異世界の国々が驚いた異界国家日本は本当にすごーいデス~ネ

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月4日・午後17時13分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・ブラキュリオス湖から東方へ27キロ地点・西方海自派遣支援艦隊・通称・ダバード・ロード王国派遣支援艦隊・略称名・ダバ派遣支援艦隊航行地点にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







 小沢一佐の発射命令で、各護衛艦からSSM及びシー・スパローが発射される。



 空高く舞い上がる空飛ぶ鋼鉄の槍の一撃は、しょうかくのCICを指令塔として、割り振られた目標へと向って行く。





その数は20発。



 この攻撃で、撃墜または外される等と言う事態に陥れば、小沢一佐は第二派攻撃を考えていた。





護衛艦から放たれた20発のミサイル群は、移動要塞デストロイヤーと第9空挺艦隊に向けて飛んで行く。



 ゴオォォォーと言う噴射口からの音を響かせ、先ずはデストロイヤーへと10発のミサイルが着弾する。



「ニホン艦隊より放たれた飛翔体、全弾当艦着弾っ!!」



「上部甲板に4。正面中部装甲版着弾1。及び大破!!」



「他は右装甲版に2、左装甲版3ですっ!何れも装甲を大破させ艦内は炎上中っ!」



「第二魔力パイプラインとサブパイプラインがやられました。」



「デストロイヤー砲が使用不能です。」



「ですが残っているパイプラインを調整すれば、強引な手段ですが、後1発は発射かとの報告が来て居ます。」





 ミサイルによる移動要塞デストロイヤーの被害報告が次々とギンジェム大佐の下へと報告に来る伝令官達。



「むう、ニホン海軍の兵器の威力が此処までとは・・・・一発、一発に派手な威力は無いが、嫌に成るほどの正確な命中率だ。」



「丸で的を射抜く弓の矢じりを的確に、そして、完璧に、狙ってた的を己の好きな急所や心臓を抉り撃ち抜くが如くだ。」



 ギンジェム大佐の額に冷や汗が垂れて来ていた。海上自衛隊が有する兵器による正確な射撃に舌を巻いて居るからだった。



「メイン魔動力炉をやられたら、航行不能になる。」



「逆噴射航行でゆっくりと後退だっ!」



「デストロイヤー砲は、良いと言うまで撃つなっ!」



「あれは最後の切り札だ。」



「了解です。」



「大変ですっ!ニホン艦隊の中央の艦から鉄龍が出撃したとの事です。」



「数は20騎。灰色と青色の混成部隊だと物見からの報告です。」



「ちいっ!奴らの艦載兵器の補給が終わったのか。不味い。」



 どうやら神谷一佐と池田空将補らが率いるF-15J10機とF―2B1機を先頭にして、F―2A9機が後に続く。



 日本国航空自衛隊が誇る主力戦闘機隊は、移動要塞デストロイヤーに止めを刺そうと出撃して行く。



「サシバリーダーより各機へ、あのデカブツを逃がすなっ!!今、此処でアレを逃せば、後々面倒な事になる。」



「そうだ。あの兵器が各所の倉庫に、例え100隻有ろうと、あれだけの巨体だ、破壊すれば、一隻失うだけで敵軍に少なからずの損失を与えられる筈だ。」



 神谷一佐と池田空将補の二人は、移動要塞デストロイヤーの運用に付いて何らかの不備が有る筈だと、直感で感じて居た。





出なければ、日本は移動要塞デストロイヤーの大艦隊に蹂躙されて居る筈だし、この戦場に少なくとも三隻以上は投入してしないと変だと言う事を分析して居るのである。



「なるほど、あの巨大艦の数は、それほど多くは無いか、試験艦や特殊艦の可能性が有ると言う訳ですか?」



「その通りだ、速水。」



「でなければ、俺達が参加した第二次龍雲海沖の戦いに、帝国で一般的に配備運用されている艦船で編制構成されて居る艦隊で、攻め掛かって来る理由が他には無いからだ。」



 神谷達は、手の空いた時間には、交援省などが搔き集めた、この世界の軍事関連資料の一部に目を通している。



 其処から導き出される答えの一つとして、移動要塞デストロイヤーの大量投入が出きないと言う結論も、其処から導き出される答えの一つでも有るのだ。



「先輩。って事は、あの巨大戦艦を今叩けば・・・・・・」



「敵は出し惜しみして、使って来なくなるか、暫くは俺達の目の前に、その面を見せなく成るかだ。」



「そう言う事だ。」



「各機動力炉らしき部分が集中して居る後部を狙え、私は4機を率いて敵の高出力ビーム砲を破壊する。」



「なぁに、あんなの当たらなければ。如何と言う事は無い。」



「残るF―2隊は、敵後方艦隊を海自航空隊は、本陣たるダバ支援艦隊の護衛に着けっ!」



「神谷っ!!先陣は任せたぞっ!!」



「了解っ!各機散開っ!」



 

 空自と海自の航空隊が指示された通りに動く。





 各機体が一斉に散開して、与えられた命令の配置場所へと配置に就く。



 一方のエリン達ドラグリア面々は、ダバ支援艦隊の護衛と防御に徹していた。



「エリン陛下、空自航空隊が、敵巨大艦の動力炉を含めた攻撃を行います。」



「その隙を見て止めをっ!」



「承知した。じゃが・・・・・・」





 小沢一佐とエリンの二人は、それぞれ共闘体制に入って居た。



 艦隊の全ての船は、速度を維持しつつ、西へ西へと向って居る。





 その艦隊を守り、キメラドラゴンを叩くと言うは、決して容易ではない。



「目標っ!ドラグリア白龍大帝国。」



「白龍大帝エリノア・ドラグリアおよび白龍族。キメラドラゴリュムバスター・・・・・・・・・」



 セブリナの口からバチバチと光り、何かを撃ち放とうと体勢を構える。



「来るぞっ!」



「皆者っ!防御シールド展開っ!」



 エリンの指示を受けた白竜人と白龍族が、一斉に真っ白に光り輝く魔方陣サークルが浮かび、魔法防御シールドを展開する。



 シールドの展開が終わると同時に、赤黒い稲妻の様な閃光が東から西の方角に向かって進むダバ支援艦隊へと撃ち放たれる。



「うぐぐぬぬぬぬっっっ・・・・・・・」



 バチバチと魔法の光りの火花が飛び散る。



 しょうかくの艦橋の海自隊員達は眩しい閃光の中を必死で操船と各々部署の仕事に邁進していた。





その状況の様子は、丸でSFの物語の世界感そのままだった。



 やがて閃光が収まると海自隊員らは緊迫した言葉を漏らした。



「ビーム砲にビーム光線攻撃・・・立て続けにこんな攻撃を受け続けてたら、生きた心地がしませんよ。」



「同感だな。ドラグリアの連中が居なかったら確実に我が艦隊は全滅して居る。」



「だが、これが終わったら、ある意味、笑い話のネタには出きるだろうな。」



 隊員達は、それぞれ感想と冗談を言って緊張を解して居た。其処に小沢一佐が割って入る。





「冗談はそれくらいにしろっ!各艦の主砲で彼女達を援護するんだっ!」



「了解っ!各艦主砲、うちーかーたはじめっ!」



「てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」



 ドンドンと各主砲が、3発づつ撃ち放たれた。



「だんちゃーくっ!」



「全弾命中っ!」



「目標へのダメージは?」



「かすり傷程度と報告が来て居ます。」



 

 砲弾の命中はしたが、ダメージは掠り傷だった。



 そのセブリナの横でファイ少尉が乗っている魔導装甲巨兵ブラッデイ・サイクロプスが人型へと変形を終えて、シールドで防御していた。





 魔法シールドで補助されて居る盾のお陰で、砲弾のダメージが軽減されて居たらしい。



「反撃する。5連装式マギュウスメーサー砲発射する。」



 ファイは、魔導装甲巨兵ブラッデイ・サイクロプスの指先から連続で魔力式の5連装ビーム砲を撃ち放つ。



「シールドっ!」



 正面に立ちはだかるユキカゼが、ファイの攻撃を防ぐ。



「ちょっとエリンっ!!こいつ等の攻撃っ!!思ったりよりも威力が高いわよっ!!!」



「その様じゃの。何時もだったら、力押しで、何とかするんじゃが・・・・・・・」



 エリンは後ろに目をやる。



 その目線にはダバ支援艦隊がある。



 そう、後ろに居るダバ派遣支援艦隊を守って居る為に、彼女達は迂闊に自由に動けないのだ。



 それにエリン達の遠距離攻撃も威力が有り過ぎて、下手をすれば、攻勢に出ている神谷達に、被弾する可能性も有るから手が出せない。



 今の彼女ら鉄壁の壁。自衛隊が砲台ならエリン達は城壁。神谷達は騎馬隊に成っていると言えた。



ダバ支援艦隊に取って、この戦いの勝利条件は、如何に敵の攻撃を防いで本陣と要塞を叩くかだった。



 反対に帝国側は、如何にして攻撃を防いで撤退するか、日本艦隊に少しでも多く傷を負わせるかだった。



 一進一退の攻防が続くダバ支援艦隊の戦況。その攻防の最中で、帝国艦隊の後方で動きが有った。



 池田空将補が乗るF―2BとF―2A併せた五機の一隊は、真正面から移動要塞デストロイヤーを攻撃を開始する。



「・・・・・・」



 移動要塞デストロイヤーから目視出来る範囲に、F―2が迫ってくると、左右に配置されて居る複数の魔導副砲や魔導式機関砲等から一斉に砲弾が撃ち放たれ、弾幕の雨が張られた。



「ふっ、この程度の攻撃、中らなければ、如何と言う事は無い。」



 池田隊は、あっさりと対空砲火を潜り抜けて見せた。





 そして、ピーっと言うロックオンの音が響く。



「早いっ!何だあれは、只でさえ早すぎるのに、一騎だけ、別格の竜騎士が居るぞっ!?」





「くそっ!早いっ!速過ぎるぞっ!」



「あれは丸で青い彗星の様だ。」



 移動要塞デストロイヤーの砲手や見張りの士官達は、丸で悪夢を見てるかの様な錯覚に陥る。





 奇しくも池田空将補は、この世界でも青い彗星の異名を得てしまうのだった。



「墜ちろっ!!」



 各機から対艦ミサイルが2発同時に撃ち放たれたのだった。



 それに続いて神谷も対空砲火を難無く突破してミサイル的の後部へと撃ち放つ。



「貰ったっ!」



「ターゲットロック、いっけえええぇぇぇーっ!」



 神谷一佐と長谷川一尉の二人は右から、速水一尉と柏崎二射の二人は左から攻めかかった。





「こちら速水っ!目標へと誘導弾を命中させましたっ!目標は傾いて居ますっ!」



「よっしゃああああぁぁぁぁーーーーーーっ!やったぜっ!」



 

「先輩、敵空挺艦隊に向った隊も半分は撃沈。」



「残りは撤退したとの事です。」



 柏崎二射が撃破したと歓声の声を叫び、長谷川一尉が味方からの通信を報告を言う。



 移動要塞デストロイヤーは地面に落ちて、地上移動用の六本の多足式歩行装置のうち、左側二本が、ミサイル公撃の影響で破損して船体が傾いてしまって居た。





「良しっ!!一旦、下がるぞっ!!」



「了解っ!」





 此処で空自航空隊は、一旦下がる。エリン達の止めの攻撃を避ける為の退避だった。



 空自航空隊が引き上げ始めるのをセブリナとファイと対峙しながら見ていたエリンは、攻勢に打って出る事を決めた。



「おおっ、どうやら上手く行った様じゃの。」



「これ以上は、やられせない。」



「ちぃっ!!」



 エリンは、セブリナの放ったキメラドラゴリュムバスターを防いだ。



 其処へ後方からF-15JとF―2がミサイルが飛んで来た。



「ぐふっ、つうぅぅっ!」



「セブリナっ!!ええいっ!!」



 ファイは、魔導装甲巨兵ブラッデイ・サイクロプスの5連装式マギュウスメーサー砲を空自航空隊に向って撃ち込むが無駄と言えた。



 移動こそしているが、速度は比較的ゆっくりと動いて居るエリン等ドラグリア白龍大帝国の面々の目標と違い。



 流石のジェット戦闘機に発射速度の遅いビーム砲が中る訳が無かった。



「ふっ、慣れればこの程度。」



 池田空将補は、先陣を切ってあっさり5回ほど撃ち込まれた5連装式マギュウスメーサー砲を回避する。



 それもアクロバット飛行を交えて上で5回続けて回避して見せた。



「沈めっ!」



 20ミリバルカン砲を撃ち付け、残って居たミサイルをブラッデイ・サイクロプス盾ごと吹き飛ばした。



 護衛艦の主砲の砲弾とミサイル、そしして20ミリバルカン砲の攻撃に晒された流石にダメージの負荷が掛かり過ぎたらしい。





 池田空将補は、天性の感で一番に脆いと踏んだケ所への連続攻撃を中てて見せたのである。



「くうぅぅっ!!」



 ファイは左腕を捥ぎ取られ、爆発の振動で操縦席が激しく揺さぶられた。



「よーしっ、野郎どもっ!」



「俺達は、後ろのドラゴンモドキを狙え!」



「了解です。」



「どの道、あと一発しかミサイルが有りませんしね。」



「まーかせて下さい隊長っ!」

 

 神谷一佐らは、一斉にセブリナを攻め立てた。



「ターゲットロックオン。行けーーっ!」



 各機の操縦席でロックオンの音が響くと一斉に最後のミサイルが撃たれる。



「ギヤヤヤァァァオオオーーーンン!!」



 神谷一佐と長谷川一尉左側の肩腕部に命中し出血をさせた。



 速水一尉と柏崎二射の二人は、それぞれ、背中に射当て出血と焼けどを負わせていた。



「イカン、このままでは全滅だ。」



「総員退避しろっ!」



「大佐殿?」



 戦況が完全に不利と悟ったギンジェム大佐は、中程度の大破炎上しつつある移動要塞デストロイヤーからの総員退避を決めたのである。



「移動要塞デストロイヤーは、確かに貴重な兵器だが、同時にあの人造兵器どもや魔導装甲巨兵ブラッデイ・サイクロプスもまだまだ、初期段階の試作機であり、相当な予算も掛かって居る。」



「それに移動要塞デストロイヤーの初期生産の目処が立ちつつある現状では有るが、人造兵士と人造生物兵器の量産計画は、次代の兵士不足と潤沢な兵士を前線へと送りつける物だ。」



「それらが乗り込む兵器やバックアップ施設の建設は始まってばかりなのだ。」



「どちらが費用対効果的に重要であるかと天秤に掛けると成れば、後者だろう。」



 移動要塞デストロイヤーは大量生産こそ出きないが、時間を掛ければ、ソコソコの生産を始まって居た。



 それでも年間1隻から2隻程度で、場合によっては予算すら取れずに製造が停止に成る位の金食い虫と言えた兵器だった。





 それに比べ、人造兵士と人造生物兵器の生産とそれに伴う兵器と専用施設の建設は、初期費用こそ掛かる物の。



 掛かったお金の回収を図るには、十分過ぎる費用対効果が望めるのだ。





 何せ、兵士に一番に掛かる給与なる費用が掛からないからだ。



 それに戦死しても後方から運搬してくれば良い。



 データ取りの為に乗船していたセブリナとファイは、これからの研究と運用面での貴重なサンプルなのである。



「分かりました。総員退避させますっ!」





「総員退避、撤退信号弾を打ち上げよ。」



 移動要塞デストロイヤーの乗員は、退艦と撤退を決めてセブリナとファイ向って撤退信号弾を打ち上げたのである。



「セブリナ。撤退だ。」



「そうか・・・・・」



「飛べるか?」



「ああ、そちらは?」



「お前が補助してくれるなら飛べる。」



「出来ないのなら、この機体を破壊して破棄する積もりだった。」



「そうか。」



「下がるぞっ!」



 ファイは、右腕の5連装式マギュウスメーサー砲をエリン達に向って撃ち続けながら撤退を始めた。



 一方の移動要塞デストロイヤーの乗員とギンジェム大佐等は、飛竜やホバー走行の魔導力脱出艇などで撤退を始めていた。





 バラン少佐らは、空挺戦艦ズィードルンを含む2隻での空挺戦艦で、何とか戦場を離脱して居た。



 彼らの脱出劇には、航空自衛隊のF―2の追撃が有った。



 その攻撃は凄まじく、4隻が旗艦を庇う形で轟沈して居たのだった。





 空挺竜母四隻は、生き残った飛竜航空隊を回収し、逸早く離脱。味方との合流地点での敗走部隊と落ち合う予定である。





「粗方、片付いて来た様じゃの。」



「そうね。」



「どーれ、わしも掃除をせねばな。」





 エリンが大きく口を開けると他の白竜人族と白龍族らは、エリンの後に続いて大きく口を開け、必殺のドラグバスターの為に入る。



 2.3分程度の時間が経つと、白い光が口元に集まっていた。



「全て消し飛ぶが良いっ!!ドラグバスターーーーーっ!!!」



 白竜人族と白龍族の撃ち放ったドラグバスターは、真っ直ぐに移動要塞デストロイヤーへと命中する。



 小沢一佐が通信機で、全艦隊に対して、対ショック対閃光防御態勢と言うと、閃光から視線を逸らし、何かに掴まって身を守る体勢を取ったのである。





 こうして、ダバ支援艦隊は、人的な被害は無い物の、補給や整備と言った事に、それなりに時間を取られると言う時間稼ぎを帝国にされる形で勝利を手にしたのである。





 一方の帝国側は、移動要塞デストロイヤーを含む五隻が沈められ、飛竜航空隊の生き残りは合計で80騎。



 420騎が、この戦にて、その命を戦場で散らしていた。



 また、キメラドラゴンのセブリナは中傷程度のを現在は集中治療中。



 ファイ額に軽傷を負っていて魔導装甲巨兵ブラッデイ・サイクロプスも中破修理中の被害が出てしまう。





 これがブラキュリオス湖畔紛争の始まりを告げた前哨戦の戦いとして、後世の歴史書に記される事と成るのだった。

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月4日・午後17時46分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・ブラキュリオス湖から東方へ27キロ地点・西方海自派遣支援艦隊・通称・ダバード・ロード王国派遣支援艦隊・略称名・ダバ派遣支援艦隊航行地点にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







 激しい戦闘は終わった。



 ダバ支援艦隊は、思わぬ妨害染みた戦闘を強いられ、艦隊の各艦には、少なからずある程度の船体や着艦して居る機体等に、少々痛みが見られて居る。





整備を担当して居る機関科の隊員らに由れば、艦船や戦闘機の航行に支障は無いと言うが、やはり一度、機関停止して、その場で点検整備が念の為に必要との事だった。



 小沢一佐は、弾薬の補給も兼ねて艦隊を一時的に、戦闘の行われた場所から700メートル移動したこの場で停泊すると決めた。



 防備に付いては小沢一佐達、全自衛隊幹部等は心配が無かった。



 何故ならエリン達ドラグリア白龍大帝国の白竜人族の白竜騎士30名と150匹の白龍族が守りを固めて居るからだ。



 白龍族らは交代で各艦の広く開いているスペースを利用して休息を取って居た。



 航空護衛艦しょうかくとずいかくの甲板にも多数の白龍族が乗って居る。



 乗り込んでいる白龍族の中には、パイプ・ライン大河に飛び込んで大きな魚を食らい空腹を満たして居る固体も見受けられた。





 艦載機も艦内へと収納され、白龍族達の邪魔に成らない様に隊員らは、気を使っている。





 戦闘を終えたエリン等は、人の姿へと戻り、航空護衛艦しょうかくの多目的区画にて、国賓待遇で歓待を受けて居た。



 しかし、今のエリンの姿はロリな中学生の姿では無く。成熟した20代の女性のスタイルを持った姿を取っていた。



 これには、彼女成りの見栄であり、体裁でも有るのだ。



 何時もなら、めんどくさいと言って適当に変身したちびっ子の姿でゴロゴロとしたり、駄々を捏ねたりしているの姿が見られて居る。



 そんな姿をさらして居ると言う話は、ドラグリア白龍大帝国の国民の間では、大変に有名な話なのだが、初めて会う日本の面々に対して、少々見栄を張って居るのである。



 ちなみに、服は持って居ないので、彼らの肉体を変化させられる固有魔法を用いて鱗を衣服に変化させている。





その説明では、分り難いと人達も居ると思うので、一例を挙げて言うのなら、メイドなドラゴンさんが出ている漫画で、メイドなドラゴンの彼女を始めとするドラゴンさん達が、使用していた鱗を服に変化させられる魔法と言えば、理解が出きるだろう。





「この度は、我々にご加勢頂き、真に有難う御座います。」



 小沢一佐と池田空将補の二人は、自衛隊側の代表として歓待と礼を述べて居た。



「良い良い。わしらも帝国と戦争中じゃからの。」



「それで、陛下は何故この様な所に?」



 エリンはドキッとしてしまう。その突っ込みの話は、今一番聞かれたくない事だった。



 小沢一佐と池田空将補の二人は、何と無く気が付き、ふと疑問に思った事を質問して来たのである。



「いやーそのだな・・・・・・」



 そう、言える筈も無い。



 自衛隊の艦隊を見たいが為に、お忍びで、しかも彼の水戸のご老公みたいに、諸国漫遊の道楽の如く、物見遊山しに国から出て来た等とは・・・・・ある意味、体裁が悪いと言えた。



其処へ透かさず、ユキカゼがフォローに入る。



「エリン陛下は、この辺りの前線視察をしに参られて居たんです。」



「噂に聞くニホン軍艦隊が通り過ぎると聞き、その勇姿を国家外交の方針の後学の為にも、是非とも見て置きたいと申されまして・・・・・・・」



「なるほど、帝国との戦いに備えて大河沿いの戦線の視察をすると共に、我々が通行すると言うので忍のびでの遠征視察ですか。」



「そそ、そうなのじゃ。」



「わしの様な者が、前線視察をすると言うと、周囲の家臣達もうるさいしの。」



「それに大体的に各方面に断りを入れて言うのも、敵側にも同盟国側にも色々と騒ぎに成るから面倒じゃしのぉ・・・・・・・・・」



 苦しい、苦しすぎる。



 エリンは、挙動不審過ぎる言動で必死に弁明して居るので、折角整えたアダルトなバージョンの姿が台無しだった。



「その様な理由で、お忍び視察が稀に行われる事、が我が大帝国の大帝であらせられるエリン様のご方針なのです。」



(ユキカゼ良う言うた。)



(本当の事なんて、とても恥ずかしくて、言える訳無いでしょうがっ!)



 エリンは、親友にして腹心たるユキカゼの機転を利かせて、適当に本当の事を誤魔化して、最もらしい事を言って貰って適当な理由をでっち上げた。



 まぁ、本当の事がバレたとしても、エリンは悪びれもせずに開き直ると言う最後にして、最大の逃げ口上に打って出る積りなのだが・・・・・・・・・



 兎に角、彼女達は物見遊山等と言う水戸の田舎じじいもしている(創作物の中の話)事実を苦しい言い訳で、乗り切ろうと口裏を合わせたのである。





その事を気付かない小沢一佐と池田空将補の両名は、決して間抜けではない。



 まさか、国家元首が自分達を暇潰しのネタにされて、この場に来ている等とは考えが及ぶ筈も無い事だったからだ。





「それは上に立つ者として、素晴らしい御姿勢だと思います。」





「いやー、そんな事を考えて動くなんて事は、誰もが中々行動が出きる事では有りませんな。」



 其処へ、海自の補給科隊員らが現れた。



「ん?何じゃ、この美味そうな匂いは?」



「はい。細やかですが、助けて頂いたせめてものお礼と交流を兼ねてお食事でもと思い運ばせました。」



「流石に酒類は、任務中等の理由で、待ち合わせが有りませんので、ご容赦下さい。」



「ううーん。それは残念なのじゃ。」



「我が国のコヨミ皇国大使から送られたヤマナシ産のワインやニホン各地の米から作ったニホン酒なる無色透明の酒は大変美味で有ったのに・・・・・・」



 酒が無いと聞いたエリンは、シュンと成り果て、子供の様にガッカリとした表情に成る。



 小沢一佐と池田空将補の二人は内心で、「えっ?何時の間に手に入れて飲んでたの?」と思って居たりする。



竜人族等の爬虫類に近い種族の間では 蟒蛇と言う言葉がピッタリと言える種族で、酒豪揃いの種族として知られて居る。



 エリンも無類の酒好きとして、有名でも有るのだ。



 だから酒と聞くと、黙っては居れない性質であった。





 酒が無いと聞いた姿は、丸でガッカリとうな垂れる大きな子供の姿の様であった。





 運ばれて来た料理のメニューは、一度に大量に作れて便利なカレーであり、海自定番の料理であるが、材料にちょっとお高い和牛を使ったビーフカレーである。



 食事のメニューが、カレーに成ったのも、給養員長らを始め調理担当の隊員らが戦後の後処理に追われる隊員とお客様へのお料理を出すのに、てんてこ舞いに成って居るからだった。



 今現在の艦隊は、急ピッチで整備と補給と目視での全体チェック確認が行われている最中で、艦内の隊員達は、交代で食事をする様に言われて居る。



 戦闘要員の隊員は、休息も兼ねて真っ先に交代で食事を終え、部屋で待機しているか、担当場所で職務を続けて居る。



 そんな訳で、現在の各艦の食堂の調理場は、正に今が戦場なのだ。そんな理由で、お客にお出しする料理を別に作る等と言う余裕など有る筈も無い。



多分、給養員長を始め、調理をしている隊員らは、仕事を終えると同時に、燃え尽きたよ真っ白になと言う感じに成るだろう。



「おお、からーい。・・・・が、うまーいぞっ!」



「特にこの牛肉が蕩ける様に、口の中で消えて行く舌触りが、何とも言えないのじゃ。」



 出されたカレーをさっさと口に運ぶエリン。



 丸で子供の様に、笑顔を見せながら綻んでパクパクと食べていた。





待てを言える暇さえ無かったユキカゼは、この際、知らんかを決め込んでやり過ごす。



 応対をして居る小沢一佐と池田空将補の二人は、何とも自由な性格をして居ると感じ、親しみ易いと思った。



「さあ、お前達も、何時までもそんな所に立って居ないで、座って食え食えっ!」





「折角出してくれた食事だぞ!!」





「冷めてしまうのも勿体ないし、食わぬば大変に料理と相手に失礼なのじゃ。」



 部下達も遠巻きにして、遠慮がちにして居たが、エリンが座って馳走に成る様に促すと、ぞろぞろと30名の白竜人族の騎士達は、席に付いて食事を始めた。



 後に日本の洋食料理店を訪れた各地方の竜人族達の中では、白竜人族はビーフカレーを好み。



 黒竜人族はピリ辛のチキンカレーを好み。



 赤竜人族はビーフシチューを好んで、注文すると言う姿が多く見られたと言う。



 その影響の起源は、自衛隊との接触で振舞われた料理が伝え聞いた事が原因と言われている。



 彼女を始めとする他の亜人族達が、日本を訪れた時に尋ね行くレストランは、正にリアルな異世界食堂と言う言葉を上げる逸話が、生まれた瞬間でも有ったのだった。





 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午前10時20分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・ブラキュリオス湖東部河口付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 一方、肝心のダバ派遣艦隊では、レジェンダリア諸島の作戦開始に向けての準備に追われて居た。



 そんな中で、急報が入って来たのである。



「ダバ支援艦隊、アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月4日の夕方頃、付近に駐留して居るローラーナ帝国軍らしき部隊と戦闘に突入。此方への到着予定が、約1日程度ほど遅れる」と・・・・・・・・・・・・・・



 それはダバ派遣艦隊に、参加して居る自衛隊幹部ら取って、衝撃的な事件だった。



「くそっ!!」



「置鮎さん・・・・・・・」



「一日。一日、たった一日だ・・・・・後続艦隊が、一日遅れるだとぉ・・・・・・」



「やられた。いや、遭遇戦だと思うが、これは多分・・・・・・・・」



「ああ、間違い無く帝国のブラキュリオス湖紛争での前哨戦に成ったな・・・・・・・」



「ローラーナ帝国は、何らかの意図か、又は自衛隊の戦力を測り、少しでも有利にしようと多大なる犠牲を払って仕掛けて来たと言った所だろうな。」



「よりにも拠って、このタイミングで仕掛けて来るとはな。」



「ああ、此処に来るまでの間、ローラーナ帝国軍側には、大きな動きが無かった。」



「日本近海での大きな戦いが起因して居るとかも知れないが、我ら自衛隊と戦うのも躊躇して居る地区の軍が多いと考えて居たが、それとは別の考えを持った地方面軍の幹部達が居る様だ。」



「それならば、この地方に居座る方面軍の指揮官は、有る程度は、手強い事に成るぞ。」



「これは思ったよりも、手子摺るかもな。」



 井上一佐は、うーんと額をへの字にして居た。



「こうなったら、こっちもやり返すぞっ!」



「如何するんだっ!?」



「向こうが時間稼ぎをするなら、こっちだって時間稼ぎをすれば良い。」



「時間稼ぎ?具体的には?」



「それはな・・・・・・」



 二人はヒソヒソと話始める。





「ええ、置鮎さん。直ぐに、それをやるのは・・・・・」



「今から動けば間に合う。」



「それに、こっちにも現地の協力者も居るから、最低限の連携は取れる。」



「後は事を進める速さだけだ。」



「うーん。だったら必要な部隊やら人員らに付いて、もう少しだけ纏める時間くらいは欲しい。」



「こっちの幹部を集めて、もう少しだけ協議しよう。」



「それと先のレジェンダリア諸島上陸戦の迎撃プランの見直しもしないとな。」



「確かに、臨時に組んだ編成だし、ダバ派遣支援艦隊を抜きにしたプランも含まれている。」



「合流する筈だったダバ派遣支援艦隊と合流が出きれば、もう少しマシな作戦プランが立てられるのにな。」



「こうなったら仕方ない。陸自部隊でも、もう少しだけ、陸自各隊の隊長達ともう少し話し合ってみるよ。」



「分かった。こっちも各艦長達を集めて作戦会議に臨む。」



 置鮎一佐と井上一佐の二人は、ブラキュリオス湖畔での戦いの前倒し作戦の会議を招集したのであった。





 果たして置鮎一佐の思い付いた作戦プランとは?一体何か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午後15時03分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・モンブラン州都・ファン・ブランク市にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 





 ダバ派遣艦隊は、レジェンダリア諸島の作戦開始に向けての準備に追われて居た。



 そんな中で、急報が入って来たのである。



 ダバ支援艦隊、アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月4日の夕方頃、付近に駐留して居るローラーナ帝国軍らしき部隊と戦闘に突入。此方への到着予定が、約1日程度ほど遅れるとの緊急事態に陥る。





 それはダバ派遣艦隊に、参加して居る自衛隊幹部ら取って、衝撃的な事件だった。





 日本国政府・防衛省・外務省・交援省・ダバ派遣艦隊と言った面々の政府首脳陣たちと幹部級者達等は、日本近海での大きな戦いが起因して居るとかも知れないが、自衛隊と戦うのも躊躇して居る地区の軍が多いと考えて居たが、それとは別の考えを持った地方面軍の幹部達が居る様だとの結論に至る。





 戦況と世界情勢が刻一刻と変化して行く中で、ダバ派遣艦隊の司令部を任されて居る置鮎一佐と井上一佐の二人は、ブラキュリオス湖畔での戦いに向けて、アルガス公国軍との合流を決めた。





 其処で、この日の午後3時、ダバ派遣艦隊はモンブラン州の州都、ファン・ブランク市へと向う。





 予定された作戦通り、グリクス地方州に居座るグリクス地方軍団との対決に向けて、アルガス公国軍との合流する為であるが、これは後続のダバ派遣支援艦隊が、ローラーナ帝国軍・グリクス地方軍団の一隊と交戦し、補給整備の為、僅か1日の遅れの到着と成ってしまう事によるものと成ってしまう。



 其処で置鮎一佐は、同地のローラーナ帝国軍の地方軍団であるグリクス地方軍団に対して、一時的にその組織機能を麻痺状態に陥らせ、出撃を見合わせさせる様に仕向ける必要が有った。



 ダバ派遣艦隊が、パイプ・ライン大河沿いのファン・ブランク港に到着すると、各艦が停泊の為に、そして、後々の出港する時の為に、停泊順を割り振られた場所へとアルガス公国軍の誘導され、指定場所へと停泊して行く。



誘導に際しては、先触れで同地の騎士団に報せを出して有るし、西へと演習航海の経験のある高雄瑞樹と愛宕千棘の両名も誘導を手伝っている。



 そして、今回の戦いに協力する事に成ったリナからは、ファン・ブランク港の詳しい地図を提供して貰って居る。 





 港でダバ派遣艦隊が停泊作業している間、自衛隊幹部らと瑞樹と千棘、リナとハンナ達等は、ファン・ブランク市に終結しつつあるアルガス公国軍と合流し、合同作戦の為の会議を行うべく、この都市の重要な城塞であるアナハインム城へと向って居る。



 城の周囲には5段の堀が巡らされており、城壁も同じく5つある。



 四方にある鉄城門と監視塔8つも在った巨大な城塞であった。





青と白塗りの色で飾られたこの城は、石材を積み上げられ円形状に建てられた洋式建築の城である。





 その南部から大河までの平野の間に、ファン・ブランク市が広がって居る。



 ファン・ブランク市の市庁舎近くで、青と白銀の色彩で彩られた甲冑を身に纏っている目が吊り目で、銀髪が肩まで有るミディアムと言うヘアースタイルをしている年若い女騎士が、配下の男女混合の騎士隊を従えて立っていた。



「この度は、帝国軍のレジェンダリア諸島への侵攻軍との戦いに参戦して下さるとの事、真に有難う御座います。」



「また、お会いしましたね。置鮎一佐。井上一佐。」



 出迎えた女騎士が固い表情ながらも笑顔で出迎えてくれた。



 その後ろで、控えて居る彼女の部下達も、騎士形式の敬礼をしながら出迎えていた。



「クリス少佐、態々のお出迎えを有り難う。」



 互いのトップ同士が挨拶を交わし、握手をする。



 其処へぴょこんと後ろから顔出した空気を読まない。



 いや、読めない。



 いや、それも違うな。



 そうそう、正しく言うのなら無視する奴が1人だけ居た。



「おおおっ!!リナっ!!リナっ!!リナっ!!リナっ!!リナよっ!!」



「我らが同志クリスだぞっ!!クリスよ、お久し振りであるなっ!!」



「その頭の可笑しそうな言動は、ハンナ・・・・だよな。」



「はぁ~、私は何てツイて居ないんだ。」



 クリスは昔馴染みの友人全員が揃わないと、単なるトラブルの種にしか成らないハンナを見て、非常に厄介者が来て居たと思った。



 そのクリスは、友人であるとは思って居るハンナの事が、決して嫌いではないのだ。



 しかしながら、自分の体質のせいで『目立った』トラブルを運ぶのは、主にハンナだったりするから、ハンナ一人はと関わるのは苦手だったのだ。



 そんな溜息を吐いたクリスの姿と言うのは、彼の禁書目録を所持記憶して居る少女の傍らに居ると言う、幻想殺しの手を持っている少年の姿と重なる様に見えていた。



「やっほーっ!!クリスお久ーっ!!!」



 ハンナと同じくリナも、世界規模の戦乱が続く中で、久し振りに再会をし、元気そうにして居る親友に対して、軽く挨拶をした。



「んん??」



 クリスは、思わず初めて会うと思わしき、見ず知らずの妙に発育過剰過ぎる態度も背もデカイし、胸も尻もデカイだけの残念そうな大人びた体型を持って居るが・・・・・・・・・・・いや、熟して居る体型を持った、20歳にも成って居なさそうな女から、図々しくも気安く挨拶をされた事に首を傾げていた。



(うーん。私は何時、こんなにも、アレコレと色々とデカそうな人と、会った事が有ったけか?)



(全然、記憶にないんだがな?)



(まぁ、ハンナと一緒に居るんだから、昔・・・何所かで会って居るんだよな・・・・・・・・・)





 クリスは、色々と思考を巡らして、必死に記憶を探ったが、それでもやはり、憶えては居なかった。



 其処で仕方がないので、挨拶の返事をした後で、直接本人か、それでも何時なのかが分からない時は、非常にアレで、本当に嫌で癪だがハンナにでも聞いてみるか・・・・と思い、この場では取り敢えず挨拶を返した。



「ええっと、ハンナのお友達の方ですか?」



「初めましてか・・・は、分かりませんが、クリスティーナ・マケッンジーです。」



「失礼だと思いますが、以前にお会いしましたでしょうか?」



 バカ丁寧に挨拶をしつつ、何時の有ったのかを聞いて見たクリス。



「おいおい、あたしらは古い親友同士だぞっ!!何でそんなことって、あれ?・・・・・・・・・」





「???」



 クリスは大真面目に、何言ってるのこの人って言いたそうな顔付きをして居た。



 一方のリナは、他人行儀で、見知らぬ人なのか?その昔に在った事が有るのかと聞かれた事に、首を傾げるが、まさか・・・・・・・と言う想いに至る。



(ちょっとっ!ハンナっ!)



「イタタっ!もう、何をするのだっ!クリスよっ!我を引っ張るなっ!!!」



(誰よ、この子?)



 ハンナの何も分かって無い的な間抜けな一言で、イラって来てしまつたクリスは、半ギレ状態で、彼女に目の前に居る爆乳女に付いて事を問い質した。



「誰って?誰の事だ?」



「だーかーらっ、この子だよっ!」



 良く状況が飲み込めて居ないハンナにも、ハッキリと分かる様にビシッ!!とリナを指差した。





 それでようやく手に『ポン』と片手を叩く仕草をして、ハンナもクリスの言いたい事を理解した。



「な~ん~だっ!!アレはリナではないか?」



「はいっ???」



「だ~か~ら~此処に居るのは、リナだぞっ!!」



「へっ?!」



「リナ。リナだってばっ!判らないのか?バカだなクリスはっ!」



「うぬぬっ!!」とクリスは、ハンナの小馬鹿にされた一言にイラっと来ており、ハンナにだけは小馬鹿にされたくは無いと言いたかったが、此処はグッと堪えた様である。



「・・・・・・あのねハンナ。リナって言ったら、ちょっと口が悪い程度だけど、引っ込み思案で前髪垂らしてた妹のアリスより背丈が低くてツルペタの地味過ぎるくらいの子よ。それが今さら爆乳に成るほどのグラマー女成って居る訳ないじゃないかっ!!!」



「同志クリスよっ!!我もいい加減にしてほしい時もあるのだっ!!!」



「此処に居るのは紛れも無くリナだっ!!」



「我はここ数年間の間はずっと一緒に居たから間違いのであるっ!!」とふんぞり返りながら言うハンナは、自信満々に言ってのけた。





其処まで言われたクリスは、リナの方に目を向けると「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」と口をパクパクとさせながら言葉を失い。



 そして・・・・・・・・・・・「えっえっえっぇっ・・・・・・・・えええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!?」



「この爆乳残念なのがっ!!ああっ、あああっ、ああああっ!!あのあのッ!!あのッ!!リナああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」



 クリスは余りにも変貌し過ぎている今のリナの姿に驚きながら狼狽えてしまう。



「もう、ハンナったら、冗談はその頭の可笑しな頭と言動と思考だけにしてよね。」



 クリスはハンナに向かって、かなり失礼な物言いであった。



 ・・・・であるが、まぁ、此処は親友達の間では、当の本人から抗議されてもスルーされている。



「我にその物言いは、失礼だぞっ!」



「同志っ!!クリスよっ!!」



「リナは、この数年で胸も態度も背丈もデカく成って立派に育ったんだぞっ!」



 ハンナはハンナで、彼女も、とてもうっかりさんな性格で、ツイツイ、言わなくても良い本当の事を言ってしまう。



「チョッとっ!!ハンナっ!!後で覚えて置きなさいよっ!!!」



「ひひっ!!!」



「ガタガタ、ブルブル。ガタガタ、ブルブル。ガタガタ、ブルブル。ガタガタ、ブルブル。ガタガタ、ブルブル。」



 ハンナはしまったと思いつつ、青ざめた顔で、軽くブルブルと震えていた。



 とても昔とは違いすぎる今のリナの言動に、思わずボカンとしていたクリス。



「えっええっ、でも良く見ると面影が・・・・・でも・・・・それが・・これが・・・事実なら、アリスは、あの子は、あの子は・・・本当に影が薄く地味な子に・・・・・・・・ぐすっ。」



「ぐすっ、くずっ。ああ、我が妹ながらっ!!何てっ!!不憫な子っ!!」



 余談では有るが、現時点で近況が分かって居る紅葉達、親友の成長具合で一番に発育の悪いのはアリスだったりする。



 それも身長が164センチ程度で、スレンダーな体型のバストAカップと言う悲惨なスタイルを持つ女の子として・・・・・・・・・・・・・・



「3年くらい前に会った時に「お姉ちゃんばつかり、おっぱいが大きく成ってばかりで、ズルイっ!!ズルイっ!!ふええええぇぇぇぇーーーーーんっ!!」って言ってたんだぞっ!!」





「その時の私は胸のサイズが、Cカップだったんだっ!!」



 因みにクリスの今現在のバストは、Dカップです。



「「でも、きっとリナちゃんだけは、絶対にわたしを裏切らない。うふふふふふ・・・・・・・・」って、立ち直って居たのにっ!!わわわわっ!!私はっ!!あの子にっ!!何て言ったら良いんだよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」 





「そんな事っ!!あたしが知るかあああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!」



「こちとらっ!!好きで好んでっ!!こんな乳袋に成ったんじゃねえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ!!!!」



「このシスコン姉バカがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」



「何だとおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーっ!?」



「姉がっ!!妹を可愛がってっ!!何が悪いんだっ!!!」



「ああもうっ!!何だよっ!!この無駄にデカイ脂肪の塊はっ!!」



 日本全国のシスコンとロリコンの皆様、妹は可愛い。



 可愛いは正義と考えて居る妹バカな姉は、此処にも居たりする。





 アリスの方どんな子かと言う話は・・・・・それは今度の機会に語る事にしよう。



「イテテテっ!!揉むなっ!!触るなっ!!!」



「こんなにデカいと結構っ!!擦れて痛いしっ!!ベットで寝返りもし辛いんだぞっ!!」



 リナは此処数年、デカイ巨乳のせいで寝苦しい日々を送って居た。



 ハンナが懐に入って来て抱き枕代わりに成ってくれると何故か安定して寝心地がとても良かったりする。



 ハンナはボッチに成るのが怖くて、人恋しいらしいので、通い易いリナの実家や隠遁先の家に、フラリとやって来ては、リナのベッドへと潜り込む様に成って居た。



 ハンナの実家は、何かと軍務や政治関係の仕事で忙しいらしく。



 幼い時に紅葉に掴まらなければ、万年自宅で引き篭もりだったかも知れないのだった。



「そりゃっ!!良かったなっ!!わたしからすれば、本当に贅沢な悩みだっつーのーーーっ!!」





「おいっ!!」



「やる気かっ?」



「やらいでかっ。」とリナとクリスの二人は取っ組み合いの喧嘩を始めてしまう。



 其処にハンナが止めに入ろうとする。



「ああ、二人ともっ!その辺で止めな。」



「「うるさいっ!!アホな頭可笑しなハンナはっ!!引っ込んでろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」



「ひいいぃぃぃっ!!ガタガタブルブル、ガタガタブルブル、ガタガタブルブル。」



 はい、何時ものオチでした。



 この様に紅葉の親友達のじゃれ合いは、何時ものことで、言いたい事を言い合える関係である。



 リナとハンナは国が近く、ハンナ自身は空が飛べて居るので、近所に暮らしている幼馴染の様に「あーそーぼっ」と言って押しかけて来る事が多く。



 リナとハンナの二人は長く交流が続いて居た。



 だが、その外の親友達の近況は違う。





 クリスは時より仕事で、アルガスを訪れるシェスカと双子の妹であるアリス以外では、もう7年も会って居ないのだ。



 それにリナは3年もの間、ハンナ以外の誰とも連絡を取って居なかった。



 写真も無い世界なので、今どんな姿をして居るなどは、お互いに分からずじまいだったのだ。



「暫く行方が分からないって、アリスもシェスカも紅葉も心配してたんだぞっ!」



「ハンナっ!!!居場所は報せないで良いから、あたしが生きてるって言って置いてってっ!!言った筈でしょうがっ!?」



「ごごごっ御免なさーいっ!!!」



「居場所を報せるなって、所までしか・・・我は聞いて無かったのであるっ!!!」



 まーた、この子はうっかりハチ○ェさんをやらかしたらしい。



「あんたねーっ!!何時もっ!!何時もっ!!何時もっ!!、いいいーーっも!!何処かでポカをやらかすのよおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!!」



「ごごごっもごめんなさあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーいっ!!」



 リナは、ハンナの頭に両手の拳でぐりぐりと捻じ込む。



「イタたたたたたたっ!」



「はぁ~」



 我に返つたクリスは溜息を吐いた。



 すると思い出したかの様に、周囲を見渡し、途端にハッとしてしまうのだった。



「あっ、すみませんでした。思わず久し振りだったので・・・・・」



「いえいえ。」



 置鮎一佐と井上一佐の二人は、じゃれ合う3人にらを見て、苦笑して居たが、その姿とじゃれ合う光景は、とても微笑ましいと思って居た。



「懐かしいですね。昔の姫様達は、ああして集まると、必ずなんやかんやと理由を付けては、お互いにじゃれ付い合って居ましたわね。」



「そうそう、何時も楽しそうに笑い合って居ましたね。」



 千棘と瑞樹の二人も無役で、コヨミ皇国の首都である皇都・星都市等で勉学に励んでいた若き日々に、紅葉達の悪評や町を駆け回る姿を見た事が有るのだ。



「友垣と言う奴ですか?実に良い物ですね。」



「そうですね・・・・」



 少しだけ事情知っている千棘と瑞樹の二人の表情は曇り、言葉か詰まってしまう。



 世界大戦真っ只中の乱世に措いて、目の前の者達と袂を別ってしまって居る親友のドラグナー皇国第二皇女であるアルビィーヤ・サークラ・レアモンことアルビィとは、何れ命の取り合いをしなければならない運命さだめが待って居るのだ。



 真面目で頑固で意地っ張りで、誰よりも強がりで、そして、とても仲間思いの馬鹿であるアルビィと笑い合える日が、もう一度、来る日が有るのだろうか?





 一騒動有ったが、クリスの案内で一同は、モンブラン州のファン・ブランク市を守っているアナハインム城へと入る。 

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午後16時00分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・モンブラン州都・ファン・ブランク市・アルガス公国軍・駐屯居城要塞・アナハインム城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 





 この日、夕方にアルガス公国軍と日本国自衛隊との会議が、アナハインム城内の大会議室にて召集される事と成った。



会議の議題は、南部のユーラシナ大陸・シベリナ中央地方のグリクス地方の帝国戦力に対して、どう戦うかだった。





 アルガス公国軍の最近の偵察で得た情報は、以下の通りと成って居る



 空挺戦艦20隻 空挺竜母艦20隻 空挺重巡洋艦15隻 空挺巡洋艦30隻 空挺駆逐艦60隻 空挺帆船戦艦が200 魔導陸上戦艦30隻 魔導陸上揚陸艦50隻、帆船戦艦300 帆船輸送艦500





 グリクス地方軍団側の全兵力は、凡そ40万人程度と成っていた。



 そして、グリクス地方軍団と帝国軍をこれまで阻んでいたのはブラキュリオス湖と言う湖の広さであり、船が中々揃わなかった事に有る。



 

「以上がグリクス地方に措けるグリクス地方軍団と帝国軍の実情です。」



 クリスが凡その内訳を言い終える。



「兵力が40万人か・・・・・」



「地球時代では考えられんっ!!やり口が丸でソ連軍や人民解放軍の様だっ!!兵力等の軍事力が出鱈目過ぎるぞっ!!」





 置鮎一佐と井上一佐の二人は、帝国軍の兵力の多さに改めて恐怖する。



 その例えにソ連軍や人民解放軍の例えわ上げるのは、80年以上も前の戦争で、肉弾戦・・・・・所謂、近代的な武器は使えども、兵力の数に任せて攻め立てると言うやり方で、旧大日本帝国軍よりも凄惨な戦い方をして居たとも言える。



 旧日本軍の方は勝てない戦と出鱈目で作成とも思えないやり方で、無駄な兵力を損なって居たが、ソ連軍や人民解放軍等の組織は、補給路と補給物資がしっかりとして居たが、退き返せば死ぬぞと脅されて仕方なく前進するしか無い戦いを強いられて居た。



 それが第二次世界大戦と朝鮮戦争での出来事である。





「ローラーナ帝国は、軍備拡張と増強の為に必要な兵隊の徴兵には、手段を選んで居ません。」



「それに、これまでの戦争に措いて、向かう所敵無しな状態が続き、一方的な敗戦が殆んど無いせいなのと、彼の国の600年間を掛けて築き上げた広大な国土と人口の多さから次々と兵隊が送り込まれてしまいます。」



「それに加えて、ローラーナ帝国の標的とされた国々に、ローラーナ帝国軍に攻め込まれば、このアースティア世界に現存するどの様な国々であっても、手が付けられません。」



「兵力で敵を圧倒するか・・・・・・・・」



「とても厄介ですね。」



 二人は、先にも述べて居たが、ローラーナ帝国軍の戦争でのやり口である二つの軍組織を思い浮かべる。



「やはり話を聞く限り、ローラーナ帝国軍と言うのは、昔のソ連軍や人民解放軍の兵力が可愛く見えるやり口だな。」



「ああ、彼のソ連と人民解放軍だって、此処まで兵力を有して居ない。」



 

 自衛隊幹部である二人は、地球史に措ける映像や資料本でしか知らない。



 ある意味、戦争に関わる者達に最も恐れられた肉弾兵力軍を上回る兵力で、敵を押し潰すのが基本的な戦いであった。



 そんな無茶苦茶なやり方をして居るのが、このアースティア世界に措けるローラーナ帝国軍であった。



 それを地球世界史で言えば、半世紀前のソ連軍や人民解放軍と言うのが、似た様な例題として上げらる国軍としての戦い方であった。





「だがテロ組織のISよりはマシだ。」



「ああ、隠れてコソコソされより、軍として撃ち合うなら読み易い。」



「あのー、さっきからソ連軍とかISとか訳が分からないのですが?」



 クリスが置鮎の言ってる事に質問してきた。



「ああ、君達の帝国軍に関する話を聞いて居るとね。俺達の居た世界に在った幾つかの軍組織とか武装組織とかを思い付いてね。」



「人民解放軍は、日本の隣国に有った軍隊でね。」



「80年前くらい前の世界大戦の後の内戦では、大陸の支配権を勝ち取った後に起きた朝鮮戦争と言う戦争で、援兵と証して大軍を送り付けて来た事が有ってね。」



「あの時はアメリカ合衆国軍を中心とした国連軍が苦戦した事が有ったんだよ。」



「それとソ連軍と言うのも似たような物でね。」



「80年前くらい前の世界大戦最中で、ドイツと言う国がソビエト連邦のモスクワと言う首都を目掛けて攻め込み、泡や首都が落とされそうに成って居た時に、後方から温存していた兵力や戦災を逃れる為に、東に移転して有った軍需工場で、生産して居た兵器を大量に送り付けたんだ。」



「その結果、ソ連軍は地の利と兵器や大兵力の大軍。そして。冬将軍の到来を利用して、ドイツ軍に大勝利したんだ。」



「ISって言うのは、イスラム教の教えを狂信的信じてたり、異教徒弾圧したり、経済的に豊かな国に対して反発している武装集団の事だな。」



「金や兵を集めをするのならば、如何なる手段も辞さなくてね。」



「人を無理やりに兵隊にしたり、まだ未成年の少年兵やら、傭兵を掻き集めるの必死だったしなぁ・・・・・・・・」



「そうそう、勝つためにも、金に成るのならば、どんな手段を用いて、本当に何でもして居たなぁ~」



「誘拐・麻薬、海賊・盗賊・強盗とISと関わりを持とうと各地の組織が躍起に成ってたよな。」



「確か12年くらい前が、組織としてのピークだったよな。」



「あの時は中東を中心に色々と面倒が続いたっけ。」



「世界中の人々が、迷惑なテロ騒動に巻き込まれて居たなぁ・・・・・・・」





 置鮎一佐と井上一佐の二人は懐かしそうに、当に過ぎ去った地球での出来事を語った。



「そちらの世界も色々と厄介ごとが有るのですね。」



「まぁ、そんな感じの出来事が多いから、シンプルな戦い方をするローラーナ帝国は、ある意味、戦いやり易い。」



「でも、それとは別に、此方側の味方がなぁ~・・・・・・」



 一同が兵力の少なさと言う現実がある事に、思わず暗く成ってしまう。



「この地に集まった我が全兵力は、アルガス公国軍だけで6千人程度です。」



「日本軍の方々である自衛隊の総兵力数は、凡そ3500人程度。」



「内2000名ちょっと程度しか陸軍としての兵力が居ないのが心もとないと言えますね。」



「オマケに海軍の方々は、操船する事と白兵戦が出きる程度の戦闘訓練を受けて居るとのこと。」



「我々とは根本的に、戦に関するやり方が、全然違うと思われます。」



 クリスは自衛隊側の説明で、自衛隊の戦力規模の説明を大まかに聞き、彼女なりに自衛隊の戦力分析をして見た、結果での見解を簡潔に述べて居た。



「まぁ、家は少数精鋭で武器と兵器中心の国防隊ですからね。」



「揚陸戦を行う軍隊である筈の陸戦軍ですら、纏まった数の兵力が無い国ですので・・・・・・・・・・」



「12年前にやっと出来上がったばかりの水陸旅団は、ハッキリ言って反撃と領土奪還の専門部隊。」



「攻めに転じる用途に用いる旅団としては、他国に比べて、小さ過ぎますから・・・・・・・・・・」



「まぁ、その事で貴方がた自衛隊の事を不安視する者も少なからず居ますが、此処まで持って来て居る兵器の質と火力的に見れば、万の軍勢を率いて居ると言えます。」



「それに、其処に居る二人も、万の軍勢を相手に一歩も退きのかないとアセリナの聖天使騎士の方々から聞きました。」





 自衛隊の兵力は、ハッキリ言って少数精鋭で武器兵器の性能に頼っている面が有る。



 決して練兵に手を抜いていたり、予算をケチって、人員を削減して居る訳でも無いのだ。



 クリス達の軍隊は、練兵と装備、兵力の多さで戦うが、自衛隊とは少しだけ違うだけなのだ。



 況してや、今回の参戦は全くの予定外である。



 自衛であり護衛でもある陸自部隊の隊員の全てに、数十万の軍隊を如何にかしてくれ等と言うのが、最初から酷な話なのだ。





 だが、我が日本国が誇る自衛隊は、大変に優秀な装備品が揃って居る。



 其処は大きな利点だと言えた。



 後続部隊が駆け付ければ、更に有利な条件が揃う。



 その為に、今はやらなければ成らない戦いが、これから起ころうとして居るのだった。





「まさか、あの雷帝の噂の人物が、リナだったとはな。」



「ああ、その先は言わないで良いわよ。クリス。」



「うん、どうせ・・・何となぁ~く、ロクでもない噂なのは、十分に自覚して居るから・・・・・・・・」



 その噂の話とは、あの胸もデカイが態度も序でにデカイと言う話だ。



 リナは、もう諦めた様な顔をして居たが、この分だと、この後も同様の突っ込みが、有るのだろうと悟って居たのだった。



「音信不通だったとは言え、其処までの実力を持った魔導師に成って居たとはね。」



「いや~色々と有った挙句、荒れに荒れた修行生活の矢先の果てに、身に付けた力だったけど・・・・・・まぁ、何とか生きて行ける程度には成ったわね。」



「我々は、そのリナさんにも、出張って貰いたいのですが。」





 置鮎一佐は、グリクス地方軍団と戦う為に、一計を案じた策を披露する。



「これから説明をする作戦と言うのが、有体に言えば、敵側に侵攻作戦を遅らせる為に、奇襲による遅滞遅延作戦ですね。」



「まぁ、陽動作戦も兼ねて居ますが。」



「それが、妥当でしょう。」



「具体的には、如何するの?」



 クリスも賛同し、リナがその内容に乗り気で居た。



 その手の戦いは、彼女の十八番だからだ。



「はい、護衛艦きりしまとヘリコプター搭載護衛艦いずも、ひゅうがを中心とした護衛艦隊の一隊と、艦内に持って来て居る全てのヘリコプター使用した少数精鋭部隊を編成し、奇襲部隊として、敵地へと奇襲します。」



「ヘリコプター搭載護衛艦・・・・・と言うと、あの水上基地とも言える大きな鉄船を用いて、帝国側陣地へと攻勢を掛けると言うのですか?」



「その通り、闇夜に紛れ、神速を以てして、神出鬼没に敵地への攻撃する。」



「そして、護衛艦きりしまはイージスシステムと言う監視装置を持って居ますので、敵側の動きは逐一分かりますし、護衛艦に配備されて居る偵察専用のヘリも出撃しますので、攻守に万全を期した体制での奇襲作成に成ります。」



「如何でしょうか、お二人とも?」



「決行は?」とリナは、途轍もなく真剣な眼差しで聞き返す。



「準備が整い次第、今夜にでも。」と置鮎一佐は、直ぐ答える。



 アルガス公国軍側の指揮官クラスの騎士達を中心に周囲はざわつく。



「面白いですね。その奇襲作戦、是非ともやりましょう。」





 クリスの一言で、アルガス公国軍側は、この作戦への参加と決行を決断する。



 置鮎一佐の作戦とは、護衛艦きりしまとヘリコプター搭載護衛艦いずも、ひゅうがと搭載されて居る陸自海自の全ヘリ部隊を用いた奇襲作戦であった。



 この場に居た両者は、一致団結してダバ支援艦隊の到着するまでの間、奇襲攻撃によるゲリラ作戦を決行する事と成ったのである。



 後の歴史では、この戦いの事をレジェンダリア諸島・カントルナ砦近郊上陸撤退戦と呼ばれ、置鮎一佐が提案した作戦の事をグリクス地方奇襲作戦または、グリクス地方奇襲戦と呼称されて居る。

アースティア暦 1000年・西暦2030年・ 6月5日・午後16時35分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・九州島地方・福岡市東側郊外地域・神部町・異世界国家交流総合支援省・大臣執務室交にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 





 ダバ派遣艦隊のダバード・ロード王国への派遣目的は、技術改良をする為に、日本へと譲渡が決まった魔導機兵の受領と表向きは成って居る。



 だが、その真の目的は、反帝国を掲げる国家元首達や中立国の国家元首達が、国交開設等を含む国家間交渉を目的とした国際会議への参加をする為に、秘密裏に日本へと訪問して来ると言うものだった。



 日本での開催をすると言う事態と成った経緯は、ダバード・ロード王国のアーヤ女王の提案と、異界からの転移国家との国交開設をする事に有り、その彼らを敵対国の暗殺や軍勢での襲撃と言う暴挙から守るには、日本と言う一番に安全な地域での開催が絶対に必要な条件と成って居た。



「ふーん、置鮎さん。これは・・・・色々面白そうな手口ですね。」



「いやー、これなら僕も実際に見てみたい位だ。」



「そうかい?その反応を見たらお世辞では無さそうだし、第二次龍雲海沖海戦って呼ばれている戦いの作戦の意見監修した君が、そう言うのなら安心だ。」





 竜史は異世界関連の創作作品の知識に深く。



 日本本土近海での海上防衛に置いての参考意見の監修をも行って居た。



 まぁ、オタクの目線からの素人意見だが、大学の先生やら軍事評論家、果てはSF作品の手がける作家など著名人とアメリカ軍の将校に自衛隊幹部を加えた作戦会議。



 その会議には、交援省が掻き集めた情報と紅葉の能力とコネクション経由で得た情報を併せた意見を述べて、彼の第二次龍雲海沖海戦を見事に防いで見せたのだ。



 勿論、プロの働きが大半だったが、時限式魚雷や海上包囲奇襲に、ローラーナ帝国の日本本土の位置が、凡その位置が特定されて居たと言う手口の看破など、素人だがバカには出きない一面が有る事は、各所からまぐれかも知れないが、無視すらも出きないと言われて居た。



「それで、これって厳島の戦いをベースにしてますよね。」



「ああ、地形的に似て居たからな、そのまんま盗作する様な事はして居ない。」



「作戦参考程度にだ。それに派遣隊の中には、広島出身者や呉所属の連中も居る。」

「大軍に小勢でと成ると、必然的に織田信長の桶狭間の奇襲や毛利元就の厳島の戦い。」



「北条氏康の川越夜戦に島津軍の釣り野伏と、我が国は、少数精鋭で状況を一変させて来た戦史に事欠かない。」



「そうですね。もっと前なら、足利尊氏やら楠木正成やら、もっと古ければ義経に吉備真備と小狡い手口を使う武将や軍略家は多く居ますからね。」



 色々と著名な将の人物を挙げて行くが、正に今が歴史、その時が来たと言うべき時だろう。



「小西さんも、この作戦に付いて、どうお考えですか?」



「俺の方もこれで良いと思う。」



「後続艦隊を待っての反転攻勢・・・しかし、これは本当に痛い。」



「そうですね。西方でのローラーナ帝国軍の偶発的と言える戦闘続き、色々と備える為に援軍を送った筈が・・・その肝心の援軍が襲われるとは・・・・」」



「ああ、ブラキュリオス湖での情勢を鑑みての急造の派遣艦隊だったが、十分な自衛体制は有った筈た。」



「神谷や池田さんらが間に合ったのもツイて居ると言えたが、ローラーナ帝国軍が我々も把握して居ない未知の兵器群が投入されるとはなぁ・・・・・・・」



「何れにしても、置鮎さん。」



「この戦いは、此処からが山場です。」



「万が一に備えて、ガイダル島派遣隊のF-4部隊にスクランブル体制を取らせて置きましょう。」



「ですね、小西さん。」



「任せる。どの道、福岡や大陸基地でないと正確な連絡手段が無いのが現状だ。」



「この世界にやって来たから撃ち上げた人工衛星も、地球世界とは違って、思う様な運用も難しいし、其処から西へと向うと監視衛星は範囲外と成って居る地域も多く成る。」



「この星を周回している監視通信衛星は、ある程度の時間が来ないと直接通話すら難しいと来て居る。」



「何でも地球の様には行きませんね。」



「それではお二人供、この作戦計画。送った通りで良いですね?」



 モニターやパソコンを繋ぎ合わせての画像中継通信越しに大臣の二人は頷く。



「それでは。」



 敬礼をして通信を切ろうとする置鮎一佐。



 それを慌てて一言を言おうと竜史は声を掛けた。



「あっ?!待ってください。」



「折角ですので、正式な作戦名を決めましょうよ。」



「それとですね。ヘリ部隊にでも選別を送りましょうか、味方の援軍の時にでも使って下さい。」



「使うかどうかは、井上さんにでも決めて貰えば結構ですので・・・・・・」



「作戦名に選別?」



 置鮎一佐は、画面に映る竜史が何やら悪戯を考えて居る様な顔立ちをして居た事に、気が付き、嫌な予感がして居た。



「作戦名は、今思い付いた奴で、至ってシンプルな名前です。オペレーション・イツクシマとでも名付けましょう。」



「そのまんまじゃないか。」



「良いんですよ。歴史書に載るなら、これくらい簡単な名前の方が、我々も後世の人達も覚え易い。」



「良いんじゃないか。」



「ええっ!!小西さんまで~っ!!・・・・・」



「その方が報道で使うのに説明し易いし、第二次龍雲海沖海戦の時の様に、覚え易い名前が在ると政府としても非常に助かるんだよ。」





「それに名前は付いて居る事が大事だと言うしな。」



 そう、この時に付けられた作戦名が、この世界の戦史書にある言葉を生み出すのだ。



 イツクシマ作戦の奇跡と。

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午後21時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・モンブラン州都・ファン・ブランク市・アルガス公国軍・駐屯居城要塞・アナハインム城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 



 後の歴史では、この戦いの事をレジェンダリア諸島・カントルナ砦近郊上陸撤退戦と呼ばれ、置鮎一佐が提案した作戦の事をグリクス地方奇襲作戦または、グリクス地方奇襲戦と呼称された作戦に、選抜され参加する事に成った艦船は、以下の通りと成って居る。



 護衛艦 きりしま くらま あかつき いかづち とね ヘリコプター搭載護衛艦 いずも、ひゅうが 揚陸護衛艦 おしか おが まつまえ



CH-47JA 輸送ヘリコプター 4機 220名 

    

UH-1H 多用途ヘリコプター 4機 56名

    

OH-1 観測ヘリコプター 2機 4名



    

AH-64D戦闘ヘリコプター (アパッチ・ロングボウ) 7機 

    

AH-1S戦闘ヘリコプター(コブラ) 7機 28名



  

 SH-60J哨戒ヘリコプター及びSH-60K哨戒ヘリコプターを併せて9機が参加。



同行していない護衛艦の機体は、レジェンダリア諸島の中央に在るセイジョン・ローグリア城の西側に開けた場所に、臨時のヘリポート造って対処をする事に成った。



 更に奇襲作戦には、敵の基地や補給部隊の襲撃も検討され、当初のダバ派遣艦隊の予定に有ったダバード・ロード王国からの魔動機兵・ナイト・マギア30機の受け取りの為に、荷が最低限されている3隻の揚陸護衛艦の参加と活用を決めていた。





 少なくとも軍資金や武具に食料の類を奪えば、グリクス地方軍団と帝国地方軍も少なからず苦しい思いをする筈である。



セイジョン・ローグリア城には、陸自の先発隊100人が派遣され、城の周囲に塹壕等を現地の兵士らに掘らせ、来たるべき決戦に備えて居た。



 なお、この事は周囲の砦には、内緒にしてある。





アルガス公国政府は、現地の指揮官としてクリスを指名して居るが、元々アルガス公国は、レジェンダリア諸島を切り捨てる積もりで居たので、整然と撤退が出きるのなら若輩のクリスでも指揮官に据える事に対して、何の躊躇いも無かったのだった。



 さて、先の会議では、グリクス地方への奇襲計画案が提案され、アルガス公国軍と日本国自衛隊とプラス、コヨミ皇国の愛宕千棘と高雄瑞樹の両名。



それにアセリナ王国聖天使騎士12とヨハンナ・リリロッカ・ヨシカーナことハンナと雷帝の魔導師の異名を持つリナ・ミーサガ・リンバース加えた日シベ合同作戦軍を結成する。





日シベ合同作戦軍の指揮権をダバ派遣艦隊の置鮎竜次郎一等海佐が、受け持つ事と成った。



 奇襲作戦での本陣と成る場所は、ヘリコプター搭載護衛艦のいずもと決められた。



 此処で名称を付けられて居る日シベ合同作戦軍とは?と言うと、その背景は以下の通りと成って居る。





 レジェンダリア諸島・カントルナ砦近郊上陸撤退戦と呼ばれ、置鮎一佐が提案した作戦の事をグリクス地方奇襲作戦または、グリクス地方奇襲戦と呼称された作戦計画を遂行する為に結成された臨時の合同作戦計画軍のこと。



 参加する事に成ったのは、日本国のダバ派遣隊。



 シベリナ地方王国連合同盟からはアセリナ王国、アルガス公国が主力として参加し、コヨミ皇国の水軍将校であった高雄瑞樹と愛宕千棘の2名が作戦指揮官のオブザーバーとして参加。



 更には遅れてやって来たダバ派支援遣隊と共に、同行してやって来た、ドラグリア白龍大帝国のエリノア・ホワイト・ドラグリアが、ドラグリア白龍大帝国軍・統合将軍のユキカゼ・コーキンと白竜騎士団。



 そして、眷属竜である白龍族が、グリクス地方奇襲作戦に参加して居る。





 この臨時合同軍への参加と結成する事に成った裏には、高見竜史と交援省とがシベリナ地方王国連合同盟と日シベ安全保障協定条約と言う臨時協定を結んだからであった。



 これが後にアースティア暦 1000年・西暦2030年・ 5月30日と言う日は、後世の歴史に措いて、日シベ安全保障協定条約と言うアースティア国際平和維持連合安全保障条約、略称名・国連安保条約の前進と成って条約が結ばれた記念すべき日と成ったのだった。







 そんな歴史の転換点とも成った作戦を前にした日シベ合同作戦軍の拠点と成ったファン・ブランク市では、奇襲作戦に向けての戦支度が、慌ただしく進められて居る。



 本作戦は、レジェンダリア諸島で起こるであろう紛争に、ダバ派遣艦隊たる自衛艦隊が参加するに当たり、予想される戦闘地域に向けて、迅速に展開が出きる様に考えられて居た。



 作戦を円滑に遂行するに当たって、アルガス軍との上陸戦と各地の砦に立て篭もる味方を整然と撤退させ、セイジョン・ローグリア城に立て篭もる事を予定して居た。





だが、グリクス地方軍団の別働隊によるダバ派遣支援艦隊の遭遇戦と成った為に、当初に想定して居た作戦に変更とアレンジを加える事と成った。



 グリクス地方奇襲作戦としては、グリクス地方軍団に対して、奇襲・かく乱と侵攻遅延を主軸目的としたゲリラ作戦を付け加えると言う物である。



 

 その内容とは、次の通りである。





 一次作戦たるグリクス地方への奇襲作戦。



 第二次作戦は、ダバ派遣支援艦隊と合流し、当初から予定して居たレジェンダリア諸島への救援上陸作戦。



第三次作戦には、海自輸送艦隊と陸自部隊とアルガス軍の荷馬車を用いた撤退戦。



第4次作戦には、セイジョン・ローグリア城に敵を引き吊り込みつつ、半方位陣を敷いての迎撃防衛線。



 それでも敵が退かなければ、追撃やゲリラ戦に、艦隊決戦の計画まで色々と練られていた。



 合流予定の後続艦隊のダバ支援艦隊の遅れは、凡そ1日から1日半との連絡が来て居るが、置鮎一佐は3日の遅れを想定した作戦計画を立ち上げて居る。



 アルガス公国軍の中には、これだけの兵器や武具を揃えて居るのだから、先手を取って逸早く全軍を上陸させるべきでは無いのか?と言う疑問と質問の声が上がった。



 しかしながら置鮎一佐は、寡兵で大軍を相手にするのならば、第一に味方すら欺く位の敵軍有利の状況の方が、返ってやり易いと意見を述べるに留まって居る。



 彼の狙いは、有る人物が考えた作戦を手本として居る。





 その人物とは、謀神と呼んでも差し支えない謀略の天才的な人物として名高い毛利元就が、厳島の戦いで取った作戦である。



 その作戦を簡単に言えば、敵の大軍を狭い島に引き吊り込んで半方位で囲み、殺し間と言う銃砲火力を最大限活用出きる上に、火力で圧倒させられる陣形と陣地を使った決戦である。



 其処に勢い良く、勇んで攻め込んで来るグリクス地方軍団に対して、大打撃を喰らわせる積もりなのだ。



 作戦の内容は、敵方に漏れる恐れが有るので、作戦遂行を進める指揮官である置鮎一佐と井上一佐。



 それに現場指揮官であるクリス、そして遊撃戦を得意とし、義勇兵的な立場で参加するリナ。



 最後にコヨミ皇国の水軍に属して居おり、指揮官を務めて居る愛宕千棘と高雄瑞樹に限られて形で、作戦の詳細を知らされて居る事と成って居た。



因みにハンナが、そのメンバーに入れられて居ないのは、うっかり口を滑らせ、何かを言われる事を作戦主導部が恐れた為であり、決して、仲間関係からハブられた訳では無いのだ。





 本作戦会議の詰めの協議では、全軍の最高指揮官クラスである者達と協力者たるリナしか最終的な内容を知らされて居ない。



 クリスは、ニホン軍の作戦立案と指揮系統能力の高さに舌を巻き、この作戦の参加と決行を決めたのであった。



 そう、この地に自衛隊が来なければ、負け戦だった戦いに勝ちに行くぞっ!!と言うくらいにはね。



 クリスとアルガス公国軍の騎士や兵士らは現在、作戦旗艦たるヘリコプター搭載型護衛艦いずもに乗艦して居た。



 一部のヘリは、レジェンダリア諸島のセイジョン・ローグリア城に近くで待機して居る。





 時刻は夜の22時丁度を指して居た。



 クリスは指揮官として、5名の部下と共に、特別にヘリコプター搭載型護衛艦いずも艦内に設置をされて居る司令部区画に、入室が許された。





愛宕千棘と高雄瑞樹も同様に、これまで船旅では、お客様として乗船をして居た外国軍人の立場から、この区画への入室をご遠慮頂いて居たが、今作戦の間に限って、初めて入室が許された。



 この事は本省である防衛省と日本政府も了承して居る事だった。



「これがニホン海軍の艦内司令室・・・・・・」





 余りにも至れり尽くせりの設備に関して、開いた口が塞がらないクリス。



 今、クリスが目にして居る風景は、彼女からすれば、有り得ないくらい技術的に進んでいた物だった。





正面のメインモニターを含め、各所の机にはパソコンが置かれ、映し出されて居るのは、作戦に当たって防犯や味方の様子を写し出す為に、各所に配置されたカメラであった。



 その設置先とは、護衛艦の船体、陸自部隊の車両や自衛隊が持ち込んでいるドローンカメラ等であった。



 その映像に映し出されているのは、レジェンダリア諸島のセイジョン・ローグリア城とファン・ブランク市内の軍港で作業中の自衛隊やアルガス軍の騎士や兵士達である。



 作業や作戦の進捗状況はリアルタイムで随時、やり取りが出きる体制を日シベ合同作戦軍は整えていた。



「戦の概念が覆ると言うか、そう言えばシェスカの祖先が、こんな感じの機械仕掛けの船を乗り回して居たとか言ってたな。」



 かつてこの世界にも機械科学文明を持った国家が転移して来たらしいと言う話が残って居る。



 だが、その先進的な機械科学文明を維持出きずに、没落衰退して行ったらしい事が、交援省が行ったアースティア世界の各国大使からの聞き取り調査で、判明して居た。



 一度、技術や知識を失った文明の再興は、とても難しい物だ。



 虫食いだらけと成った文明国家は、技術や知識の再習得に膨大な時間も掛かるし、資金も掛かる。





 クリスが目にして居る文物は、正にロストテクノロジーの塊と言った物なのである。



「クリス少佐、此方へ・・・・・・・・・・」



 海自の一射の階級を持つ女性隊員が、用意して置いた席へと案内され、別の女性隊員が千棘と瑞樹の案内を担当して居た。





 間も無く最後の作戦会議が行われようとして居た。



 何せ、この作戦に付け焼刃の合同軍である。



 作戦に齟齬が有っては、全軍の生命に関わる事だからだ。



 念には念と用心に越した事は無い。



 置鮎一佐と井上一佐がモニターを切り替えて参加する全ての護衛艦隊と乗船を許可されている友軍士官らは、別室で中継映像を見て居る。



 特にいずもとひゅうが多目的区画には、陸自隊員とアルガス公国軍騎士が、それぞれ乗船して居た。



 いずもの多目的区画には、アセリナ王国聖天使騎士12人とハンナとリナが乗り込んでいた。



 そして、揚陸護衛艦おしか おが まつまえの3艦には、車両と積荷が最低限しか積まれて居ない。



 魔動機兵・ナイト・マギア30機を積む為に、無積載だった為だ。



 しかし、今はアルガス軍が掻き集めた馬車が3隻に、120台ほど積まれて居る。





「それでは、正面モニターを用いて、グリクス地方奇襲作戦に付いての最後の作戦会議を行います。」



「ダバ派遣艦隊の各艦にも、パソコンなどの中継機材を用いての行動会議です。」



 これだけの大所帯だ。



 参加人数と作戦情報の機密の観点から、ギリギリまで作戦内容を伏せられて居る。



 乗船している現地の者達は、身元がハッキリとして居るので、その辺りの心配が無いと思うむが、万が一の為の処置であった。



 この作戦会議の後には、そのまま出港と成り、第一作戦のグリクス地方への奇襲作戦に望むだけと成るのだ。



 それなので、出発したら明日までは、この港には戻って来ないし、次の作戦情報の開示も、作戦決行を決めた直後と成る。





 グリクス地方軍団や帝国地方軍側に、便利な通信装置が無い事を衝いた徹底した機密保持である。





この状態ならば、帝国の間者を警戒しつつも排除する事も出きる一石二鳥と言えるやり方だった。





 この最終内合わせが終わると、いよいよ、作戦開始と成るのだ。







アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午前9時40分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国領・グリクス地方州・グリクス市・グリクス港・グリクス地方軍団・ローラーナ帝国軍・グリクス地方軍団官庁舎にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 その日の夕方、グリクス地方軍団の司令官であるガミトフ・バイマン中将はグリクス地方東部戦線管区基地から届いた第一報の報告を受けていた。



「ガミトフ閣下、グリクス地方東部戦線管区基地から第一報の報告が届きました。」



「来たか?読み上げろっ!」



 ガミトフの配下の第一秘書官は、竜騎士の伝令官から届けられた報告書の書状を読み上げた。



「はっ、グリクス地方東部戦線管区を管轄しているバラン・ビルダーク少佐は、アースティア暦 1000年・6月4日・午後15時00分頃。」



「ブラキュリオス湖から東方へ27キロ地点にて、ローラーナ帝国領・グリクス地方州・東部地域区・グリクス地方東部戦線管区所属であるグリクス地方軍団の18・19・20・21・22飛竜航空隊と帝国空軍所属・第9空挺艦隊の空挺戦艦七隻と空挺竜母が五隻を率いて、同地方のパイプ・ライン大河を警戒中にニホン軍艦隊を確認せり。」



「各地方の戦線からの報告と諜報部から情報を合わせた結果、ニホン国なる謎の見確認の新国家は、我がローラーナ帝国と交戦状態に入ったとの規定に当たると判断する。」



「その為、グリクス地方軍団及びガミトフ・バイマン中将閣下の計画されて居るレジェンダリア諸島とアルガス皇国侵攻作戦に著しい支障が出ると予測さる為。」



「先のに述べた理由から、私は二ホン軍艦隊との艦隊決戦を決意する物なりっ!!」



「我がグリクス地方東部戦線管区の艦隊を総力を持って、これらに対処する。」



「それに加え、我が隊がこの戦に措いて、パイプ・ライン大河で暗躍して居るニホン艦隊を意図を探る積もりである。」



「なお、ニホン艦隊は二艦隊で構成されて居るらしく。」



「先発艦隊はブラキュリオス湖で休息中との情報が有り・・・・・とのバラン・ビルダーク少佐からの報告で有ります。」



「ご苦労だった。下がって執務を続けてくれ。」



 第一秘書官は報告を終えると敬礼して立ち去る。





「バランの奴は、ニホン軍の第二艦隊が、この地に来るのは危険と判断したか・・・・・・・・」



「その様ですな。まさか艦隊を二つも編制して来て居るとは・・・・・・・・」



「たった1艦隊であっても、厄介なのは変わり無いがな。」





「そう言う厄介な面倒事は、さっさと片付けたいものですな。」



「全くだ。これではわしの計画に水を差す様な物だ。」



 ガミトフの横には、丸で傭兵業を生業にしている海坊主かタコ坊主と言った感じの丸い眼鏡を掛けた大男であるババロスク・オバム大佐。



 その彼がガミトフが座る席の近くに立って、供に最前線からの報告を聞いて居た。



「閣下、まさかニホン国やシベリナ連合各国に、我々グリクス地方軍団が計画をして居るレジェンダリア諸島侵攻作戦の準備が、漏れて居るとかも知れないとのお考えがあるのですかな?」



「うむ、それは有り得るとは言いたいが、軍事作戦の機密事項の隠蔽は徹底して居る。」





「此方の偵察部隊が幾つか発見され、泳がせ上で、作戦計画や侵攻作戦で捕られた場合の予測がされて居る程度くらいは、有り得るだろう。」



「其れならば、作戦開始を早めますか?」



「いや、中途半端な侵攻計画は返って作戦計画に齟齬が生まれ、その結果も良くない物に成り得る。」



「況してや、今は目の前にニホン軍が何を目的として居るのかは分からぬが、遥々この地へと遠征して来て居るのだ。」



「その数は決して多くは無いが、アルガス公国軍と連携されたら非常に厄介だ。」



「しかし、調べれば調べる程に奴らに関する情報が少な過ぎますな。」



「仕方有るまい。転移国家等と、600年以上昔の史実の話に出て来る程度の国と同等の存在が突如として現れたのだ。」



「新たに出現した新国家であり、付き合いの有るのはユーラシナ大陸の東部地域や東部太平洋地域だけだ。」



「必然的に敵国を解しての情報と帝国東方軍からの情報しかない。」



「存外、我が帝国は、建国以来の初の強敵と戦う可能性すら有るのだ。」



「ニホンは、本土として扱わる4島と周辺海域に点在して居ると言う離島群島からなる小さな島国との情報が有ります。」



「相手を侮る訳では有りませぬが、其処までの警戒する程の相手なのですかな?」



「その実体を知らねば、迂闊な戦略は立てられん。」



「場合によってはこの戦は、少なく見積もっても、我が手持ちの兵の半分は失う覚悟が有るやも知れんぞっ?」



「閣下のその評価、彼の国が、其処までの相手と・・・・・・・・・」



「でなければ、ローラーナ帝国海軍の第一外征艦隊とシドウ・ギワザンを破った説明が付かん。」



「ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊とアディーレ・グレッサは地方艦隊に過ぎん。」



「ギワザンの奴は、野心家で手柄と出世欲の塊だが、艦隊の規模は帝国の中でも指折りだ。」



「それを数に劣り質だけが高い艦隊だけで、勝てる艦隊を持った国で有ると見て居るのは、帝国内の中で、どれだけ居るのか・・・・・・・・」



「何れにしても、準備が整いませんとな。」



「ああ、あの居毎々しい雷帝の小娘と頭の可笑しな聖天使騎士共が、事有る事にちょっかいを出して居るせいで、わしの侵攻作戦計画が大幅に遅れ続けて居る。」





 この地域は特にリナとハンナの二人が、アセリナ王国軍に依頼されて、定期的に物資を奪取されて居たので、相当な被害額と戦死者が出ている。



 特に感電死と粉微塵に噴き飛ばされていると言う無残で悲惨な最後迎える形での死に方が特に多かった。





特に決め技のサンダースレイブとエクスプロトンバスターの被害者の数は尋常では無なく、そのせいで戦死者が多く出て居るので、死んだ将兵達とガミトフ率いるグリクス地方軍団に取って堪ったものでは無いのであった。







 そのおまけとして、二人の悪名が天下に轟いているのだが・・・・・・・・・・









「今度の輸送部隊は、夜間での運搬と味方駐屯地や城砦の多い地域を経由させて居ます。」



「それに今度は、前より大目の護衛、一部隊に7000人の兵士を付けて居ります。」





「それに加えて、城砦の防備も倍の数にして居ります。」



「だが、決して、油断はするなよ。」



「ははっ!!その辺も含めて、今度は抜かり無く・・・・・・」



「・・・・バランの戦況報告が届くの遅くとも明日か明後日、さぁて、この戦・・・・どう転ろぶ・・・・・・」



 ガミトフは席を立ち上がり、執務室の窓からグリクス市街を見渡す。



 その後、二人はレジェンダリア諸島侵攻作戦計画を更に進めて行く為に話し合うのであった。





 そして、バラン少佐の敗戦が翌日に届く事に、二人を含めたグリクス地方軍団の幹部達は、その事実に驚愕するのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午後23時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国領・グリクス地方州・グリクス地方軍団・グリクス地方西方戦線区・グリクス市・グリクス要塞から西へ凡そ、60キロ付近・グリクス第7要塞近隣から13キロ付近・日シベ合同作戦軍上陸ポイントにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







 日シベ安全保障協定条約を根拠としてダバ派遣艦隊は、日シベ合同作戦軍を結成し、シベリナ地方王国連合同盟からはアセリナ王国、アルガス公国が主力として参加。



 コヨミ皇国の水軍将校であった高雄瑞樹と愛宕千棘の2名が作戦指揮官のオブザーバーとして参加し、後学の為にと伊達愛美からの指示で、この作戦では前線での指揮を執る事に成って居た。





 ダバ派遣艦隊は、味方であるアルガス公国軍の地方軍であるモンブラン州騎士団及び援兵であるクリス率いるヘスティア遊撃騎士団と合流し、その全軍の中から奇襲作戦に参加する選抜させた部隊を揚陸護衛艦のおしか おが まつまえへと荷馬車と共に乗り込んで居た。



 彼らが狙うのは、ローラーナ帝国領内のブラキュリオス湖西岸区域であるグリクス地方西方戦線区内に在る砦や出城、補給物資の貯蔵基地等である。



 自衛隊が隠密行動故に持ち込んで居る装備も一部だけに限られて居た。



 作戦に備えて自衛隊装備の荷物は入れ替えられて居り、それは以下の通りと成って居た。



偵察用オートバイ10台



10式戦車 6両



87式自走機関砲4両



87式偵察警戒車4両



16式機動戦闘車4両 



96式装輪装甲車4両 



89式装甲戦闘車4両 



11式式装軌車回収車2両





 と言っても上記の通りで部隊としては、過剰すぎる位で速さと少数精鋭の火力を優先した部隊編制と成った結果である。





 船内は荷馬車が一隻辺り30台ほど積み込まれ、中には、分解して運び込まれている物も有るのだ。



 それに艦内に馬を入れるのも初めての事だ。



 藁で敷き詰められた場所を用意して居るとは言え、蹄での床の傷や糞尿を含めて床が汚れるもの覚悟しなければ成らない。



 一部の海自隊員は、それを思うと、思わず溜息を漏らして居た。



 ダバ派遣艦隊は、敵地へと乗り込むのに当たり、艦隊の明かりを全て無灯火態勢にて、ファン・ブランク港を出発し、揚陸護衛艦のおしか おが まつまえを先頭にして、上陸予定地点へと向って行く。



 先導役兼艦隊の先方を任されたのは、護衛艦くらまだった。



 護衛艦くらまは、闇夜の世界を見渡しながら二つの砲門を突き出して岸辺に向う手前で右へと方向転換する。



 あかつきは左へと向かい両艦は共に周囲左右を敵から警戒する。



 いかづち・とねは後方で停止し、後詰めとして、周囲一帯を警戒。



 きりしまは、揚陸護衛艦を見送るとその場で停止、司令塔であるヘリコプター搭載護衛艦かが、ひゅうがの護衛と艦隊全体を防御をするべくイージス艦としての役目に専念する。





 レジェンダリア諸島から遅れて出発をした海自のSH-60J型3機とK型4機の哨戒ヘリコプターが、機関銃やミサイルを備え付けたフル装備で飛来してやって来た。



 揚陸護衛艦のおしか おが まつまえの正面ハッチを開くと、アルガス公国軍騎士と兵士らは馬車から揚陸を開始した。



 高雄瑞樹と愛宕千棘の両名は、コヨミ皇国政府と日本国政府の了承の下、研修目的で揚陸護衛艦のおしかとおがに乗船し、艦長らからけ現代戦争に置ける戦艦を始めとする艦船使用のノウハウを受け学んで居た。





 そして、アルガス公国軍が上陸を終えると、陸上自衛隊の全車両も甲板からエレベーターで内部へと降下し、前部のハッチから後に続いて行く。





 陸自部隊は、先に上記の記述した編成車両を更に二部隊に編成させる。



 それは下記の通りに分けられる。





偵察用オートバイ5台



10式戦車3両



87式自走機関砲2両



87式偵察警戒車2両



16式機動戦闘車2両 



96式装輪装甲車2両 



89式装甲戦闘車2両 



11式式装軌車回収車1両



 アルガス公国軍の各部隊は、15台つづの馬車と共に帝国の砦や野営地に向って全身を開始しする事と成って居る。



 陸自第1小隊とアルガス公国軍・第一上陸小隊から成る日シベ合同作戦軍第一部隊は、上陸地点から凡そ西へ18キロ地点の砦と、その砦から10キロ離れた地点の野営している輸送大隊を狙うべく、部隊の前進を開始する。



「全部隊っ!前へっ!」 



 前線指揮官は、10式戦車の1号車を駆る椎名ひかる三佐とクリスティーナ・マケッンジー少佐ことクリスである。



 クリスは、指揮下に在る部下の騎兵の騎士を二人引き連れ、15台の馬車部隊と共に陸自上陸第1小隊の後に続く。



「前進、前っ!」



 椎名三佐とクリスが号令を発する。エンジン音が響き渡り、陸自のOH-1・偵察ヘリと海自のSH-60J/K哨戒ヘリコプター・哨戒ヘリが先行して進軍路の安全確認を見極めながら突き進む。



 日シベ合同作戦軍第一部隊の航空支援には、OH-1 観測ヘリコプター1機、AH-1S戦闘ヘリコプター(コブラ)7機。



 UH-1H 多用途ヘリコプター2機と海自のSH-60J/K哨戒ヘリコプターを合わせて3機が振り分けられる。





そのシベ合同作戦軍第一部隊に同行するヘリ部隊の指揮は、井上一佐の副官である大塚良忠一射で在るが、コブラ部隊の指揮だけは、AH-1S戦闘ヘリコプター(コブラ)の一号機の乗っている東地秀矢一尉である。





 そして、日シベ合同作戦軍第二部隊の指揮を執るのは、井上一彦一佐とアルガス公国のモンブラン州の守りに就いて居るアルガス騎士団・第二騎士団・アルガス騎兵団の団長であるゼータ・ビダイン(大佐)が指揮を引き受けてくれた。





 ゼータ・ビダイン軍団長は、35歳で、アルガス公国軍切っての騎兵隊の扱いに長けて居る人物だ。  



 アルガス公国軍は、馬車部隊を含めた騎馬兵が出ると言う観点から来る人選であり、奇襲作戦の話を聞き付け頼まれた彼は、アルガス公国軍の地上部隊の指揮を引き受けてくれて居た。





 なお、アルガス軍には通信機を持った自衛隊員と無線機が貸し出されて居る。



 特にインカム付の無線機は、長期間での情報のやり取りとして、とても重宝されアルガス騎士団達等に喜ばれて居た。  





 第二小隊の航空支援には、OH-1 観測ヘリコプター1機、UH-1H、AH-64D戦闘ヘリコプター(アパッチ・ロングボウ)7機。



 多用途ヘリコプター2機、CH-47JA 輸送ヘリコプター4機と海自のSH-60J/K哨戒ヘリコプターを合わせて4機が配置される。



ヘリ部隊の指揮は、井上一佐が執って居るが、アッパチの部隊の指揮だけはAH-64D戦闘ヘリコプター(アパッチ・ロングボウ)の一号機に乗っている黒多宗近一尉である。



「それでは、井上一佐殿、我らも・・・・」



「ビダイン軍団長閣下、陸上部隊はお任せします。」



「私は少し送れて上空から地上部隊を支援しますので、陸自部隊に付いて詳しい事は、陸自上陸第二小隊・指揮官である冬眞友紀一射にお聞き下さい。」



「了解した。竜騎士や空挺戦艦以外での上空支援は、我らに取って、とても心強く、有り難い。」



「我が国は他国とは違い。その殆んどが騎士や歩兵の軍団だ。」



「それに我が国の魔導兵器は、国家の虎の子の兵器だ。滅多な事では出撃が出せないので助かる。」



 冬眞一射とは、椎名ひかる三佐の部下で、ダバ派遣隊の10式戦車部隊の第二小隊の隊長を務めて居る人物である。





 とてもクールで、冷静な感性を持った女性自衛官である。



「冬眞一射、これが貴官に取って、初の実戦だが、ビダイン閣下を支えて現地で落ち合おう。」



「はっ!!全部隊っ!前っ!」



 冬眞一射は87式偵察警戒車を先鋒として、日シベ合同作戦軍第二部隊の前進を開始した。



 続くビダイン軍団長も暗がりで分かり難いが、銀と青色で染められた鎧を身にまとって、指揮下の騎兵の騎士5人と15台の馬車部隊を自衛隊の先導を頼りに前進させて行くのであった。



 彼らの狙いは上陸地点から凡そ13キロと、ほぼ、目の前に有るグリクス第7要塞を攻め落とす事だった。



 そして、全奇襲部隊の主要目的は、敵の補給物資とレジェンダリア諸島攻略作戦の情報収集であり、海自の後続艦隊の到着までの時間稼ぎと成って居る。







アースティア暦1000年・5月22日・午後21時05分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・アイリッシュ湖畔・ダバード・ロード王国・アルインランド州 州都・ベルクラネル市郊外・アイリッシュ湖・ガイダル諸島・ガイダル本島・ガイダル・タバ日統合隊基地にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 此処はユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・シベリナ中央地方・ダバード・ロード王国。



 アルインランド州 州都・ベルクラネル市郊外・アイリッシュ湖内に在る島、ガイダル諸島に在った旧ロード・コスモ資本連合国ガイダル諸島空港遺跡を改修工事をして新しく航空基地と成ったガイダル・タバ日統合隊基地。





 正式名称は、ガイダル諸島・ダバード・ロード王国・日本国統合航空隊基地と言う。





  それは日シベ安全保障協定条約こと、略称名・日シベ安協条約を根拠とする形で日本国政府が、ダバード・ロード王国への安全保障問題での支援とガイダル諸島で発見された古代遺跡空港を改築改装工事して新設した空港を維持・防衛体制を目的として派遣された航空自衛隊がダバード・ロード王国軍と共に運用をして居る官民一体使用を目的とした空港の事。



 それを例えるのならば、千歳基地と千歳空港、茨城空港と百里基地が一体と成って居る形を思い浮かべると分かり易いだろう。



 日本国防衛省は、この航空基地に航空自衛隊・ダバード・ロード王国・ガイダル島派遣隊を結成し、老朽化から退役が確定して居たF-4J改ファントム部隊を派遣して居るが、後にF-4J改ファントムをダバード・ロード王国が買い取り、部品生産買い取り込みで、日本国と防備装備品メーカーとの30年契約を結ぶ事に成るのは別のお話である。





 此処には30機のF-4J改ファントム部隊を中心とした航空自衛隊の派遣部隊たる航空自衛隊・ダバード・ロード王国・ガイダル島派遣隊が配備されて居た。

 



 この世界の2030年代の日本では、現実とは違い。F-4J改ファントム部隊は、主に百里基地のみの運用と成って居て、最早主力から完全に遠ざかり、偵察機RF-4EJへと改装され、退役を順次待つか、機体の技術関連の資料としての保持補完の為に残された機体と成っていた。



 中には訓練機としてや、航空護衛艦の艦載機の訓練機としての役目を与えられる機体も有ったが、今は戦闘機としての最後のご奉公先として派遣された場所である異界の大陸の魔導技術国家の大国であるダバード・ロード王国へと派遣される。



 そのF-4J改ファントム部隊は、アルインランド州・アイリッシュ湖のガイダル諸島へと派遣され、ガイダル諸島基地で日本との連絡路兼同地の防衛の為に活動して居た。



 そんな彼らに、配備されて以来の初の出動命令が下されたのだ。



 ガイダル諸島派遣隊として任地に赴いていたF-4J改ファントムに乗る空自隊員の者達は、初の実戦にも関わらず、年齢を問わずに歓喜に満ちて士気が上がり捲くりであったのだ。



 それも無理もない。



 最早、空自のお荷物同然に扱われ、技術保管とデータ取り、挙句は航空ショーの見世物にしか成らない期待が40年の時を超え、初めて日の目を見る絶好の機会に恵まれのだ。





それも最新鋭機であるF-35よりも早くにである。



 日本のF-4J改ファントムは、一戦もせずに鉄くずに成らずに老骨にムチを打って、初の実践に赴く事と成ったのである。



 任務内容は、ブラキュリオス湖・グリクス地方西方面の帝国陣地への爆撃である。



 30機ものF-4J改ファントムは同系機で、改装機体たる偵察機RF-4EJを道案内役に据えて、供に定められた目標ポイントへと飛び立って行く。



 これでグリクス地方軍団は、思わぬ方向からの安全な支配地域に対しての突然の攻撃を受けて、慌ててふためくだろう。



 日シベ合同軍は、その隙を狙う作戦だが、帝国軍は日本の進撃の早さに付いて行けずに、事を知る頃には、朝を迎え過ぎる事に成るだろう。



「スクランブルっ!!!スクランブルっ!!!演習ではないっ!!!」



「此方はガイダル・タバ日統合隊基地っ!!!。」



「本日20時に日本・本国よりガイダル・タバ日統合隊基地に対して出動命令が下されたっ!!!」



「F-4J改各機の搭乗者各員に告ぐっ!!!。至急っ!格納庫に集合し、全機っ!速やかに発進せよっ!!!」



「繰り返すっ!!!これは演習ではないっ!!!これは演習ではないっ!!!」





 時刻は21時、ダバ・ロード王国内では徐々に営業している店は酒場ぐらいなもので、宿泊施設もあと一時間くらいで雇っている従業員等も後片付けに掛かろうとして居た時間帯だった。



 日本の町とは違い、富裕層は優雅に夜更けを過ごし、庶民はウトウトと明日に備えて眠りに付こうとして居た頃合である。







 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午後21時07分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・アイリッシュ湖畔・ダバード・ロード王国・アルインランド州・州都・ベルクラネル市・ベルクラネル城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







 ダバ・ロード王国の女王であるアーヤ・シュチュ―ド女王は、来るべきコヨミ皇国・日本国で開催予定が計画されて居る国際会議への参加する為に迎えを待って居た。



それもまだ、開催名すら決まって居ないこの世界でも有史以来初めてとなる国家元首が一堂に揃う事と成るであろう大規模な国際会議に参加するべく日本からの迎えを待って居たのであった。



 州都・ベルクラネル市の東に聳え建っているベルクラネル城は、アイリッシュ湖の湖に色に合わせるかの様にして、水色と白を貴重としている西洋式の見事な美しい城は、堅牢で堅固な守りの有る城でありながら、ファンタジー戦記のライトノベルやアニメから飛び出た様な姿をして居た。



 その美しい佇まいをして居るベルクラネル城は、アイリッシュ湖の北に作られたベルクラネル市を見下ろす様にして、子高い丘に建てられて居た。





 そのベルクラネル城にて、日本からの迎えを待って居る女王アーヤの下へと急報が齎されたのであった。



と言うよりも、伝令官よりも早く市民や軍人、アルインランド州の役人。



 果ては女王自信ですら簡単に気が付けるくらいに、ハッキリと南の湖からウウウウウゥゥゥーーーと言う大きな警報音が、湖面一帯に大きく鳴り響いて居たからであった。



「何事か?」



「アーヤさま。只今、関係各所から確認して居る所であります。」



 アーヤは近くの待機所で護衛と仮眠をしている近衛隊の隊長たるカリン・カインザーキーン少佐を呼び出して事実確認をさせていた。



 ロングのポニーティルで纏められた髪を靡かせて、部下達に急いで警報に関する状況確認を急がせて居た。



「これって、確か警報音とやらよね。」



「はい。私もニホンのガイダル諸島基地完成の際に、視察で多くの軍関係者と共に、色々と説明を受けて居ますし、夜間演習の最終時間は夜の20時から作業時間が終わるまでの21時とニホン式時計で定められて居ます。」



 この夜間演習の最終時間は夜の20時とは飛行機の離着陸の最後と定められ、以後、緊急時を除いた飛行する乗り物は21時まで基地での活動を終える事に協定で定められて居た。



 因みに、ガイダル諸島基地から発進して行く戦闘機を始めとする飛行機の離着陸をする姿は、ベルクラネル市に取ってちょっとした観光名物と化して居たりする。



 特に夜間訓練のでの離着陸を見ながらの飲食店や居酒屋での飲食は、この町の夜の名物に成りつつあるのであった。



「と言うことは・・・・・・」



「はっ!ニホン本国からの緊急を要する連絡を受けてか、東方か南方で何か有ったと見るべきです。」



「直ぐに、ガイダル諸島・タバ日統合隊基地に問い合わせなさい。」



「はっ!ただ今通信士と成った仕官の者が、直接通信で問い合わせして居ります。詳細結果に付いては、もう間も無くかと・・・・・・・」



 アーヤは、日本とのやり取りをする中で、ガイダル諸島・タバ日統合隊基地とのホットラインを立ち上げていた。



 少なくともベルクラネル城とガイダル諸島・タバ日統合隊基地の間だけは、電話や無線機が置かれて居るのだ。





 これ等の設置費用の資金は、ダバ・ロード王国政府から出されて居る。



 10分ほど経ってからダバ・ロード王国内の軍務部・政務部内に統合運用を目的に新設された、電子通信情報局と言う部署から、アーヤ達に文書にて伝えられた。



「何ですって、アルガスで戦?妾達の迎えが遅れるですって?」



「その様です。」



「ニホン艦隊の第二艦隊が襲撃を受け、レジェンダリア諸島がグリクス地方軍団の侵攻に晒されそうだと・・・・・・」



「その後顧の憂いを絶つ意味も考えて、我が国に向っているニホンの第一艦隊は、迎撃態勢に入ったとの事です。」



「では、ガイダル諸島・タバ日統合隊基地のニホン軍は、その援軍に向うのね。」



「はい。基地司令を勤めておられる秋元洋佑空将閣下殿は、夜遅くにお騒がせして申し訳ない。」



「数日は騒がしく成るので、女王陛下とベルクラネル市民の皆様にお詫び申し上げると、仰られて居ましたと事で有ります。」



「相変わらず、ニホン人と言うのは真面目ね。」



「良いでしょう。ベルクラネル市民の皆には、ガイダルに駐留しているニホン軍が、シベリナ地方王国連合同盟の同盟国軍であるアルガス公国軍と親善訪問して来るニホン国艦隊を助ける為に、援軍を出す為であると、基地での騒ぎの顛末をニホン軍が事を終えてから伝えなさい。」



 アーヤは、軍事作戦の邪魔に成らない様に騒ぎが落ち着いてから、事実を伝える様にと指示を出したのだった。



「はっ!ではその様に致します。」



 電子通信情報局の情報士官は、アーヤの命令を実行すべく、直ぐさまの場を立去る。



「アルガスまで此処から千キロちょっとよね。F-4J改と言う戦闘飛行機械の航続距離が確か・・・・・・・」



「2000キロ以上と聞いて居ます。」



「恐らくミサイルなる空飛ぶ槍や大型爆弾を用いた、攻撃方法が行われるかと・・・・・・・・・」



「・・・と成るとニホン軍の狙いは、陽動ね・・・・・・」



「恐らくは・・・・・・・・」



 アーヤとカリンの2人は、アーヤの寝室として宛がわれて居るバルコニーへと出る。



 其処から湖を眺めていると、ガイダル島基地から次々とF-4J改が、ゴオオォォぉーーと言うジェット噴射の音を響かせながら飛び立って行く姿が、外部灯火によって、クッキリと闇夜に光輝いて居た。、



 

 F-4J改ファントム部隊は指示された目標地点の在る東へと向って行ったのだった。

アースティア暦1000年・6月6日・午前0時02分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・シベリナ中央地方・ダバ・ロード王国 スッコッチアイランド州とローラーナ帝国・グリクス地方軍団・グリクス地方西部方面・ゼルダ地方・ゼルダ門要塞戦線地区同両国との国境線付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 アイリッシュ湖やガイダル諸島の在るアルインランド州から南へ580キロほど進んだ所には、ダバ・ロード王国南部の州であるスッコッチアイランド州と言う所が在る。



 この州のほぼ中央には、州都グラス・ボー市が在って、その市外には、この地方の守りの要たるグラス・ボー城塞がある。



 其処から更に東に470キロ進むと、グリクス地方西部にして、旧アルガス公国の領土でも有るゼルダ地方と呼ばれる範囲にして260キロの地方が在るのだ。





グリクス地方は、ローラーナ帝国との戦争で敗戦して逃げ延びて来たアルガス公国の前身国家たるアルガス王国の人々が無主の土地だった土地を開墾して切り開いた土地であった。



 其処から広大な土地を開墾して国家を再建する際に、隣国のダバ・ロード王国と協議して、国境が取り決められ、北東へと領土拡大して行く事と成る。



 その更に東へと移民した形で逃れたのがラクロアナ王国の王族や国民達だった。



 アセリナ王国のアセリナ族の者達は、昔からダバ・ロード王国とアルガス公国の間の同地方に挟まれる形で、各部族事に分かれて集落や町を築いて暮らして居た。





 それ以外は、東の果ての国々のドラグナー皇国・旧シャッポロ王国・コヨミ皇国。



 そして、コヨミ皇国の北西部に大華山脈と言う山脈に囲まれた地域を治めて居る小国にして、コヨミ皇国から分家の独立国である大華小皇国と言う国だけがユーラシナ大陸東部地方であるシベリナ地方に昔から在る国家だった。



 さて、話をゼルダ地方に戻すが、この地方にはアルガス公国が築いた旧ゼルダ城を基盤とするゼルダ門要塞と言う大要塞が改築を繰り返される形で聳え立っている。



 その名の通り、この要塞は周囲をグルリと円を描く様に焼く12キロに広がって様々な施設が備え付けれる形で建てられ居るが、東西南北に巨大な門が在るのだ。



 此処は対ダバ・ロード王国との最前線の要地であると同時に、帝国の東部戦線へと送られるあらゆる物資の集積所にして、東部地域に繋がる街道の大動脈と成る通り道でも有るのだ。



 其処へ連絡路の確保を目的に、日本から派遣され、ガイダル諸島を防衛して居る空自ガイダル諸島派遣隊は、レジェンダリア諸島での交戦に備える為、陽動を兼ねた、一大奇襲作戦を開始したのであった。



 作戦開始の命令を発する為、秋元空将は軽いジョークを交えた訓示を兼ねた状況説明を言い始めた。



「お早う諸君、と言っても今は深夜0時たがね。」の一言に、クスリと笑いを零すパイロットとオペレーターやその他の自衛隊幹部たち。



「さて、冗談はさて置き。これより空自ガイダル島派遣隊は全部隊を持ってローラーナ帝国・グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区の主要な軍施設に対して陽動を目的とした攻勢作戦に討って出る。」



「急遽、海自のP-1哨戒機改も参加が決まって、間も無く諸君等に追い着く頃合いの筈だ。」



 P-1哨戒機改とは、P-3C哨戒機の後継機として、2016年前後から配備が始まった哨戒機のP-1哨戒機を改造した機体である。



 未曾有の大災害である異世界転移と言う事態とガイダル諸島基地の護衛派遣を目的に哨戒機としての役目と急遽爆撃機としての役目を兼ね備えた改造を施した機体である。



主翼の下には、対艦ミサイルか対地ミサイルの装備の換装が状況に応じて出きる様に改造を施して居る。





 また、Mk82爆弾を20発づつ弾倉入れられ様にも改造を施して居た魔改造の哨戒機であった。





 本格的な爆撃機の配備をして居ない日本の自衛隊に取って短期間で改造して、ガイダル島に配備が出きたのは、たったの12機で、国内の飛行機関連の会社を巻き込んでの一大改造計画と成った。



 この異世界に来てしまった我が日本国は、自衛の為の基地防衛や攻勢作戦等の自衛呑み成らず、陽動や進攻作戦等に置いて、近い将来、絶対に爆撃しなければ成らない事態を見越して計画だった。



 だがしかし、正かこんなにも早くに活躍の場が来ようとはと防衛省関係者は、ぼやいて居たりするのだった。



 この作戦の決行の背景には、自衛隊上層部等は、戦闘機だけの陽動爆撃等では効果が薄い可能性が有る。



 どうせやるなら派手にローラーナ帝国の民間人等が、ほぼ居ない軍事施設や移動中の軍勢を直接攻撃する事で、敵の今後の作戦や軍事力と行動を弱らせ、更には自衛隊の実戦データを収集しつつ、その将来に活かそうと言う物だ。



 勿論、攻撃目標のヶ所は、指定場所以外に行わない事や事前偵察に由る徹底した誤爆に関しては、極力気を使うが、運悪く居合わせた民間人に対する自衛官や命令を出している人物等の処罰は余程の事が無ければ、有り得ないとされて居る。





 戦時中に措いて、民間人が何らかの理由で軍の施設に居ると言うことは、例え敵の攻撃を受けて巻き込まれても自主責任でしか無いと言わざる負えないのだ。





同地域は常に空自ガイダル島派遣隊が定期的に偵察演習と言う名の実践的な偵察飛行を行って居て、今日も夕方頃に定期偵察任務を終えて居る。



 その事でハッキリとした事実が有った。



 それは帝国にレーダーを始めとする電子監視施設の設備が、一切無いと言う情報収集を得た事が最大の成果と言えた。



「秋元司令官。P-1哨戒機改隊が、たった今着いた様です。」



「こちら海自ガイダル諸島P-1哨戒機改・航空派遣隊だ、陽動爆撃作戦の為に合流する。」



 P-1哨戒機改は元々海自所属機である。その為に運用は空自隊員では無く、海自隊員が行って居る。



 彼らは超高度から偵察や監視、爆撃を主任務とする部隊として派遣されていて、現地でしっかりと米軍から派遣された教官の元に爆撃訓練を行って居るが、初の実戦に参加すると言う事も有ってか、海自隊員の誰もが真剣な表情で緊張していた。



「全員が揃った様だな。」



「待ってください。後方の地上から更に上昇してくる物体多数確認っ!」



「何?!」



 秋元空将は、奇怪な報告に驚く。それらの複数の物体は、自衛隊の航空機ほどのスピードが出ていないが、ゆっくりとした速度で、ガイダル島派遣隊の居る高度まで上がって来たのだ。



 白と青の色を基調とし、鉄材を用いた180メートル級の魔導空挺戦艦隊が13隻と80メートル級の帆船型魔導空挺戦艦隊12隻。



 そして、20メートルクラスの竜に跨る竜騎士航空隊が総勢60騎も現れたのだ。



「突然の参陣で済まない。」



「俺はダバ・ロード王国・スッコッチアイランド州方面軍所属のキショー・スティール大佐だ。」



「アーヤ・シュチュ―ド女王陛下の特命で、ニホン軍ガイダル諸島派遣隊の作戦を支援せよ命により参陣する事と成った。」



 伝令用のワイバーンに跨り、魔導拡張機成る魔道具を用いた方法で名乗りを上げたのは、ダバ・ロード王国軍のスティール大佐だった。





 どうやらあの女王様は、この機に乗じて色々と帝国に対して、嫌がらせをする算段らしい。



 突然のダバ・ロード王国軍の出現にガイダル諸島派遣隊の面々は混乱したが、其処へ秋元空将から更に続報が入る。



「その事に付いて、たった今連絡が入った。」



「ダバ・ロード王国軍も我々の作戦を陸空の両軍を挙げて我々を支援するそうだ。」



「参陣が間に合わない可能性も有ったので、我々に報せるのを躊躇ったが、たった今魔導通信で緊急連絡が入り、各軍の参戦が間に合ったとの報せを受けたらしい。」





 スティール大佐は、更に話を続ける。



「作戦の概要はガイダル諸島派遣隊の秋元空将閣下殿報告書の内容をアーヤ女王陛下を通じて知って居るが、細かな部分は報されて居ない。」



「それなので此方は目ぼしい拠点に対しての魔導空挺戦艦隊に由る砲撃や遭遇戦に由る陽動支援作戦を展開させて貰う。」



「地上では陸上魔導戦艦を中心とした魔導機兵団を用いた大規模な陽動進攻作戦が進行中だ。」



「ゼルダ地方内陸部に対する攻撃は、貴軍にお任せする以上だ。」



「聞いての通りだ。予定とは違ったが、これよりダバ日両軍に由る合同作戦に入る。」



「空自と海自航空隊各機は、白旗に魔導機兵とカリマンシェロ城が描かれた紋章の国旗を見逃すなっ!」



「ローラーナ帝国軍の各種兵器類は、それほど素早く攻撃を行えない物が多い。」



「冷静に対処すれば勝てるっ!!!諸君らの奮闘に期待する以上だ。」





 秋元空将が訓示を交えた攻撃開始の命令を発する。



「各機へっ!!攻撃開始せよっ!!繰り返すっ!!各機っ!!攻撃開始せよっ!!」



「了解、各機は予定通りに6部隊に分かれて目標地点に迎えっ!」



「「「「「了解っ!!」」」」」





 こうして、ダバ日両軍は、グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区に対しての一大陽動作戦を展開し、攻撃を開始したのである。





 これに驚いたのは、当然ながらグリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区の帝国軍だった。



「ばっ、馬鹿なっ!常に守勢に徹している筈のダバ・ロード王国軍が、何故この時期に、我が方への攻勢に出て来て居るのだっ!?」



 とあるダバ・ロード王国軍との国境沿いの要塞を守護している将校は驚きを隠せずに居た。



 各地の戦線の現場からは、次々とダバ・ロード王国軍の軍勢が騎士団・魔導機兵団・陸上魔導戦艦艦隊・魔導空挺戦艦隊・竜騎士航空隊等が、一斉に国境を越えて来たとの報せが舞い込んで来たのだ。





「急ぎっ!ゼルダ門要塞司令部に報せを出せっ!!」



「魔導力通信水晶を使ってでも、何でも構わんっ!」



「ダバ・ロード王国軍が血迷ったのか、一大攻勢に出て来て居るとなっ!!!」



 彼らは緊急時以外での使用を禁じられて居る魔導通信水晶の使用を決めたらしい。



 この魔道具を用いた通信は、一度に通信の為に使う魔鉱石の使用量の代金が、バカに成らないからだ。





 その額が凡そ日本円で、5分から10分程度での通信で、3万円くらいだったりする。



「はっ、此方は第1356国境監視要塞司令部っ!」



「ゼルダ門要塞司令部っ!応答願うっ!此方は・・・・・・・・・」



 其処へ『ヒュウウウゥゥゥゥ』と言う砲撃に由る砲弾の落下音が、聞えて来た。



「伏せろっ!!」



 基地司令をして居る将校が叫ぶと、近くで大きな爆発が始まった。



「ほっ、報告っしますっ!!」



「ダバ・ロード王国軍の第30騎士団3千っ!第30魔導機兵団300機っ!陸上魔導戦艦艦隊7隻っ!。」



「併せて、凡そ3300人が全力で、我が第1356国境監視要塞を攻めて来て居ます。」



「くそっ!」



 将校は苦虫を噛んだ表情をしつつ、怒りに震えていた。



 手持ちの兵は1800人程度、装備は長距離魔導砲と火薬式大砲が併せて150門だけで、他は剣に弓や槍と言った何所にでも有る白兵装備ばかりだった。



 おまけとして魔導機兵は20機程度だけで、連度の高いダバ・ロード王国軍の魔導機兵団相手に、とても勝てる数を配備して居ないのだった。



 何も無ければ、或いは一部の戦線だけの戦いだったのなら、他の砦や基地、各要塞が無事なら援兵が直ぐにでも来られる筈なのだ。



 だが、今は何所もダバ・ロード王国軍の騎士団・魔導機兵団・陸上魔導戦艦艦隊の一斉攻撃の対処で、何所も手一杯だった。



「撤退だっ!一時的に、この監視要塞を放棄する。」



 突然の攻勢にローラーナ帝国・グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞の管轄下に有る各方面の帝国軍は完全に後手に回った事態と成って居た。



ダバード・ロード王国軍の魔導機兵団軍は、ユーラシナ大陸随一の魔導技術立国にして、この世界の中でも魔導機兵団は10万機は保有して居ると言われて居る軍事力を持って居た。



 だが、ローラーナ帝国軍は、同盟従属国の軍と併せて500万機の魔導機兵団を持って居るらしいが、各地に分散して配備して居るので、ダバード・ロード王国軍の魔導機兵団ほど纏まった運用を集中的に配備して居る地域と言うのは、ホンの一部でしかない。



 在るとすれば、巨大要塞地区の有る地域や魔導機兵団を主軸にして居る軍団くらいだったりするのだ。





 この日、グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区のダバード・ロード王国の国境戦線付近の部隊が駐屯している基地や砦に監視所は、軒並み潰し破壊をし尽くされ、集積して物資や資金と言った物は、ダバード・ロード王国軍に全て強奪されて行ったと言う。

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午後22時05分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・アイリッシュ湖畔・ダバード・ロード王国・アルインランド州・州都・ベルクラネル市・ベルクラネル城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 一方のベルクラネル城のアーヤはと言うと。カリン少佐とお茶をしつつ、自国軍の戦果報告を待って居た。



「これで暫くはゼルダ門要塞方面のローラーナ帝国軍は、大人しく成るでしょう。」



「でも宜しいのですか?こんなにも年間予定予算の一部を度外視した大攻勢に出てしまって・・・・・・・・・・・」



「あはははっ!そうね。その通りよ。」



「その代償としてこっちの我が軍も、向こう5ヶ月は無茶な作戦命令は出きないでしょうね。」



「勿論、何らかの補填はする積りよ。それも敵から大量に頂いてね。」



 アーヤは、不適な笑みを浮かべながら言う。ダバード・ロード王国軍の一方面軍の4ヶ月分の予算をポンと出してしまって居る。



 その消費日数は、4ヶ月分にして、その経費をたった3日で費やす事にしたのだ。



 アーヤは日本にだけお金を出させているのは礼儀に失すると思い。



 何時もの気まぐれな感じで方面軍を動かして見せたのだ。



 更には使った地方軍の予算をローラーナ帝国軍が管轄して居る地区から少しでも多く奪い取って来なさいと命令して居る。





 やはり、この女王様は喰えない女狐の様な女王様だった。



「まぁ、ニホンも苦しい経済状況の様だと、ニホン駐在を始めたばかりの在ニホンダバード・ロード王国連絡所の所長からも聞いて、彼方の状況を把握して居るけど、我が国のこれ位の予算程度は、ニホンに取って蚊に刺される程度だと思うわ。」



「だから何としてでも、ニホン艦隊には、この地に来て貰わないと。西方諸国や南方諸国を含めた国際会議が出きないもの。」



「それに敵の物資を奪っての補填を考えて居るとは言え、軍の地方予算を丸々捨てる様な支援作戦よ。」



「後々の国益を考えれば安いと見て、今は開き直るしか無いわね。」





「それは・・・・国際会議後の経済交流に由る税収を見込んでの・・・・」





「そうよ、これは先行投資なのよっ!」



「でなきゃ、こんな無茶で馬鹿げた作戦は、私も我が国もやってられないわっ!!!」



 険しい表情しつつもアーヤは開き直った態度で平然として居た。



 このアーヤの行動とダバ派遣隊を含んだ自衛隊の行動が、思いもしない展開を生んで、各地を巻き込んで戦線を拡大させて行くのであった。



 ゼルダ門要塞方面へのダバ日の両軍の一大攻勢は、3日ほど掛けて行われ、その間、グリクス地方軍団の司令部とゼルダ門要塞司令部は、共にまんまと奇襲を受けてしまい。



 何の反撃を出きずに、レジェンダリア諸島の戦いに挑まざる負えなく成るのだった。



 ゼルダ門要塞方面への奇襲に成功したダバ日の両軍の被害は、日本の自衛隊を除いて、ダバード・ロード王国軍の戦死傷者併せて100名程度で、被害に有ったダバード・ロード王国軍の兵器は軽微だけと言うローラーナ帝国軍側でも、信じられない戦果と成り、未だダバード・ロード王国は強しと言う印象を帝国側に植え付ける事と成ったのだった。

 

 因みにアーヤは、この作戦でダバ・ロード王国・スッコッチアイランド州方面軍の予算である4ヶ月分の予算を3日で失って居た。



 そして、同時にグリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区の各軍の前線施設の壊滅とスッコッチアイランド州方面軍の3年分の予算や物資を奪い去った戦果に大満足する。



 自国軍が日本との合同作戦で、一定の戦果を挙げた事で、同地方の軍に対して1人辺り5万円のボーナスを出したと言うとの事だった。



 やはり侮れない彼女は、女王様だ。



 アースティア暦1000年・6月6日・午前1時50分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・ダバ・ロード王国 スッコッチアイランド州とローラーナ帝国・グリクス地方軍団・グリクス地方西部方面・ゼルダ地方・ゼルダ門要塞戦線地区・ゼルダ門市・グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞・ゼルダ門要塞戦線地区司令部にて・・・・・・・・・め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 明けて6月6日の1時50分頃、グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞。





 日本国自衛隊・ガイダル諸島派遣隊は、大胆にもゼルダ地方を統治と軍事上の要たるゼルダ門要塞への空爆を敢行を使用として居た。



 差し向けられた部隊は、偵察機のRF-4EJ3機、F-4J改ファントム10機とP-1哨戒機改4機である。



 日本国自衛隊・ガイダル島派遣隊は、予定していた分散爆撃の一部を即座に見直し、ダバ・ロード王国・スッコッチアイランド州から東へ20キロ前後の攻撃をダバ・ロード王国軍に任せ、更に内陸部への攻撃を決めたのだった。



「こちら第1小隊各機準備良し。」



「第2小隊も同じく。」



「海自P-1哨戒機改隊の9号機から12号機まで最終チェック完了。何時でも攻撃可能です。」



 第1小隊の隊長が戦闘指揮を取っていて、攻撃前の最終確認を通達する。



「各機に通達する。」



「RF-4EJによる入念な偵察とダバ・ロード王国から位置情報を照合した結果、ゼルダ門要塞南部地域に広がって居るゼルダ門市の市街地には、絶対に攻撃をしては為らない。」



「目標は要塞中心部・空挺艦船の飛行場施設・陸上艦船の停泊所・軍事物資集積倉庫・軍用家畜飼育施設などの東西北部に広がる軍事施設だ。」



 深夜である為に、幸いな事である為に、民間人等の非戦闘員らは都市部に在る自宅や宿泊寮で、すやすやと眠って居る時間だ。



 滅多な事であるいは運悪くでも無い限り、軍施設に居合わせる事の確率は低いと言える。



「P-1哨戒機改隊は、RF-4EJの射撃誘導に従って、西口に在る空挺艦船の飛行場施設と陸上艦船の停泊所を狙ってくれっ!!!」



「手始めに停泊して居る空挺艦船及び陸上艦船を対艦ミサイルにて一斉に狙い撃て、続けて格納庫を爆撃しつつ、最後に中央の城塞を爆撃する。」



「俺達F-4J改の2小隊は、P-1哨戒機改隊の対艦ミサイルの発射に併せて敵艦隊を撃ち抜く。」



「続けて散開しつつ、第1小隊が軍用家畜飼育施設。第2小隊が軍事物資集積倉庫を攻撃する。」



「敵機たる竜騎士航空隊を決して空に上げるなっ!」



「作戦時間は20分以内を厳守とする。」



「それまでに各々任務を完了させるぞっ!!!」



「それでは作戦開始っ!!!」



 RF-4EJが先行する形で、ゼルダ門要塞陽動攻撃作戦に参加するガイダル島航空派遣隊の全機が、一斉に速度を上げて行く。





 RF-4EJはゼルダ門要塞の上空に差し掛かると後続の航空隊の機体にのコクピット内にロックオンの音が鳴り響いた。



「「「FOX1っ!!!」」」



 攻撃の第一波の鉄の矢が放たれた。ゴオオォォォォーーと言う轟音と共に何隻も停泊または停留している魔導戦艦群へと対艦ミサイルが向って行くのだった。



「んん???」



「おい、どうした?」



 西側地区の見張りをしていた帝国軍兵士の監視員の二人の内の1人は、ゼルダ門要塞の西側城壁の一角に見張りとして立てられて居る高さ60メートルの監視塔から微かな光が見えたのと、聞き慣れない音が微かに聞えて来て居るのに気が付く。



「いや、聞き慣れない暴風に似た轟音を遠くから聞えた気がするんだが・・・・・・」



「おいおい、この辺りは滅多な事では、嵐には成らんぞっ!」



「そうだな。やはり気のせいか・・・??」



「嵐が起こるのなら、ドラザダのリナ・リンバースが現れる時くらいだろう。」



「おいおい、そんな事言ってるいると本当に現れるんだぞっ!」



「冗談っ!!冗談だってっ!!!怒るなよおおぉぉーーっ!!」



「あのなぁーーっ!!」



 その時だった。



 彼らの上空をマッハで通り過ぎる物体が、激しい風と共に通過する。



「???」



「???」



「何だ?今の大きな轟音は?」



「おい、あれを見ろっ!」



「ああっ!!!魔力液化燃料タンクがっ!!!」



「あっちにはっ!!確かアレキ・サンジェルス級魔導空挺戦艦とジュピドリンズ級陸上魔導戦艦がっ!!!」



 音速で放たれた鋼鉄の矢は、RF-4EJのパイロット達が割り振った目標へと吸い込まれように命中させた。



 するとアレキ・サンジェルス級魔導空挺戦艦七隻とジュピドリンズ級陸上魔導戦艦七隻が大破炎上したのであった。



この二隻は、全長230メートル級魔動力戦艦で、大型魔導大砲が全部と後部併せて3門、魔導副砲、魔導機関砲を合わせて30門は在る巨大戦艦である。



 それ故に真っ先に狙われたと言えるだろう。魔導戦艦の船内には、魔鉱石を加工し、ドロドロに溶かされている魔力液化燃料が燃料タンクに大量に入れられている。



 同時に魔導弾と言う魔力液化燃料と数種類の魔鉱石を用途に応じて作られて居る魔導弾が弾薬庫内に、各砲台別に満載されて居る。



 殆んどの船には、火の魔鉱石たる赤魔鉱石を加工して作られている威力重視の量産型魔導弾が大量に積まれて居るので、そんな所にミサイルや高性能爆弾なんて物をぶち込んだらどうなるのかは、説明等をしなくても、どう言う結果に成るのかは、想像するのは実に簡単な物である。



 最も分かり易い例えを言うと、燃料コンビナート工業地帯に火を点ける様な物である。



 カンカンっ!!カンカンっ!!カカンカンっ!!カンカンっ!!ンカンっ!!カンカンっ!!と警報の金を叩く音が聞え来た。



 爆発と共に、このゼルダ門要塞が襲撃を受けている事にようやく彼らは気が付いたのである。



「敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!」



「敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!」





「敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!」



「敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!」



「敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!敵襲ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!」



 全ての状況に措いて時既に遅し、ゼルダ門要塞陽動攻撃隊の面々によるゼルダ門要塞への攻撃による被害は、主要施設に及んでいた。



 中央にある旧ゼルダ城を増改築して建てられて居るゼルダ門要塞司令部にもMk82爆弾2発とミサイルが一発が撃ち込まれて居る。





 幸いな事に基地の司令官たるバルティウス。クロッコ大佐は、爆発地点から離れた南側の宿舎で就寝中だった為に難を逃れて居たのだった。





 この日、空自ガイダル諸島派遣隊によるゼルダ門要塞陽動攻撃作戦による被害は、空挺・陸上魔導戦艦が併せて14隻が大破。





 3000騎いたワイバーンが凡そ1200騎が爆発の破片による即死または窒息死、焼け死にしていた。



 その他の800騎が中軽傷の傷。残る1000騎も即時戦闘に出られない軽傷程度の傷を負っていたのであった。



 オマケと言わんばかりに、RF-4EJ隊の3機が残って居る武装で、余った爆撃ヶ所へと攻撃をして行くと言う嫌がらせをしてから撤退を開始、その被害は更に拡大して行く。





 この日、グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞に措いて、奇襲攻撃を受けた将兵は、無傷な者が殆んど居なかったと言う記録が残される事に成る。