反復一回目
「help!」
今日から収容する実験体No.100は常にこの言葉を発していた。
特に何か知識を与えているわけではなく、知能も標準レベルのはずだが、収容室に入ってからずっとこの言葉を発していた。
そして、この実験体No.100は他にも不可解な行動をしていた。
実験体No.100は手の平をこちらに見せて、親指を曲げ、4本の指で親指を包んだり、
「メーデー、メーデー、メーデー。」
とこちらに叫んだりしている行動など、その他にも収容室の壁を引っ掻いて自身の爪をはがし、「SOS」と血で書いたりなどの異常行動があったが、観察班からこれらの行動が収容室にきて数時間でさらに激化してきたので我々は実験体No.100を傷つけさせないため、クッションが敷き詰められた収容室を用意し、実験体No.100を再収容した。
少々実験体No.100に異常はあったが、このまま実験は続行する。
実験体No.100の死亡が確認された。
死亡が確認されるまでの過程によると、食事を実験体No.100に与えに行った少女が実験体No.100の異変を感じ、触れた瞬間実験体No.100の首が落ちたらしい。当時同行していた観察班の証言によりその少女は死刑になった。
死刑執行前に、その少女に実験体No.100の遺骨をネズの樹の下に埋葬をさせ、その少女は自らの過ちを悔いながら死んでいった。
当研究所である現象が起こった。
午前10時に、
「僕は殺された、僕は殺された、僕を見る人、僕のご飯をくれる女の子に濡れ衣着せた、僕のご飯をくれる女の子、濡れ衣を着て、後悔しながら、死んでいった、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ。」
という美しい鳥のような歌声がスピーカーを通して流された。
施設の職員はもう一度その歌声を聞くため放送室に押し寄せたが、放送室は内側から鍵がかかっており、放送室の中から、
「もう一度この歌を聞きたいのなら花束一つと鳥籠、石臼を持ってきておくれ。」
という声が聞こえ、職員が花束と鳥籠、石臼を放送室の扉の前に置くと、また、
「僕は殺された、僕は殺された、僕を見る人、僕のご飯をくれる女の子に濡れ衣着せた、僕のご飯をくれる女の子、濡れ衣を着て、後悔しながら、死んでいった、キーウィット、キーウィット、僕はなんてきれいな鳥だ。」
という美しい歌声が聞こえたとの報告があった。
観察班の一人が石臼によって頭を潰され殺害された。
そして、死刑になった少女の墓に花束が供えられており、収容室に美しい鳥の入った鳥籠が置いてあった。
石臼、花束、鳥籠を職員が確認すると、3xxx年x月x日に放送室に置いた物と同じであることが判明した。
実験体No.100が生き返った。
記憶を脳内から引き出すと、死ぬ直前の記憶があり、放送室での現象も自分がやったとの発言をした。
再び実験体No.100の記憶を消し、収容室に再収容をした。
反復二回目を開始する。
実験体No.100はこれまでの実験体より非常に大人しく、知能指数を計ってみると、今回は今までよりも著しく知能が低いことが判明し、このままでは反復二回目の続行が困難であると判断し、観察班との接触を許可し、知能を平均値まで伸ばす試みをすることにした。
実験体No.100と観察班の興味深い音声記録が記録された。
音声記録を再生しますか?
はい◀ いいえ
実験体No.100 「僕、重い石臼で何かを潰した夢を見たんだ。」
観察班 「どんな夢だった?」
実験体No.100 「僕は空を飛んでどこかに花束を置いて、重い石臼で何かを潰して、最後に鳥籠に入った。」
観察班 「ヘぇ不思議な夢だね。」
実験体No.100 「なんでだろう。僕、君のことあんまり好きになれないや。」
観察班 「どうして?」
実験体No.100 「だって、君、僕にひどいことしたでしょ。」
観察班 「なんで?」
実験体No.100 「だって、君は僕の首を...」
観察班 「どうしたの?」
実験体No.100 「うわァァァァ!!くるな!クルな!クルナクルナクルナクルナ!人殺し!あっちいけ!人殺し!人殺し!」
この音声記録から反復一回目の記憶が残っていることが分かった。
このあと実験体No.100の精神状態を確認したところ、記憶を消去しても直らない異常が発生し、実験体No.100での実験の続行は不可能と判断し、実験体No.100を処分したので新たな実験体を我々は要請します。