ここはこの世界の南西部にあるカーカイル大陸。この大陸の西側に大きな湖があって、その真ん中にオルパイルの町はある。
 そして人口は約一千万人いると云われているが、実際どうだか定かではない。

 この町の庭園では、男女が長椅子に座り話をしていた。
 男の方はどうみてもこの世界の者ではない。
 そう美鈴のようにこの世界に召喚された者だ。

 葉豆(はず)(れん)、十八歳。美鈴が召喚される数分前にこの世界に来ている。と云っても、本来なら元の世界に帰れるはずだった。
 だが、スイクラムが誤ってスイラジュンムに転移させたのである。
 そのため自力で元の世界に帰る方法を探しながら旅をしていた。
 能力は【ハズレ】であり、どんな攻撃でも自分にあたらない超レアなスキルなのだ。
 だが、その能力に気づいていても【ハズレ】と云う能力だとは思っていない。

 ※無駄情報:因みに連は、短編の主人公だ。

 連の隣に座っている女性はファーサシャ・リバルド、耳長の獣人族である。年齢は不詳でいいだろう。
 髪は紺色でツインテール。左がハートで右の方は星の飾りがついたリボンをしている。そして可愛い巨乳系だ。
 見た目そうは思えないが、かなりの剣の腕前である。

 二人は一ヶ月一緒にここまで旅をしてきた。

 「ファーサシャ、もう一ヶ月かぁ」
 「うん……だけどレンは、まだ元の世界に帰る方法がみつからないんだよね」
 「ああ……それに俺がこの世界にいなきゃいけない理由って、なんなのか分からないんだよな」

 そう言い連は、遠くをみつめる。
 そうこう話をしていると二人組の男が連とファーサシャの方へ近づいてきた。

 「おい……可愛い獣人を連れて気にくわねぇ!」

 ガタイのいい金髪の男はそう言い連を睨みつける。

 「はあ? 確かにファーサシャは可愛いですよ」

 そう連が返すと二人組の男は、ピクピク顔を引きつらせた。

 「馬鹿にしてんのか?」

 そう言い小太りで銀髪の男は、連に殴りかかる。
 それをみても連は、微動だにせず動かなかった。
 ファーサシャも何もしようとせず、ニコニコとしている。

 そう……このあと銀髪の男が、どうなるか分かっていたからだ。

 連に殴りかかろうとした直後、空から大きな岩が銀髪の男へ向かい降ってきた。
 それに気づくも銀髪の男は、回避することができずに地面に倒れ血を流し気絶する。

 (なるほど……今日は岩か)

 そう思い連は地面に倒れている銀髪の男をみた。

 「てめえ、何をした!?」
 「別に何もしてないけど……」

 それを聞き腹がっ立った金髪の男は、ナイフを取り出し連に斬りつけようとする。

 「あっ、俺……し~らないっと」
 「あらら……どうなっても、アタシ達はなんもしてないもんねぇ」

 それを聞き不思議に思うも、金髪の男はそのまま連をナイフで刺そうとした。
 すると凄く斬れそうな形の大きな岩が、金髪の男の左腕に勢いよく降ってくる。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁ……」

 金髪の男はそう叫び持っていたナイフを落とした。それと同時に、左肩を押え蹲る。そう、左腕が切断されていたからだ。
 ……連の能力は一ヶ月で、かなりパワーアップしているようである。

 「ハァー……流石にキツイな」
 「うん、そうだね。どうする?」
 「仕方ない……誰か呼んできてくれるか?」

 そう言われファーサシャは頷いた。その後、近くに居た人に聞いて歩き手伝ってもらえる者をみつけてくる。
 そして連とファーサシャは、手伝ってくれる数名と二人組の男を医療施設へ連れて行った。