応接室から歩いて食堂に向かうが、やはり大貴族の屋敷は凄いなあ。
 魔導具が照らす明かりが家の中を明るく見せていて、僕の感覚からするとまるで昼間の様だった。
 魔法使いが多かったからか実家には明かりの魔導具が置かれていたけど、こんなに明るくはなかったよ。

 ガチャ。

「ナオ君、ここが食堂よ」
「ふわああ……」
「ふふ、やっぱり初めて見るとビックリするよね」

 食堂に着いたとナンシーさんが説明してくれたけど、僕とスラちゃんは目の前にドーンと置かれているながーいテーブルに目がいっていました。
 そんなテーブルを見ながら進んでいき、僕はナンシーさんの隣に座りました。
 目の前には、ガイルさんとイサベルさんに挟まれながら座る、ニコニコ顔のセードルフちゃんの姿がありました。
 そして、目の前に豪華な料理が並びます。
 うわあ、こんなすごい料理初めてみたよ。
 そして、全員に飲み物が配られたところで、ランディさんが飲み物を手に持って立ち上がりました。

「今日は色々な経緯があったが、こうしてナオ君と知り合う事ができた。こういう小さな縁を、皆にも大切にして欲しい。では、乾杯する。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「かんぱーい!」

 ひときわ元気なセードルフちゃんの声が、食堂に響きました。
 そして僕も食事を食べ始めるけど、食べやすい様にお肉とかも小さく切ってくれていました。

 パクリ。

「わあ、とっても美味しいです! こんなに美味しいお肉は、生まれて初めて食べました!」
「そうか、それは良かった。遠慮せずに食べてくれ」

 僕とスラちゃんの食べっぷりに、ランディさんも目を細めていました。
 最近あんまり食べていなかったから、どんどん食べられちゃいます。
 ナンシーさんも、他の人たちも、僕とスラちゃんの事を微笑ましく見ていますね。

「にーに、おいちー?」
「うん、とっても美味しいよ」
「えへへ、おいちーね!」

 時々目の前に座るセードルフちゃんが僕に話しかけてくるけど、セードルフちゃんはまだ三歳なのにもう気遣いができるんですね。
 こうして僕とスラちゃんは、出された食事をぺろりと完食しました。
 こんなに沢山食べたのは、本当に久しぶりです。
 夕食を食べたらだいぶ時間が経ったので、そのまま僕は使用人さんの後をついて行って今日泊まる客室に移動します。

 ガチャ。

「こちらが、本日ナオ様にお泊り頂く客室になります」
「ほわあ……」

 使用人に案内された客室は、もう作りが凄かった。
 寝室にはとても大きいベッドが置かれているし、応接室やトイレ、はたまたお風呂まであった。
 この部屋だけで、実家よりも間違いなく広かった。
 あまりの凄さに、僕とスラちゃんは全てを受け入れるのに時間がかかってしまった。

「ナオ様、本日はお風呂は如何されますか?」
「えーっと、どうしよう。直ぐに入れますか?」
「魔導具を使用しておりますので、二十分程で入浴可能となります」

 うーん、そういえばお風呂って全然入っていないんだよね。
 実家は魔法使いが多かったから湯船にお湯を溜めて入っていたけど、流石にここではその方法は使えないね。

「すみません、せっかくなのでお風呂に入ります」
「畏まりました。それではご用意しますので、少々お待ち下さいませ」

 お風呂を溜めるのをお願いしている間に、買ってもらった下着と室内着を用意します。
 もう冒険者服は必要ないから、室内着に着替えちゃおう。
 そうこうしているうちに、お風呂のお湯が溜まりました。

「では、お体を洗うのをお手伝いしますので」
「えっ?」
「お体を洗うのをお手伝いします」

 あの、もしかして使用人が僕の体を洗うの?
 そんな事を一瞬考えたら、ぱぱぱっと服を脱がされちゃいました。
 そのまま、体をごしごしと洗われちゃいました。

「少し、腰などに打ち身がありますね」
「あっ、突き飛ばされた時に床に打ち付けたのかもしれません。直ぐに治療します」

 シュイーン、ぴかー!

 僕は使用人に指摘された所を直ぐに治療したけど、もしかしたら僕の体の悪いところとかをチェックしているのかもしれない。
 いずれにせよ、怪我をしているのはそこだけだったので、直ぐにスラちゃんと一緒に湯船に入りました。

「はふー」
「ふふ、気持ちよさそうですね」
「はいー」

 お湯の温度も丁度よく、スラちゃんも気持ちよさそうに湯船に浸かっていました。
 久々に疲れが取れそうなくらい、とっても気持ちいいです。

「それでは、私はこれにて。何かありましたら、遠慮なくご連絡下さいませ」

 こうして、ゆっくりと湯船に浸かった後、僕は使用人を見送ってからとても大きなベッドに潜り込みました。
 今日一日色々な事がありすぎてとっても疲れたので、僕はスラちゃんと一緒に直ぐに眠りにつきました。