「うわ〜!」

「人いっぱい……」

 カルネイルに着いた。
 これまでとは規模の違う街並みにクラインとサシャは驚いている。

 こうしてみるとこれまでギルドがあった町は小さかったのだなとイースラも思う。
 人も多くて二人は驚いている。

 こうしたところを見るとまだまだ子供だなと少し笑ってしまった。

「ふっ……こうしてみると可愛いものだな」

 イースラと同じようにデムソも微笑んでいる。
 腕を失って落ち込んでいたデムソも日が経って落ち着いてきた。

 うなされたりすることもあったけれど、カルネイルが近づくにつれて将来の心配が勝るようになったのか腕の喪失にうなされることも減った。
 手足を失って精神的に参ってしまう人もいる。

 そんな中でも立ち直りつつあるデムソは意外と強いのかもしれない。

「俺たちはこのまま商会に向かう……お前たちはどうする?」

 ベロンたちの目的はハッキリとしている。
 しかしイースラの目的はベロンも把握していない。

 これからベロンは家に帰って今一度最初からやり直すつもりである。
 一方でイースラたちは商家に下るつもりはなく、どうするつもりなのかとベロンは尋ねた。

「アテ……ってほどじゃないですけどいくつか考えているところはあります」

「そうか。本来子供だけなら心配するんだが……お前たちなら大丈夫だろう」

 ついていってやるよりも知らぬ顔してほっといてやる方がイースラのためになるとベロンは感じた。

「アテが外れたうちの商会に来るといい。上手く戻ることができてれば歓迎する。ナーボリア商会ってところだ」

「分かりました」

「まあ上手くいってもそのうち遊びに来い。口聞いて少しぐらい安くしてやるからさ」

「期待してますよ」

「その言葉、そのまま返すよ。お前たちはきっと俺たちにできなかった冒険の先を行くことができる。俺たちが見ることができなかった世界を見ることができる」

 ベロンは冒険者としての成功を夢見ていた。
 何もベロンだけではない若い冒険者のほとんどは物語になるような偉大な冒険者だったり自分が伝説を残したりすることを胸に夢見て冒険者をやるのだ。

「俺の夢はここまでだ。あとはしっかりと責任を果たす。……だがお前はきっとすごいやつになる。いつか俺に話させてくれ。あの有名なイースラと俺は活動したことあるんだってな。お前の冒険の始まりは今はないスダッティランギルドだったってな」

 ベロンの声がわずかに震えている。

「じゃあ、期待しててください。一応配信もするつもりなので俺たちの勇姿届けますから」

 イースラはニカッと笑った。
 今回は世界を救ってやるんだとイースラは思っている。

 期待してくれていい。
 きっとベロンは酒の席で語るだろう。

 世界を救った冒険者と知り合いだったと。
 その冒険者の始まりは自分の作ったギルドであったのだと。

 そうさせてやろうとイースラは思う。

「情けない姿見せたら許さないからな」

「ベロンさんこそ、気を付けてくださいね。商会の仕事も楽じゃないでしょうから」

「まあそうだな。死なない程度には頑張るよ」

「それじゃあ行きましょうか」

「ああ、お別れだな」

 ベロンが手を差し出してイースラはそれに応じる。

「あなたも気をつけなさいよ? あの子モテそうだから」

「あ、うん、はい……頑張ります」

「あと言わなきゃダメなこともあるから。どっかの人みたいに」

 スダーヌがサシャにウインクする。
 最後は少し言葉少なにイースラたちはベロンたちと別れたのであった。