〇〇市読書感想文コンクール


「ぼくのともだち」
〇〇小学校 1年1組 小野寺陽太

ぼくは、いままで、ともだちをつくるのがにがてでした。がっこうでともだちとあそびたいけど、どうしたらいいのかわからなくて、ひとりでいることがおおかったです。
だから、このほんをよんで、すごくうれしくなりました。

このほんには、コウスケくんというおとこのこがでてきます。コウスケくんもぼくとおなじで、なかなかともだちができませんでした。
でも、あるひ「ケンタくん」というふしぎなおとこのこにであいます。ケンタくんとコウスケくんは、いっしょにあそんだり、おしゃべりをして、ともだちになります。

ぼくがとくにすきなところは、ケンタくんがコウスケくんのために、いじめっこからまもってくれたところです。
コウスケくんがこわくてたちむかえなかったあいてでも、ケンタくんはまけません。ケンタくんは、どんなときでも、コウスケくんをたすけるためにがんばってくれます。とてもやさしいともだちです。

でも、そんなケンタくんでも、ひとりだとゆうきがでないといっていました。だから、コウスケくんもケンタくんのそばにいるやくそくをして、ふたりはほんとうのともだちになりました。ぎゅっとてをにぎるふたりは、とってもたのしそうでした。
ぼくも、そんなともだちがほしいなあとおもいました。

このほんをよんで、ぼくはともだちのたいせつさをまなびました。ぼくもケンタくんみたいに、ともだちにやさしくできるひとになりたいです。
そのために、いままでぼくにこえをかけてくれたひとたちに、もっと「ありがとう」や「いっしょにあそぼう」をいってみたいとおもいました。さいしょはうまくいかなくても、あきらめないでがんばりたいです。たくさんともだちをつくるのが、ぼくのゆめになったからです。

ケンタくんは、ぼくのはじめてのともだちです。

「伝え合うよろこび」
〇〇小学校 3年2組 平沢菜々子

わたしは、本を読むのがとても好きです。だから、図書館で本を探すときや、本屋さんで本を見つけたとき、すごくわくわくします。
この「君のそばにいる」という本も、図書館で見つけました。古くなった表紙で、不思議なタイトルだったので、なんだか少し怖い本なのかなと思いました。
でも、読み進めていくうちに、この本はとても素敵なお話で、友達の大切さについて教えてくれる本だと分かりました。大好きな本の中でも、特に心に残る一冊になりました。

主人公のコウスケ君は、引っ越してきたばかりで友達がいません。わたしも、クラス替えのときに同じように寂しい思いをしたことがあって、そのときは不安でいっぱいでした。
「コウスケ君、頑張れ」と心の中で応援していると、ケンタ君という男の子が出てきました。
ケンタ君はすごく不思議な子でした。誰もいないお屋敷に住んでいて、いつもふわふわと浮いています。
わたしは「二人が友達になれたらいいな」と思いながら、同じくらい「難しいんじゃないかな」と思っていました。 二人がまったく違うように見えたからです。

でも、コウスケくんとケンタくんは、あっという間に仲良しになりました。ケンタくんはすごく優しくて、いつでも康介くんの味方になってくれます。たとえば、忘れものをしたときに助けてくれたり、いじめっ子から守ってくれたりします。ケンタくんと一緒の毎日はすごく楽しそうで、わたしにもこんな友達がいたらいいなと思いました。

それから、ケンタくんは、コウスケくんをいつも守ってくれるだけじゃありません。「どんなときでも一緒だよ」と何度も言ってくれます。そんな風に思ってくれる友達がいることは、すごく嬉しいことだと思います。
コウスケくんがケンタくんと手をつないで「どこか遠くへ行こう」と言った場面は、とても綺麗で、ずっと覚えていたくなりました。その頃にはわたしの不安もなくなっていて、ケンタくんは世界でいちばん大切な友達なんだとわかりました。

読み終わってからわたしは、家族や友達にもこの本をすすめることにしました。
最初に、お母さんに話したら、「そんなに面白い本なら読んでみたい」と言ってくれました。お母さんも本が好きなので、わたしと同じところで感動してくれて嬉しかったです。
次に、学校の友達にもこの本をすすめました。わたしの友達はあまり本を読まない子も多いけれど、この本を読むとみんな「面白かった!」と言ってくれました。みんなで感想を話し合う時間は、すごく楽しかったです。

クラスメイトのアヤちゃんは、特にこの本を気に入ってくれました。アヤちゃんとはもともと、一緒に遊ぶような友達ではありませんでした。でも、この本の話をするうちに、仲良くなることができました。
わたしは「本を通して友達ができるっていいね」と言いました。アヤちゃんは「そうだね。ケンタくんもすごく喜んでるね」と言ってくれました。それを聞いて、わたしもますますケンタくんが大好きになりました。
やっぱり、みんなにもこの本をすすめて良かったです。

この本は、友達の大切さに気づかせてくれるだけでなく、友達と語り合う楽しさも教えてくれる、特別な本だと思います。
これからも、この本をもっといろんな友達に教えて、一緒に楽しい時間を過ごしたいです。そしてわたしも、いつかはケンタくんと手を繋いでみたいです。
きっともうすぐだと思います。その日がとっても楽しみです。

「僕の傍に」
〇〇小学校 6年3組 古川慎一

僕はこの本を読んで、「友達」というものが何なのかを改めて考えました。
僕はこれまでずっと一人ぼっちでした。学校でいじめられていて、誰も僕と遊んでくれなかったからです。バカにされたり、悪口を言われたり、物を隠されたりすることもありました。

この本の主人公、コウスケくんも一人ぼっちでした。転校したばかりで友達が出来なくて、とても寂しい思いをしていました。僕にはその気持ちが痛いほど分かります。僕も学校では誰とも話さないし、帰ってからも、友達と一緒に遊ぶことなんてありませんでした。

そんな僕だからこそ、コウスケくんがケンタくんと友達になった時、どれだけ嬉しかったかが分かります。
ケンタくんはふわふわと宙に浮いていて、不思議な力を持っています。ヒーローみたいに心強い友達です。僕はコウスケくんが羨ましくなりました。

ケンタくんの一番かっこいいところは、コウスケくんをいじめる悪い子をやっつけたところです。最初はただ怒ったり、仕返しをするだけかなと思っていたけど、違いました。

ケンタくんはいじめっ子をばらばらにしました。

僕は、その場面がとても印象に残っています。
いじめっ子は全員、手足をもぎ取られました。コウスケくんをにやにや笑いながら見ていた顔が、恐怖にゆがんで、元の形に戻らないくらいぐちゃぐちゃになっていきました。
それでも、ケンタくんはいじめっ子を許しませんでした。骨をはずして、肉を引きちぎって、そのへんで死んでる虫みたいにしました。いじめっ子が泣きわめいて、「もう二度と逆らいません」と言った時は、胸がすっとなるような感じがしました。

僕はこれまで、自分の気持ちを押し殺して生きてきました。でも、この本を読んで、僕は「自分もこうしたい」と思いました。いじめっ子を黙らせて、二度と僕をバカにしないようにしてやりたい。腕や足をもいで、ばらばらにして、動かなくなるまで叩いて潰したい。そうしたら、誰も僕に逆らわなくなるはずです。

僕はコウスケくんが羨ましくて仕方なくなりました。いくら友達になりたくても、ケンタくんは物語の中の存在です。コウスケくんはケンタくんと手を繋いで、「どこか遠いところ」へ行けました。「どこか遠いところ」は、きっと行ったら二度と戻ってこれないけれど、ケンタくんがいるので素敵な場所です。僕もそこに行きたいです。ケンタくんの友達がコウスケくんじゃなくて僕だったら良かったのに。

そんな風に思っていたら、ある時、ケンタくんと本当に会えました。学校からの帰り道で、ふと顔を上げたら、目の前にケンタくんが居たんです。
僕は嬉しくてたまらなくなりました。普段ならそんなこと言えないはずなのに、すぐに「友達になろう」と言えました。ケンタくんも笑って「いいよ」と答えてくれました。

それからの毎日は、夢を見ているみたいです。ケンタくんは僕が想像した通りに、いじめっ子をばらばらにしてくれました。先生やお母さんはすごく驚いていて、僕を大きな声で叱ったり、知らない場所に連れて行ったりしたけど、全然怖くありませんでした。ずっとケンタくんが傍に居てくれるからです。

僕にとってこの本は、ただの物語ではありません。人生を変えてくれた素晴らしい本です。本当の友達を作ることができて、毎日がすごく楽しくなりました。
これから僕は、⬛︎⬛︎⬛︎に行ってきます。ケンタくんに「一緒に行こう」と言われたからです。僕はその言葉がすごく嬉しかったので、絶対についていくと決めました。
最後に、僕みたいに悩んでいる子供たちにも、この本を勧めたいです。ケンタくんは、君の傍にも来てくれます。

「無題」
△△中学校 2年生 遠藤未来

私は読書が嫌いです。宿題で出された読書感想文も、ほとんど真面目にやってきませんでした。
ですが、「きみの傍にいる」を読んで、どうしても伝えたいことが出来たので、頑張って書いてみます。

私の弟、陸斗は小学四年生でした。弟は私と違って本を読むのが好きな子でした。学校の図書室にもよく通っていて、今年の夏休みに入る前も、沢山の本を借りてきていました。いつも通りの光景でした。

最初の異変は、弟に話しかけられた時でした。
「ねえ、お姉ちゃん。ケンタくんって知ってる?」
ある日、弟はそう言いました。
私はもちろん、ケンタくんのことなんて知りませんでした。小さい子の間で流行ってる何かかな、と思ったくらいです。その時の私は部活で疲れていて、早く話を切り上げたかったので、「知らない」と答えて部屋に戻りました。
今思えば、もっと話を聞いてあげていれば良かったと思います。その時の弟の様子は、明らかに興奮していて、普段とは違っていたのに。私は何も気付きませんでした。

それから、陸斗の様子は少しずつ変わっていきました。
まず、夜中に小さな声で何かと話しているのを聞きました。「誰と話しているの?」と聞くと、「友達と話してるんだ」と言われました。
部屋の中に友達がいるはずないし、陸斗はスマホや電話のようなものは何も持っていなかったので、不思議には思いました。でもお母さんに話しても「空想の友達と遊んでるんでしょ、よくある事だよ」と言われただけでした。私も納得してしまって、それ以上は追求しませんでした。

けれど、他にもおかしいところはありました。
夏休みに入って、普段なら色々な本を読んでいるはずなのに、弟は一つの本だけを繰り返し読んでいました。最初は気に入ったのかなと思っていましたが、段々おかしいと感じてきました。
ページをめくる手つきが異様に執着を感じさせるのです。まるでその本に取り憑かれたように見えました。
そして、数日後、弟は突然こう言ったのです。
「ケンタくんが、僕を連れて行ってくれるって」
手にはあの本がありました。私はそれを冗談だと思おうとしました。けれど、彼の声色は明らかに真剣で、その時の表情はどこか別人のようでした。

弟が消えたのはその翌日です。
朝、彼の部屋を覗くと、布団は乱れたまま、姿がありませんでした。家中を探しても、近所を探しても、彼の姿はどこにも見当たりません。警察に連絡し、家族全員で捜索しましたが、何の手がかりも掴めないまま時間が過ぎていきました。

私は自分なりに手がかりを探そうとしました。そこで、あの本の存在に思い至ったのです。
弟の机の上に置かれていた「きみの傍にいる」。表紙のデザインは普通で、青空の下に古びた一軒家が描かれていました。私は勇気を出して、本を開きました。

本の内容は、一見どこにでもある児童小説に見えました。孤独な男の子が新しい土地で友達を作り、友情を深めていく話。しかし、読み進めるうちに違和感が募っていきました。ページをめくるたび、友達の"ケンタくん"が恐ろしく感じられるのです。

例えば、「コウスケくんをいじめる悪い子をやっつける」という部分。描写が明らかに異常でした。暴力的な場面がやたらと詳細に書かれていて、腕や足を捥ぐといった表現が使われています。それなのに、コウスケくんやケンタくんは「ばらばらにした」と軽く言うだけでした。登場人物に狂気すら感じました。
この本を読んだ弟が、何も言わずに過ごしていたのが、信じられなくなりました。

さらに不気味だったのは、物語の最後。コウスケくんが「ここじゃないどこか」へ行くという描写です。その場所が何処なのかは、ハッキリ書かれていませんが、明らかに現実ではないように思えました。
そもそも、ケンタくんは宙に浮いていて、他の人からは見えないのです。使える力というのも、人を殺して消し去る力です。ここまで読むと、ケンタくんは悪霊にしか見えません。友達と呼ぶことすら恐ろしく感じました。

弟の失踪の原因はこの本に違いないと、私は確信しました。そして、すぐにでも大人に伝えようと思い、お父さんやお母さんにこのことを話しました。
しかし、私の訴えは聞き入れられませんでした。「本が失踪の原因になっている訳がない」それは私だって分かっています。けれど、「そもそも何の変哲もない小説じゃないか」なんて、ありえません。やっぱりこの本はおかしいです。
多分、大人にはこの本の異常性を認識出来ないんだと思います。そして子供は、弟のようになってしまう。異変に気付けたのは私だけでした。

だから、警察の方からレポートの提出を求められたときは、心の底から安心しました。やっと私の想いが伝わるんだと思いました。もちろん、弟以外の子供たちも行方不明になっていると、聞いた時は驚いたのですが。子供たちがどこに行ったのか考えると、私は体の芯から冷えていくような気持ちになります。

これを書いている今も、弟は帰ってきません。もう会える日は来ないのかもしれません。毎日悲しくて仕方ない気持ちです。
「きみの傍にいる」という本を見つけたら、どうか絶対に読まないでください。そして、他の人にも読ませないでください。二度と、こんな悲劇は繰り返してはいけないからです。
弟のような犠牲者が出ないことを、心から祈っています。

□□県〇〇市の一部地域において、小学生児童が次々と失踪する事件が発生している。現在までに確認されている行方不明者は10名以上に及び、早急な事件の解決が求められている。

この事件には、同〇〇市で開催された小学生向け読書感想文コンクールと、課題図書として選ばれた小説『きみの傍にいる』(著:小沢田健太)が深く関わっていると思われる。

本作は一見、友情をテーマにした教育的な物語であるように見えるが、実際には子供を異常な状態へと誘う危険な影響力を持つ。しかし大人はその異常性をまったく認識できず、他の児童小説との区別がつかない。一方で子供たちは、本に対する異常な執着心、幻覚、幻聴を訴えた後に、忽然と姿を消す。

唯一、この本の異常性に気が付けるのは中高生である。中高生は、物語の中の描写に対して違和感を抱くため、本の影響から疎外されていると考えられる。警察は行方不明児童の兄弟を含む数名の中高生に協力を依頼し、被害の記録や本作に関するレポートを作成させることで、事件の全貌解明を試みている。

また、本作が事件と結び付いたのは、先述した小学生向け読書感想文コンクールの影響がある。当コンクールには奇妙な点が多々あり、課題図書の選定から入賞作品の選別まで、通常では考えられないような不正な運営が行われていたことが明らかになっている。また、コンクールの主催者であった渡辺秀人氏も謎の失踪を遂げており、本件との関連性が疑われている。

さらに、作者である小沢田健太氏についても多くの謎が残されている。小沢田氏は『きみの傍にいる』を自費出版し、〇〇市内の図書館や学校に寄贈した後、自宅で首を吊り自殺していた。彼の死についての詳しい背景はほとんど明らかにされておらず、遺書や関係者の証言も見つかっていない。一方で、中高生のレポートから推測される内容と彼の個人情報には一部共通している点があり、本作が遺書の代わりであるとする考え方もある。

現在、『きみの傍にいる』は□□県が主体となって回収を進めている。しかし、著作物保護団体からの反対意見や、すでに流通してしまった本の所在確認が難しく、すべての回収は難航している。また、寄贈リストに記載されていない図書館や学校でも本が発散されており、その流通経路には謎が多い。失踪した子供たちも見つかっておらず、「ケンタくん」と呼ばれる存在に関しても実態が判明していない。捜査は停滞の様子を見せていると言っていいだろう。
事件の拡大を防ぐため、さらなる対策が急がれる。


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