「見たところ……金はありそうだしな」
イースラたちは両手に荷物を抱えている。
少なくとも無一文ではなさそうだとジワラは思った。
「なんでそいつの俺らが払わなきゃいけないんだよ?」
「あぁ?」
「硬貨一枚だって払うつもりはないね」
もう少し平穏な言い方はないのかとサシャとクラインはイースラのことを見る。
「払わなきゃコイツみたいになるぞ?」
「い、痛い……」
ジワラはポムの髪を掴んで顔を上げさせる。
そんなことしなくてもポムの顔が殴られて痛々しくなっていることは分かっていた。
「そのガキはまだガキだが……いい顔してやがる」
「キモッ……」
ジワラがサシャのことを見て舌なめずりする。
サシャはうっと顔をしかめてイースラの後ろに隠れるように移動する。
「そのガキ、こっちに来させろ」
「いやっ……」
「やめろ!」
ジワラの命令でサシャに伸ばされた手をイースラが掴む。
「あっ?」
「やめろって言ってんだ。サシャには手を出させないぞ」
「イースラ……」
サシャには手を出させない。
イースラの姿にサシャは思わずドキッとしてしまう。
「やっちまえ」
手を掴まれた男がジワラに視線を送る。
ジワラは不愉快そうに顔を歪めると舌打ちしながら頷いた。
「放せよ!」
「イースラ!」
「ぐえっ!?」
男がイースラを殴りつけようとした。
しかしイースラは拳をひょいとかわすと逆に男の顎を的確に殴った。
男はカクンと地面に膝をついて気を失って倒れた。
「なっ……」
「確かにそいつはギルドの先輩かもしれないけど俺はそいつの方が上だと思ったことは一度もない」
地面に荷物を置いたイースラの体に白い魔力がまとわれる。
「何もしないのなら放っておいたけど俺たちに害をなす気なら許さないからな」
「こいつ……やっちまえ!」
カッとなった男たちがイースラに殴りかかる。
男たちはイースラの体にまとわれたものがオーラであるということが分かっていない。
借金取りのゴロつきに戦いの心得などあるはずもなく乱雑な拳がイースラに向けられた。
大人と子供の体格差は埋められない。
力の差はどうしてもある。
まともに正面から受けることは難しい。
イースラは横から手を当てるようにしてパンチを受け流す。
そしてオーラを多めに込めた拳を男の腹に叩き込んだ。
「すごい……」
流れるような動きだった。
攻撃を受け流して反撃する。
たとえ子供の力でもオーラをまとった攻撃をまともに食らえば大人も悶絶するダメージがある。
「な、なんだコイツ……」
あっという間に男たちはイースラによって倒されてしまった。
「く、くそっ!」
ガキに負けたことなど噂になったら面目は丸潰れだ。
金を返せと言っても鼻で笑われるようになってしまう。
イースラが強いのではなく、イースラにやられた男たちが使えないのだとジワラは盛大に舌打ちする。
これ以上恥を晒すことはできない。
子供相手でももう容赦はしないと剣を抜く。
「いいのか?」
「何がだよ!」
「剣を抜いたらもう言い訳できないんだぞ?」
素手だから負けた。
油断していたから負けた。
イースラに倒された男たちはまだそんな言い訳もできるだろう。
だがしっかりと剣を抜いて戦ってしまうとイースラに負けたという事実はなんの言い訳もできなくなる。
「うるせぇ! ぶっ殺してやる!」
素手相手、しかも子供相手に剣を抜いて負けるはずがないとジワラは切りかかる。
「雑だな」
ジワラの剣をイースラは簡単にかわす。
駆け引きもなければ鋭さもない。
剣の振りは大きくてまともに剣の握り方すら学んだことがないのがよく分かる。
「な、なんで当たらないんだよ!」
「なんでか分かるか?」
剣が何度も空を切ってジワラの体力も底をつく。
一際大きな攻撃をギリギリでかわしたイースラはジワラと距離を詰める。
ギュッと握って真っ直ぐに突き出された拳をジワラはかわすことができなかった。
「お前が弱いからだ」
「ぐふっ!」
顔面を殴られたジワラは地面を転がる。
ポムの前に倒れたジワラは鼻から血を流して痛みに悶えている。
たとえ攻撃を受けても武器である剣を手放してはいけない。
そんなこと常識なのにジワラは簡単に剣を手放してしまった。
イースラはジワラが落とした剣を拾い上げる。
「おい」
「なっ……うっ……」
声をかけられてジワラが顔を上げると剣が突きつけられていた。
「俺たちはコイツとは関係ない」
「わ、分かったよ……」
「俺たちに手を出そうとすれば俺が許さない。今度は鼻だけじゃ済まないからな」
「そ、そうだな。も、もうお前らには手を出さない……」
「ただ借金はちゃんと返さなきゃいけないからな……いくらだ?」
「借金は銅貨百枚だ……」
結構借りてるなとイースラは思った。
先程1000ポイントで銅貨三枚と交換した。
銅貨百枚となるとポイントで考えると何万ポイントも必要となるような金額だ。
「半分の五十枚。俺が払ってやる」
「な、なに?」
「それでしばらく大人しくしといてもらえるか? あとはちゃんとコイツから返させるから」
「……まあ、半分払ってもらえんなら」
サシャとクラインは驚いた顔をしている。
銅貨五十枚でもかなり大きな金額だ。
ひょいと払える額じゃない。
イースラたちは両手に荷物を抱えている。
少なくとも無一文ではなさそうだとジワラは思った。
「なんでそいつの俺らが払わなきゃいけないんだよ?」
「あぁ?」
「硬貨一枚だって払うつもりはないね」
もう少し平穏な言い方はないのかとサシャとクラインはイースラのことを見る。
「払わなきゃコイツみたいになるぞ?」
「い、痛い……」
ジワラはポムの髪を掴んで顔を上げさせる。
そんなことしなくてもポムの顔が殴られて痛々しくなっていることは分かっていた。
「そのガキはまだガキだが……いい顔してやがる」
「キモッ……」
ジワラがサシャのことを見て舌なめずりする。
サシャはうっと顔をしかめてイースラの後ろに隠れるように移動する。
「そのガキ、こっちに来させろ」
「いやっ……」
「やめろ!」
ジワラの命令でサシャに伸ばされた手をイースラが掴む。
「あっ?」
「やめろって言ってんだ。サシャには手を出させないぞ」
「イースラ……」
サシャには手を出させない。
イースラの姿にサシャは思わずドキッとしてしまう。
「やっちまえ」
手を掴まれた男がジワラに視線を送る。
ジワラは不愉快そうに顔を歪めると舌打ちしながら頷いた。
「放せよ!」
「イースラ!」
「ぐえっ!?」
男がイースラを殴りつけようとした。
しかしイースラは拳をひょいとかわすと逆に男の顎を的確に殴った。
男はカクンと地面に膝をついて気を失って倒れた。
「なっ……」
「確かにそいつはギルドの先輩かもしれないけど俺はそいつの方が上だと思ったことは一度もない」
地面に荷物を置いたイースラの体に白い魔力がまとわれる。
「何もしないのなら放っておいたけど俺たちに害をなす気なら許さないからな」
「こいつ……やっちまえ!」
カッとなった男たちがイースラに殴りかかる。
男たちはイースラの体にまとわれたものがオーラであるということが分かっていない。
借金取りのゴロつきに戦いの心得などあるはずもなく乱雑な拳がイースラに向けられた。
大人と子供の体格差は埋められない。
力の差はどうしてもある。
まともに正面から受けることは難しい。
イースラは横から手を当てるようにしてパンチを受け流す。
そしてオーラを多めに込めた拳を男の腹に叩き込んだ。
「すごい……」
流れるような動きだった。
攻撃を受け流して反撃する。
たとえ子供の力でもオーラをまとった攻撃をまともに食らえば大人も悶絶するダメージがある。
「な、なんだコイツ……」
あっという間に男たちはイースラによって倒されてしまった。
「く、くそっ!」
ガキに負けたことなど噂になったら面目は丸潰れだ。
金を返せと言っても鼻で笑われるようになってしまう。
イースラが強いのではなく、イースラにやられた男たちが使えないのだとジワラは盛大に舌打ちする。
これ以上恥を晒すことはできない。
子供相手でももう容赦はしないと剣を抜く。
「いいのか?」
「何がだよ!」
「剣を抜いたらもう言い訳できないんだぞ?」
素手だから負けた。
油断していたから負けた。
イースラに倒された男たちはまだそんな言い訳もできるだろう。
だがしっかりと剣を抜いて戦ってしまうとイースラに負けたという事実はなんの言い訳もできなくなる。
「うるせぇ! ぶっ殺してやる!」
素手相手、しかも子供相手に剣を抜いて負けるはずがないとジワラは切りかかる。
「雑だな」
ジワラの剣をイースラは簡単にかわす。
駆け引きもなければ鋭さもない。
剣の振りは大きくてまともに剣の握り方すら学んだことがないのがよく分かる。
「な、なんで当たらないんだよ!」
「なんでか分かるか?」
剣が何度も空を切ってジワラの体力も底をつく。
一際大きな攻撃をギリギリでかわしたイースラはジワラと距離を詰める。
ギュッと握って真っ直ぐに突き出された拳をジワラはかわすことができなかった。
「お前が弱いからだ」
「ぐふっ!」
顔面を殴られたジワラは地面を転がる。
ポムの前に倒れたジワラは鼻から血を流して痛みに悶えている。
たとえ攻撃を受けても武器である剣を手放してはいけない。
そんなこと常識なのにジワラは簡単に剣を手放してしまった。
イースラはジワラが落とした剣を拾い上げる。
「おい」
「なっ……うっ……」
声をかけられてジワラが顔を上げると剣が突きつけられていた。
「俺たちはコイツとは関係ない」
「わ、分かったよ……」
「俺たちに手を出そうとすれば俺が許さない。今度は鼻だけじゃ済まないからな」
「そ、そうだな。も、もうお前らには手を出さない……」
「ただ借金はちゃんと返さなきゃいけないからな……いくらだ?」
「借金は銅貨百枚だ……」
結構借りてるなとイースラは思った。
先程1000ポイントで銅貨三枚と交換した。
銅貨百枚となるとポイントで考えると何万ポイントも必要となるような金額だ。
「半分の五十枚。俺が払ってやる」
「な、なに?」
「それでしばらく大人しくしといてもらえるか? あとはちゃんとコイツから返させるから」
「……まあ、半分払ってもらえんなら」
サシャとクラインは驚いた顔をしている。
銅貨五十枚でもかなり大きな金額だ。
ひょいと払える額じゃない。


