第10話『冬のデスゲーム大会・開幕』
冬のデスゲーム大会当日。
いよいよ、1年生最後のデスゲームが始まる。
「いいか、お前ら。緊張してブルブル震えるなよ」
教室の壇上で良太が真剣に言う。
「武者震いはダメか?」
「そうそう」
生徒達は言う。
「ダメだ。震えてる場合じゃないからな」
良太は腕を組み、冷静に言う。
生徒達は少なからず、不安と恐怖もあるものの、日々の猛特訓のおかげで、自信とやる気があった。
それから、時間となり。
1年C組は体育館に移動し始めた。
1限目 1年C組
2限目 1年A組
3限目 1年B組
どうやら、1限目に1年C組らしい。
体育館には夏のデスゲームのように35台以上のパソコン、机、椅子が配置されていた。
大型の冷暖房機が作動している。体育館はそこそこ暖かい。
陽葵の右側に良太、左側に竜堂がいる。
陽葵はホッカイロを手にしていた。ホッカイロは温かくて気持ちが良い。
「おい、俺にも貸せ」
「はいはい」
陽葵は良太に渡す。
1年C組は、夏の大会で結菜含め7人の生徒が亡くなっている。陽葵達は23人で戦わなくてはならない。それは他のクラスと比べると大きなハンデである。陽葵は重要な役割がある。それは死者蘇生役だ。その重責で緊張と不安でガチガチだ。
「なあ、陽葵」
「ん?」
「もし、一人も犠牲者も出さず、クラスが勝利したら、付き合わないか?」
「え?」
「俺、陽葵の事が好きなんだ」
「ちょ! 何で、ソレ、今言うの? おかしいでしょ??」
突然の告白に、陽葵は動揺し慌てて良太の顔を見る。
「小学生2年生の頃から好きなんだ。お前の事」
「ちょ! ソレ、本当なの??」
「本気だぞ?」
「……ッ!」
「返事は早めにしろよ? じゃないと、泣いちゃうからな?」
良太はわざとらしく、上目使いで言う。
「あのね、それって死亡フラグなんだよ? それ、言わないでよ!」
「今のお前なら、死亡フラグを折れるだろ?」
「もう、へし折ってやるわよ!」
良太のおかげで、緊張が解けた。手が小刻みに震えるが、これは武者震いである。
サマエルには結菜から授かった死者蘇生がある。絶対、使いこなしみせる。
♦♦♦
「――5秒前、4、3、2、1、スタート!」
そして、デスゲームが始まった。
制限時間60分。
戦闘フィールドはマグマであった。黒いゴツゴとした岩に赤くドロドロした溶岩。
画面ごしでも、暑く恐怖を感じさせる。オーケストラとロックが混じったBGMが、陽葵の緊張感と高揚感を煽る。フィールドの奥から、大きな存在が、しっかりとした足どりで現れた。彼女はゴクリと、唾を飲みこんだ。
「1年C組が戦うモンスターはファイアードラゴンキッズだ」
実行委員が敵の正体を明かす。
「マジかよ、ファイアードラゴンキッズって強いじゃないか!」
「確か、Bランクモンスターだぞ?」
「1年生が相手に、Bランクとか強すぎだろ!」
クラスメイト達は動揺し、困惑を隠せなかった。
陽葵も少なからず、動揺ししてた。ファイアードラゴンキッズはBランクモンスターだ。
1年生が相手するには強い。それにだ、1年の時、戦ったワイズはCランクモンスター。
単体としてCランク相当だが、途中からスケルトンウォリアーと上手く連携し始め、挑発無効を使って来た。実質、ワイズ達はBランク以上の強さをみせた。学校側は、デスゲーム大会では強めに設定している可能性が高い。
そうなると、おそらくだがファイアードラゴンキッズはB+、考えたくもないがAランク相当の力を持っている可能性だってある。
「良太、ワイズっているかな?」
インカムごしに言ってみた。
ワイズっている。というのは、先ほど話した、夏のデスゲーム大会で戦ったワイズを事である。ワイズはCランクモンスターだが、実質、Bランクモンスターの強さがあった。ファイアードラゴンキッズもBランクではなくB+あるいはA以上なのでは?
そんな造語を陽葵達は使っている。
「かもな」
良太は頷く。
生徒達の何人かが、ワイズっているというワードを聞いてピンときたのか。
「マジかよ、ワイズってるのか!?」
「ワイズの時と同じなら、B+以上かもな」
「まさか、Aランクじゃないよな?」
生徒達はヒナタの推測に気づき始めた。
「えええ! それって、倒せるの??」
「いや、無理だろ!」
「無理ゲーすぎる!!」
生徒達は、悲鳴と弱音を吐き始める。
「おい、お前ら。死んでも蘇るんだ。それでも、怖いか?」
良太はインカムを使って、あえて低い声で言った。
「そ、それは……」
「いや、怖いよ!」
「怖いって!」
「お前ら!! 他のクラスにはヒナタはいないんだぞ? 死んだら死ぬ。だが、俺達のクラスにはヒナタがいる! 死んでも蘇るンだぞ?」
良太の叱咤に生徒達はハッとする。
「た、確かにそうだな」
「ああ、そうだな。他のクラスと比べたら……」
「そうだよ、陽葵ちゃんがいる!」
「お前ら! 歯を食いしばって戦え! さすらえば陽葵、俺達の女神が救ってくれるぞ!」
「ちょ! 良太!」
ヒナタは吹き出しそうになったがぐっとこらえ、隣にいる良太を睨む。
「陽葵は女神だ! だよな? お前ら!!」
「「「おう!!」」」
「陽葵神がいる!! 勝てるよ!!」
「そうだよ。陽葵様がいる!!」
絶対おかしいと思う陽葵。だが、他の生徒達はノリノリだ。
「ちょっと! みんな!!」
あまりの羞恥心で、どこかに隠れたいが、デスゲーム大会だ、この場から逃げるわけにはいかない。
「よし、訓練通りで行く! 作戦Aで行け!」
「「「おう!」」」
♦♦♦
ゲーム開始してから、8分後。
「タンク!! ブレスがくる!!」
「「「おう!」」」
前線に向けて、ファイアードラゴンキッズの炎ノ息(ファアーブレス)が襲いかかる。
5人いる悪魔のタンク達が大盾で防いでいく。
「ブレスが終わったら、戦士が前に、魔術師は水系魔法を、弓矢も水系で!」
「「「はい!!」」」
ファイアードラゴンキッズの炎ノ息が終わり、4人戦士達がファイアードラゴンキッズに向う。悪魔の魔術師達6人が各の水系魔法を攻撃。弓矢の4人も水系の弓スキルで攻撃を放つ。ファイアードラゴンは少しずつが確実にHPが、削る事に成功している。
陽葵を含めた4人の回復役である。
「回復役、タンクを回復させろ」
良太から指令が来る。
「わたしとアキちゃんが行くね!」
「行ってくる!」
「「了解!」」
みな、ゲームに慣れてきたか、動きもスムーズになり上手く連携し戦えている。
陽葵は回復役として後衛ではなく、戦士として前線で戦いたかった。
強敵であるファイアードラゴンキッズに対して、どれほど戦えるのか、試してみたかったのだ。
マウスを握る手も強くなる。だが、わかっている。
陽葵は戦士として戦う以上に蘇生役としての自分を求められている事に。
ゲーム開始して15分後。とうとう、出番が来てしまった。
「陽葵!! 杉山の悪魔が死んだ!!」
一気に緊張が走った。
「マジかよッ!!」
「杉山ッ!!」
生徒達はどよめく。とうとう、死人が出てしまったのだ。
「陽葵! 死者蘇生を!」
良太が陽葵を呼ぶ。
「わかってる!! 行くよ!!」
サマエルは急いで、前線にいるタンクの元に駆け寄る。
HPがゼロになった杉山くんの悪魔は仰向けで倒れている。
「俺達が陽葵の悪魔を守るッ!! 杉山の悪魔を助けてくれッ!!」
「わかった!!」
陽葵は蘇生スキルをクリック。すると、杉山の悪魔に天から黄金に輝く光とヒラヒラと羽が落ちてくる。すると、
杉山くんの悪魔が目が開き。HPが黄色いバーまで回復した。
「杉山くん!」
「ン?」
杉山くんの悪魔が立ち上がる。
「杉山、大丈夫か!?」
良太が言う。すると、杉山はハッとする。
「ああ、大丈夫だ!!」
「蘇生成功!!」
「「「おおお――ッ!!」」」
生徒達は大きな歓声を上げた。
「結菜ちゃん。杉山くんの悪魔くんを回復させよう!」
「うん!」
高橋と陽葵で杉山くんの悪魔を回復させる。
それから、倒れた生徒が3人いたが。どの生徒も蘇生を成功させる。
陽葵のおかげだ。生徒達は、恐怖を乗り越え、思う存分、戦えている。
ゲーム開始から40分後。
ファイアードラゴンキッズのHPは97%まで削れていた。
良太の悪魔が虹色に輝く。必殺ゲージが満タンになったのだ。
「《フェアリースノウストーム(妖精ノ雪嵐Ⅳ)》」
ファアードラゴンキッズの周囲に5体の妖精が出てくる、可愛い妖精が踊ると。
上空に雲が出来――大量の雪が降る――巨大な嵐となってファイアードラゴキッズを襲う。
ファイアードラゴンキッズのHPはみるみる減り、ゲージは空っぽになった。
「グオオオオオオオオ――!!」
ファイアードラゴンは断末魔をあげ倒れた。
「……」
「……」
「……」
5秒間の無言と沈黙。
「た、倒した……」
良太はつぶやいた。
「た、倒した!!」
「倒したぞ!!」
「……倒した!!」
そして、生徒達も声をあげる。
「「「やったあああああああ!」」」
生徒達は大声で歓声を上げる。
「俺達、倒したんだ!!」
「倒した!!」
「勝ったんだ!!」
見事、ゲームに勝利。
確かにHPが0にたった者もいる。だが、陽葵のおかげで全て蘇生に成功している。
実質、誰も犠牲者を出さずに勝利したのだ。
隣の人と抱き合う者。ガッツポーズを取る者。
手と手を合わせ、祈りを捧げた者。生徒達は思い思いに歓喜していた。
「静粛に! 生徒諸君、静かに教室に戻りなさい!」
実行委員が水を差す。
生徒達は、笑顔で口元をおさえ、喜びを噛みしめながら体育館から出る。
♦♦♦
教室に戻る。
担任の教師である闇与見先生は壇上に上がった。
「お前ら!!」
先生は叫んだ。
「「「はい!」」」
「よくやった!!」
先生は涙をこぼしながら言った。
「よっしゃ!!」
「やったね!!」
「いえ~い!!」
生徒達は笑顔ではしゃぐ。
「死人が出てもおかしくない、戦いだった。だが、七海陽葵のおかげで、蘇生され。復活できた。七海、ありがとう!」
「はい! 先生!」
「桐葉! よく頑張ったな! リーダーとして立派だったぞ!」
「当然です! 先生! 俺、優等生なので!」
桐葉はボケをかまし、生徒達はどっと笑う。
「てか、お前ら、カッコよかったぞ!」
「先生!」
「……先生」
陽葵は闇与見先生の男泣きを見て思う。厳しく悪魔な先生もちゃんと心があるんだって。
当たり前な事なのに、理解してなかった。
「お前ら、焼き肉屋に行くぞ! 全部、俺のおごりだ! 和牛でも何でも頼んでいいぞ!」
「「「いやったああああ――――ッ!!」」」
♦♦♦
冬のデスゲーム大会当日。
いよいよ、1年生最後のデスゲームが始まる。
「いいか、お前ら。緊張してブルブル震えるなよ」
教室の壇上で良太が真剣に言う。
「武者震いはダメか?」
「そうそう」
生徒達は言う。
「ダメだ。震えてる場合じゃないからな」
良太は腕を組み、冷静に言う。
生徒達は少なからず、不安と恐怖もあるものの、日々の猛特訓のおかげで、自信とやる気があった。
それから、時間となり。
1年C組は体育館に移動し始めた。
1限目 1年C組
2限目 1年A組
3限目 1年B組
どうやら、1限目に1年C組らしい。
体育館には夏のデスゲームのように35台以上のパソコン、机、椅子が配置されていた。
大型の冷暖房機が作動している。体育館はそこそこ暖かい。
陽葵の右側に良太、左側に竜堂がいる。
陽葵はホッカイロを手にしていた。ホッカイロは温かくて気持ちが良い。
「おい、俺にも貸せ」
「はいはい」
陽葵は良太に渡す。
1年C組は、夏の大会で結菜含め7人の生徒が亡くなっている。陽葵達は23人で戦わなくてはならない。それは他のクラスと比べると大きなハンデである。陽葵は重要な役割がある。それは死者蘇生役だ。その重責で緊張と不安でガチガチだ。
「なあ、陽葵」
「ん?」
「もし、一人も犠牲者も出さず、クラスが勝利したら、付き合わないか?」
「え?」
「俺、陽葵の事が好きなんだ」
「ちょ! 何で、ソレ、今言うの? おかしいでしょ??」
突然の告白に、陽葵は動揺し慌てて良太の顔を見る。
「小学生2年生の頃から好きなんだ。お前の事」
「ちょ! ソレ、本当なの??」
「本気だぞ?」
「……ッ!」
「返事は早めにしろよ? じゃないと、泣いちゃうからな?」
良太はわざとらしく、上目使いで言う。
「あのね、それって死亡フラグなんだよ? それ、言わないでよ!」
「今のお前なら、死亡フラグを折れるだろ?」
「もう、へし折ってやるわよ!」
良太のおかげで、緊張が解けた。手が小刻みに震えるが、これは武者震いである。
サマエルには結菜から授かった死者蘇生がある。絶対、使いこなしみせる。
♦♦♦
「――5秒前、4、3、2、1、スタート!」
そして、デスゲームが始まった。
制限時間60分。
戦闘フィールドはマグマであった。黒いゴツゴとした岩に赤くドロドロした溶岩。
画面ごしでも、暑く恐怖を感じさせる。オーケストラとロックが混じったBGMが、陽葵の緊張感と高揚感を煽る。フィールドの奥から、大きな存在が、しっかりとした足どりで現れた。彼女はゴクリと、唾を飲みこんだ。
「1年C組が戦うモンスターはファイアードラゴンキッズだ」
実行委員が敵の正体を明かす。
「マジかよ、ファイアードラゴンキッズって強いじゃないか!」
「確か、Bランクモンスターだぞ?」
「1年生が相手に、Bランクとか強すぎだろ!」
クラスメイト達は動揺し、困惑を隠せなかった。
陽葵も少なからず、動揺ししてた。ファイアードラゴンキッズはBランクモンスターだ。
1年生が相手するには強い。それにだ、1年の時、戦ったワイズはCランクモンスター。
単体としてCランク相当だが、途中からスケルトンウォリアーと上手く連携し始め、挑発無効を使って来た。実質、ワイズ達はBランク以上の強さをみせた。学校側は、デスゲーム大会では強めに設定している可能性が高い。
そうなると、おそらくだがファイアードラゴンキッズはB+、考えたくもないがAランク相当の力を持っている可能性だってある。
「良太、ワイズっているかな?」
インカムごしに言ってみた。
ワイズっている。というのは、先ほど話した、夏のデスゲーム大会で戦ったワイズを事である。ワイズはCランクモンスターだが、実質、Bランクモンスターの強さがあった。ファイアードラゴンキッズもBランクではなくB+あるいはA以上なのでは?
そんな造語を陽葵達は使っている。
「かもな」
良太は頷く。
生徒達の何人かが、ワイズっているというワードを聞いてピンときたのか。
「マジかよ、ワイズってるのか!?」
「ワイズの時と同じなら、B+以上かもな」
「まさか、Aランクじゃないよな?」
生徒達はヒナタの推測に気づき始めた。
「えええ! それって、倒せるの??」
「いや、無理だろ!」
「無理ゲーすぎる!!」
生徒達は、悲鳴と弱音を吐き始める。
「おい、お前ら。死んでも蘇るんだ。それでも、怖いか?」
良太はインカムを使って、あえて低い声で言った。
「そ、それは……」
「いや、怖いよ!」
「怖いって!」
「お前ら!! 他のクラスにはヒナタはいないんだぞ? 死んだら死ぬ。だが、俺達のクラスにはヒナタがいる! 死んでも蘇るンだぞ?」
良太の叱咤に生徒達はハッとする。
「た、確かにそうだな」
「ああ、そうだな。他のクラスと比べたら……」
「そうだよ、陽葵ちゃんがいる!」
「お前ら! 歯を食いしばって戦え! さすらえば陽葵、俺達の女神が救ってくれるぞ!」
「ちょ! 良太!」
ヒナタは吹き出しそうになったがぐっとこらえ、隣にいる良太を睨む。
「陽葵は女神だ! だよな? お前ら!!」
「「「おう!!」」」
「陽葵神がいる!! 勝てるよ!!」
「そうだよ。陽葵様がいる!!」
絶対おかしいと思う陽葵。だが、他の生徒達はノリノリだ。
「ちょっと! みんな!!」
あまりの羞恥心で、どこかに隠れたいが、デスゲーム大会だ、この場から逃げるわけにはいかない。
「よし、訓練通りで行く! 作戦Aで行け!」
「「「おう!」」」
♦♦♦
ゲーム開始してから、8分後。
「タンク!! ブレスがくる!!」
「「「おう!」」」
前線に向けて、ファイアードラゴンキッズの炎ノ息(ファアーブレス)が襲いかかる。
5人いる悪魔のタンク達が大盾で防いでいく。
「ブレスが終わったら、戦士が前に、魔術師は水系魔法を、弓矢も水系で!」
「「「はい!!」」」
ファイアードラゴンキッズの炎ノ息が終わり、4人戦士達がファイアードラゴンキッズに向う。悪魔の魔術師達6人が各の水系魔法を攻撃。弓矢の4人も水系の弓スキルで攻撃を放つ。ファイアードラゴンは少しずつが確実にHPが、削る事に成功している。
陽葵を含めた4人の回復役である。
「回復役、タンクを回復させろ」
良太から指令が来る。
「わたしとアキちゃんが行くね!」
「行ってくる!」
「「了解!」」
みな、ゲームに慣れてきたか、動きもスムーズになり上手く連携し戦えている。
陽葵は回復役として後衛ではなく、戦士として前線で戦いたかった。
強敵であるファイアードラゴンキッズに対して、どれほど戦えるのか、試してみたかったのだ。
マウスを握る手も強くなる。だが、わかっている。
陽葵は戦士として戦う以上に蘇生役としての自分を求められている事に。
ゲーム開始して15分後。とうとう、出番が来てしまった。
「陽葵!! 杉山の悪魔が死んだ!!」
一気に緊張が走った。
「マジかよッ!!」
「杉山ッ!!」
生徒達はどよめく。とうとう、死人が出てしまったのだ。
「陽葵! 死者蘇生を!」
良太が陽葵を呼ぶ。
「わかってる!! 行くよ!!」
サマエルは急いで、前線にいるタンクの元に駆け寄る。
HPがゼロになった杉山くんの悪魔は仰向けで倒れている。
「俺達が陽葵の悪魔を守るッ!! 杉山の悪魔を助けてくれッ!!」
「わかった!!」
陽葵は蘇生スキルをクリック。すると、杉山の悪魔に天から黄金に輝く光とヒラヒラと羽が落ちてくる。すると、
杉山くんの悪魔が目が開き。HPが黄色いバーまで回復した。
「杉山くん!」
「ン?」
杉山くんの悪魔が立ち上がる。
「杉山、大丈夫か!?」
良太が言う。すると、杉山はハッとする。
「ああ、大丈夫だ!!」
「蘇生成功!!」
「「「おおお――ッ!!」」」
生徒達は大きな歓声を上げた。
「結菜ちゃん。杉山くんの悪魔くんを回復させよう!」
「うん!」
高橋と陽葵で杉山くんの悪魔を回復させる。
それから、倒れた生徒が3人いたが。どの生徒も蘇生を成功させる。
陽葵のおかげだ。生徒達は、恐怖を乗り越え、思う存分、戦えている。
ゲーム開始から40分後。
ファイアードラゴンキッズのHPは97%まで削れていた。
良太の悪魔が虹色に輝く。必殺ゲージが満タンになったのだ。
「《フェアリースノウストーム(妖精ノ雪嵐Ⅳ)》」
ファアードラゴンキッズの周囲に5体の妖精が出てくる、可愛い妖精が踊ると。
上空に雲が出来――大量の雪が降る――巨大な嵐となってファイアードラゴキッズを襲う。
ファイアードラゴンキッズのHPはみるみる減り、ゲージは空っぽになった。
「グオオオオオオオオ――!!」
ファイアードラゴンは断末魔をあげ倒れた。
「……」
「……」
「……」
5秒間の無言と沈黙。
「た、倒した……」
良太はつぶやいた。
「た、倒した!!」
「倒したぞ!!」
「……倒した!!」
そして、生徒達も声をあげる。
「「「やったあああああああ!」」」
生徒達は大声で歓声を上げる。
「俺達、倒したんだ!!」
「倒した!!」
「勝ったんだ!!」
見事、ゲームに勝利。
確かにHPが0にたった者もいる。だが、陽葵のおかげで全て蘇生に成功している。
実質、誰も犠牲者を出さずに勝利したのだ。
隣の人と抱き合う者。ガッツポーズを取る者。
手と手を合わせ、祈りを捧げた者。生徒達は思い思いに歓喜していた。
「静粛に! 生徒諸君、静かに教室に戻りなさい!」
実行委員が水を差す。
生徒達は、笑顔で口元をおさえ、喜びを噛みしめながら体育館から出る。
♦♦♦
教室に戻る。
担任の教師である闇与見先生は壇上に上がった。
「お前ら!!」
先生は叫んだ。
「「「はい!」」」
「よくやった!!」
先生は涙をこぼしながら言った。
「よっしゃ!!」
「やったね!!」
「いえ~い!!」
生徒達は笑顔ではしゃぐ。
「死人が出てもおかしくない、戦いだった。だが、七海陽葵のおかげで、蘇生され。復活できた。七海、ありがとう!」
「はい! 先生!」
「桐葉! よく頑張ったな! リーダーとして立派だったぞ!」
「当然です! 先生! 俺、優等生なので!」
桐葉はボケをかまし、生徒達はどっと笑う。
「てか、お前ら、カッコよかったぞ!」
「先生!」
「……先生」
陽葵は闇与見先生の男泣きを見て思う。厳しく悪魔な先生もちゃんと心があるんだって。
当たり前な事なのに、理解してなかった。
「お前ら、焼き肉屋に行くぞ! 全部、俺のおごりだ! 和牛でも何でも頼んでいいぞ!」
「「「いやったああああ――――ッ!!」」」
♦♦♦