう。
帝国に成すが儘にされ、国内の統治が立ち行かなく成れば、その国は必然的に帝国に飲まれてしまう定めだ。
王族の断絶、王族の親族としての同族化、そして国家破綻等がそれに当たる。
況してや国内反乱や内戦などをすれば、それを理由にして帝国軍が派兵され、完全に乗っ取られてしまう事すら有るのだから厄介な事この上ない。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午前9時00分・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・ロートレア地方・ドラグナー皇国(おうこく)・首都・新王都・ニューサリヴァン市・ニューサリヴァン港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全ての準備が間も無く完了しようとしていた。
ベン・ジョンソンと言うこの艦隊の副司令官を勤める男が、アディーレが居る部屋へと入り、全ての準備の進捗状況を報告をしにやって来ていた。
「侯爵閣下、間も無く出港準備が整いますぞっ!」
「分かった。」
静に返事をしたアディーレは、サリヴァン港の一番に良い区画を陣取って居る帝国海軍基地庁舎の一室に在るベランダから、出港準備に追われる海軍仕官達の作業の様子を見て居た。
其処から見える景色には、ベランダから直ぐ目の前に港の船着場が広がって居る。
地面を石畳みで綺麗に整えられた港を、海軍兵士と本国と属領徴兵された作業員や現地で雇われたドラグナー皇国の作業員が忙しなく動いて居た。
50メートルある戦列艦の木造船と150メートルは在ろうと言う7隻の竜空母艦には、古の昔からワイバーンと呼ばれる騎乗する為に飼育された飛竜が積み込まれて居る。
アディーレの艦隊がこの港に立ち寄り、敵との遭遇に備えて、多くの必要な補給物資を欲して居た。
如何やらアディーレの艦隊は、母港であるシャッポロ領での補充する分の補給物資の調達が、上手くい行かなかったからだ。
特に食料関係で、帝国のどの戦線にも潤沢に有る戦略的物資だが、どの軍属や軍団に艦隊等は物資の独り占めをしたがる輩は少なくない。
下級将校の一人であるアディーレも、そんな出世競争と手柄の奪い合いの争いに苦慮して居る人物の一人だ。
そんな訳で、比較的補給物資の手に入り易いドラグナー皇国に配備されて居た物資で賄われる事と成った。
この世界での水上・海上・大河で戦艦を用いての戦争は、船数と大砲に弓矢に魔導師などの射撃武器と大砲を含めた大型兵器。
そして、竜と言う飼育された家畜兵器を多く揃えられるかに掛かって居る。
定期警戒任務とは言え、かなりの量の矢と砲弾、水と食料を積み込んでいく。
中には予備の槍や剣、弓の入った箱も見受けれられて居た。
最後に最低限の船の補修材も積み込み終えると、いよいよ出港である。
「出港よーいっ!」
「海竜を港から出させろおおおぉぉぉーーーっ!!!」
海竜とは海に生息する竜で、正式名称の名前はシードラゴンと言う。
その姿は真っ青で首長竜に似ていた。
更に首長で翼を広げた蒼色の竜、ハイ・シードラゴンの二種類が居る。
船を引っ張って曳航させるに使うのはシードラゴンである。
その泣き声は、イルカに近い鳴き声をして居た。
港には寄港用と曳航用の2使用目的のシードラゴンが配備されて居る。
艦隊の船は全長が約20メートル前後のシードラゴンに曳航され、龍雲海へと赴くローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊第120艦隊。
7隻の竜空母艦隊は、その船体の大きさからシードラゴンを1頭に曳航されながら航行している。
「全艦隊、艦隊陣形を整え終わりましたっ!」
アディーレは副官の女性騎士に報告を受け、出港の号令を言った。
「全艦隊っ!龍雲海に向けて全速前進いいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーんんっ!!!」
「了解っ!!全艦隊、龍雲海に向けて全速前進いいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーんんっ!!!」
各艦の艦長も出港の号令を下した。
出港準備と成った帝国艦隊は、龍雲海に向けて出撃して行ったのである。
アディーレはこの出来事が切っ掛けで、彼女の人生を左右する動乱のへと巻き込まれてしまうのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午前11時00分・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・龍雲海・ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊 旗艦バローナ号船内にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午前9時に出発したローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊は、龍雲海の名前が指し示す通り、霧が発生する中を羅針盤と船乗りの経験を頼りに、大海原を突き進んでいた。
龍雲海の霧は昼でも濃い霧が出る事も在る海域だ。
その厄介な海域を警戒監視をしなければ為らないローラーナ帝国海軍は、稀に起きるコヨミ皇国との遭遇戦を警戒して居た。
「くっ、相変わらず春先の龍雲海は霧が濃いな。」
艦隊を指揮している女性の紹介がまだであったので、此処で紹介して置こう。
彼女の名はアディーレ・グレッサ。
ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊の第120艦隊司令官である。
ロングの赤髪を海風が翻りながら指揮を取る姿と帝国にしては珍しい誠実で実直な性格で有る人柄。
その人柄で在るが故に、指揮下に在る部下達からの信頼は、とても厚い人物で知られて居る。
「侯爵閣下っ!大自然を相手に文句を言っても仕方の無い事です。」
副官の女性騎士も濃い霧を忌々しく思って居る様だった。
時間が経ち、日が大分昇った、お昼である正午を前にした時だった。
ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊の視界を遮って居た霧が晴れ始めて来る。
「おお、これは運が良いな。段々と霧が晴れて来たぞっ!!」
「者共っ!周囲の警戒を厳にせよっ!!」
各艦の見張りの兵士らと数の少ない望遠鏡を片手に見る航海士と騎士らは、目を凝らして全ての方角に異常が無いかを探った。
この龍雲海では、霧が発生する事が多い為、出会い頭の遭遇戦も珍しくないのである。
艦隊は縦三列の従陣を敷いて居る。
先頭から10隻つづ戦艦で固められ、後方に竜空母艦を配置して居た。
それぞれの列の中央には旗艦が航行して居り、バローナ号は中央の艦隊に位置されて居る。
「ベンジョンさまっ!!」
「哨戒に出ていた飛竜隊の竜騎士からの報告で有りますっ!」
「東北の方角に見た事も無い船体の姿をした大きな鉄船を発見したとの事ですっ!」
伝令の兵士が報告を副司令官たるベン・ジョンソンに伝えに来ていた。
「だーかーらーっ!!私の名はベン・ジョンソンと言っているだろうがっ!!!」
「何度言えば分かるのだっ!お前達はっ!!」
「はっ、申し訳ありません。ベンジョンさまっ!!」と部下はわざと言って居るかと突っ込みを入れてしまい兼ねない漫才染みた返答をしてしまって居る。
「くううううっっっ!!ぐぬぬぬぬぬぬっ!!!」とこの兵士は、ワザと言っているのだろうか? とか思ってしまうベンジョンは唸り声を上げてしまう。
さて、何時も何時も名前を他者からベンジョンと言う風に、名前を間違えられて居るこの男に付いても解説して置こう。
見るからに無駄に鼻の下に伸びきったカール状の髭とアゴ下の髭を髭を生やしていて、それを海風に靡かせながら、とてもお金の掛かった軍服を来て居る典型的なギャグマンガの様なキャラクター染みた風貌の顔付き。
胸には貢いで手にしたであろう煌びやかな勲章が付けられて居るこの男は、成金で成り上がりの副司令官ベン・ジョンソン男爵。
身分の上下を問うわずに、良く名前をベンジョンと間違えられる不憫で、しかもやられ悪役の定形の見本みたいな感じの男である。
しかも、笑えるのか厄介なのかは分からないが、しぶといと言うスキル持ちだったりする。
彼の副官として控えて居るのは、冴えない感じの男で、これまたギャグ漫画に出てくる様な風貌の顔付き。
その風貌は見たまんまの使い走りみたいな男で、第一艦隊旗艦のバレーティアン号艦長のツカイ・パシリ大佐。
丸で物語冒頭部分の第一回に登場するやられキャラクター様な三人と多数の指揮官の下で37隻の艦隊は動いて居るのである。
「それは兎も角。(良くないが今は任務が優先だ。)」
「アディーレ閣下には、この事を伝えたのか?」
「はっ!既に伝令の飛竜を飛ばして有ります!!」
一方のバローナ号のアディーレは、ベンジョンからの伝令の報せを聞き付けて、自身の飛竜隊にも、発見したと言う鉄船に向けて哨戒偵察をさせていた。
件の謎の鉄船こと、あさくら号の様子を哨戒偵察した竜騎士は、その巨大な鉄船を見て驚きを隠せない様子であった。
「確かに、ベンジョンさまの仰られた通りの報告だな。」
あ~あ~、此処でも下級の仕官にベンジョンって言われる。
「隊長殿、此処は本隊へと一旦報告に戻りましょう。」
「あの船が民間船であれ、軍用であれ、我が艦隊が仕掛ければ、相手側からも大砲か弓矢での応戦は有り得ると思われます。」
「そうだな。良しっ!!各員っ!!一旦下がるぞおおぉぉぉーーーーっ!!!」
隊長の号令の下、5騎の飛竜隊は艦隊へと帰還する。
昔の地球でも、この異世界でも商船は大砲や傭兵を雇って航路での安全を確保するのが当たり前である。
そんな常識が有る為か、竜史があさくら号船員達を説得力した事によりあさくら号は、偶然にも飛竜隊の空襲を避ける事が出きたのであった。
飛竜隊がバローナ号に戻ると、ベンジョンが戦闘前のミーティング会議の為に飛竜に乗ってバローナ号を訪れていた。
「これはベンジョンさま。」
飛竜隊の隊長が帝国式の敬礼を取る。
だがしかし・・・・・ベンジョンは、名前を間違えた隊長を怒鳴りつけた。
「だ~か~ら~、私はっ、ベン・ジョン・・・・」と言い掛ける
「ベンジョ、済まないが後にしてくれないか?大尉、報告を頼む。」
「ぐぬぬぬぬぬぬっ!!」
ぷぷぷっ、今度はベン・ジョンで名前が切れて居る。
こう言うやり取りのせいで、すっかり彼の名前がベンジョ成ってしまうとか、言い辛い事も有るとか無いとか。
「はっ!ご報告を致しますっ!!」
「この先を航行して居るのは巨大な鉄船で間違い有りませんっ!!」
「なお、彼の鉄船の国籍が分かる旗等は不明で、ハッキリして居ませんっ!!」
「国旗に見える様な旗は掲げられて居ますが、旗には白地に赤丸で描かれて居り、そんな旗を掲げて居る国はこの世界の何所にも在りません。」
「ですが、船体にはコヨミ文字が書かれて居りました。」
コヨミ文字とはコヨミ皇国の文字で、日本語と同じ言語の事である。
「そうか。」
「しかし、我が帝国でも、大国に当たる他国でもすらも、巨大な鉄の船が新たに建造された話は聞いた事も無い。」
「となると、南方の亜人連合が極秘裏に建造でもしていのか、はたまたシベリナ連合が合同で全く新しい船を建造したのか・・・・・・」
「何れにしても疑問が残るが、どの道民間船の可能性は低いな。」
「此処は臨検して、敵勢力側であり尚且つ軍艦に適して居た場合は、接収も考えるべきだろう。」
「何所の組織か国かは知らないが、国籍がコヨミ文字。」
「通称暦文字と呼ばれるコヨミ皇国の文字を使用して居るのは、我が帝国の属国であるドラグナー皇国や敵方のシベリナ連合との関わりが有る国だろう。」
「その状況から考えれらるとするならば、敵国の可能性が極めて高いと思われるな。」
「ベンジョっ!貴様はどう思うか?」
「(くそっ、高が帝国の名のある格式高い貴族の出の小娘の癖にっ!!この俺の名前をベンジョンなどと真顔で間違って呼びおってからにっ!!ぐぬぬぬぬぬぬぬっっ!!!!)
「ベンジョっ!!おいっ!!ベンジョっ!!聞いて居るのか?」
「はっ!ですからっ侯爵閣下っ!!私はの名はベン・ジョンソンとっ!!」
等々呼ばれる名前がベンジョ扱いで定着しちゃった。
可哀そうに、実に笑える話だ。
「それは良いから、件の鉄船の事を貴様は、どう思うか?」
「(ぐぬぬぬっ!!此処は仕事を優先、優先。我慢、我慢っと・・・)」
「見慣れぬ船ならば、このまま乗り込んで取り押さえた方が手っ取り早いかと・・・・・・・・・・」
怒り心頭で沸騰しそうな真っ赤な顔に成りそうなのを必死に抑えるベンジョ、いやいや、ベン・ジョンソン。
「決まりだな。全艦隊に告げるっ!!全艦は帆をいっぱいに張り、全速前進せよっ!!」
「はっ!全艦っ!全速前進しますっ!!!全員配置に付けええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!」
「鐘を鳴らせっ!角笛を吹き鳴らせええええええぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!いっぱに帆を張れええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!全速前進せよおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!」
カンカンっ!!!カンカンっ!!!カンカンっ!!!カンカンっ!!!と銅鐘が鳴り響き、竜の角で作られた角笛が吹き鳴らせされた。
これが、この世界での戦闘開始の合図だった。
コヨミ皇国では、銅鑼と法螺貝を使う独特な戦闘開始の合図も有る。
だが、この世界での一般的な物は前者と成るだろう。
こうして、ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊・第120艦隊は、戦闘態勢へと移行して行くのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午前11時30分・龍雲海・ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊・旗艦バローナ号船内にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
艦隊司令アディーレとの会議で、ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊・第120艦隊は、未確認船舶への戦闘を仕掛ける事に成ると決まり、バレーティアン号へと急ぎ戻ったベンジョンは、直営指揮下に在るツカイ・パシリ大佐に第一艦隊の全速前進を命じた。
ツカイ・パシリは、ベンジョンに通称パシリと呼ばれていた。
そのパシリは、何故か何時も無茶を言う上司の下に付く事に成ると言う不運な目に遭う事で、物凄い有名な人物でも在ったりする。
中でもベンジョンとは良く組まされている不幸な男であった。
特に今回の任務はパシリの危機感知センサーと言うべき長年の経験から来る直感が、己に嫌な予感たる危険サインを告げていた。
「ううっ、何か嫌~な予感がする様な気がするな。こう言う時に限って死にそうな目に遭うんだよなぁ~」と独り言を呟くパシリ。
その予感は間もなく的中するのであった。
ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊の37隻は、あさくら号を拿捕しようと航路を東に向けながら帆に風を一杯に張って全速力で向っていた。
木造式型帝国軍用船で在れば、最大大きさは50メートルほど在れば良い方である。
地球では貨物船は最大で500メートル前後、最小で70メートル前後である。
5倍もの大きさを誇る鉄船は、帝国に取って有り得ない代物だった。
また、後続の全長が120メートルもの長さの有る7隻の竜空母艦や150メートルくらいの巨大を誇る古代技術で作られた陸上魔導戦艦。
通称名を空挺と呼ばれる魔導空挺戦艦にも似たようなサイズな為か、帝国軍に取って300メートルは在ると言うあさくら号は物珍しい物に写ったのだろう。
そして、あさくら号に近付いた帝国海軍の右側の第三艦隊は、先頭の戦艦の艦首甲板に設置されて居る火薬式の大砲が発砲を開始。
それが龍雲海沖海戦の戦端を開く合図と成った。
アディーレ率いる第二艦隊は、船足を一時的に落として艦隊を分離し、あさくら号の左側に回って砲撃を開始。
ベンジョンが指揮する第一艦隊に7隻の竜空母艦の指揮権が預けられ、艦隊の目となり周囲を警戒しつつ、第120艦隊の護衛を行うのである。
「第二艦隊っ!第三艦隊っ!砲撃始めえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」
「全艦隊っ!砲撃始めっ!!撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」
帝国艦隊の砲撃が始まる。
あさくら号は、行き成りの問答無用の砲撃に驚いて万が一に備え、エンジンを応急修理を終わらせる事に成功した事が幸いして、直に船を出す事が出来たのである。
鉄船ことあさくら号を帝国海軍が追いかけて約2時間が経過して居た。
帝国戦艦の艦隊は風向きが悪い為、船内の兵士に命じてオールを使いつつ、全力で船を漕がせて居た。
だが、帝国が誇る大砲でも鉄船を側面の装甲を打ち破る事が叶わなかった。
一部ではあるが、帝国でもとても高等な技術で高価なガラスと思われる窓の破壊を確認している。
100発近い砲弾を撃ち込んでは居るが、鉄船は一向に降伏の気配が全く無い。
それ所か何かを待って居る気配があり、時間稼ぎをするかの様にして、兎に角逃げ惑って居る様子である。
「「「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!」」」し大砲が次々と撃ち放たれて居た。
アディーレは、此処までされれば、大概の船乗りは降伏し、金品を渡して命乞いをする姿を何度も目にして来た。
それが頑丈な鉄の船の作りに自信が有るのかと、相手の真意が分からずに居た。
「変だ。此処まで追い詰められば、大抵の者は心が折れる物だ。何故だ?」
「蛮族のにしては、少々頑丈な船のようですが、なぁに、その内に降伏するでしょう。」
側に居る将校の一人が長年に渡る経験則から私見を述べて居た。
彼は帝国選民主義者の様で、他国や先住民、他種族を下に見る傾向が強い物達の一人であった。
「ぐぬぬぬぬっ!!中々船が落ちんなっ!くそっ!相手の出方が分からん今は拿捕する為に飛竜隊が使えんっ!!」
「だが彼の船には、自衛の為に必要な武器や兵器が詰まれて居ない様子。ベンジョさ・・・」
「・・・・・・・・」と無言のままギロリとパシリを睨むベンジョン。
パシリが、ベンジョンの名前を無意識に間違えそうになると、鬼の形相で彼を睨み付けて来た
「ベン・ジョンソン様っ!此処は飛竜隊を使って兵を直接乗り込ませては如何でしょうか?」
するとパシリは慌てて名前を言い直し、機嫌を取りながら意見具申をしようとするのだった。
「おおっ、貴様にしては中々の思い付きだな。早速、アディーレ閣下に具申して見よう。」
(はぁ~、どうして何時もこう、私は使える主や上司に恵まれないんだろう?)
パシリは、小さな声で愚痴を零して居た。
其処へ・・・・・・・・・・・・・・
「何か言ったか?」
「いいえ、それよりも急ぎませんと何が起こるか、分かりません。」
「おおっ、そうだったな。」
単純なお人だなと思いつつ、その場を誤魔化すパシリ。
ベンジョンは、パシリ作戦の実行の許可を取り付けるべくアディーレに、伝令の飛竜を飛ばしたのである。
「何?飛竜隊に、少数の兵を運ばせての船の制圧戦だと?」
「はっ、偵察の飛竜でも武装はしていない可能性が高いとの事であります。」
「それは確かなのか?」
「内部までは分かり兼ねますが、反撃するなら既にされて居る筈だと『ベン・ジョンソン様』が申されております。」
どうやら出発前にハッキリと正しい名前を強調する様にと、この伝令官は言われたらしい。
「良しっ、その作戦の許可をする。」
「了解しました。」
伝令官は、再び飛竜に跨るとバレーティアン号に戻り作戦許可を伝えた。
同じくアディーレも自分の指揮下に有る艦隊に制圧部隊の編制と飛竜を飛ばす準備を命じたのである。
其処へ東からある意味、見慣れた船の一団が現れたのである。
「報告っ!コヨミ皇国の水軍らしき軍船艦隊が、此方に向って来ますっ!」
アディーレとベンジョンの下に新手の敵が現れたとの報告があがる。
「くっ、忌々しいコヨミの猪武者共か。」
「旗は嶋津の掛け十字の旗と真紅の三日月国旗のコヨミ国旗っ!」
「更にコヨミ国旗に真紅の桐の模様が在りますっ!全軍の指揮を執って居るのは、コヨミ皇国・第一皇女のクレハ皇女の物と思われます。」
「面倒なコヨミの小娘がしゃしゃり出て来たかっ?!」
「何時もっ!何時もっ!コヨミの巫女姫は、栄えある我が帝国覇業の邪魔ばかりしおってからにっ!!ぐぬぬぬぬぬぬぬっ!!」
ズド~ンと言う轟音が聞えて来た。
コヨミ水軍は、帝国海軍の武威なんてお構いなしで大砲を撃って来た。
紅葉は幾つか前線への視察と言う名の国皇代理として最前線の戦場や国境近くに赴いた事があり、何れの戦地で紛争に発展するが、彼女が指揮を執り、奮戦すると全ての戦に勝利すると言う才を諸国に見せ付けた。
そんな訳で、其れなりに紅葉の名はじゃじゃ馬娘として名が帝国や周辺諸国にま轟いて居たりするのだった。
それでも、冷静に対処すれば30隻いる帝国海軍が優勢なのは間違いない。
だが、紅葉にはコヨミ皇族の女系に脈々と受け継がれて来ている不思議な力である星読みの力が有る。
その力のお陰で、彼女は如何なる戦でも滅多な事では負けが無い。
それが運命と言う定めでは無い限りは・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う、うっ、撃って来ましたよっ!」
恐れをしらないコヨミ武士の行動に動揺するパシリ。
「うぬぬぬぬぬぬっ!!小生意気な小国の小娘癖にっ!!」
「我ら帝国に逆らったら、どうなるか思い知らせてやるっ!!!」
苛立ちの余りに、周りの者達に当り散らすベン・ジョンソンは、コヨミ水軍をどう対処するのか思案を巡らせ様とした時だった。
伝令の竜騎兵の騎士が彼の前に現れた。
「申し上げます。南西方向から見慣れぬ艦隊を確認したとアディーレ司令官からの通達です。」
「何だと?」
遠く東側の水平線の彼方から、ボオオオォォォォォーーーっと言う汽笛の音が聞えて来た。
遂にあさくら号が待ちに待って居た、救援の海上自衛隊の到着だった。
物凄い勢いで帝国艦隊の第二艦隊の真横に付けて来る。
海自艦隊は、哨戒ヘリの報告で帆船船団があさくら号に攻撃を仕掛けて居る姿を発見し、その報告が為されると、艦隊を南西方向から北上させる形に航路を取った。
少し遠回りをするが、最早、武装帆船船団と認定した船団への攻撃態勢を整える為に必要な事だった。
海自艦隊は、アディーレが率いる帝国艦隊に気付かれずに真後ろから迫る形で艦隊の横に付けて行く。
「ええいっ!伝令で伝えいっ!制圧作戦の中止っ!」
「竜空母艦と各艦に搭載してある飛竜隊発艦させろっ!手始めに新たに現れた見慣れぬ艦隊を血祭りに上げろとな。」
「男爵さまっ!アディーレ閣下には何も言わないのですか?」
「それくらいの事は分かっておるわっ!」
「アディーレ閣下にはご自身は艦隊に対して水上戦闘命令を発して貰い。」
「残る第3艦隊には、引き続きあの鉄船への攻撃を続けるように申しあげろっ!急げえええぇぇぇーーっ!」
「ははっ!!」
最高指揮官を前線に立たせるなんて非常識も良い所だが、この場合は仕方の無い事だった。
伝令達は各々の飛竜にまたがり各艦へと向って行く。
同時に帝国海軍は新たに現れた謎の艦隊に対して60匹以上物の飛竜が飛び立って行くのであった。
現場に到着した海上自衛隊の救援艦隊司令官たる鈴置洋一等海佐は、自衛隊の伝統的な決まり文句である警告と撤退勧告を告げるべくマイクに手を掛ける。
「あーっ!あーっ!こちらは日本国海上自衛隊であるっ!この海域で我が国の船舶を攻撃して居る艦隊に告げるっ!」
「速やかに戦闘停止し、撤退か交渉会談。」
「もしくは武装解除されたしっ!!」
「返答か戦闘停止が無ければ、我が方は貴艦隊らを全力で全艦撃沈、又は拿捕する。」
「我々は無用な戦闘を好まない。速やかな良い返答を期待する。以上だ。」
帝国海軍に対して行き成りの降伏勧告に等しい要求を付きけた日本国。
自衛隊には国防に関する事以外に権限がない為、同然の事ながら日本政府は、万が一異世界の『武装勢力』との紛争状態又は自衛戦闘に入った場合に置いて成るべく為らば、相手方の『武装組織』に対しての被害を最小限に止める様に通達されて居た。
これは日本国が伝統的な平和主義の下での非戦主義を貫く為の詭弁であり、本音を掻い摘んで言うと、
(つーか、捕虜を取るのってめんどくさいーしっ!!そもそもそんな法律の整備しようとしたら、万年野党の連中と反戦団体がちょーうるせーのよっ!!)
(他にも人権が守れえええぇぇぇーっ!!とか、憲法9条を無視すんなあああぁぁぁーーーーっ!!とか言うしさぁ!!正直言って超メンドサいの。カッタりーし、それーに、余所者を養う余裕は家の国には無いつーのっ!!)
(ただでさえ、不景気に借金と低所得の貧乏な人達と残留邦人の面倒で手一杯だっつーのっ!!)
(だーかーら、成るべくなら追っ払ってきてね。よろよろ。)噛み砕いて言うとこんな感じである。
まぁ、実際にこんな事を言ったら内閣解散じゃ済まない大騒ぎに成るだろう。
それはさて置き、英国海軍紳士の伝統を受け継ぐ日本国海上自衛隊は、どんな事があろうと戦闘後の救助はキチンと行うので安心して貰いたい。
さて、海自の撤退勧告を受けた帝国海軍は、そう簡単には引き下がらなかった。
特に冷静な判断力を持って居たアディーレは、日本国から来た言う海上自衛隊なる海軍をその目で注視していた。
何せ日本側は、絶対に帝国艦隊に勝てると宣言したのだ。
虚栄心とプライドの塊であるローラーナ帝国の皇族と貴族が聞いたら激昂して突撃して来るのは間違いなかった物言いである。
彼女は日本海軍の戦艦と艦隊構成を良く観察する。
良く見ると砲台と思われる場所が、各艦に一門ないし、二門程度しかなかった。
それを見た彼女は、これなら勝てると、この世界の常識に従って命令を発した。
「戦闘続行せよっ!!」
「日本国なる海軍は恐れるに足らずっ!!彼の様な少数の軍艦と砲門に何が出来るっ!!」
「それに我が軍でさえ、この激しい荒波で大砲を当てるのに難儀して居るのに、どれ程に事ができようかっ!!」
「我が艦隊はコヨミ水軍と日本海軍の撃滅を命ずっ!!」
「勝利すれば、コヨミの第一皇女を捕虜に出来る。」
「それに分けの分からん余所者に、我が領海内で好き勝手にされてなるものかっ!!」
「勇敢なる者共よっ!!掛かれええぇぇぇっっ!!!掛かれええぇぇぇっっ!!!掛かれええぇぇぇっっ!!!」
帝国海軍の戦艦の各艦長は、護衛艦が射程に完全に入るのを待って各艦発砲開始。
一斉に「撃てーッ」と命令する。
すると一隻に配備されて居る20門は在る大砲、合計で200門の大砲が護衛艦を射程に捉えると次々と一斉に火を噴いた。
既に海自の護衛艦隊は、護衛艦の中でも比較的新しい方の古株で、艦隊旗艦をも務めた事も有るしらね型護衛艦・しらねを先頭に帝国海軍から5キロ地点の真横に入りつつあった。
護衛艦隊は、帝国海軍の返答があくまで戦闘続行と言う返事を鉄の玉で受け取ると鈴置一佐は各艦に対して「水上戦闘よーいっ!!」と告げた。
この異世界に措いて、初の帆船型戦列戦艦と護衛艦による海戦が始まった瞬間である。
此処に全ての役者は出揃った。
帝国海軍とコヨミ水軍と海上自衛隊との間で、激しい戦闘が始まろうとして居た。
竜史は海自の護衛艦隊からの汽笛の音を聞き付けると、ある有名なアニメ作品の名台詞を思い出して居た
「越えられない嵐はないか・・・・・・・」
10数年も前にシリーズ化された第二次世界大戦時に活躍した戦艦と美少女を組み合わせたアニメの主人公の名台詞で、激しい砲火の中で「越えられない嵐は無いんだよっ!」と仲間に激励して居た事を思い出していた。
「もう少しだ、みんなあぁぁーーーっ!!!自衛隊が来たっ!!!」
「海自が海戦に入れば逃げられるぞっ!!!それまで何としてでもっ!!この場を持たせるぞおおぉぉぉーーーーっ!!!」
「「「「「おおおおおぉぉぉぉーーーーーーっ!!」」」」」
あさくら号に乗って居る全乗員達らは、救援に来た海自護衛艦隊の出現のお陰で、下がり掛けていた士気が上がり、何が何でも生き延びてやろうと意気込んで行くのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後1時00分頃・日本国・東京都にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お昼のニュースが終わり、午後のバライティーや情報番組がスタートし始めた丁度その頃であった。
番組のオープニングの曲と映像が流れ終わる瞬間である。
それも司会者にカメラが向けられ、番組の始まりの挨拶をしようとした瞬間である。
突然、番組の画面が、お昼のニュース番組のレギュラー担当をしているアナウンサーに変わる。
どのテレビ局も仕事を終えた筈のキャスターばかりだった。
恐らく仕事が終わって、一息付こうとした所を急遽、呼び止められたのだろう。
それよりも、もっと可哀想なのは、昼過ぎの生放送を担当して居るアナウンサーや芸能人の面々だろう。
司会やコメンテーターに呼ばれた人達は、その日の仕事を無理やりに取られた形と成ってしまったので、可哀そうな目に遭ったと言える。
番組のタイトル表示は「緊急特別報道!、東シナ海沖にて行方不明のあさくら号、武装船団に襲われるっ!!自衛隊による決死の救出作戦っ!!!」と書かれて居るが、テレビ局によってタイトルが様々なネーミングだったが、どれも似たり寄ったりの名前をして居た。
「番組が始まったばかりですが、急遽緊急ニュースをお届け致します。」
「なお、今日放送予定の番組は、一部を除いて中止とさせて頂きます。」
「番組の途中ですがは」良く聞く事が多いが、最初から・・・しかも番組の始まる直前での中止の成る事は、余り無いタイミングだろう。
「東シナ海沖に転移してしまった民間フェリー会社の船舶であるあさくら号は、今日の朝11時15頃から、謎の武装船団からの大砲による砲撃を受けて居るとの緊急救難通信が入りました。」
「この情報は、防衛省と海上保安庁の両方から政府へと上げられた緊急情報との事です。」
「既に防衛省は、現場が外洋である事から、万が一の場合に備えて、呉・舞鶴・佐世保に所属する護衛艦をそれぞれ派遣して居り、今現在は、現場海域に到着しつつあるとの事です。」
「あさくら号は先月末に、敦賀港から上越港へと向かう途上の日本近海上での時空震の第一波に巻き込まれたらしく。」
「これと同じ現象に巻き込まれた航空機船舶は、相当数在るとの政府発表が有りました。」
「また、日本政府が時空転移に付いての公式見解発表が行われ、学会を含めた政府機関や民間研究所での議論は、まだ正確な結論に至って居ないとの事です。」
「また、日本国内及び日本と同じく転移して来て居る国々や地方地域の中では、様々な話題と混乱を呼んで居ます。」
「今現在、現地周辺は大変危険で、報道ヘリが飛ばせない為、政府が首相官邸に用意した報道陣向けのモニタールームに報道関係者が集まって来ており、我が社の林原芽衣アナウンサーが待機して居ます。」
「中継現場の林原さんっ!!林原さーーんっ!!」
番組の画面が首相官邸のモニタールーム変わる。
イヤホンを右耳に付けてスタジオからの声を聞き取ろうとする20代の女性アナウンサーが、同じく現場に来て居るアシスタントの補助を受けながら準備中の姿が映って居た。
「ええっ!?もうカメラ回してるの?」
そんな間抜けな姿を晒した所で、テレビ中継を始めた。
「林原さん?」
「はい、失礼しました。準備と音声が繋がって居ませんでしたので。」
「そうでしか。それでは今の状況に付いてお聞きしたいのですが、日本政府は、自衛隊の出動に関して何か発表は在りませんか?」
「はい。まだ有りません。現場海域からの生中継が、間も無く始まるらしいとの事です。」
どうやら日本政府は国民に対して、異世界での危機感を伝える為に敢えて、護衛艦に備え付けられて居たカメラと現場海域へと飛ばしたドローンカメラに由る生中継を実行する積り居るらしい。
此処で自衛隊が救出に失敗すれば、内閣の支持率どころか与党の支持率まで急降下は必須だろう。
そうなれば、政府の取れる手だけは特殊作戦群や水陸旅団に所属するレンジャー部隊を使うしかなくなる。
まぁ、そんな事態に為る事は先ずは有り得ないのだが・・・・・・・・
「あっ!どうやら中継が始まる様です。」
「それでは画面を切り替えます。暫くの間、中継映像をご覧ください。」
テレビ画面は中継映像に切り替わり、右端に防衛省・海上自衛隊・航空自衛隊・提供映像中継と書かれていた。
「どうやら武装勢力と思わしき船団は、あさくら号への砲撃を仕掛けて居る模様です。」
「物凄い砲撃の嵐です。あさくら号の乗客や乗組員の方々は大丈夫なのでしょうか?」
「ですが、海自の護衛艦隊が、間も無く戦闘態勢に移行し様として居ます。」
「たった今、海自側から警告が行われました。武装船団は砲撃を止め様とはしない模様です。」
「たった今、政府から発表が有りました。日本国政府と防衛省は救出出動から防衛出動へと切り替える総理大臣命令と閣議決定を決めたとの事です。」
「繰り返します。日本国政府と防衛省は救出出動から防衛出動へと切り替える総理大臣命令と閣議決定を決めたとの事です。」
「これは我が国が第二次世界大戦後、初めてと成る防衛出動と成ります。」
「実に85年振りの外国との武力衝突と成りましたっ!!」
この日の報道で各報道局の視聴率は鰻上りだった。
各地の都心市街では、号外が飛ぶように配られた。
ネット上では『異世界開戦キタァァァーーーーーーーーッッッ!!!」とか書かれて炎上し捲って居た。
この海戦映像は、その後も無料動画サイトで何度も何度も何度も繰り返し再生される物へと成って行くのである。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後13時00分頃・海上自衛隊・あさくら号救出作戦・護衛艦隊旗艦・いせ艦橋にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「鈴置一佐っ!!武装勢力艦隊は、発砲を止めない積もりの様ですっ!!」
其処へ総理官邸と防衛省から緊急連絡が入った。
「鈴置一佐っ!!安元総理と小西防衛大臣からですっ!!」
「再度警告しても退かない場合は已む終えない。」
「国民と領海を守る為に、救出出動から防衛出動に切り替える。」
「此方で責任は取ってやるから、後顧の憂い無く存分にやれとの事です。」
これで自衛隊の法律上の最後の枷は外された。
これまではやり過ぎない様にと、細心の注意と国籍不明の武装船団に対する外交的な配慮。
それに伴う威嚇と最小限での撃沈での撃退と言う回りくどいやり方で、排除すると言う事はしなくても良くなった。
戒めの鎖が無くなった鈴置一佐が率いる艦隊は、一気に攻勢に出る。
「日本の全国民と転移して居る国々の人達が、我々の行動を見て居る。」
「各艦各隊員は奮励奮闘努力せよっ!!」
「古谷二佐、武装勢力艦隊に再度警告しつつ、先ずは威嚇射撃っ!!各艦っ!!撃ちーかーたよーいっ!!」
常日頃から日陰者と揶揄されてきた自衛隊。
此処で少しは日の目を浴びたいと思うのも無理も無い。
隊員たちの奮起し、士気はうなぎ登りに上がって、生き生きとした表情を浮かべつつ、やる気に満ちていた。
「了解っ!各艦に伝達っ!武装勢力艦隊に警告と威嚇射撃っ!!各武装の安全装置解除っ!!」
「・・・・・・撃ちーかーたよーいっ!!」
全ての護衛艦の砲塔がウイィィィンと言う駆動音を立てて、帝国艦隊に砲身を向けた。
「魔導戦艦でも無いのに、大砲を撃つ為の人が一人も居ない?何故だ?」
「魔導戦艦でも砲台を動かすのに、多少なりとも人は多いし、人が動き回る姿が見られる筈だっ!!」
「彼の戦艦らに、それが見られないのは何故だ?」
アディーレは、その動きを望遠鏡で眺めながら、ニホン戦艦の甲板上での人の動きが全く見られない。
彼女は日本艦隊の艦艇上での奇妙とも取れる無機質な動きに注視していた。
この世界には、魔導船と言う魔力で動く船舶が存在しており、陸海空と三種類が在るのだ。
そして、その何れの種類にも木造船と鋼鉄船の二種が存在して居る。
アディーレは見た事も無い日本軍艦である護衛艦の見た目から、どの様な性能を有して居るのかを推し量ろうと考えを巡らす。
だが、戦場は目まぐるしく、そして、慌ただしく動いて行く。
護衛艦の牙は、彼女に考える暇を与えてはくれなかった。
砲撃態勢が整うと、護衛艦各艦の主砲が第一の砲撃を開始する。
「むっ?!来るぞっ!!総員衝撃に備えろっ!!!」
帝国艦隊は転移の影響で、環境の一部が日本の有った世界の寄りの自然環境に成って居る海上の上で、荒れて激しく揺れて居る波の中で砲撃を続けて居る。
そして、日本艦隊の砲撃が始まろうとして居るのを見越して、対ショック体制を取るように帝国艦隊の各戦艦の艦長は、手旗信号等で命じていた。
「全ての最終の安全装置解除の確認をしました。射撃準備よしっ!!」
「鈴置一佐、準備が整いました。」
鈴置一佐は、再度マイクを手に取り帝国艦隊に警告を発した。
「繰り返す・・・・・直ちに撤退か停戦せよっ!繰り返すっ!直ちに撤退か停戦せよっ!直ちに撤退か停戦せよっ!」
アディーレは何を馬鹿な事を言って居るのかと思った。
彼らの常識からすれば、この海戦で劣勢なのは、日本側の方なのだ。
だが、現実の中の真実は違って居る。
これから起こる悪夢から逃げられる選択肢を帝国軍は拒否ではなく、無視を決め込み、見逃してしまって居た。
「武装勢力艦隊、警告を無視して居る様です。」
「ならば致し方無い。」
「攻撃指定っ!先陣のしらね、まつゆき、あさぎり、いなづま等は、二列目の艦隊に砲撃っ!!」
「残りは手前の艦隊を狙えっ!!各艦っ!撃ちーかーた始めっ!!」
「了解っ!!目標指定っ!!先陣のしらね、まつゆき、あさぎり、いなづま等は、二列目の艦隊砲撃っ!!残りは手前の艦隊を狙い撃てっ!!」
「攻撃開始っ!!撃ちーかーた始めっ!!!」
「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!!」
各護衛艦の艦長の砲撃命令の号令が下され、続けて艦内の砲雷長が撃てと命じる。
護衛艦の主砲がドンドンドンドンと2発づつ発砲した。
両者共に砲弾の落下速度に合わせるかの様に言う。
「「だんちゃーく・・・・・今っ!!!」」
ズドーンと言う音が鳴り響き水柱が立ち上がると、一瞬だけ波しぶきも大きく立った。
「威勢が良い割には当たらない?錬度が低いのか、それとも波のせいなのか?」
「これが最後通牒である。退かなければ、今度こそ中てる。」
威嚇射撃を行なってまで、撤退か停戦を求める日本軍は、再度、最後通牒を突き付けれた帝国海軍は、自衛隊の回りくどい警告に舐められて居るのかと苛立ちを覚えていた。
アディーレは、日本軍の行動の意図が全く分からず戸惑っていた。
「舐めて居るにしては変だ。」
「砲塔も翌々見てみると、かなり大きい様に見える。」
「何処にそんな自信があるのだっ!?何故だっ?何故なんだっ?」
味方の砲撃は続いている。
戦艦の数は自軍の方が圧倒的に有利である。
それで居てもニホン艦隊側が不利なのは明確なのに、コヨミ皇国の様に帝国に立ち向って来る軍勢。
馬鹿とは決して言えない何かを持っている様に感じたアディーレ。
彼女は自問自答を繰り返しながら、このまま戦えば、危険では無いかと言う脳内の警告を無視して、これまで培って来た経験と定石に従って戦闘継続して行く事にする。
例えそれが取り返しの付かない事で有ったとしても、今の彼女には、それ以外の判断を下せる材料が無いのだから・・・・・・・・・
彼女はそれでも、このまま海戦へと突き進んで行くしか無いのだろう。
一方のベンジョンは、指揮下に有った7隻の竜空母艦と戦艦に搭載されて居る飛竜を発艦準備に入らせる。
木造帆船式の帝国戦艦の後部甲板からは二匹の飛竜が竜騎士と共に発艦体制を取って居た。
「風速、風向きよーしっ!発艦準備よしっ!」
「竜騎士航空戦隊っ!何時でも出られますっ!。」
「ヨシっ!全竜騎士航空戦隊っ!発艦始めええぇぇぇーーーーーっ!!」
7隻の竜空母艦からは、羽を勢い良く羽ばたかせて海風に乗りながら飛び立っていく飛竜の姿は、現代の空母から発艦する戦闘機の姿と然程変わらない。
出せるスピードの差を除けば、間違いなく、この世界の軍隊の主力兵器の一つであろう。
30隻の戦列艦と7隻の竜空母艦から、一斉に帝国が誇る竜騎士航空戦隊が一斉に飛び発った。
この瞬間、アディーレを始めとする帝国軍将校等は、勝ち戦を確信しただろう。
当然だ、この世界でも常時、竜騎士航空戦隊を海上で運用できる国は限られて居る。
一番お金の掛かる兵科の一つにして、特殊な兵科部隊だからである。
数を揃えるのに難儀をして居る国々が多いからだ。
更に航空戦力を撃ち落す能力を持った兵士や兵器は殆んど無く。
一度、その攻勢を許せば、最早、太刀打ち等が出きずに、全てが終わるからだ。
「鈴置一佐。武装勢力艦隊は、航空戦力を有する様です。」
「空母らしき艦影からは、続々と空飛ぶ生き物を発艦させて居るのを確認して居ます。」
「ドローンカメラ映像からも、同様の映像からの確認が取れて居ます。」
「敵機の数は?」
「こんごう、ちょうかいからの報告では200機以上は居るとの事です。」
「200機以上?曖昧な数だな。2艦ものイージスシステムが在るのに、正確な数字が出ないのか?」
「分かりません。システムエラーでは無く。恐らく認識された事が無い生き物である為では無いかと思われるとの事です。」
「それはシステム上の今後の課題だな。」
「上空で警戒中の哨戒機P-3Cから入電です。」
「敵航空機は竜です。しかも騎士甲冑姿の人間を乗せて居るらしいとの事です。」
ドローンでも近付きすぎると敵の方が監視されて居るのに気付かれる恐れが在るので、遠巻きに偵察監視を続けていた。
そして、ハッキリとした機影が判明するの事に時間が掛かって居た事も付け加えて置く。
「何だって?」
「流石にそんな生物のデータは無いな。だからレーダーに認識がされ辛かったのか?」
優秀なイージス艦でも竜のデータは持ち合わせていない。
レーダーで捉えられ、コンピューターで確認がされるだけでもマシな方のだ。
自衛隊はこの戦闘での戦訓で、新たにイージスシステム用のシステムソフトに対ドラゴン戦のデータ取得とバージョンアップが為されて行く事に成るであった。
帝国軍の竜騎士航空戦隊の発艦して居る最中で、自衛隊の側にも待望の知らせが届く。
「航空自衛隊那覇基地より入電です。」
「空自が来たか?」
「はい。間も無く現着との事です。」
空自の第9航空団那覇基地所属の101小隊、202小隊、303小隊のF‐15J戦闘機の15機の編隊は、防衛省・統合幕僚監部の命令で海自の航空支援の為、救援要請海域から15キロ地点で別名が有るまで旋回待機をして居た。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後13時00分頃・日本国・東シナ海近・コヨミ皇国・南西国藩領及びローラーナ帝国領・シャッポロ州・龍雲海沖近海にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第9航空団那覇基地所属の101小隊、202小隊、303小隊を率いて居る指揮官たる神谷晶一等空佐は、海自への現場到着を報せるべく無線通信を入れた。
「此方は第9航空団・那覇基地所属の第一小隊サシバ01の神谷一佐っ!」
「あさくら号救出派遣艦隊へっ!」
「現在、我が那覇第一航空隊の第一小隊、第二小隊、第三小隊共に客船あさくら号の航行して居る海域から15キロ地点にて旋回待機中っ!」
「其方の指示があり次第、7分ほどで攻撃を仕掛けられるっ!」
「こちら救出派遣艦隊・旗艦いせの鈴置一佐だっ!!」
「空自航空隊の支援派遣に感謝する。」と鈴置は締め括る。
続けて古谷一吉二佐が現在の状況説明と鈴置一佐の命令を伝えるべくマイクのトークスイッチを押して語り出した。
「今現在、我が方は武装勢力艦隊に対して民間船に対する攻撃を中止するように警告した。」
「そして、その結果、我々の要求は拒否された。」
「由って最高司令官たる安元総理大臣から命令を受けて居る艦隊司令の鈴置一佐からの命令を伝える。」
「全ての全兵装の使用を許可する。直ちに貴隊は、現海域に突入し、出うる限り敵航空隊を撃滅すべしっ!!!」
「数は推定200機以上で、敵の航空戦力は、竜に跨った騎士と見られる。」
「貴隊の健闘を祈る。以上っ!」
「了解っ!!」
神谷一佐は、海自との交信を終えると、随伴して居る部下達に無線機を通じて、命令を発した。
「聞いての通りだ、野郎どもっ!!!」
「これより民間船の救出の為、航空支援を開始するっ!」
「各隊っ!初撃は一斉にミサイルで攻撃するっ!!」
「残りの居残った敵はバルカン砲で撃ち尽くすぞっ!!」
「ある程度の敵を減らしたら撤退する。」
「残りは、海自の護衛艦隊が掃討戦を行う予定だ。」
部下である長谷川と速水の第二・第三小隊が後に続いて答える。
「サシバ02、了解っ!!」
「サシバ03、了解っ!!」
神谷一佐が率いるF‐15J戦闘機隊は、その一路を現場海域へと向うのだった。
さて、この戦闘に何故、航空隊が必要かと言うと、フェリーに送れる救援隊が護衛艦隊がワンセットしかない事。
幾ら防空能力が高くミサイルや砲弾が命中率100パーセント近い艦船が有っても弾薬が無限では無いからだった。
異世界の国家の位置と軍事の事情が分からない今は、極力燃料と弾薬の浪費を避けねば成らない。
敵航空機と敵艦隊を空自の力を見せつけた上で黙らせ、それでも抵抗を続ける様ならば、敵艦隊を護衛艦隊で、必要最低限の戦闘で制圧すると言う思惑があるのであった。
空自航空隊が迫る中、アディーレは戦局に疑問を持ちながらも勝利を確信した。
「・・・・勝った。」
だが、その時に遥か遠くから「ゴオオオオォォォォォォーーーッ」と言う大きな轟音が空と海面を駆け巡った。
「行くぞ野郎どもっ!!」
「ターゲットインサイトっ!!ミサイル一斉発射っ!撃てええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
F-15戦闘機のロックオンの音が、コクピットに鳴り響く。
放たれた鋼鉄の空飛ぶ槍は、音速で指定された目標へと機械的に判断をしながら敵の懐へと飛び込んで行く。
そして、竜騎士15名が一瞬にして、一斉に「ドゴオォォーン」と言う強烈な爆音共に爆散するのだった。
帝国の竜騎士達らは、何も出きないまま、目にも留まらぬ速さでミサイルが命中し討ち取られてしまう。
「何だ?!何が起こった?」
「分かりませぬ。」
「竜騎士達らが、突然に唸る様な轟音と共に爆発したとしか・・・・・・・」
アディーレは飛来した物体が何かは分からず戸惑った。
更に悪夢は続く・・・・・続けて、ミサイルの第2派が飛んで来たのだった。
「こちら第二小隊サシバ02。第二波攻撃のミサイル命中、続けてドッグファイトにて、敵右側を貫きます。」と長谷川健児一尉が、指揮下に在る第二小隊と共に、敵の右翼側に向かってバルカン砲を撃ち捲る。
「よーし、上出来だぞっ!健児っ!!!」
「速水っ!!左側どうだ?」
「こいつ等完全にカモ同然ですよ。何に追われて居るのかさえ、分かって居ないようですね。」
F-15戦闘機に由って、次々帝国軍の飛竜が撃ち落されて行く。
ミサイルの攻撃を受けた騎竜士達は悲鳴を上げる暇も無かった。
F-15のバルカン砲の追尾攻撃を受けた者は、混乱の中で落命して行った。
「残弾と燃料を考えると、そろそろ頃合いか。全機に告ぐっ!作戦目的を達成したっ!!
「予定通り撤収するぞっ!!残りは海自さんの仕事だっ!!」
一通り敵の掃討を終えると神谷一佐達の航空隊は機体をクルリと反転させて、派手な飛行機雲を靡かせながら基地へと帰還の途に着いた。
一方的で暴力的までな攻撃に、帝国海軍は一瞬攻撃の手を緩めた。
帝国軍の飛竜隊は、その数を100機まで減らされて居た。
一方のコヨミ水軍は紅葉が空に舞う鋼鉄の鳥で、帝国海軍が怯んだと見て、此処は攻勢命令をとの決断を下し、全軍に命令を発した。
「今だっ!竜騎士が怯んで居る隙に、手前の艦隊だけでも沈めろ。」
「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉーーおーーーーっ!!!」」」」」
第3艦隊と7隻の竜空母艦隊を指揮して居たべン・ジョンとパシリ等は、謎の攻撃に混乱をし始めていた。
それ処かコヨミ水軍が、ここぞと言わんばかりに攻勢を強めて来て居る。
「一体全体、何が如何なって居るのだ?」
「私にも、何が何だか・・・・・・・・・」
海上自衛隊側にも動きがあった。
護衛艦隊の全ての兵装が一斉に帝国艦隊の第一艦隊と第二艦隊、そして、未だに攻撃を続け様として、大空で舞って居る100機まで、その数が減った竜騎士航空隊に照準を合わせ始めた。
同時にイージス艦であるこんごうとちょうかいの2隻が、CICの指揮の元で帝国竜騎士隊に止めの一撃が放たれ様として居た。
「こんごう、ちょうかい共にスタンダードミサイルを敵航空部隊に指向っ!!」
「垂直式ミサイル発射装置開放っ!!」
「誘導電波照射装置配分っ!!」
鈴置一佐は戦闘を長引かせない為に、手加減をする事を控えていた。
敵も航空護衛艦とは違う方法とは言え、航空機を搭載して居る。
思わぬ失態が海自艦隊に降り掛かるかも知れない。
先ずは第一に、敵航空戦力の壊滅。
次の目標として、第二に選んだのが武装勢力艦隊の無力化を狙って居た。
射撃管制官が、ミサイルの的をどの敵に当てるかを決まり終えると、声荒げて砲雷長に言った。
「スタンダードミサイルSM2発射用意ヨシっ!!」
「サルヴォーッ!!!」
「ドゴオオオォォォーーン」と言うミサイル発射音と供に、飛び出したミサイル達は、未だこの海域の上空に多数残って居るであろう竜騎士航空隊に向って飛んで行った。
「何だ、あれは?」
「こっちに向ってるぞっ!」
「よっ、避けられないっ!!」
「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」
迫り来る謎の空飛ぶ槍に、大空で逃げ惑う彼らは恐怖した。
ミサイルが縦横無尽に飛び回り、容赦なく竜騎士航空隊に命中し、撃墜されて行く様を見ていたアディーレは、呆然として眺め見て居るしか無かった。
帝国軍の最底辺では有るが、一瞬にして、この世界でも一、二を争う軍事力に優れた戦力が一瞬にして全滅したのだ。
彼女の理解を超えた出来事に頭を抱えて混乱していた。
「各艦っ!主砲およびアスロック発射っ!よーいっ!」
「各艦っ! 主砲及びアスロック発射っ!よーいっ!」
しらね、せんだい、まつゆき、あさぎり、あまぎりのアスロックSUM8連装発射機が左側に一斉に回頭する。
「アスロック発射っ!目標っ!空母艦隊っ!主砲は威嚇砲撃指定目標と同じ目標っ!」
「アスロック発射っ!目標っ!空母艦隊っ!主砲は威嚇砲撃指定目標と同じ目標っ!」
「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!」
垂直発射管のアスロックとSUM8連装発射機が割り振られた竜空母艦隊の直前で、水中の中へと水没し、一斉に竜空母艦へと突撃する。
その数秒後、竜空母艦の船体中央で、大爆発を起こして、大きな水柱を上げた。
護衛艦隊は、帝国海軍の第二・第三艦隊に容赦なく砲撃を浴びせた。
それでも反撃を止めないので、最後にはマストに砲撃を加えて航行不能に陥らせた。
「一体、何がどうなっているのだ。ニホンとか言う国の戦艦はバケモノなのか?!」
彼女は周囲の様子を冷静に見て居た。
この間にも、味方の戦艦は砲撃の手を緩めていない。
アディーレはドンドンと音を放ち、全てのマストの柱が倒されて行く姿を呆然と眺め見て居る事しか、出きずにいた。
帝国将兵達は、信じられないと言う顔して、真っ青な顔付きに成って居た。
この世界の大砲は狙って当たる物ではなく、当然ながら命中率が悪い。
海上や水上で在るのなら尚更である。
そして、尚も彼らの悪夢は更に続いた。
鈴置一佐は、ヘリコプター搭載型護衛艦の甲板に出ている艦載機に発艦命令を出した。
「AH-64D隊各機へっ!!全機発艦せよっ!」
「SH-60K哨戒ヘリは、陸自隊員と海自特別警備隊を乗せて、別名有るまで待機っ!」
AH-64D・戦闘ヘリコプター・アパッチは、いせから一斉に飛び立つと、護衛艦隊の主砲とミサイルで、更に数減らされて居た飛竜隊への攻撃を開始した。
誘導弾と30ミリ機関砲の威力は絶大である。
動きが早い戦闘機、後の帝国内では鉄竜と言う名前が付けられるが、その鉄竜とは、また違った強さを誇るアパッチに竜騎士達は恐怖した。
飛竜の数が多ければ、恐らくアパッチの方は、苦戦をしたかも知れない。
「これが最後の通告だっ!これ以上の抵抗は無駄だっ!」
「白旗を揚げ降伏する事を求める。従わなければ全艦を撃沈するっ!」
ニホン国軍なる軍の司令官は、帝国海軍に対して最後の通告をし、降伏を求めて来た。
最高指揮官たるアディーレは迷った。
だが、彼女は名誉や栄達を重んじる他の帝国貴族とは違って居た。
常日頃から彼女は、現実に起きた事を重んじて来た。
だが、今起こって居る事が、余りにも現実離れした出来事で在るが故に、判断に困って居た。
其処に更なる追い討ちが掛かって来たのである。
「アディーレ様。本隊の先方隊の5隻が、コヨミ水軍に船体突撃され、白兵戦闘の末に拿捕されたと報せが、我が艦への通告として、信号旗で報告して参りました。」
「何だと?!」
コヨミ水軍は、帝国艦隊の混乱の隙を突いて、少ない水軍船を用いては居たが、帝国海軍の戦列戦艦5隻を見事に拿捕して見せた。
一方の副司令官たるベンジョンはと言うと・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くそっ、此処は撤退だっ!」
「アディーレ様は、如何なさるのですか?」
「知らんっ!!!」
「竜空母と飛竜の殆んどを殺られたのだっ!此処は急ぎ撤退して、この事を帝国東方制圧軍総司令官で有らせられるゾイザル殿下に、急ぎっ!ご報告しなければならないっ!」
「小娘の一人や二人の生死よりも重要な事だっ!」
(それって、単に逃げる為の口実じゃ・・・・・・)
「パシリよ、サッサと逃げるのだっ!ほら早くっ!(でなければ、わしの命と出世が無くなるっ!)」
「はっ、はいっ!了解でありますっ!」
悲しいかな中間管理職と下っ端とは、常に上官には逆らえない性であり、世の習いでも在るのだ。
そんな訳でベンジョンは、スタコラサッサと逃げて行くのである。
それに付き従った船は、僅かに4隻だった。
そして、この撤退劇の報告は、すぐさま周囲を見張りをして居た後方の艦から手旗信号で報される事と成った。
「申し上げますっ!」
「後方の戦艦から報告ですっ!ベン・ジョンソン様と指揮下に在る艦隊は、撤退を開始したとの事ですっ!」
「なぁにっ!?あっああ奴めっ!指揮官である、この私を見捨てて撤退だと?」
「アディーレ様、如何致しますか?このままでは・・・・・・」
彼女は祖国の王侯貴族至上主義の中でも、部下や領民を大事にする珍しい人格を持って居た人物だった。
「此処は仕方があるまい。大事な将兵の命には変えられまい。」
「では・・・・・」
「遺憾ながら降伏する。白旗を揚げなさい。」
「はっ!!」
こうして、ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊の第120艦隊は、約8割近い損害を受けて、指揮官アディーレ・グレッサ辺境侯爵(少将)を残して撤退した。
交戦した4000人の帝国軍の内、撤退したのが440名、戦死者60名、軽傷者400名、
約3000人近い将兵が、日本国・自衛隊の手に由って捕虜に成ったのだった。
その他には飛竜30匹と7匹のシードラゴンが捕獲され、居残ったアディーレ達帝国海軍の全ての艦隊に白旗が掲げられて居た。
敗北した帝国将兵である本人達でも信じられない戦果である。
かくして、日本の異世界に措ける初の武力衝突は、日本側の一方的な勝利に終わった。
この出来事が、後に異世界の国々に波及して行く事に成って行くのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後14時05分頃・日本国・東シナ海近・コヨミ皇国・南西国藩領及びローラーナ帝国領・シャッポロ州・龍雲海沖近海にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自衛隊とローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊との戦いは終わった。
だがしかしながら、アディーレ・グレッサが指揮を執って居る本隊の戦いが終わったのであって、他の部隊は戦いを続け居り、今も直も抵抗を続け、まだまだ抗って居る艦船が何隻も居た。
旗艦や本隊が停戦と降伏を受け入れても、他の部隊や艦船らは抵抗を続けて居るのは、敗戦による混乱に由るものが大きいのであった。
これ等を終わらせるのには、降伏した軍の最高指揮官に命じられた武官が、降伏先の軍の指揮官に連れられて、戦闘停止を訴えながら言って回るのしかない。
それ故に彼方此方で、散発的な戦闘が今も続いて居たのである。
バローナ号の横に護衛艦のこんごう、ちょうかい、あまぎり。
そして、ヘリコプター搭載護衛艦いせが、横付けられて居た。
周囲には、護衛艦に搭載されて居る哨戒ヘリが交代で、いせに待機していた水陸機動団所属である水陸機動連隊と海上自衛隊に所属する特別警備隊の隊員らを連れて、戦列戦艦への臨検隊が組まれ、続々と出発して行く。
アパッチは、偶々運良く生き残って降伏した飛竜と竜騎士数名を、同じく偶々生き残った1隻の竜母に誘導させていた。
竜母に向かって撃ち放った誘導魚雷は、6隻に命中したが、その内の1発が何故か動作不良が起こり、一発だけ外れたらしい。
運良く生き残った1隻の竜母は、アパッチに制空権を取られて降伏。
竜母を牽引して居た7匹のシードラゴンは現在、降伏した帝国軍の騎士によって大人しくして居るらしい。
竜母は、護衛艦・いなづまに見張られながら、護衛艦・せんだいが曳航して7匹のシードラゴン共にいせの近くまで来て居る。
こんごう、ちょうかい、あまぎり等は、いせの護衛をしつつ、周囲の警戒を続けながら、水面に漂う帝国軍将兵らの救助をして居る。
バローナ号からヘリコプター搭載護衛艦いせの巨大な船体を見上げながらアディーレは、これから始まる日本との交渉に緊張が走って居た。
日本国と成る謎の艦隊らの者達との交渉次第では、自分達は下手をすれば奴隷に成りかねないと考えて居た。
勿論、そんな事は無いのだが、彼らの常識の基準からすれば、それが当たり前の考え方である。
彼女は出来るだけ自分達に、有利な戦後交渉を行う積もりで居た。
いせは内火艇とゴムボートを下ろし、バローナ号へと向った。
「あさくら号救援派遣艦隊副司令及び、当ヘリコプター搭載護衛艦いせの副艦長の古谷一吉二等海佐です。」
「へりこぷたー」と言う単語が意味不明だったアディーレだが、目の前の全長248メートル幅38メートル基準排水量19500トンもある巨大な戦闘艦の副艦長の額に手を当てる馴染みの無い一風変わった敬礼をして居る古谷に、想わず帝国式の敬礼で返えしてしまって居た。
「ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊・第120艦隊司令官、アディーレ・グレッサ辺境侯爵。海軍での階級は少将です。」
随分と若い将校だな思った古谷は、彼女に今後の予定の説明に入る。
「早速ですが、現在の状況の説明に入らせて頂きます。」
「既に各方面の戦艦には、我が海上自衛隊の臨検部隊が向って居ります。」
「アディーレ閣下が、指揮下に在る各艦の艦長らに向けて、伝令官を向かわせて、戦闘停止命令を出されて居る事と旗艦の降伏信号旗を確認した各艦の艦長達は、次々と武装解除に応じて降伏して居ます。」
「中には抵抗を続けて居る戦艦も見受けられますが、我が方の臨検隊に共に貴国の将校ら共に説得する形で、降伏を促す為に動いて居ます。」
「戦闘が完全に停止するまでには、然程の時間が掛からないでしょう。」
「お手数をお掛けしますが、成るべくなら潔い降伏を求むと生き残った者達に伝えて下さい。」
「分かりました。」
「それと。」
「何でしょう?」
「降伏した身で、改めて聞くもの何ですか、あなた方は何者ですか?」
「我々は日本国自衛隊です。」
「その中の組織の1つで海上自衛隊と言います。」
「我が国以外での外国で言えば、普通は海軍に当たりますね。分かり辛ければ日本国の国防軍又は国防隊とでも言った方が良いでしょうか?」
古谷は地球で民間人にも、そして、外国の軍隊にも説明して居るが、どう訳しても日本軍と言われてしまう言い訳をこの異世界でも言ったのである。
しかし、アディーレは、そんな事が知りたい訳ではない。
「そうでは有りません、古谷殿。」
「私の記憶が正しければ、ニホンなる国は聞いた事もない。」
「況してや、あの様な鉄の巨大船がこの辺りの周辺国で、建造された等と言う話は聞いた事も無い話のです。」
「似た様な話が有るとすれば、それは今も古代の遺跡の中から発掘され、改修を受けた発掘兵器か、それらの技術を模した兵器の生産した物くらいしか有り得ません。」
「それでも現状で我が帝国本国周辺と地方領内で建艦で船舶は、程度の差は多く有り、特に地方での・・・・それも末端で造り扱われている軍艦や民間船は、貴殿が乗船して居られる様な。あの竜母に似た船の半分も有れば良い方なのです。」
アディーレは、必死な表情で相手の素性が知りたかった。
何故、自分達は敗北してしまったのかと・・・・・・・・・
イカサマ?チート?そんなレベルの話ではない。
帝国が有する、この世界でも最高の軍隊を率いて戦ったのだ。
それでも地方隊に過ぎないが、並みの国家の軍隊では、彼らの率いる艦隊を3隻を叩ければ良い方だと言われていた。
それがあっさりと半日も掛からずに僅か1時間程度の時間だけで、いとも簡単に壊滅させられたかられである。
それも戦略や策略無しの真正面からの戦いである。
彼女達からすれば、絶対に有り得ないなのだ。
「ああ、そう言う事ですか。我々の方も、今現在でも、まだまだ調査中なのですが、如何やら我が国は、いえ、我が国と友邦国が、この世界に国ごと時空間転移、分かり易く言えば異世界転移して来たらしいのですよ。」
「古谷殿、貴方は何を言ってるのですか?」
「あははははっ!!閣下のご反応は、まともな人間が聞いて居たら、至極当然の事だと思いますよ。」
「ですが、閣下は仰られたではないですか。」
「この世界に措いて、日本の事など知らないと。そして、貴女方が目の前の船を見て、どう思ったのかが証拠でも有ります。」
「確かにそうですが・・・・・・・・・」
「まぁ、何れ嫌でも知る事に成りますよ。」
「皆さんを捕虜として、日本本土の福岡市に連れて来る様にと、日本政府に言われて居ますので・・・・・・・・」
「それと、彼方の艦隊に心当たりは有りますか?」
「あれはコヨミ皇国と言う半島王制国家の水軍ですね。」
「盛況なサムライなる騎士が居る国家で、周囲の国々中では、独自の文化を持って居る一風変わった国として知られて居ます。」
「当初、私は暦文字が使われて居たので、あなた方二ホンの事をコヨミ皇国が、何か新しい兵器でも見つけたのか、作ったのかと思いましたが・・・・・・・・・」
「えっ?サムライ?コヨミ皇国?」
「ああ、もしかして、少し前に空自が見付けたとか言う半島国家の事か?」
「閣下、もう少しだけ、その辺りのこの世界の地理や国家に付いて詳しく聞きたいのですが。」
「我が帝国の軍事機密に触れなければ、私としても構いませんが・・・・・・」
「是非、いせの方で詳しくお話を聞かせて貰いたいと思います。」
「場合によっては、そのコヨミ皇国の人達にも入って貰って、二勢力の情勢を詳しく知りたいですね。」
「ああ、それと竜の扱いが我々に分からないので、扱いに詳しい方に手伝って貰えませんか?」
「それと船の曳航にも、必要な人員を回して貰いたいのです。」
「分かりました。停戦が完了しだい、配下の者らにやらせましょう。」
アディーレ等は、操船と飛竜に海竜を扱う人員以外は、いせに向う事と成った。
彼女達の日本での体験記が、祖国である帝国に激震を走らすのは、もう少し先の話と成る。
そして、このアディーレ・グレッサが、この戦争・・・アースティア大戦に生き残った帝国人の上流階級の数少ない1人と成るのは、皮肉な出来事として、後の歴史書で大きく取り上げられる事の成るであった。
一方の護衛艦しらね、あさぎり、まつゆきの3艦は、コヨミ皇国水軍とローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊の第一艦隊所属の艦艇が抵抗を続けている海域に、間も無く到着しようとして居た。
先の古谷とアディーレ会談の後でも、戦闘が続く海域に対して、帝国海軍将校や佐官級幹部武官たち等が派遣される事が決定していた。
しらねには、アディーレの副官をしている女性騎士で、ミルディーナ・ネービィーナ大佐(22歳)がヘリコプターで乗り込んでいた。
彼女は異世界の乗り物であるヘリコプターに驚いて居たが、乗り心地は悪くないとの感想を述べて居る。
そんなミルディーナは自分達を打ち負かした海軍艦隊の軍艦たるしらねに乗り込むと、まじかで見たしらねの重厚感と圧倒的な存在感に驚き、同行した海自隊員に思わず護衛艦に付いての質問をぶつけて見た。
砲塔が少ないのは、どうしてなのか?砲弾をどうして一発で当てられるのか?と言った具合の質問を聞いて見た。
普通なら軍事機密と言われそうな話を日本人達等はあっさりと答えてくれて居た。
大砲の弾は自動制御で管理して居て、手動と自動の二つが有る事。
主砲等の火砲の照準は機械が勝手に狙うので一発で仕留められるので、砲塔が少なくて構わない事や連射と速射を重視して居るとも言って居た。
そんな事を簡単に喋って罰せられないのかと恐る恐る聞き返したが、「君達に真似できないし、この程度ならば、我が国の国民の中で、軍事に詳しい人や軍艦の見た目が好きで、それが趣味と言う人なら、誰でも知って居るし、知りたいなら誰でも知る事ができる。」と言われて、更に驚いてしまうのであった。
そんなやり取りが在る中で、コヨミ皇国水軍は、ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊の残存艦隊との戦いが続けられて居た。
第一艦隊の内、10隻は居た筈だが、その内の4隻が撤退し、5隻はコヨミ皇国水軍に接岸されて白兵戦中であり、残り最後の一隻がまだ砲戦を続けていた。
12隻のコヨミコヨミ皇国水軍は、嶋津義隆を中心に5隻の帝国船に群がって戦って居た。
既に砲戦での戦いは終わり、接舷しての近接白兵戦に移行していた。
帝国の竜騎士の伝令官は拿捕されたとベンジョンに報告して居たが、実の所は嶋津水軍は、接舷しばかりで、拿捕には至って居なかったのである。
この世界では、ある程度の先を見越しての上官への偵察情報の報告は許容範囲である。
従って、この偵察報告はある意味、合って居るのである。
さて、しらねが近付いて来るのを敵艦に殴り込みして居る紅葉らは、全く気付いて居ないのだった。
今現在、紅葉達は戦の真っ最中である。
船の周りに付いての事なんてことは、見張りの兵士にでも任せて置けば良いと考え、斬り合いに夢中で眼中には無かった。
紅葉は、コヨミ皇国の国技剣術の一派である北斗・一刀流の免許皆伝で、母が剣聖と呼ばれて居る程の剣の達人であり、その才能を完璧に受け継いでいた。
因みに余談でては在るが、結婚して霧野市に移住した紅葉は、シェスカが立ち上げた総合商社のパート事務員をする傍らで、霧野市剣友会道場で剣道を教える師範代を務める事に成る。
一時期はアースティアオリンピックで、無差別級ソーディアンの部で優勝をしたと言うのだからその腕前の高さは本物だと言えるだろう。
更に付け加えると星読みのチート能力は無しで優勝した事も付け加えて置く。
話は逸れたが、剣術以外にも特別な能力を持って居る事は何度も述べているが、彼女にはコヨミ皇族一族が代々受継いで居る星読みの力である予知と読心能力が有るので、その能力を全開の状態で戦うと手が付けられないほどチートで、無双の強さを誇って居た。
欠点と言えば、無心で挑んで来る相手と機械式のロボットが繰り出す複雑な動きをする相手が苦手なのだと戦後の記者インタビューで語って居る。
その他にはゴーレム関係などは、単調な動きで読み易いから、相手取ったとしても、全然平気とも語って居たりする。
その近くで、赤い槍を振り回し、向って来る敵を片っ端から薙ぎ払い、串刺しにして居る加藤絵美里が、遠くから聞えて来る汽笛に方角に目をやって紅葉に呼びかけた。
「姫様ああああぁぁぁぁーーーーーーっ!!例の鉄船が、此方へと向って来ますっ!!」
「せいやあああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!って!!ええっ?何ですってええぇぇぇーーっ?!」
「くっ、どりゃっ!!ですからっ!!!例の鉄船が向ってきますよおおおおぉぉぉーーーーーーっ!!!」
戦の最中に余所見が出来ず、また、奇声を上げての合戦の最中である為に、声が聞え辛い。
帝国兵も死にたくないので、刃を向けて来るコヨミ皇国兵に対して、必死に抵抗して来るので、紅葉達も油断が出きずに居た。
其処へ、スピーカーを通して帝国海軍とコヨミ皇国水軍の双方に対して、しらねの艦長が戦闘停止を訴えた。
「此方は日本国海上自衛隊の護衛艦しらね艦長の江田史郎一佐だっ!!」
「双方に即時停戦を求めるっ!!」
「繰り返すっ!!即刻停戦せよっ!!!繰り返すっ!!即刻停戦せよっ!!!繰り返すっ!!即刻停戦せよっ!!!」
「直ぐに、止めろって言っても・・・・ねぇ・・・・・・」
「そうですよ。頭に血が上って居る帝国の連中が、直ぐに止めるとでも・・・・・・・・・」
しらねの艦長の江田の訴えを無視するかの様にして、戦闘は尚も継続して居た。
其処へしらねの127ミリ単装砲2門が両軍に向いて居る。
当然ながら照準の方は、相手方をわざと外す威嚇砲撃である。
「姫様っ!!先頭の鉄船戦艦の2門の砲門が、帝国艦船と此方にも向いて居ますぞっ!!!」
しらねの動きを察知した義隆が、紅葉に危険を訴える。
「威嚇射撃よーいっ!!うーちーかーた始めっ!!!」
ズドーンっ!!
続けてあさぎり、まつゆきの76ミリ単装砲も砲撃を開始した。
ズドーンっ!!ズドーンっ!!
この世界の人々からすれば凄まじい砲撃音に聞えていた。
「停止しなければ、纏めて沈めるっ!!即時停戦されたし・・・・・・・」
江田一佐は強い口調で訴える。
これ以上の領海での勝手は許さないとの意思表示でも在るのだ。
少しやり過ぎの感は有るが、こうでも言わないと双方の軍隊は戦闘を止めないとミルディーナは言って居たからであった。
「ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊第120艦隊所属のミルディーナ・ネービィーナ大佐だっ!」
「双方とも剣を引けっ!これ以上の戦闘行為は、戦勝者であるニホン国の名の下に停止される。」
「貴官らは速やかなる停戦と降伏に応じよとアディーレ閣下が申されて居る。」
「コヨミ皇国の者らもニホン国の指示に従われよ。応じなければ、この海域を管理して居る日本海軍が処断をしなければ為らないっ!!」
ミルディーナの言った事は大げさだが、先の砲撃のお陰も有ってか、双方は大人しく停戦に応じたのである。
「姫様・・・・・・・・」
「総員っ!!剣を収めよっ!!」
「帝国軍の将兵達よっ!!武装解除に応じて大人しくするのだっ!!」
「貴君らの処遇に付いては、コヨミ皇国第一皇女・暦紅葉の名の下に悪いようにはしないと確約する。」
「ニホンなる国とも処遇に付いては、キチンと私が交渉しよう。」
「ええっ!!コヨミ皇国の第一皇女だって?!」
「そんなのが・・・・・どうして・・こんな所に?」
「道理で強い筈だ・・・・・・・」
帝国の将兵らは目の前の剣捌きが、やたらと上手くて無茶苦茶に強い女性の正体を知って合点が行ったらしい。
紅葉の一言に帝国軍の将兵等は、大人しく武装解除を始めて行く。
権威と言う物は、他国の王族であっても、その威光は絶大で在るらしい。
これにて龍雲海沖海戦は、終了する事と成った。
これがこの世界での日本の戦争の始まりであり、長きに渡るこの異世界に措けるアースティア大戦と言う世界大戦の終わりの始まりでも有ったのだ。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後11時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・関東地方・東京都・千代田区・永田町・総理大臣官邸周辺にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
場面は変わり、戦闘が終わってから数時間が過ぎ去り、時刻はその日の夕方と成った頃の事である。
日本国内では、第二次世界大戦後以来の戦闘で有り、戦後初の防衛出動でもある。
日本国内では、それはもう、上へ下への大荒れの大騒ぎと成って居た。
戦いの全容は、防衛省や海保の保有するドローンのカメラでの生中継形式で放送され、国民全ての知る所と成って居た。
この英雄的な救出劇と新たな出会いや火種と成った報道を見た国民達は、完璧な法律を巡視した自衛隊の戦いぶりに、多くの人々は賞賛の声を上げて、今回の防衛出動に対して、現政府への支持を表明して居た居る意見が多数を占めていた。
それでも国会と総理官邸、防衛省の周りには暇人(反戦運動家と団体)が、内閣の解散と総理と防衛大臣の辞任と逮捕、防衛出動に関わった全ての自衛隊員に対して、即時辞職と即時逮捕を訴えた。
中には裁判所に訴えを起す反戦団体と反戦活動家、反戦弁護士団体も現れた。
そんな事をした彼らは、これから誰に如何やって、どの様な方法を用いて、自分達の身を守って貰うのだろうか?
助けられた人々は自衛隊員に感謝をして居るが、助けられた者達に対しての言葉はと言うと、酷い物の代表を上げるとすれば、反戦活動家達からは国民の恥と言われて居た。
日本は戦争どころか、紛争や自衛行動すらしては行けないと言い。
戦争するくらいならば、降伏して相手の言い分を聞くべきだとまで言い切っていた。
戦争に成るのは日本人と日本政府が必ず悪い事をして居て、全ての責任は日本人に有ると言う過激な者まで現れて居る。
身を守ったり、人を助けに行ったり、戦時のゴタゴタと後処理をする為の国際貢献をする事が、そんなにイケない事で、全てが悪なのだろうか?
「戦争はんたーいっ!!」
「安元総理は辞任して、警察へ出頭しーろーおおおぉぉぉーーーーっっ!!!」
「小西大臣は悪魔の所業をしたああぁぁぁーーーーーっ!!!即刻、警察は逮捕するべきだああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」
「平和憲法を守れえええぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!」
「被害を受けた国へ平和使節をっ!!」
「政府は、見知らぬ国家とは付き合うなああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」
「半島国家との国交はんたーいっ!!」
「殺人自衛隊の解散と殺人自衛官を逮捕をおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!」
「日本は国土売り渡してでも、海戦相手の当事国に謝るべきだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!」
「そうだっ!!そうだあああぁぁぁぁーーーーーっ!!!日本は戦争するから悪い国なんだあああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
様々な楽器や金属やプラスチック製の物を鳴らしての戦争反対の大合唱。
これが悲しいかな、日本人の戦後の平和主義の実情だった。
戦争から目を背け、紛争や領土と領海に資源問題から目を逸らし、問題解決を先送りしながら棚上げをする始末。
戦後間もない途上国への援助は、モノや人では無くて、お金を渡しさえすれば良いじゃないかと言う。
世界の争い事は全て他人事で、知らんかをして居れば良いと考える様に成ってしまって居た。
隣国に幾ら影口と悪口に嫌がらせを受けても、只管に黙って居た。
2010年代に成って、ようやく防衛や歴史に関する反論をする様には成ったのだが、それでも日本は更なる周りの国々からの嫌がらせを我慢をした。
日本の反戦運動・・・・・ヘイトスピーチは、どれくらいマトモな運動をして居るのだろうか?
この世界の日本で反戦運動して居る人々の中には、ホームレスや人権差別主義者に失業者が混じって居たのである。
この姿を異世界の人々が、我が国の現状を見たら、どう言う顔と反応をするだろか?
誰も国を・・・祖国を・・・思っての発言じゃ無く。
自分達に迷惑を掛けるな等と自分本位で、身勝手な発言に呆れるかも知れない。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後11時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・関東地方・東京都・千代田区・永田町・総理大臣官邸・総理執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
安元総理大臣は、その様子を窓からこっそりと覗き、げっそりとした表情で呆れて居た。
日本と言う国家存亡の危機、もとい・・・地球系転移国家郡の存続の危機と言っても良い。
他の地球系転移国家は、日本の自衛隊の防衛とあさくら号救出の出来事を称賛し、その行動を称えていた。
「自衛隊の勇気を称える。」
「日本国民の気が知れない。」
「何故、この危機に悠長な事が言えるのだろう?」
「馬鹿なのか?アホなのか?」
「平和ボケも良い所。それどころか、日本人は自国を滅ぼす気か?」
「国土を売り渡す?お人好しが過ぎる。」
「最早、日本の反戦は精神的な民族病レベル。カウンセラーか心療内科の受診を受けるべきだっ!!」
まぁ、此処まで言われても戦争臆病風と敗戦病と言う病気は治らないだろう。
安元は、戦闘結果の報告を小西大臣から総理執務室で受けていた。
「殺人罪なんて冗談じゃないっ!!」
「自衛隊と隊員等は、国土と国民を守りに行ったのに、あの連中は、こんな時にまで、一体、何を考えて居るんだっ!!」
「一歩間違えれば、自分達も、どうなるのかを考えないのか?」
「まぁまぁ、お気持ちは分かります。」
「今回ばかりは自衛隊の隊員等も、本当にげんなりとして居るようです。」
「俺も裁判所に訴えられましたが、弁護士を通じて訴えを起した側に名誉棄損で訴え返してやりましたよ。」
「裁判所も検察も馬鹿馬鹿しいと訴えを却下させたらしい。」
「我が国の司法の判断が、マトモなのが唯一の救いだな。話は脱線したが、海戦の結果を聞こうか。」
「はい。今回あさくら号を襲撃と言うか、襲い掛かってきた未承認異世界国家・・・・・・原則の法律的に言えば、武装勢力集団の名は、ローラーナ帝国と言う国家集団の軍隊らしいですね。」
「詳しい聞き取りは後日に成りますが、唯一にして一番の帝政国家である事を自称して居り、この世界では通称、帝国と名乗って居る覇権軍国主義国家の様ですね。」
「それと、交戦した艦隊の最高指揮官である女性が、色々とこの異世界に付いて話してくれて居ますし、それとは逆に彼女の方はと言うと、此方の事や地球世界の事も質問攻めで聞いて来て居ます。」
「当然でしょうね。見た事も聞いた事も無い国とその軍に負けた訳なのですから・・・・・・・・」
「それに帝国は、この世界でも最も多くの国土と属国と国軍を有するらしいですしね。」
「今後の事を考えれば、これ一回切りで武力衝突が終るとは思えません。」
日本政府は、交戦した帝国の事を法的観点から武装勢力と呼んでいた。
その理由として、国交を持って居ない事と未承認国家である事と異世界に来てしまい。
まだ、何所とも国交が無いのが主な理由である。
「見知らぬ国家にコテンパンにやられてはな、無理もないだろうな。そう言えば、もう1カ国の艦隊が在ったな。」
「ええ、それが問題なんです。1カ国は我が国と紛争を起こしました。」
「ですが、もう1カ国は我が国のフェリーを助けて居ます。」
「そして、そのもう一カ国の艦隊らは、この戦闘で多くの捕虜を捕らえて居ます。」
「本来なら近隣の国に仲介を通じて、捕虜返還と損害賠償を求めたりするんですが・・・・・・・」
「何でもフェリーを助けた国、コヨミ皇国と言うんですが、そのコヨミ皇国の暦紅葉皇女殿下の話では、この世界は世界大戦の真っ最中とか。」
「はぁ!?世界大戦真っ最中?」
「はい、それも600年近く帝国が周辺国へと戦争を仕掛け続けて居るらしいとの事です。」
「詳しい事は今も聞き取り中ですが、福岡市に着きしだい、この異世界の情勢に付いて聞き出す積りです。」
「ですので、外務省からも人員の派遣をお願いします。」
「何とも凄いスケールの大きい話だな。」
「地球では、長く戦争を行ったとしても近代では8年から10数年。昔なら精々100年くらい戦争するがやっとだろうに。」
「それを世界規模で、やるとはな・・・・・・・・」
「想像も付かない話ですね。丸で映画や小説の世界の話です。」
「ともかく、帝国の捕虜とその皇女様らの御一行は、丁重に福岡市にお連れしてくれ。」
「捕虜に付いても、瀬戸内にある無人の集落と化した離島が幾つか在る。」
「今は其処を整備して収容所にしようと考えて居る。」
「それと皇女様との面会に関しては、外務大臣の諏訪部には話を通して置く。」
「しかし、面倒な事に成るのは目に見えるなぁ・・・・・・」
「それもそうですね。」
「これで我が国は、本格的な戦争に巻き込まれるのは半分確定して居る様な物ですし、帝国はブライドが高そうだと現場の自衛官が聴取で聞き出して居ます。」
「それなのに・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ああ、肝心の国内と国民の一部が、アレじゃなぁ・・・・・・」
外に目をやると・・・・・・・・・・・・・・・・・
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「総理を辞めろっ!!内閣解散っ!!自衛隊解散っ!!責任者逮捕っ!!異世界外交するなぁっ!!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「総理を辞めろっ!!内閣解散っ!!自衛隊解散っ!!責任者逮捕っ!!異世界外交するなぁっ!!!」
ラップ風に反対の歌を歌って居る活動家達。
この状態が官庁街周辺で行われ、地方では県庁と陸海空の自衛隊の施設周辺でデモが行われて居た。
彼らの多くは今回の転移災害で職を失った人々だった。
他にも不安に駆られた人やヘイト活動を普段からして居る活動家が居る(政府批判をして居る各種活動家が混じって居る)
日本が如何に戦争アレルギーに満ち溢れているかを物語って居る。
こんな状態で異世界大戦等にでも巻き込まれたりしたらと思うとゾッとする安元達である。
「本当に国民は、この国を・・・・日本をどう思って居るのだろうか・・・・今までは、先送りに出来る事がある程度は許されたが、今度はがりはそうは行かないぞっ!!!」
「帝国は格下の軍隊を持つ大国だが、相当な兵力が有るらしい。」
「かつて朝鮮戦争時代にアメリカ軍が人民解放軍の大兵力に苦しめられたのを知って居たり、覚えて居るのは、どれ位だろうか?」
「多分。彼らは何も考えてはいないでしょうね。迷惑だから、不安なんだ、巻き込まれたくない。」
「どんな国でも民族でも世界でも話し合いは出きるとね。」
「ですが、現実はそうはいかない。気に入らなければ攻撃するし、都合が悪ければ交渉のテーブルには着きたくない。」
「持って居なければ、強盗してでも奪うのが当たり前だと言い切るのが、強権を持った国家や組織です。」
「帝国は覇権国家、民主主義が基本として大半を占める我々の勢力とは相容れないでしょう。」
「兎に角だっ!!講和を含めた模索と周辺国の調査、それに周辺国と国交を結ぶ事が最優先にしなければな。」
「それに丁度良い相手も来て居る。この好機を逃すものかっ!!」
戦時下の一歩手前でもこんな有様である。
とある世界の国々を擬人化した漫画に、日本を例える言葉がある。「ああ、結局、何も決められない決まらない。」とね。
昔から纏まろうとすると揉めて物別れに成りそうになり、このままでは国が危ないと感じた時だけ決められるのが日本である。
ギリギリに成らないと決められない、決まらない。
日本の特撮ヒーローの如くピンチに成らないと強くなれない国家、それが我が国の現状だったりする。
そんな残念な国家日本の決断は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたーいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!戦争はんたいっ!!」
「本当に大丈夫なのか?我が国は・・・・・・・・・・・・」
安元は官邸の外の大きな訴えにウンザリと言う感じで、日本の将来に不安を感じずには居られないのであった。
そんな姿こそ、平和主義憲法教とその信者達が、平和一番、戦争はんたーいっ!!と・・・・お経を唱える続ける悲しい平和主義国家日本の現時点での悲しき姿だった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月4日・午前10時00分頃・日本国・東シナ海近・コヨミ皇国・南西国藩領及びローラーナ帝国領・シャッポロ州・龍雲海沖近海にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この日の午前9時頃、海上保安庁の巡視船やしま以下、巡視船7隻が到着し、海自護衛艦隊と合流した。
海上自衛隊のあさくら号救援派遣艦隊は、帝国とコヨミ皇国の両帆船の曳航を開始する。
諏訪部外務大臣の命を受けた外務省官僚である藤原敬二は、東京から部下を引き連れて、急ぎ新幹線で福岡市まで行き、空自基地で待機して居た海自の哨戒ヘリコプターで、同派遣艦隊と合流を目指して居た巡視船団に乗り込んだのであった。
彼が命じられて居たのは、帝国海軍を名乗る武装勢力との戦後処理と半島国家及びこの世界の情勢を聞き出す事だった。
おおよその各陣営と世界事情に付いての情報に関して、聞き出して居るが、詳しい事を知るには、日本政府の関係者が直接聞きに行くしかない。
帝国艦隊の生き残り戦艦とコヨミ皇国の水軍船は、護衛艦と巡視船、それにシードラゴンに曳航されながら、その一路を福岡市へと向うのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月4日・午後10時05分頃・日本国・東シナ海近・コヨミ皇国・南西国藩領及びローラーナ帝国領・シャッポロ州・龍雲海沖近海・ヘリコプター搭載型護衛艦いせにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
外務省は、いせの士官室を会談場所に指定し、今回の海戦の主な関係者を集めたのである。
前日の戦闘後に行われた際の事情聴取の様な形式では無く、本格的な会談である。
この会談には、帝国のアディーレ・グレッサとミルディーナ・ネービィーナとコヨミ皇国の暦紅葉。
それに紅葉の近衛隊からは加藤絵美里と言った上官と従者が出席していた。
嶋津義隆はコヨミ水軍と自領藩水軍の航行の指揮を執って居る都合で、此処には参加しては居なかった。
「初めまして異世界の方々、日本国・外務省から派遣されました藤原敬二と言います。」
藤原の挨拶に、その場に居る異世界人達らが一礼を受ける。
「先ずは、この場に居る両国の皆さん申し上げて置きますが、これは講和交渉や国交交渉を話し合う場では有りません。」
「日本国政府が、この世界に付いての情報を聞き出す為に設けた席で在る事や、公平な情報収集を我々が求めての事なのです。」
「両国の事情を公平に聞きだし、対応をする為に本海戦に関わった両国の方々に、詳しいお話を聞きしたい。」
「わたし達、コヨミ皇国の事情から話してしまうのも上手くないわ。」
「はい、姫様。此処は帝国のアディーレ殿から、ニホンの方々に世界情勢をご説明され方が宜しいかと思います。」
「それは何故でしょう?」
藤原が疑問を聞いて来た。
「まぁ、こう言うのもお恥ずかしいのですが、この世界の6割以上は帝国勢力なので、反帝国勢力にして、負けが込んで居る側の主張を先に聞いても、色々と話が上手くないと思います。」
「負けている側の言い訳と言われたり、そう聞えたりされるのが、お嫌と言う事なのでしょうか?」
「有体に言えば、そうですね。それにもう一つだけ、理由が有ります。」
今度はアディーレが発言を始めた。
「皇女殿下、それは600年前の開戦の理由の事ですか?」
「それも有ります。まぁ、それが一番の理由に成るでしょうね。」
「我々には、何を言って居るのが益々分からない。」
「藤原殿、簡潔に言えば、我が帝国が開戦当初の近隣諸国への宣戦布告の理由が未だに不明で、謎なのですよ。」
「宣戦布告が謎?」
「はい。どんな歴史書でも公文書でも残るはずの帝国の周辺国への突然の侵攻。」
「帝国がユールッハ地方の一小国であった頃、ローラーナ王国と呼ばれた時代。」
「英雄王と呼ばれ、我が国の初代国王にして、後の初代皇帝と呼ばれているギルバート・メリッシュ・ローラーナ。」
「彼の中盤から後半生の人生に付いては謎が多く。突如として狂気に満ちた性格となり、共に戦った筈の戦友や友好国ですら敵に回してしまいます。」
「そして、彼は全世界を統一を掲げて戦端を開いたのです。」
「更に600年前に何が起きたのかすら、今では忘れ去られ、記録すら無い始末。」
「今では彼の後を継いだ歴代の皇帝は、如何なる人物でも性格が豹変するらしく。」
「進んで皇帝の座に就きたがるのは、覇権主義に染まった皇族だけと成って居るのですよ。」
「アディーレ殿。貴女は、まともに歴史を学んで居るようですね。疑って済まない事をした。」
紅葉が謝罪をして頭を下げて来る。
「いえ・・・・ですが皇女殿下。只、私は学んだ事を申し上げて居るだけです。」
「ですが、帝国の中には、妄信的な覇権主義者や世界統一主義者に、自己保身と出世にしか興味を持たない者らが多いせいで、善政を敷く人物は地方へと飛ばされるのが当たり前に成って居ます。」
「人が良い者の出世は、精々地方や辺境の侯爵位か軍司令官に地方長官、市長、州長官などの帝国本国から遠く離れた僻地な地域に配置されるだけでしょう。」
「私からは以上です。帝国の臣民である手前、国家の機密に関して余り多く事を外国には言えませんので、この辺りでこの手の話に付いては、ご勘弁を願います。」
「それに私の様な者は、元々下っ端の役人兼軍人であり、地方領主に過ぎないので、余り多くの国事に関わる機密に関わって居ないので、話せない、知らないと言うが本音なのでずが・・・・・・」
「その他のこの世界の付いての帝国とは別の視点や情勢や地理に関しては、コヨミ皇国の方々からのご説明でも十分でしょう。」
「分かりました。」
アディーレの大まかな説明を聞き終わる藤原。
続いて紅葉が世界情勢と地理に付いて版画で印刷されて居る地図を指差しながら説明をして行く。
「先ずは、此処から直ぐ西に在る世界最大の大陸、ユーラシナ大陸があるの。」
「そして、その大陸の遥か西方に地域。ユールッハ地方に通称帝国と呼ばれる国。ローラーナ帝国が在るわ。」
「その帝国が盟主を務める同盟の名が西方バルバッサ帝国同盟。その構成国家は次の通りよ。」
「ローラーナ帝国、オムジネ―ル帝国、べムジャール帝国、べズーラ公国、ペールジャ王国、カレールーナ帝国、ガルマニア皇国」
「タリアナ都市国家連合国、パリランカ海洋王国、バジリアナ王国、ドラグナー皇国、ムゾリナ公国、シオン公国、ペリソナ首長連合国。」
「バルゾナ王国、サカドラ国等の同盟国・属国、属領、殖民地等を合わせると120以上に成りますね。」
「帝国は、この世界の凡そ5割5分を勢力支配をして居ます。」
「そして、帝国と対立国をして居る地域は、アセリナ王国を中心としたシベリナ地方王国連合同盟です。」
「通称名シベリナ連合は、アセリナ王国、アルガス公国、ラクロアナ王国、ダバード・ロード王国。」
「コヨミ皇国、ドラグリア白龍大帝国、オローシャ帝国の7カ国からなる同盟連合で、両勢力の均衡と言うのは、元々はユーラシナ大陸を二分するほどの勢力で在りました。」
「所が帝国との戦争政策の違いから、幾つかの勢力に分かれたり、滅ぼされたり、中立を取ったりして分散してしまって居るのよね。」
「今の同盟の形は、今から250年くらい前に締結完成されたわ。」
「また、ローラーナ帝国の北と西の一部には、未だに抵抗を続けて居るリユッセル北欧同盟がある。」
「大陸西方の海に浮ぶ島国のアルビオン王国を中心にして、ガリア帝国、ヒスパニア皇国、オーランタ商業都市連合国。」
「デボン王国、コーランド王国、スカジナビア王国、ホムル王国、レイオス皇国が600年もの長きに渡り頑強に抵抗し続けて居るわ。」
「帝国は自国の南部と西方の国々を次々と制圧したり、従属させたり、従属式同盟を組んだりして、今も勢力を伸ばし続けて居るわ。」
「このままではリユッセル北欧同盟は、ジリ貧状態が続き、後百年しか持たないと囁かれて居るのよ。」
「次にシベリナ連合から南方には、ミンフィル王国東南諸国同盟の勢力が在るわ。」
「此処は西方バルバッサ帝国同盟の東南戦線の最前線の国家であるカレールーナ帝国が、帝国から侵攻制圧を任せると約束されたレノア地方と呼ばれる地域が在るわ。」
「この地方も長い間、西と東に分かれて戦争が続けられて居たの。」
「其処へムジャール帝国、ペールジャ王国がカレールーナ帝国を支援する形で参入し始めたわ。」
「そこへ東南諸国の筆頭であるミンフィル王国が小国の寄り合い同盟を作って対抗して以来、膠着状態が続いて居るわね。」
「最後に南西に位置する所に中立大国が有るわ。」
「エルフの大国であるアルブヘイム王国を中心としたアセニア亜人連合同盟と言って、この地域は所謂のエルフ・ドワーフ・獣人・人魚・龍人等と言った、人に近い姿をした亜人族国家の集まりよ。」
「それ等は種族事に国家を持って居るの。」
「中には諸島の国土と海底洞窟に都市を作って居る人魚族や浮き島に都市を築いて居る翼人族や竜人族も居る変わった地域でも在るのよ。」
アルブヘイム王国は、ユグドラシル大陸を治めるエルフ王国で、とても気難しいとされて居る種族だ。
エルフの世界に分散して住み着いて居る亜人族で、住んで居る地域事に文化や生活様式に風習も姿も違う種族である。
エルフ族は、複数の部族と王侯部族が居て、多数の政体を持った国家が現存する。
寿命は数千年と言われて居るが、事故に病気や戦災で命を落とす事も有るので、実際の最高寿命に付いては、誰にも分からないし、エルフ族達も知らないから、正確な記録も無い。
ダークエルフ族・シルフエルフ族、イフリートエルフ族、ウンディーネエルフ族、ノームエルフ族等と種族多岐に渡る。
この世界で一般的にエルフ族と認識されて居る代表格はシルフエルフ族と言われて居る。
他にもマーメリア海洋王国 人魚又はマーメイドと呼称される人魚族が暮らす国家。
日本から東へ3千キロ付近に点在する3千もの群島に列島諸島と海底洞窟等を利用して国家を築いて居る。
人魚族と言うのは、世界中の海底に居住区が在るらしい。
名産品は海産物や珊瑚に真珠等の装飾品や塩と貝殻を加工して作った粉を売って居る。
特に貝殻は肥料等に用いられるので、地上との取り引きは頻繁に行われて居る事が多い。
だが、女性が多い種族性のせいか、愛玩具奴隷として人攫いに会う同胞も多く居て、人魚は奴隷市場で高値が付くらしい。
マーメイド族
人魚またはマーメイドと呼ばれている亜人間種族の総称。
主に女性主体の種族で、男性が生まれて来るのは稀である為に、他種族男と交配する事で繁栄して居る。
この世界に来て新たに出きた人類学部である高等知的人類種族学の分類では他種卵子依存交配人類に分類される。
他にもラミア族等の女性主体の亜人間族らが、この分類に当たるらしい。
海中で尾鰭と鰓呼吸と水かきで行動し、陸上では二足歩行と肺呼吸で活動して居るが、皮膚の水分を保つ意味で定期的な水浴びかお風呂等がが欠かせない。
これを怠ると皮膚が乾いてカサカサと成り痒みが露に成って爛れてしまい、最後には皮膚病が蔓延してしまう事態と成るので、尾ひれと足のケアが欠かせないのだと言う。
平均寿命が300歳から500歳の間と言われて、やや長命らしい。
短命主相手だと結婚が3回するのが当たり前で、性格がオープンで大らかなな性格で海に生きる女性で、素っ裸で人前を歩くのに気にしないほど羞恥心が無いらしい。
人魚族と一緒に暮らして居る他種族の男性は、エロ本や他種族の裸で興奮出来なく成ると言われて居るほどに、見慣れてしまう事を残願ってしまう贅沢な悩みを抱えてしまう事に成る。
何せ多重婚が当たり前な種部民族社会だからだ。
それは何故かと言うとだ、人魚族の女性の一人と結婚すると最低一人目を合わせて3人は付いて来る。
姉妹・親戚・知人に友人、オマケに母娘って場合も有る。
特に母親が未亡人だった場合は、特に注意が必要だと言われて居る。
確実に母娘二人で、尻に敷かれるからだ。
ドワーフ部族連合国
ロックアイランド亜大陸に住まうドワーフ族の連合国で、主に鉱山を開拓して様々な工業製品を売り出して居る国。
山脈地帯と盆地地帯や地下洞窟に住みながら、工廠商会を中心とした職人社会で、鉱山から取れた地下資源の鉱物を用いた加工品や鉱物素材を輸出する事で経済を支えている国。
ドワーフ族
平均寿命が300歳前後で、身長が145センチから160センチ前後と小柄な背丈とドップリとし体型に筋肉質な身体つきである。
とても勇敢で強靭なパワーと手先が器用な事で知られて居て、主に鉱山と併設された都市や地下都市を築いて暮らして居る。
彼らの鍛冶工房等で、作られている工業製品は、成果でも指折りの一級品と言われて居る。
ジャパリンランド獣人部族連合国
獣人族が住まうと言うジャパリランド大陸で、各部族が平和に暮らし居る言われて居る獣人族の連合国。
殆んど他の部族が足を踏み入れて居ない土地で、物好きが探検した書物くらいしか文献でか彼の国の諸情勢を知る事は出来ない。
だが一つだけ注意する事が有ると言われて居る。
それは彼の土地から帰った者達は、何故だかケモナーとか言う精神の病に掛かると言われて居る。
獣人族
様々な獣の容姿を持った半人の亜人間の総称で、人型タイプと獣人型タイプが居るが、何方も同じ獣人族である。
種族や部族によって差異が有り、様々な特徴が有るらしい。
ブリリアイランドキングダム王国 王都・メイプル市 居城・メイプルランド城
アセニア亜人連合同盟内に在る最も東の果てに在るメイプルシロップランド大陸と言う地域内に、多種多様な妖精族達が暮らして居る多種多民族王制国家のこと。
その陣容は多彩で、ヒト型タイプから獣人・無機物・植物等々と言った感じに、これと言った法則のない変わった進化を遂げた種族である。
妖精魔法と言う人間族・亜人族達が扱う魔法とはチョッとだけ違う変な魔法を扱う事で有名な所で在る。
現在は妖精人族ウィステリア王家の正統血筋たるラティファ・ウィステリアが成人した姿と成るまでアーシェ・カムルン・アーカーイム宰相が政務を取り仕切って居る。
妖精人族
人間族に近い姿をして居る妖精族の亜種型種族の事で、人間族とそっくりそのままの姿をして居るが、成長するのが個々人によって差が在り、寿命も同じく長いが個体によってバラバラと成って居る。
その殆んどが国を持たない地域で、人間族や他の亜人族らに紛れて暮らしており、その正体がバレる前に違う地域に移動する生活を送って居る。
妖精族
妖精族とはエルフ族とは進化の過程で枝分かれした別種の亜人種族の事である。だが、エルフのとの違いは、彼らの暮らしがとても人に近い生活圏や独特な地域に分布して居る事に有る。
例えば人の暮らしに紛れたり、、ひれとは反対に人里から離れて暮らしたりと住む場所を進んで選べるのが特徴的と言える。
種族としての特徴的な部分を置きく分けると、羽有り族と羽無し族に小人族の3つに別れて居る。
羽有り族と羽無し族は単に羽が有るか無いかの違いで、世界中に妖精族が広まる過程で、羽が居るか要らないかと進化を選んだ事に過ぎない。
小人妖精族は、所謂手のひらサイズの妖精族達の事で、此方もそれぞれ好みの地域で暮らしたりして居るので山野や町中等で稀に旅人が見かける報告がなされて居る。
別名は雑多な種族と言われるが、自然環境や生活環境の汚染に敏感と言われ、彼らが暮らし難いと感じると、あっと言う間に、それまで暮らして居た土地を放り出して何処かへと消えて行く。
一説の報告では、彼らは半年間で国を立ち上げ、人間の国と交易で栄えたが、その20年後には、妖精族との交易目的で滞在中の人間達が、どうしても出てしまう日常生活から出された廃棄物の処理が追いつかないくなり、大量の汚染物質とゴミで町が溢れると、一夜にして国が崩壊したという記録が有ると言う。
小人妖精族
別名はリトルフェアリーと呼ばれる羽根つきの小妖精のこと、地域によって姿格好が違い、女王制の女系種族で種族種類の7割が女性タイプ。
平均寿命が200年から250年程度と言われているが、はっきりとした記述が無いので分からない。
女系タイプの種族は渡り飛行をして気に入って地域に降り立つと繁殖活動の為に、人間と同じ様な等身大の背丈と変身し、羽すらも隠して町中で暮らしたり人里に近い地域で男を誘い命を繋ぐ為に子作りに励む。
ギガンテス連邦国 首都 プロトカルチャックシティ
ユグドラシル大陸から南東270キロの地点にあるファンタジー系の巨人族とSF系の巨人族達の連合国で、その歴史は巨人戦争時に転異して来たSF系の巨人族達が、この世界に住まう在来巨人種族と同化して暮らし始めたのが始まり。
ガテン系ボディビルダ―の様な肉体美を持った爽やかな感じの人達で、ダンベル何キロ持てる?とか、思わずナイスバルクと言ってしまうかも知れない。
総人口は一千万人。
ギガンテス亜大陸
ユグドラシル大陸から南東270キロの地点にある巨人族達が暮らす亜大陸。その殆んどが草原と山脈地帯が多い。
巨人戦争の名残りで、巨大な宇宙戦艦が今も多数稼働状態に在るが、燃料不足で飛べず、今は便利な家電製品扱い兼居住スペースとして使われている。
ゼントラーメルート巨人族
宇宙生活に適応する為に、とある世界の宇宙文明で、生体品種改造した人間族の成れの果てで、長い年月が経つに連れて、本来何の目的で巨人化したのたのかすら忘れてしまっい、戦争することしか出来なく成ってしまった巨人族のこと。
巨人戦争時に、リトルリアンとゼントラーメルート巨人族達が呼んで居たアースティア世界の人々と戦い、和解する事で戦うこと以外の活動を知る事が出来た。
某巨大要塞型宇宙戦艦が登場するSFアニメの宇宙人の様に、この世界の巨人族達は、ゼントラーメルート巨人族の技術力で人間体サイズへと変身が出来るらしい。
今は似たような見た目を持つギガンテス族と共生しながら静かに暮らしている。
平均身長18メートルから22メートル。
ギガンテス族
アースティア世界に古くから暮らしている巨人型の亜人族で、その巨体ゆえに、同種同士でしか繫殖交配できない珍しい亜人族。
だが、巨人戦争時に出会って戦い合ったゼントラーメルート巨人族との出会いで、その技術力を用いる事で人間体サイズへと変身が出来るようになった。
今現在の同種族は、静かに仲良く暮らして居る
平均身長18メートルから22メートル。
リトルリアン
ゼントラーメルート巨人族達からみた通常サイズのヒト族達の総称。
祖先の姿をしている意味もある。
ホビット族
手先が器用な農耕種族で 身長が150センチ程度の小柄な亜人族の人々。
これといった能力は高くないが、同胞達の中には、何故か英雄伝説に登場する英傑と共に戦うトラブルに巻きまれる事が在るらしい。
翼人族
アセリア族を含めた翼を持った亜人族で、飛行能力を始め、魔法や身体能力に優れている亜人族の総称。
因みに翼人族中で、アセリア族だけが中二病である。
「って具合かしらね。」
「色々と居そうな地方ですね。我が国の国民が聞いたら、是非観光して見たいと言うかも知れません。」
「まぁ、今しがた言ったのは、ざっくり大まかな種族の説明ね。」
「他にも少数種族の部族なんかも散らばって暮らして居るから、全部見て回るのに大変な労力が居るわ。」
「それにとても気難しい人々も多い土地だから、国交を開くには必ず誰かに仲介をして貰う必要が有るのよ。」
「それ以外に方法が有るとするならば、何か貸しを作る様な出来事が有れば、ある程度の要求は通ると思うわよ。」
「何せ、彼らは変な所で義理堅い人達なのよ。」
「勢力規模は、世界で約三番目に大きい人口を持つ地域なのね。」
「でも基本、人口の多いだけの中立地域国家だから、戦争関係の話を嫌って居るわ。」
「特に人口が減るのを気にして居るの。」
「単一種族な上に、繁殖能力に癖が多いのも関係して居るわね。」
「例えに上げるならば、人魚は女性9割を越えて居るとかで、繁殖相手の男を求めて渡りをして居るとかね。」
「その辺の話は興味が有るのなら、国元に使いを出して置くから、後で資料を渡して上げましょうか?」
「はい、是非ともお願いします。」
「亜人族は我が国でも、とある理由で大変に人気が有りますしね。」
「それに地球では、昔話や創作の中でしかない人種ですし、我々は大まかな伝承創作の言い伝えの話でしか、亜人の人達の事を知りません。」
「是非、その手の資料を提供して頂けれる事は、我が国としても、大変に有り難い事と思います。」
「他に何か知りたい事はありませんか?」
「いいえ、時間もそろそろ丁度良い頃合いです。」
「今日はこの辺でお開きにして、後日、また日本での会合で今し方聞いた事とその他に何か聞きたい事を整理してから、改めてお聞きしたいと思います。」
「それでは皆さん、ご昼食をご用意しました。」
「間も無く到着しますので、その場にお待ちください。」
藤原と外務省の官僚らは席を立って士官室を後にした。
程なくして海自の自慢のカレーが振舞われた。
食べ方を知らない彼女達は、茶色いソース風スープを見てギョッとして居たが、一口食べると目の色を変えて、カレーを頬張って食べて居た。
「何これ?!美味しいっ!」
「姫様っ!はしたないですよっ!!」
「絵美里の方こそっ!!口の周りが茶色いスープたらけよっ!!!」
「姫様だってっ!!」
そんな二人は、揃ってお代わりをする始末。
「うーん、これは軍事食に向いて居るかも。」
「閣下、この様な食事を敵国の者にまで振舞う日本は何者なのでしょう?」
「それは分からんっ!」
「外務官僚の藤原殿が言うには、我々を奴隷や身代金目的の材料にはしないとも言って居た。」
「奴隷制度や借金の肩代わりに、人を連れ去る事も娼婦にする事すら無いらしい。」
「ですが・・・国許には、何時ごろ帰えれるかは分からないとも言って居ましたし・・・・・・」
「それは二ホン国が異世界から現れた国だと言う事や我が帝国との外交ルートが無いせいだ。」
「だから私は、本国からの迎えはや帰国に付いては、当面の間は無いだろうと考えて居る。」
「我が帝国の上層部は、負け戦の将兵の捜索など滅多にしませんからね。」
「それもある。」
「それに面子が有る事情も有るが、日本と言う国が、どの様な国家で有るかが判明すれば、帰国への道筋に我らが協力できる面も有るだろう。」
「長い道筋に成りそうですね。」
「しかし、捕虜待遇の面で心配が無いのは有り難い。」
「我々からすれば、やり過ぎと言う感も否めないが、コヨミ皇国もシベリナ連合も捕虜待遇も我がより良いと聞くが、犯罪者を扱うのと然程変わらない筈だ。」
「私達は捕虜の身で有りながら未知の国家に行く事は、私達に取っても何かを得られる物に成るかも知れないからな。」
「はい。」
未知の異界国家日本。
その全貌を目にするまでの間、色々な事を2カ国の4人は話し合ってい行くのである。
翌日、紅葉達は日本到着までの間、特にする事が無いので、ヘリコプター搭載型護衛艦いせの艦内の見学を申し出て居た。
帝国の少将にして辺境侯爵であるアディーレ・グレッサと、その副官であるミルディーナ・ネービィーナ大佐の二人も見学を許されて、同行する事に成ったのである。
軍事機密の問題は、無いと日本政府は判断した。
特に技術的な面での真似が出来ないし、帝国軍側には、日本側の攻撃を防ぐ手段も無いとの見方からである。
強いて在るとすれば、精々自衛隊が運用や作戦の面で油断しなけばと言う条件付きで有ればの話なのだが。
それでも防衛省が見せる場所を指定し、いせ艦内で見せて貰える場所なのは、艦橋に甲板と各種武装に加え、格納庫である。
それと各種護衛艦の基本装備に付いてであった。
一行は最後の見学場所である格納庫で、アパッチと海自が保有する哨戒機の説明を受け終わった時である。
アパッチの周りを紅葉が絵美里と見て居る時だった。
「うわっ!」
「きやっ!」
目の前の物珍しい軍用の乗り物に夢中で見て居る紅葉に、何者かがぶつかり、お互いに尻餅を付いてしまったのである。
「夢中に成って居たので気が付きませんでした。済みません・・・・あのー、大丈夫ですか?」
倒れた相手は、慌てて起き上がって紅葉に手を差し伸べた。
青年は怪我で収容されて居たあさくら号の乗客で、如何しても艦内を見学したいと海自側に言って、いせを見学して居た青年だった。
「此方こそ、ごめんなさい。わたしの方こそ、物珍しい物に夢中で、前を見ずに歩いて居ました。」
差し伸べられた手を取った紅葉は、何んとなく相手を良く見る。
パッとしない感じで、ラフな服装をした彼は、自分と歳が近い青年であった。
手をしっかりと握り締め立ち上がった瞬間、不思議な感覚が彼女を襲った。
彼女の脳裏には断片的な走馬灯が垣間見え、その内容は近い将来へと続く未来が見えた。
それは・・・・・自分と親友達と彼と歩む先に在る未来だった。
それはとても苦しく、険しく・・・・供に歩いて行く道筋であり、そして、暖かい未来へと続いていく道・・・・・
紅葉の見た感覚を例えるなら宇宙世紀のロボット戦争を描いたアニメのエピソードで、戦場で意識を共有した男女のパイロットの感覚だろう。
それは「ああ、時が見える」と言った感じだった。
「・・・・・あのー、如何かしました?」
それは時間にして、僅か1分にも満たない時間だったのに、丸で数時間に渡るシーンを見ている感覚に紅葉は陥って居たのだ。
ぼうっとして、頬が真っ赤に染まって居た紅葉を呼びかける青年の声を聴くまで、何も気が付かない様子であったのたが、青年の一声で、紅葉はハッとして我に返る。
「はっ、えっと、あのっ、その・・・・・・・・」
紅葉は顔が真っ赤に成りそうであった。
目の前に現れたのが、あの御告げの相手、自分の運命の相手かも知れないのだ。
未来視で見た光景の中には、純白のウェディングドレスの白い装束を纏って、一緒に歩く姿が有った。
コヨミ皇国の直径の皇女はお告げの力と呼ばれる予知能力で、結婚相手を決めている。
余程の事が無い限り、その予知は外れないのだ。
彼女の母である葛葉も政略婚の話が浮上すると、勝手に結婚相手を決められる前に、今の国皇である力仁を見付けて居る。
葛葉は、自分の相手として、皇室の一介の旗本に過ぎなかった力仁を見初めた。
その当時の住まいである長屋にて、彼を見つけると、そのまま求婚をし、そのまま襲う・・・・・じゃなかった。
一夜を過ごして、口説き捲くったらしいのだ。
その後、皇室内での政略結婚の話は破談と成るのだった。
何せ、無欲無勢力の立場である身分の低い男が御告げによる婚姻相手だと言われれば、政略結婚で盛り上がる有力者たる周りの者達は、大人しく引き下がるしかない。
特に紅葉は、最も願って止まない庶民に成りたいと言う願いを叶えてくれる相手に巡り合ったと確信し、頬が真っ赤に染まる。
「なななっ!ななっ、何でも無いですっ!」
「でも顔が真っ赤に、やっぱり何処か怪我でも?」
「いえっ!!ほほほっ本当に大丈夫なんですっ!!!」
お転婆同然の彼女が、珍しく悄らしい振る舞いをして居た。
其処へ絵美里が怒りの形相で前へと出たのである。
それは丸で通常の三倍の速度で稼働すると言う真っ赤な色のロボットに乗って居る大佐殿が、ソイツとの戯言は止めろと嫉妬して居る様な感じであると言えた。
「あっあの・・・・姫さまっ!・・・・・・・きっ!きっきーーさまーッ!この無礼者めっ!」
「きっ、き貴様っ!我が国の至宝たる姫様の何処を見て居たのだっ!」
「ってあれ?あれあれ?あああっ!!刀っび!あああっ!そうかっ!この船に乗る時に預けたままだった。」
絵美里は無礼撃ちの体勢を取ろうとして腰に手を当てたが、肝心の刀は海自隊員の管理下に有って、預けたままなのだった。
青年は心の中で(何これ、ツンデレが主人を守ろうとして、間抜けを見せるって言う有りがちなコント的なオチはっ!)と思って居た。
「みっ、見るなっ!」
絵美里は涙目で、己の行動を恥じて居たりする。
ジト目で彼は絵美里を見ていた。
ある意味オタクで有る彼に取って、美味しいキャラであった。
その時、竜史は思った。
この娘は、くッ殺のツンデレ系の残念な奴だなぁ~と思ったのである。
「そっ そうだっ!これは全部っ!貴様が悪いんだっ!!!」
「ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!?」
そう、何故かツンデレは、逆ギレを起こして文句を言うのだ。
特に人当たりが良さそうな相手には、特に・・・・・・・・・・・・
(何それ?これまたツンデレと残念キャラが良く言う台詞はっ!)
「絵美里っ!此方も悪いのです。」
「それに其方の方も謝罪を言って居るのを聞えなかったのっ!!!」
「でっ、ですが・・・・・・」
「兎に角ですっ!此処は大人しく引き下がりなさいっ!」
「・・・・・・はい。」
シュンとツインテールと共に、ガックリとうな垂れる絵美里。
「わたしの供の者が失礼しました。」
「申し遅れましたが、わたしは紅葉と言います。コヨミ皇国の第一皇女です。」
「あっっ!?はいっ!僕は高見竜史です。」
「名前はどのような字で書くのですか?」
「えっ?」
「我が国の暦文字は、貴国の漢字と言う文字と同じ物ですよ。」
「竜の字に、歴史の史の字です。両親二人が変わり者で、神社で名前を選んだ中の一つだったらしく。」
「洒落っ気で名前の漢字を選んだらしいです。」
「歴史に残らなくても、少しでも何か一つでもやれる事が出来たらと、両親は言ってましたけど、当の本人たる僕は、何も出きそうに無いですね。」
「そうなの。でも貴方は近い将来、何かを成せるかも知れませんよ。」
「へえっ?」
「歴史に名を残すのは、金持ちの家の生まれでも名家の生まれでも、有りませんよ。」
「学問は必要ですが、教本通りの人材は特に要りません。返って貧乏か失敗が多い人ほど頭が回り、物事に必死にも成れます。」
「はぁ・・・??」
キョトンとした顔で分からないと訴える竜史。
紅葉の後ろで絵美里が「そろそろ」と声掛けをして来た。
「うふふっ、それでは、また何れお会いしましょう。」
「えっ!また?またって・・・・・」
背の高い和装姿の美人の姫君は軽やかに青年前を立ち去って行った。
去り際に絵美里が竜史を睨み付けて居た。
立ち去る紅葉はこれから起こる事にドキドキとワクワクが止まらなかった。
何故ならば紅葉の最も願って已まない夢は。極普通の女の子に成る事だったからだ。
幼い時から王族や裕福な資産家よりも普通の家に嫁に行きたいと思って居た。
ひょっとしたら、そんな願いを叶えてくれかも知れない相手に巡り合ったかもしれないと想うと、クスリと笑みが止まらず、彼との別れ際には、微笑みながら立ち去った。
先読みの導きが有れば、きっとまた会える筈と・・・・・・・・・・
「皇女殿下と言って居たが、変わった人だったな。」
まさかこの出会いが、竜史の一生に関わる等と彼は微塵にも思って居ないのであった。
それ所か、もうあんな高貴な美人とは、もう二度と関わる事も会う事も無いだろうと思っていたのである。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月6日・午前11時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本国・九州島地方・福岡県・福岡市・博多港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この日、あさくら号を救出し、ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊・第120艦隊を討ち破った海自艦隊と海保の船団は、ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊の残存艦隊を曳航しながら博多港に到着した。
当初は長崎港か佐世保港に行くと言う案も有ったが、軍港と工業港の有る地域を会って間もない国の要人に見せる訳にも行かないと言う理由があった。
況してや、工業主力湾港と軍港を交戦国の人間にも見せる訳にもいかない。
其処で見せても構わない港として、北九州地域の福岡市の博多港を寄港地に選んだ日本政府だった。
コヨミ皇国と帝国の面々は、船から見える博多の港と福岡市の町並みを見渡して日本の地方都市と説明されると、その事実に大いに驚いて居た。
「これ程の都市が、一国家の一地方の町に過ぎないのか?」
「我らは、トンでもない国に戦を仕掛けてしまった様ですね。」
「ああ、本国の連中が、妙な考えを起すのを止められないのが、実に口惜しい。」
アディーレとミルディーナの二人が、それぞれ私見を述べて居た。
「やはり、国力も相当な物だと見て居たけれど・・・・・・・・まさか、此処までとはね・・・・・・・・・・・・・」
紅葉は期待した以上の物だと、己が判断が間違って居なかった事に、感慨深く博多港から見えて居る福岡市の街並みを眺めて居た。
「姫様は転んで怪我を為さっても、タダで起き上がらない方と分かっては居ましたけど、今回ばかりは斜め上の結果だったとしか言いようが在りません。」
「まさか、こんな事に成るなんて・・・・・・・」
「少しでも皇国民やお父様達に良い報告が出きる様に、事前交渉をする積りよ。」
「はっ!!私も及ばずながら、お手伝い致します。」
二人は故国の未来をかけての日本との交渉に、思いを馳せて居た。
港に着いた一行はそれぞれ下船すると、捕虜となった帝国者等は、バスで福岡市の郊外にある30階立てのマンションがある一角へと送られる。
そのマンションがある一画を丸々政府は買い上げて塀を建て、臨時の捕虜収容所にするらしい。
このマンションは、完成仕立てで、売り出そうとした矢先に転移で失業などを理由に、誰も買えなくなってしまったと言う事が有った。
予約までキャンセルされてしまっては、不動産屋と此処を管理して居る持ち主は商売が上がったり状態である。
其処に臨時の捕虜収容所の話が持ち上がる。
地理的にも場所的にも丁度良いと言う事に成り、周囲の空き家ごと政府が買い上げられる事に成った。
後に捕虜が瀬戸内の収容施設へと移った後に、此処は政府の重要な省庁が置かれる事に成るのだが・・・・・・・・・・・
一方のコヨミ皇国側は、駅前のホテルへと招かれる事と成った。
港のターミナル施設の出入り口近くにバスが停車し、入り口のドアが開き終わると一斉にコヨミ皇国・帝国・それにあさくら号の乗員等は、政府の用意した場所へとバスで移動を開始する。
市内は厳重な警戒が為されて居る様子が見て取れて居た。
一部のカメラマンが閉鎖された港からバスが現れるのを待って居て、警官達が必死に制止していた。
マスコミと国民には、この日博多港到着するのは、あさくら号とそれを助けようとしてくれた近隣地域の異世界国家の軍隊、それに武装勢力の捕虜達であるとだけ公表され、詳しい内容は伏せられて居る。
それに加えてあさくら号の乗客を輸送する為のバスが福岡市内を通ると公表していて、異世界国家の要人や捕虜達が、何処に到着する事も伏せられて居る。
特に紅葉達の事は、その全容に付いての情報は、日本政府側としては今しばらく時間を掛けて状況を整理と情報公開の準備が整うまでの間だけ、公然の秘密にしたいらしい。
異世界人の捕虜達に付いての全容も、同じくもう暫くの間だけ伏せられる。
これは移動中の安全を考慮しての配慮と国内の不穏な動きに注意して居るからである。
特に反戦団体や異世界国家に対する畏怖や不信感や恐怖を伝播する事態は、成るべく避けねば為らないのである。
そんな厳戒態勢の中、安全面の観点からマスコミの取材も反戦団体のデモも一切の許可をして居ない。
事は外交問題と異界人捕虜の安全の為で、移送が終りしだい国民やマスコミへの発表予定と成って居る。
しかし、そんな事はお構いなしの者達は、やりたい事を強行しようとして公務執行妨害などで逮捕される始末であった。
さて、コヨミ皇国一行が向った先の30階建てのホテル。
最上階の部屋に、紅葉を招いたが、流石に一人で使うのには広すぎるからと紅葉外務省職員に言って、絵美里も一緒に居る事に成った。
日本国外務省職員からの説明では、日本政府は、まだ国会での取り決めが終わって居ないらしい。
此処に来て、まだ各党の国会議員らは、煮え切らない態度を取って居るのだった。
大陸の要人が来て居るから話し合いの交渉が出きる。
さて、皆さんどう致しましょうかと聞くと、更に色々と揉めだす日本人。
紅葉達の東京行きは、何時に成るのだろうか?
西暦22××年・×月○日・午後18時15分・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・関東地方・群馬県・霧野市・堤野町・渡瀬川沿い・高見山・高見家・高見家屋敷・本館棟屋敷にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
生放送中のテレビ画面は再び特集実録アースティア大戦とは?が生放送収録されて居る高見山中央の中腹に在る高見家本邸・本館棟屋敷と呼ばれる建物内の食堂広間へと戻る。
見学に来て居る観客席からは、はち切れんばかりの拍手が鳴り響いた。
「いやー、正に運命の出会いと言うのは、本当にドラマ様な出来事なんですねぇーーっ!」と言う歴史研究家で京都大学教授を務める磯野道隆。
京都大学の博士号を持つ歴史研究家で、あらゆる時代に精通して居る人物で、英傑達の選択の解説コメンティターである同時に、彼の出演番組である英傑達の選択の司会解説者の1人である。
「今でしたら、ファンタジー系ライトノベルでしょうね。この話をすると、必ず何時だって作り話だって、言われてしまうほどなんですよね。」と竜史の曾孫に当たる高見竜一郎は苦笑交じりに言って居た。
「では、此処で最初のゲストの方に、ご登場して頂きたいと思います。」
「高見家系・暦家を継承して居られます。暦紅葉(こよみもみじ)さんに登場をして頂きすます。」
「皆さま、拍手でお迎え下さい。」とJHKの歴史関係を担当している人気番組のアナウンサーである井上朝美は、拍手をしながらゲストを招いた。
招かれたのは、暦紅葉、後の高見紅葉と成った後に産んだ長女・高見明日葉の子孫で、高見家系・暦家を継承して居る暦紅葉(こよみもみじ)が登場する。
その姿は、在りし日の紅葉そっくりそのままであった。
「こんばんは、紅葉さん。」
「こんばんは。」と答える紅葉は、やや緊張した顔付で答えて居た。
「紅葉さんは、今日が初めてテレビカメラの前に出ると伺いましたが?」
「はい、普段は私は、高見家屋敷で高見総合商事の事務員として働いて居ますが、直ぐお隣に在る白峰神社の宮司もやって居ます。」
「白峰神社と言えば、霧野天満宮と白滝神社と並ぶ、霧野市の歴史には欠かせない名所の一つですねぇ~。」と言う磯野。
「磯野先生は、地方ローカル歴史にも御詳しいですか?」と聞くタレントの明日田高次。
「実はですね。この高見山が砦だった事を知った際に、戦国時代に霧野に在った霧野山城を治めていた霧野国綱に関わる事を調べて居た際に、偶々知っただけなんですけどね~」と答える。
「単なる歴史ネタ繋がりじゃないですかっ!」とツッコミを入れる明日田高次。
流石は大手芸能事務所会社である幸本興行株式会社に所属するお笑い芸人でも在る人物。
鋭いツッコミを入れて来て居た。
「話が逸れてしまい、すみませんでした紅葉さん。お話の続きをお願いします。」と司会者である井上が促す。
「はい。白峰神社は高見家が代々管理をして来た神社では無く。200年前に先代の白木宮司夫妻から、私の祖母である明日葉さんが星読みの力を持って居た事から、隣近所に住んで居た白木さんに「そんなに凄い力が在るなら宮司にピッタリだね。」」
「私の家には宮司をする様な跡取りが居ないから、白峰神社の宮司を継いでみないか?普段は好きな仕事をして良いから」と言われたのが切っ掛けです。」
「その後は私の母である水葉母さんが分家させて貰える際に、コヨミ国皇家の名跡である暦の名を名乗る事が正式に許可され、以来私の家は、白峰神社を管理相続をし、次第に薄れ行くと見られて居る星読み力を継承する高見家系・暦家を継承して行く事に成りました。」
「その証と成って居るのが、この紅星名月刀(あかほしめいげつとう)です。」
「うわあ~っ!これが名刀、紅星名月刀ですか?間近で見られる日が来るとはっ!」と興奮するのは、刀好きとしても知られて居り、京都大学の博士号を持つ歴史研究家にして、歴史テレビ番組の司会者を務める磯野は、紅葉が持って居る刀に恐る恐る近付いて、刀を間近で拝見して居た。
「磯野先生、この刀にはどんな謂れが在るのですか?」と聞く井上アナウンサー。
「何を言って居るんですかっ!国宝ですよっ!国宝っ!」
「この刀って、国宝なんですか?」と驚く明日田。
「ええ、コヨミ皇国の歴史と共に歩んだ事とアースティア大戦を戦い抜き、所持をして居た紅葉さんが一生涯を通じて手放さなかった刀である事が国宝として評価された理由なんですよ。」
「しかも世にも珍しい日本国とコヨミ皇国二カ国共用で国宝に指定し、個人所有を認めて居る珍しい国宝なんですね~」と解説する磯野。
「此処で紅星名月刀に付いての解説を致します。」
「紅星名月刀は、代々星読みの巫女に受け継がれる事に成って居るコヨミ皇国の至宝的名刀で、紅葉さんは生涯を通じて所持して居た刀です。」
「今日では日本国とコヨミ皇国の二カ国からは国宝に指定され、アースティア世界遺産記録保存委員会からは世界遺産に指定されて居る個人所有の名刀とされて居ます。」
「そんな紅星名月刀が、是非とも見てみたいと言う方は、一般公開されて居ますまで、霧野市に在るアースティア大戦高見家英雄資料館にて、刀の拝観が出来る様に成って居るとの事です。」
「いやー、素晴らしい名刀を拝見させて頂き有り難う御座いました。」と言って引き下がる磯野。
「いえいえ、この番組に合わせて、博物館から出してきた甲斐が有りました。」
「磯野先生は、大変な刀マニアである事も知って居ましたので、その喜ぶ姿を見て、持って来た甲斐が在ると言うものです。」
「普段は儀式や式典等の催し以外では、神社の剣舞奉納や法事くらいにしか使って居ませんからね。」と話を締め括る紅葉。
「実はアースティア・オリンピックで、無差別級ソーディアンの部で優勝をした際に使って居た刀が、紅星名月刀でしてね。」
「試合の際には、刃を剣技試合をする時に使う事に成って居る無刀訓練具を使って試合をするのですが、まだ当時は国宝にも成って居ない事あり、結構乱雑に斬り合って居た為に、内側の刃が刃毀れをして居たらしいですよ。」
「因みにこの話はですね、身内しか知らない話なんですが・・・・・・」と竜一郎は、曾祖母が仕出かした裏話を、番組を視聴して居る世の人々に初めて暴露する。
その話を聞いた出演者や会場に来ていたお客さん達、それにテレビの視聴者達は大いに驚き、笑いを誘うのであった。
「その紅葉さんのご長女なんですが、4大会連続でアースティア・オリンピックや5大会連続でアースティア・ワールドカップに出場して居る日本代表選手だったんです。」
「何んとっ!!母娘二代に渡り、オリンピック選手だったですか?」と更に明日田は驚きの声を上げた。
その後、紅葉のオリンピック映像や明日葉がアースティアオリンピックやワールドカップでの活躍するお宝映像が、JHKのアーカイブス映像から出された映像が流される。
JHK特別放送・特集実録アースティア大戦とは?の番組は、益々視聴率を上げつつ、次なるエピソードが流されて行き、番組は続いて行くのであった。
西暦2030年・4月5日。
この日、アースティア世界へと異世界転移してしまった日本国は、転移災害による対策と初接触した異世界国家であるコヨミ皇国への対処を如何にするのかで、国会及び国論が二分する程に大紛糾して居ました。
この当時の日本の様子はと言うと、日本が始まって以来の国難と言う事態であり、特に野党側は各政党の党首自ら、持ち時間一杯を使っての質問攻めにしようとして居た様です。
しかし、この国会での審議が始まろうとした時の事です。
突然、衆院予算委員長の横に数人の官僚らが集まり、その内の1人が耳打ちを始めたと言います。
「ええ~、たった今当委員会の始まりを申し上げましたが、安元総理、外務省、防衛省などの省庁から緊急の事案が出来たとの事で本事案の審議を一旦、中断したいと思います。」
「なお、次回の審議開催日は内閣と各省庁の情報や法案の一部の改訂の整理と準備が整い次第、再開したいとの事であります。」
最初の質問をする筈だった民憲党の党首である前川議員は、突然の事でポカンとしたマヌケな顔を晒してしまうと言う記録映像が今日に至るまで、混乱期の国会の様子として、流され続けてしまうのは、前川氏に取って痛い黒歴史と成ったと、後年の彼はマスコミ各社でのインタビューで語って居ます。
そして野党側は、ざわざわと騒ぎ立てつつ、此処に来て与党が通れる筈の事案を通さないのは、可笑しいと首を傾げても居ました。
では何故?それは遥か西での騒動に決着が付き、それに関係した人物が近日中に到着するとの報告を安元総理等は受けてからでした。
西暦2030年・4月6日。
この日、海自艦隊と海保の船団は、あさくら号の乗客と船員達、コヨミ皇国の紅葉らを乗せて、福岡市の博多港へと到着しました。
この日、紅葉は初めて日本国の地へと降り立ち、その光景を目の当たりにして、 紅葉は期待した以上の物だと感慨に耽って居たとの後年を振り返ったインタビュー形式の手記にて語って居ます。
福岡国際ホテル。
博多駅東口竹下通りに面した所に、駅から歩いて10分程度の所に在るホテルで、転移災害前の当時の主なお客様は、中国・台湾・韓国と言った近隣地域から観光客が、顧客相手であった様です。
だが、転移災害以降の顧客と成った者らはと言うと、コヨミ皇国・台湾共和国・ドラグナー皇国・マーメリア海洋王国・ブリリアイランドキングダム王国・デモニュクス帝国・魔族連合・アマラーラ王国・ラクロアナ王国・フローレイティア輸送商船商会と言った面々が、観光・貿易・外交と言った形で日本国へと訪れる人々らが、常連客と成った様です。
特にコヨミ皇国は、日本からコヨミ皇国の在るユーラシナ大陸東部のコヨミ半島は、九州地方から西北へ600キロ、対馬からは300キロの距離に在ります。
その為、飛行機と魔導空挺船以外で日本国へとやって来た場合を除き、最寄りの博多港の在る福岡市へと立ち寄るのが、日本国へと入る為の玄関口として、今現在でも利用されて居ます。
福岡国際ホテルは、そんな異世界国家のお客様方を出迎える日本国内でも最初のホテルとして、今では王侯貴族や財界著名人達にも愛されるホテルとして親しまれて居るのです。
そんな福岡国際ホテルは、紅葉が日本国で最初に泊まったホテルとしても知られ、今でもコヨミ皇国の皇族方の常宿としても利用されて居ます。
博多駅から15分、福岡国際ホテルから10分の所に在る中恵屋台村公園。
此処には知る人ぞ知る有名な豚骨ラーメン屋台である明太・豚骨博多一番軒と言う看板が掲げられたキャンピングカー式の屋台が営業をして居る。
この屋台は、紅葉を筆頭に数多く著名人達が訪れる博多の名物屋台として知られて居ます。
今の店主の大将は、アースティア大戦時の店主から数えて、3代目の方が営業を続けて居ます。
既に初代の時代、アースティア大戦末期頃には、博多駅内のテナントに店舗を持って居たとの事だが、今でもアースティア大戦の著名人達の話や逸話が知りたくて、やって来る歴史探訪をするお客様を出迎える為に、屋台営業を続けて居るとの事です。
福岡市と暦紅葉。
彼女は日本で最初に訪れた福岡市を気に入り、アースティア大戦中には行きつけの飲食店に竜史と親友達と共に、余暇を見付けては、通い続けて居たと言うのです。
福岡国際ホテルへの歩き方。
博多駅東口から徒歩で10分。福岡県福岡市博多区博多駅東1丁目付近。
明太・豚骨・博多一番軒への歩き方。
博多駅東口から徒歩で15分。福岡県博多区博多駅東2丁目中恵屋台村公園内にて。
明太・豚骨・博多一番軒 一号店へは博多駅・博多阪信デパート内5階にて。