捕まえた人が多いので、尋問をするには時間がかかるそうです。
というのも、暗黒魔法の影響で操られていたので、浄化されてもぼーっとしているそうです。
ということで、今日は王都周辺で確認されている怪しいところに向かいます。
「暗黒魔法は、淀みがあるところに強く作用する。例えば放置されていた屋敷や動物や魔物の襲撃があったところなどには、潜在的に淀みが存在しているんだよ」
「もしかして、前に浄化したワークス子爵領は、元々淀みがあるパターンなのかもしれませんね」
「あの森は、よく狩り場として使われていたらしい。となると、多くの命が失われたことにもなるから暗黒魔法の影響を強く受けたことにもなる。あれだけの暗黒杯があったから、王都内の淀みのありそうなところも順次ピックアップしているよ」
馬車に乗りながらヘンリーさんと話をしたけど、まだまだやる事は沢山あります。
因みに、地方でも既に幾つかの場所がピックアップされていて、そこはドラちゃんがもう少し力を回復したら向かうことになっています。
ドラちゃん曰く、あと二週間もあれば力は取り戻せるという。
オラクル公爵家で出てくる食事がとても美味しいから、力の回復も早いそうです。
全回復した時の大きさは分かっているので、ドラちゃんに着ける鞍も制作しています。
そんな話をしながら、現場の森に到着しました。
「ドラちゃん、大きくなると木の枝にぶつかるから気をつけてね」
「キュー」
馬車から降りたドラちゃんは、スラちゃんとシアちゃんを背中に乗せていました。
シアちゃんともすっかり仲良しになっていて、オラクル公爵家にいる時にはリーフちゃんも背中に乗せていました。
セードルフちゃんが、ドラちゃんの背中に乗っているリーフちゃんを羨ましそうにしていました。
魔力を溜めながら、森の中に入っていきます。
サクッ、サクッ。
「うーん、ちょっと周囲にいる動物や魔物が多いです」
「ナオ君たちは、そのまま魔力を溜めておいてくれ。このくらいなら、私たちが相手をする」
「そうだよ。ナオ君には、指一本たりとも近づけさせないわ」
ヘンリーさんとシンシアさんは、このくらい余裕だと笑顔で答えていました。
もちろん、ナンシーさんとエミリーさんもです。
近衛騎士も含めて、やっぱり勇者パーティってとっても強いんだね。
実際に、沢山のオオカミやイノシシが現れても、あっという間に倒しちゃいました。
こうして、みんなに守られながら目的地に到着しました。
「昨日の強烈な黒い霧を感じたからか、前よりも黒い霧の位置を把握しやすくなりました」
「あれだけの強烈な黒い霧を浄化したし、暗黒杯の存在もありそうね」
僕たちは浄化魔法を準備していたけど、前よりもビビビッと感じるようになりました。
良いことなのか悪いことなのか分からないけど、シンシアさん曰く僕の体に変化はないから大丈夫だとのことです。
先ずは、目の前の黒い霧を浄化しちゃいましょう。
僕は、杖を構えました。
シュイン、シュイン、シュイーン、ぴかー!
「心なしか、一人と二匹の浄化魔法の威力が上がっているわ」
「間違いなく、昨日の強烈な黒い霧を浄化した影響なのだろう」
シンシアさんとヘンリーさんが呟いているけど、昨日限界ギリギリまで浄化魔法を使ったから黒い霧を感じやすくなったのかな。
目の前の黒い霧も、いつもよりも簡単に浄化しちゃいました。
「もうこれで大丈夫です。何だか、簡単に浄化出来ちゃいました」
「これは深く考えずに、とても良いことだと割り切ろう。よし、王城に戻るとするか」
あっさりと終わっちゃったけど、無理は良くないということで森から街道に戻って馬車に乗って王城に戻ります。
お昼までまだまだ時間があるけど、別件で話があるそうです。
王城に着くと、僕たちは会議室に案内されました。
「座ってくれ。私たちにも関係あるが、どちらかというとナオ君がメインだ」
「僕が話のメインなんですか?」
「ああ、あの三人の件だからね」
ヘンリーさんに話を振られて、思わずドキッとしちゃいました。
あの三人といえば、もちろん元パーティメンバーの三人です。
とっても悪いことをしちゃったのだけど、きっとその件ですね。
「実は、取り調べ中に兵を殴ったりして更に罪が重くなった。しかも一度じゃない。それを考慮した形で、数日後に裁判が行われる」
「それは、何というか取り調べをしていた人に申し訳ないです」
「元パーティメンバーだったナオの気持ちも分からなくはないがな。結論としては、名目上は未成年ってのもあり有期の強制労働刑だ。ただ、本人の反省具合によって刑期が伸びるものになるだろうし、重犯罪用の鉱山に送られるだろう」
実質、無期懲役の判決になると言っていました。
一番の問題が、本人たちは全く事件の反省をしておらず、再犯の恐れが極めて高いと判断されていることです。
僕もあの三人が短期間で複数回犯罪を犯しているのを目の当たりにしているので、この処分は妥当だと思っていました。
「そして三人の家族の件もあるが、どうもナオ君のいた村を管轄する代官が、バンザス伯爵に全く問題ないと報告をしていることが分かった。三人の様子を聞いたバンザス伯爵は、この報告はおかしいと判断して調査を行なっている」
「あの、三人の家族は我が物顔で横柄なことをしていたんですけど……」
「私もあの三人の行動を見ているから、ナオ君の気持ちも良くわかる。今はスラム街で起きた邪神教と暗黒魔法の件を優先しないとならないが、落ち着いた頃にナオの村に行かないとならないと思っている」
ヘンリーさんは、僕が爵位を貰ったのもあるので僕の両親にキチンと挨拶をした方が良いと言っていました。
僕も両親に顔を見せて、安心させてあげたいとも思っています。
こうして会議は終わり、まだ時間が余っていたのでお隣の軍の施設に行って怪我人の治療をして本日の任務を終了しました。
今日は皆さん公務で忙しいので、僕は一日屋敷にいる予定です。
ここ暫くとっても忙しかったので、のんびりして体を休めた方が良いとみんなに言われました。
「じゃあ、行ってくるわね」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい!」
「キュー!」
毎朝の訓練を終えると、ナンシーさんはドレスに着替えて王城に向かいました。
もう成人に近いから、色々な事をしないといけないんだって。
王族も王族に嫁ぐ人も、本当に大変です。
では、午前中は書斎でセードルフちゃんのリクエストで一緒に絵本を読んであげます。
「じゃあ、最初はこの本にしようね」
「はーい」
「キュッ」
子どもたちに大人気の、勇者様が悪い人からお姫様を助けるお話です。
セードルフちゃんだけでなく、リーフちゃんやドラちゃんも一緒に絵本を読むみたいです。
勉強するのは、とても良いことですね。
一時間かけて、何冊もの絵本を読んであげました。
カッコいい戦闘シーンがあるのが好きらしく、リーフちゃんとドラちゃんも大盛り上がりでした。
スラちゃんはいつも通り平然としているけど、スラちゃんはこの絵本よりもずっと凄い戦闘をしていたもんね。
「わーい、こっちだよー!」
「キュー!」
絵本を読んだ後は、庭で元気よく追いかけっこをします。
セードルフちゃんは体を動かすのが大好きだし、ドラちゃんも力を取り戻すために積極的に動いています。
リーフちゃんは、スラちゃんとスライム談義で盛り上がっていました。
こちらも、とっても仲良さそうですね。
「「グー、グー」」
そして、昼食後はみんな揃ってお昼寝の時間です。
セードルフちゃん、リーフちゃん、ドラちゃんは、まだまだ寝る子は育つ年齢です。
その間に、僕とスラちゃんは再び書斎に行って、色々な本を読みます。
ヘンリーさんから貰った勉強の本や、冒険者として必要な知識が書いてある本を読んでいきます。
スラちゃんは、なんと料理の本を読んでいました。
そういえば、僕も料理はできないなあ。
今度、レガリアさんとイザベルさんに相談してみようっと。
こんな感じで時間は過ぎていき、夕方になるとナンシーさんが王城から戻ってきました。
でも、何故か疲れ切っていてヘロヘロな姿です。
その理由を聞くために、応接室に向かいました。
「ナオ君ならなんとなく分かっていたと思うけど、今日例の三人の裁判があったのよ。事件関係者として、私も出廷したのよ」
実は、今日元パーティメンバーの三人関連で何かあったのかなと思っていました。
というのも、ナンシーさんが王城に行くときは、余程のことがない限り僕も一緒に王城に行っていました。
いつも、アーサーちゃんやエドガーちゃん、それにシャーロットさんと会っていました。
でも、今日は僕は王城に行かずに屋敷でゆっくりしていたのです。
それに、前に三人の裁判の時には僕は立ち会わない方が良いと言われていました。
「まあ、結果はこの前話した内容と変更はないわ。ただ、緑髪の魔法使いが法廷で魔法を使おうとして重犯罪者用強制労働施設送りとして扱われることが決定したり、ツンツン頭のシーフみたいなのが大暴れしたりと本当に大変だったわ。シーフも、重犯罪者用強制労働施設に送られるわ。裁判官の言葉が理解できずに、淡々としていた剣士の方がまだマシだったわ」
「それは、その、色々とすみません」
「ナオ君が謝ることはないわ。何か馬鹿な事をするのではと予想もしていたし、魔法使いは永久に魔法が使えないように特殊な魔導具を足につけられているわ」
なんというか、裁判でとんでもないことが起きていたなんて。
僕がいた時の方が、まだ理性的だった気がする。
自分勝手なことをして、理性を失ってしまったんだ。
「あと、重犯罪者用強制労働施設に送られたということは、もしかしたら数年で駄目になってしまうかもしれない。それだけ厳しい現実が待っているのを、二人は理解してもらわないと」
重犯罪者用強制労働施設は僻地にある鉱山や離島にあるらしく、施設の詳しい場所は機密扱いだそうです。
過酷な環境なので、事故で亡くなる人も多くいるそうです。
更に僻地なので囚人の性欲が溜まっているらしく、新人囚人は元の囚人から酷い扱いを受けることが多いという。
尚且つ囚人の鬱憤が溜まっているので、暴行事件なども頻繁に起きている。
その分、茶髪の短髪が送られる強制労働施設の方が遥かに治安は良いそうです。
判決文を理解できなくて助かったなんて、逆に恥ずかしいことだけど。
ともあれ、三人は既に王都からそれぞれの強制労働施設に護送されているそうです。
そして、二度と地元と王都並びに主要都市へ足を踏み入れる事も禁じられました。
「ナオ君は、ナオ君の人生を歩むのがとても大事なのよ。今まで色々とあったけど、これからは自分のために生きないとならないわ」
確かに、地元にいた頃からあの我が物顔で威張り散らかしていた三家に物凄く迷惑を受けていた。
今後地元がどうなるかは分からないけど、少なくとも僕は冒険者として頑張らないといけないね。
新しい仲間も増えたし、まだやることは沢山ある。
今は、目の前で起きている黒い霧対策を頑張らないとね。
三人の裁判は、普通にいけば順調に終わるはずだった。
既に判決内容も確定していて、弁護役の役人もほぼ弁護するだけの材料はなかった。
身勝手で自分勝手で、更に自分に都合の良い解釈をしていた。
何度となく行われた聴取でも、自分勝手な主張を繰り返していた。
聴取の際にも暴れていて、聴取担当の兵に頭突きをしたりもしていた。
そのため、裁判も余計なことを言わずに最低限必要なことだけ伝えることにした。
「判決、被告を二十年の強制労働刑とする。更生が見られない場合は、その刑期を延長する」
「……」
最初に刑期を言い渡された茶髪の短髪は、ポカーンとしながら判決を聞いていた。
聴取の様子を受けて鎮静作用のある魔法を掛けられていたとはいえ、裁判の雰囲気に飲み込まれてそれどころではなかった。
実際は小心者という、本人の性格が垣間見える結果となった。
本人が罪状を認識したのは、強制労働施設に着いた時だった。
どんなに喚いたとしても既に刑期は決まっているし、反逆罪は一院制です。
これから、本人が反省するまで長期の刑期が待っている。
しかし、茶髪の短髪はまだ扱いが良かった。
「判決、被告を四十年間の重犯罪者施設での強制労働刑とする。なお、本人に更生が見られない場合はその刑期を延長するものとする」
茶髪のツンツン頭と緑髪の魔法使いが判決を受ける際、肝心の被告二人の姿が法廷になかった。
というのも、二人は法廷で大暴れしたのだ。
強力な鎮静作用のある魔法を掛けられていたのにも関わらず、である。
二人は罪状認否の際も、ナオが悪い、ナオを死刑にしろと自分の罪を認めずナオに全てをなすりつけていた。
そして、あろうことか弁護役の役人を体当たりで突き飛ばし、裁判長に向かって魔法を放とうとしたのだ。
実際には兵に後ろ手で掴まれていて軽い頭突きになり、魔法も足につけられた魔力を強制的に逃がす魔導具によって無効化された。
しかし、法廷で暴れたことは隠しようもない事実である。
二人は裁判長から退廷を命じられ、被告がいない中で淡々と裁判が行われた。
法廷侮辱罪も加わり、二人の罪状は更に重くなった。
そして、この判決を勇者パーティーのメンバーが傍聴していた。
反逆罪もあるので、王家としての義務もある。
しかし、目の前で繰り広げられたのは醜い醜態だけだった。
勇者パーティーの誰もが呆れ、そして深い溜息をついていた。
いずれにせよ、この場にナオがいなくて本当に良かったと誰もが思っていた。
そして、三人は二度とナオに会うことはなかった。
ヘンリーさんは取り調べの立ち合いとかで忙しかったのですが、どうもその取り調べでトラブルが起きているという。
ということで、今日はナンシーさんとみんなとともに軍の施設に向かいました。
「どうも長時間暗黒魔法の影響下にあった為か、未だに洗脳状態から抜けられていない。全員がぼーっとしていて、会話もろくにできないのだよ」
軍の施設でヘンリーさんたちと合流したけど、あのスラム街にあった邪神教の拠点で捕まえた人たちの様子がかなりよくないらしい。
黒い霧を浄化する際に中にいる人も浄化したけど、もしかしたら全て浄化しきれなかったのかも。
実際に検証してみようということになり、僕たちは女性が入っている牢屋の前に向かいました。
「殿下、こちらでございます」
「案内ご苦労」
「……」
牢屋の中には、囚人服を着た若い女性がぼーっとしながら座っていた。
食べたり寝たりは出来るそうだけど、とにかくぼーっとしているそうです。
さっそく、ヘンリーさんの指示でスラちゃんが女性を鑑定しました。
「あっ、スラちゃんが女性は状態異常だって言っています」
「ふむ、やはりそうだったか。では、さっそく浄化魔法を使ってくれ」
自らの仮説が正しいと思ったのか、ヘンリーさんは深く頷いていました。
ここはお任せと言わんばかりに、ドラちゃんが牢屋の前に出ました。
シュイン、ぴかー!
「キュー!」
聖魔法独特の黄色っぽい光が、若い女性を包みます。
すると、ドラちゃんの浄化魔法が効いたのか、急に目をパチクリとしていました。
「あれ? ここは? えーっと、私は何をしていたのかしら……」
突然スイッチが入ったかの様に、女性はキョロキョロと辺りを見回していました。
そして、自分がいる場所と服装を見てビックリしていました。
「え、え? こ、これは? 私はどうしてここに?」
「お嬢さん、落ち着いて。あなたは、邪神教の拠点から運び出されたのです」
「えっ、邪神教?」
ここは女性が話した方が良いということで、シンシアさんが女性に優しく話しかけました。
でも、女性は邪神教というキーワードを聞いても、ピンときていません。
うーん、これはどういうことでしょうか?
「もしかして、どこかで自分の思っていることを叶えるとか言われたのですか?」
「えーっと、あっ、そんなことがありました。街角で声をかけてきた人がいまして、軽い気持ちで一回だけ集まりに参加しました。そこからの記憶が、ぼんやりとしていて思い出せず……」
女性の話を聞くと、最初は軽い気持ちで始めたのに、その時点で洗脳状態にさせられたんだ。
そして、邪神教関連のことが思い出せなくなったと。
それほど、暗黒魔法の影響が大きかったんだ。
「事情はまた改めて聞くとして、聖魔法の浄化が効果的だと判明した。悪いが、ナオ君はスラちゃんとドラちゃんと手分けして連行した者の浄化を行ってくれ」
「直ぐにやります!」
「キュー!」
手分けして行えば早く終わるので、僕はエミリーさん、スラちゃんはシンシアさん、ドラちゃんはナンシーさんとタッグを組んで浄化作業を始めました。
人によって状態異常の程度は違ったけど、全力で聖魔法を放たなくても良いのはとっても助かった。
中には怪我をしている人もいたので、併せて治療しちゃいます。
こうして、二時間かけて連行された人の浄化作業が終わりました。
全員が我に返ったけど、やっぱり一部の記憶が欠落している人もいました。
「今はこれでいい。時間が経てば、記憶が戻る者もいるだろう。大半は洗脳状態で邪神教に使われていたみたいだし、数日事情を聞いたら釈放できるだろう」
「さっきのお姉さんは、どこかで勧誘されたみたいな言い方でしたね。きっと、今でも邪神教に勧誘している人がいるかもしれません」
「言葉巧みに、人々を勧誘していたのだろう。そして、洗脳状態にされるから本人としては悪いことをしている認識がないのだろう。これが、邪神教の怖いところでもある」
人々を洗脳して、暗黒杯に血を溜めたり黒い霧の元になるのを作らせていたんだ。
とっても卑怯なやり方で、僕もスラちゃんもプンプンです。
でも、僕は聴取はできないし、後は軍の人にお任せです。
予想以上に魔力は使っちゃったけど、その分効果抜群でした。
軍の施設は王城に隣接しているので、王城に移動して休憩兼昼食を食べることになりました。
「そうか、やはり状態異常だったか。しかし、対応できるならこちらにもやり方はある。先ずは、事情聴取を進めるのが先決だ」
「得られた情報の分析も、優先的に行います。どこかに別の拠点があるのは、間違いないと思っております」
「余もそう思う。とにかく、二百年前の惨事を繰り返してはならない」
昼食を食べつつ、陛下とヘンリーさんが今後の対応を話していました。
もちろん、同席しているジョージさんとブレアさんも真剣に話を聞いていて、時々こうしたらいいのではと意見を言っていました。
「ナオ君、あっちは気にしなくていいのよ。いわゆるランチミーティングなのだから」
「ああなると、みんな白熱しちゃうからしょうがないのよ。せっかくの昼食が冷めちゃうから、私たちは先に食べましょう」
「「もぐもぐ」」
王妃様とマリア様からもしょうがないと言われてしまったので、僕たちも目の前の食事に注力します。
きっと何か決まったら教えてくれるはずだし、僕もアーサーちゃんやエドガーちゃんのようにお肉を食べようっと。
こうして、今日の僕の勇者パーティーとしての活動は終わりました。
でも、アーサーちゃんとエドガーちゃんがお肉を食べながら僕に遊んでって視線を送るので、この後第二回戦が始まりそうです。
事情聴取が続く中、僕たちはあまり王都から離れないようにしながら活動していました。
予想外の情報とかが集まってきて、分析するのも大変だそうです。
そんな中、遂にドラちゃんの体調が完全回復したみたいです。
毎日いっぱい食べて、いっぱい動いて、いっぱい寝ていたのもありそうです。
そこで、さっそく最大サイズになったらどうなるのかを確認する事になりました。
流石にいきなり王都の中で大きくなるのは問題なので、王都の防壁を出て少しのところで行います。
「「わくわく」」
「あー!」
「ふふ、こんなにワクワクするのはいつ以来かしら」
そして、いつもの勇者パーティだけでなく何故かギャラリーもついてきました。
アーサーちゃんとエドガーちゃんに、セードルフちゃんです。
しかも、外出訓練を兼ねるといって、ワクワクしているシャーロットさんまでついてきました。
流石に、シャーロットさんは車椅子に乗っています。
でも、だいぶ歩けるようになったので、来週の安息日に遂に一緒に買い物に行く事になりました。
僕も、とっても嬉しいことです。
しかも、中にはシャーロットさんに気が付いて手を振っている冒険者や町の人もいます。
シャーロットさんの人気は、本当に絶大ですね。
「キュー」
ドラちゃんもやる気満々って感じで、ちびっ子三人の周りを飛び回っていました。
では、さっそくドラちゃんの最大の大きさになって貰いましょう。
シュイン、ぴかー!
「「「おおー!」」」
ドラちゃんが黄色く光り輝くと、一気に体が大きくなっていきます。
この前大きくなった時の大きさを一気に超えていき、更に大きくなっていった。
「グルルルル!」
「「おー! カッコいい!」」
「おおー!」
そして、最終的にドラちゃんは十メートルを超える大きさに成長しました。
黄金色に光るウロコもとっても綺麗で、大きな羽も生えている様はまさにドラゴンと言えましょう。
ちびっ子三人はドラちゃんの変身を見て大喜びで、テンションマックス状態です。
でも、ドラちゃんは大きくなってもドラちゃんのままでした。
「「すごーい!」」
「おー」
「ふふ、神々しい感じね。とってもカッコいいわ」
「グルル」
大興奮なちびっ子三人は、地面に伏せたドラちゃんをペタペタと触っています。
シャーロットさんもドラちゃんの鼻先を撫でていて、ドラちゃんも気持ちよさそうにしています。
実は突然大きなドラゴンが現れて通りかかった人もビックリしていたけど、そのドラゴンの鼻先をシャーロットさんが撫でているので、シャーロットさんの配下にあるドラゴンと認識されたみたいです。
うん、シャーロットさん効果が凄まじいですね。
その間に、用意した鞍をドラちゃんに着けて、ズレ落ちないように調整していました。
「陛下、完了しました」
「それでは、テスト飛行を行おう」
「「いーなー」」
「うぅー」
無事に大きな鞍をつけ終わったところで、人を乗せて空を飛べるかテストを行います。
もちろんちびっ子三人は搭乗許可がおりなかったので、地上でお留守番です。
最大六人乗れるので、僕たちと近衛騎士一人が乗り込みました。
鞍は取っ手みたいに掴むところと、万が一に備えてベルトみたいに体を固定するところがあります。
スラちゃんは、僕の懐に潜り込みました。
シアちゃんも、エミリーさんの服に潜り込んでいます。
全員装着を終えて、準備完了です。
「じゃあ、頼むぞ」
「グルル!」
バサッ、バサッ、バサッ。
「「「おおー!」」」
ヘンリーさんがドラちゃんに空を飛ぶように頼むと、ドラちゃんはひと鳴きして羽ばたき始めました。
すると、段々と空へと飛び上がっていきました。
地上では、ちびっ子三人はまたまた大興奮しながら僕たちを見上げていました。
そしてドラちゃんは、一気にスピードを上げました。
ヒューン!
「ドラちゃんが魔法障壁みたいなのを出してくれているので、風は感じないですね」
「この速度では、何もしなかったら風圧で吹き飛ぶだろう。しかし、これは凄いな」
空の旅はとても快適で、こうして普通にお喋りもできます。
この前行った村をあっという間に飛び越え、ワークス子爵領も通過しちゃいました。
テストは十分ということで、ドラちゃんは王都に戻っていきました。
バサッ、バサッ、バサッ。
「「おかえりー」」
「おー!」
元の場所に辿り着くと、ちびっ子三人が元気よく出迎えてくれました。
僕たちは鞍から地上に降りたけど、何だか凄い体験をしたね。
シュイーン、ぴかー。
「キュー」
そしてドラちゃんが小さい姿に戻ると、鞍が消えてしまいました。
すると、スラちゃんがドラちゃんと何かを話しています。
「ドラちゃんの装備みたいな扱いなので、大きくなったらまた鞍が現れるそうです」
「この辺も、昔の伝承と一致している。しかし、これで遠くにいく手段を手に入れたことになる」
「そうね。地方で浄化しないといけないところがあるけど、これで直ぐに向かうことができるわ」
ヘンリーさんとシンシアさんも、納得の検証結果だった。
やっぱり馬車で移動するには遠すぎるところもあるらしく、今まで対応を断念してきたという。
王族だから、公務が忙しいんだって。
これなら、日帰りで遠くに行くこともできます。
「キュー」
「「まてー!」」
「あー」
当のドラちゃんは、いつの間にかちびっ子三人と追いかけっこをしていました。
そんな三人と一匹を、シャーロットさんが温かい目で見守っていました。
この後はみんなで王城に行くけど、ドラちゃんにはご褒美で美味しいお肉をあげないとね。
ドラちゃんの力が戻ったのもあり、試しに王都の近くの領地に遠征してみようという事になりました。
ここは、馬車では三時間かかってしまい、往復だと六時間かかる。
日帰りでも行けないことはないけど、何か問題があると泊まりになってしまうところです。
因みに、王都直轄領なので手続きはとても簡単だそうです。
先ずは、王城の横にある軍の施設に集合します。
「ドラちゃん、この場所だけど分かるかな?」
「キュイ!」
ヘンリーさんがドラちゃんに地図を見せながらあれこれ指示をしていたけど、ドラちゃんもヘンリーさんの肩に止まってふむふむと頷いていた。
その間に、必要なものは僕とスラちゃんのアイテムボックスにしまいます。
準備完了なので、さっそく現地に向かいましょう。
シュイン、ぴかー!
「グルル!」
ドラちゃんも大きくなったので、僕たちも鞍に乗り込みます。
準備が整うと、ドラちゃんが大きく羽ばたきました。
バサッ、バサッ、バサッ!
大空に羽ばたいたドラちゃんが、一気に目的地に向けて飛び立ちました。
物凄いスピードで大空を飛んでいきます。
というか、この前よりもスピードが上がっている気がするよ。
「凄いわね、景色があっという間に流れていくわ」
「こんな景色を見れるなんて、貴重な経験ね」
シンシアさんとナンシーさんは、周囲の景色に珍しく大興奮しています。
もちろん、僕もスラちゃんも眼下の景色に興奮しています。
そして、三時間かかる距離を僅か二十分で着きました。
「これは凄い、本当に凄いぞ。予想以上の成果だ」
「キュー!」
小さくなったドラちゃんを、ヘンリーさんがべた褒めしています。
ドラちゃんも、褒められたのと空の旅が楽しかったのでとってもご機嫌です。
では、目的の森に向かいましょう。
といっても、実は目的の森の目の前に着陸しました。
「ここは、森の奥に行かなくても直ぐに嫌な感じがしますね」
「私もそう感じるわ。じゃあ、ナオ君とスラちゃん頼むわね」
そこまで黒い霧の規模が大きくないように感じたので、頑張ったドラちゃんは休憩をしてもらいます。
シンシアさんの指名も受けたので、僕とスラちゃんはさっそく力を溜め始めました。
シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!
「やっぱり、ナオ君とスラちゃんの魔力が上がっているわ」
「というか、今まであの三人の元でいたから存分に魔法を使う場面がなかったのでしょうね」
「ナオをこき使っていたなんて、やっぱりあの三馬鹿は許せないわ。潰してあげれば良かったわ」
なんだか、シンシアさんとナンシーさんはともかくとしてエミリーさんが不穏なことを言っているのは気のせいでしょうか。
でも、僕もスラちゃんも確かに自分の魔力が上がった気がします。
ナンシーさんのいう通り、最近は存分に魔法を使っていますからね。
「ふう、これで大丈夫です。周囲も大丈夫そうです」
「じゃあ、ナオ君とスラちゃんは少し休んでいてくれ。我々で周囲の確認を行おう」
僕たちに負けていられないと、ヘンリさんたちが気合を入れて森の中に入りました。
念の為に周囲を探索魔法で確認したけど、特に僕たちを狙っている感じはありません。
アイテムボックスからサンドイッチと飲み物を取り出して、スラちゃんとドラちゃんと分けます。
王都から離れているのに弱いながらも黒い霧が発生するなんて、暗黒魔法ってある意味凄い魔法なんだ。
こんなことをするなんて、一体誰が後ろで糸を引いているのかと思ってしまった。
でも、僕ももっと強くなれそうだし、頑張ってみんなの力にならないとね。
ガサガサ。
そして、三十分くらいでヘンリーさんたちが森から出てきました。
特に問題ないそうで、このまま村に移動して代官に報告するそうです。
村は、ここから三十分くらい歩いたところにあるそうです。
「まさか、王都からここまで来るよりも、森から村まで歩く方が時間がかかるなんてね」
「そう思うと、やっぱりドラちゃんの飛行能力は凄いわ」
「ドラちゃんには、あとでご褒美をあげないとね」
女性陣が色々と言っていますが、僕も歩くほうが時間がかかるんだとちょっとくすっとしちゃいました。
色々な考え方が変わりそうで、改めてドラちゃんの凄さを知りました。
そして、村に着いて代官に報告します。
「あの、殿下はどこかに泊まられたのでしょうか。こんなに朝早くに対応されていますので……」
あっ、ヘンリーさんが村長さんに報告したら、村長さんがとても信じられない表情をしていました。
うん、僕たちもその気持ちは良く分かりますよ。
「村長、こちらにいるドラゴンが巨大化して背中に乗ってきた。帰る時にお見せしよう」
「キュー」
「はっ、はぁ……」
うん、村長さんの思考が追いついていない。
これは、ヘンリーさんの言う通り直接ドラちゃんが大きくなったのを見せてあげたほうが良いですね。
物凄く時間が余ったので村の教会で治療などの奉仕作業を行い、僕たちは王都に帰ることになりました。
シュイーン、ぴかー!
「グルル!」
「「「お、大きくなった!」」」
村の外れでドラちゃんが大きくなると、集まった村人は度肝を抜かれていました。
村長さんなんか、驚きすぎて腰を抜かしていました。
「お、王子様はドラゴンを使役しているのか……」
「王族って、本当に凄いんだ……」
大の男も、目の前のことを理解しきれなくて思わずポカーンとしていました。
そんな中、僕たちは再びドラちゃんに乗って王都に旅立ちました。
「うーん、朝早かったとはいえ、まさか十一時前に王都に帰ってくるとは」
「普通の人は信じられないでしょうね」
「「キャッキャ!」」
「キュー」
王城に着いてジョージさんとマリアさんに報告するけど、ドラちゃんの飛ぶ速さは完全に予想外だったみたいですね。
当のドラちゃんは、アーサーちゃんとエドガーちゃんといつもの追いかけっこをしています。
このギャップが、ドラちゃんの魅力なんでしょうね。
そして、いよいよシャーロットさんと一緒に商会にお買い物に行く日になりました。
シャーロットさんは頑張ってリハビリをして、遂にこの日を迎えました。
もちろん、僕もとっても楽しみにしていました。
まず、ナンシーさんと共にキチンとした服に着替えて王城に向かいました。
「ナオ君、おはよう。待っていたわ」
「おはよー」
「おー」
王城の玄関には、既にシャーロットさんの姿がありました。
とても元気よさそうだし、杖をついているけど足取りもしっかりとしています。
マリアさんはシャーロットさんの付き添いって分かるけど、一緒にアーサーちゃんとエドガーちゃんも付いてくるんですね。
因みに、ナンシーさんはブレアさんのところに向かっていて、他の王族の人は事情聴取結果の分析や勉強をしているそうです。
僕の予想だと、エミリーさんは絶対に同行したかっただろうね。
さっそくということで、僕たちは豪華な馬車に乗り込みました。
目的地は、王家御用達の商会です。
「今日は、私もとても楽しみにしていたのよ。何よりも、こんなにも体が軽いなんて久々なのよ」
「僕も、シャーロットさんが元気になってとっても嬉しいです」
「ありがとうね。これも、ナオ君とスラちゃんが一生懸命治療してくれたおかげよ」
馬車内でも、シャーロットさんはニコニコが止まりません。
なので、みんなとっても良い笑顔です。
そして、馬車は無事に商会の前に到着しました。
近衛騎士が周囲を警戒する中、僕たちが先に降りてシャーロットさんも馬車から降りました。
そして、みんなで商会の中に入ると、何故か号泣している商人が。
この人って、確かオラクル公爵家の御用商人だったはず。
王家の御用商人でもあるなんて、凄い人なんですね。
「シャーロット殿下、こんなに元気な御姿を拝見できる日がくるなんて、私感激で胸が張り裂けそうです」
「あなたにも、治療薬の事とかで色々とご迷惑をかけたわ。こうして、自分の足で買い物に来ることができたわ」
そっか、商人さんもシャーロットさんの件で色々と苦労していたんだ。
だから、こうして元気な姿を見ることができて感激しているんだね。
「今日は、私の命を助けてくれたナオ君の服とかを見繕ってくれるかしら。ひ孫にも、何か買ってあげたいのよ」
「畏まりました」
シャーロットさんが用件を伝えると、商人さんは涙を拭いて恭しく一礼しました。
そして、さっそく僕のサイズチェックを始めました。
「おや、ナオ様も以前よりふっくらとされております」
「ナオ君は、以前はとても痩せていたからとても良い傾向ですわ」
僕も、オラクル公爵家で出される食事のお陰で体調がかなり戻ってきたみたいです。
マリアさんも、僕の体調を気にしていたのでとても喜んでいました。
サイズチェックも終わったので、どんな生地を組み合わせるか話しています。
基本線は、いま着てる服と同じ青色に白と銀の刺繍をするみたいです。
その間に、予備の冒険者服も買うことになりました。
「今お使いの杖は、とても性能の良い物です。これから暑くなりますので、薄手の服などもお勧めいたします」
「確かに、もう春になりますわね。ナオ君はフードの付いたマントを羽織っているから、服で調節しましょう」
僕についてきてくれたマリアさんのお勧めもあるので、マントの下に着る服をいくつか購入しました。
また、念の為にとポーションや毒消しポーションに生薬とかも購入します。
回復魔法が効かない場合もあるので、持っていた方が良いらしいです。
無事に冒険者服も買えたので、シャーロットさんのところに戻りました。
「ふふ、とっても似合っているわよ」
「シャーロットおばあさま、ありがとー!」
「おー!」
シャーロットさんは、アーサーちゃんとエドガーちゃんにも服を選んであげていました。
二人とも、笑顔でシャーロットさんに抱きついています。
あと、エドガーちゃんが喋るのもあと少しって感じがしていました。
その他にも、マリアさんの服を買ったりと、シャーロットさんは色々な物を購入しました。
僕の服は、出来上がり待ちだそうです。
これで、買い物は無事に終了です。
「シャーロット殿下、ナオ様とお会いしてまだ日が浅いのにもう名誉爵位を頂いております。この後も、ナオ様はどんどんと出世していくと確信しております」
「私もそう思うわ。既に、スラム街で邪神教の摘発で大きな功績を上げているわ。来年には、法衣貴族になってもおかしくないと思っているわ」
えーっと、何だか商人さんとシャーロットさんが不穏な事を話しているけど、僕はそこまで偉くなる気はないですよ。
普通に冒険者活動が出来ていれば、多くを求めないですよ。
なにはともあれ、無事にお買い物が終わって僕たちは王城に帰りました。
そして案の定というか、勉強をしていたエミリーさんが僕と一緒に買い物に行きたかったとかなり落ち込んでいました。
例のスラム街で連行された人の聴取を続けていくと、どうも町の人を邪神教にスカウトをしていた人の姿が分かってきました。
男性や女性とまちまちだったけど、どうも普通の恰好をして声をかけていたそうです。
普段と同じ格好だからこそ、町の人も警戒心が薄かったのかもしれません。
特定の格好だったら捜査もしやすいけど、これだとスカウトを探すのは難しいですね。
でも、どこでスカウトされたかは分かっているので、似たような場所も含めて軍が王都内を巡回しているそうです。
そんな中、今日は冒険者としての依頼は無くて、代わりに大教会に行って奉仕活動を行うことになりました。
少しの間だけど、シャーロットさんも奉仕活動に参加するそうです。
今まで病気で奉仕活動に参加できなかったから、可能な範囲でできることをするそうです。
ナンシーさんとエミリーさんが、シャーロットさんのサポートに付くそうです。
残念ながらお勉強の為に、マリアさん、アーサーちゃん、エドガーちゃんは王城にいます。
僕は、シンシアさんと共にスラちゃんとドラちゃんと一緒に無料治療を行います。
「こうしてシャーロット様のお元気な姿を拝見し、私も感無量でございます」
「私もこうして元気な姿を皆さまにお見せできて、とても嬉しく思っております」
当のシャーロットさんは、教皇猊下と仲良さそうに話をしていました。
よく奉仕活動をするので、二人はとても仲が良いそうです。
その間に炊き出しの準備をしていますが、集まった人に提供するにはまだ時間が掛かります。
なので、いつも通り無料治療を先に行います。
すると、僕たちの方に教皇猊下のお話を終えたシャーロットさんがやってきました。
「最初は、私も無料治療のお手伝いをするわね」
「キュ?」
シャーロットさんは、椅子の上で丸くなっていたドラちゃんを抱き上げました。
どうやら、ドラちゃんと一緒に無料治療を行うみたいです。
ドラちゃんはシャーロットさんと仲良しだし、側には近衛騎士も控えています。
ということで、さっそく無料治療を始めます。
「し、シャーロット様! お元気になられたのですね」
「ええ、この通りすっかり良くなったわ。また奉仕活動ができて、私も嬉しいわ」
僕も横目でシャーロットさんのことをみているけど、とんでもない人気があります。
中には、涙を流して元気になって良かったと喜んでいる人もいます。
厳つい冒険者も、元気になったシャーロットさんを見て感激していました。
シャーロットさんも全ての人にニコリとしながら治療をしているから、町の人もつられて笑顔になっています。
ドラちゃんも、とても張り切って治療をしていました。
時々ドラちゃんがシャーロットさんに抱きついて頬ずりしているので、町の人の中にはシャーロットさんがドラゴンを使役していると勘違いしている人もいます。
ドラちゃんを保護したのは、スライムのスラちゃんなんだよね。
「おばあさま、炊き出しの用意ができました」
「あら、そんな時間になっていたのね。楽しい時間はあっという間だわ。ドラちゃん、後は宜しくね」
「キュ!」
エミリーさんがシャーロットさんに声を掛けていたけど、シャーロットさんにとって奉仕活動は楽しい時間なんだ。
だから、あんなに楽しそうにしているんだね。
こうしてみんなで奉仕活動をして、シャーロットさんは一時間ほど炊き出しの配膳をして王城に帰っていきました。
「シンシアさん、シャーロットさんってとっても凄い人ですね!」
「そうよ。だからこそ、これだけの町の人が集まるのよ」
実は、シャーロットさんが奉仕活動をしていると聞いてもの凄い人が集まっていました。
なので、人手も追加されて特に炊き出しはてんやわんやでした。
無料治療にも沢山の人が集まっていて、僕たちも忙しく治療していました。
シャーロットさんが王城に帰る時も、沢山の人が手を振って馬車を見送っていた。
やっぱり、シャーロットさんは凄いと改めて感じました。
昼過ぎに奉仕活動が終わったので、僕たちも王城に向かいました。
「ふふ、今日は沢山の人に触れ合えてとても楽しかったわ。アーサーちゃんも、エドガーちゃんも、もう少し大きくなったら一緒に奉仕活動をしましょうね」
「はーい」
「あー」
王城では、とっても優しいひいおばあちゃんの顔でアーサーちゃんとエドガーちゃんと接していました。
だからこそ、ちびっ子二人もシャーロットさんをとても慕っているんですね。
僕ももっと頑張ろうと、楽しそうにしている三人を見てそう思いました。
この日は、王城に集まってスラム街であった邪神教関連の会議を行います。
僕たちに加えて男性の王族も参加し、更に偉い貴族、教皇猊下、ギルドマスターも集まりました。
でも、流石にアーサーちゃんとエドガーちゃんは部屋でお勉強です。
会議の冒頭、陛下が話し始めました。
「忙しい中、皆には集まって貰い感謝する。今日は、邪神教関連で皆と意見を交わしたい。活発な発言を求める」
「「「畏まりました」」」
これだけ凄い人が集まっての重要会議に僕が参加しても良いのかなと思いつつ、陛下に頭を下げました。
会議は、ヘンリーさんが進めます。
「まず、聴取の結果を報告します。スラム街の拠点で活動していた邪神教の構成員を取り調べたところ、王都から離れているベストリア伯爵領に邪神教の地方拠点の一つがある事がわかりました。近くに駐留している軍から調査兵を派遣したところ、確かに怪しい施設が領都郊外にあると報告を受けました。明日、現地に向かって施設の制圧と領主への聴取を行います」
おお、これは凄い事になったよ。
遂に、邪神教の拠点の一つに向かうんだ。
一緒に話を聞いているスラちゃんとドラちゃんも、思わず気合を入れていました。
「明日は先に軍が領都へ向かって伯爵領兵の注意を集めてから、私たちが邪神教の施設を奇襲する。いわゆる、陽動作戦を取る予定だ」
「ということは、ドラちゃんが作戦の要になるんですね」
「そういう事だ。拠点を制圧したら、そのまま領主の屋敷に向かう」
「キュー!」
ドラちゃんは、重要な役目を任されて気合満々にひと鳴きしました。
高速移動できるドラちゃんの能力を、最大限に生かす作戦ですね。
ちなみに、現地の駐留軍の指揮官にも連絡が行っているけど、まだ一部の人だけ知っている極秘作戦だそうです。
「ナオ君とスラちゃんは、先ずは浄化に専念してくれ。後は、領主の鑑定だな。ドラちゃんを含めて、皆には負担をかけるが頼むぞ」
「僕も、みんなのお役に立てるように頑張ります」
「キュー」
スラちゃんも、触手をふりふりしてやる気満々でした。
今のところ浄化は僕たち一人と二匹しかできないから、この作戦の要として動く事になりました。
僕たちには、護衛としてエミリーさんがつくそうです。
王城でも、同タイミングでその伯爵の王都屋敷に軍が突入します。
「あと、この際に用語の統一を行う。今回の事件を邪神教事件と命名し、黒い霧をダークミストと名付ける」
今まで不明だった事件の全容が徐々に分かってきたので、邪神教事件としてヘンリーさんが指揮する事になりました。
これは、陛下も了承済みだそうです。
軍の偉い人と連携して、これからも対応するそうです。
明日は朝いちで軍の施設に向かい、現地に向かうそうです。
「後は、現地で押収した資料の分析を進めて、順次地方の拠点を潰していくことになる。先ずは、明日の作戦の成功を祈ろう」
陛下がこの場をしめて、僕とスラちゃんとドラちゃんは会議終了となりました。
この後は、もう少し難しい話をするそうです。
僕たちは、アーサーちゃんとエドガーちゃんのいる部屋に向かいました。
すると、ちょっとした事件が起きていました。
「エドちゃん、もう一回言って」
「にー」
「わあ、エドちゃんが喋った!」
なんと、エドちゃんがお兄ちゃんのアーサーちゃんの事を呼んだのです。
これには、僕たちもとってもびっくりしていました。
「エドちゃん、ママって言って」
「まー」
「あら、良くできました」
何だろうか、とてもお淑やかなマリアさんがメロメロな表情でエドガーちゃんに抱きついていました。
やっぱり名前を呼んで貰えるのって、とっても嬉しいみたいです。
「エドちゃん、ババって呼んでね」
「ばー」
「ふふ、良くできました」
シャーロットさんも、エドガーちゃんに抱きついて満面の笑みで頭を撫でていました。
当のエドガーちゃんも、みんなに褒められてニコニコしていますね。
僕の事も「にー」って呼んでくれたので、エドガーちゃんの頭を撫でて上げました。
すると、会議を終えた面々がやってきたのですが、更にちょっとした事件が起きました。
「エドガー、ぱぱって呼んでくれないかな?」
「じー」
「えっ? もう一回言って」
「じー」
なんと、父親のジョージさんの事を「じー」って言っていました。
ジョージさんの前に陛下がじーじと呼んでと言ったからかなと思ったけど、真実は別にありました。
「もしかして、ジョージだからじーって言ったのかな?」
「うー!」
マリアさんの問いかけに、エドガーちゃんは元気よく手を挙げていました。
エドガーちゃんは、父親の名前を理解していたんですね。
とはいえジョージさんはパパって呼んで欲しいみたいなので、もう少し頑張ってみるそうです。