参 外の世界

 玄様についていくと後宮入りの時とは違う門前で止まる。
「咲良様、そんなに緊張せずとも大丈夫ですよ。もうすぐ御者がいらっしゃいますので少しだけお待ちください」
 そう言う玄様はやっぱりゆっくりお話をしてくれている。しかも私の顔を見ながら話してくださっているからほとんどバレているのだろう。今までバレたことなかったのに、一瞬でわかっただなんてすごい人なのかも……と考え事をしていれば、玄様は遠くを指差した。
 その方向から来たのは、馬車のような感じだけど馬が引いてない御者だけが乗っているものだった。どうやって動かしているのだろう?
「驚かせてすみません、咲良様。初めてご覧になりますか? あれは蒸気自動車というものです。まだ帝が東宮だった時に異国に勉学のために行っていてそこで目にした蒸気自動車を持ち帰られましてね、そこでこの皇国でも研究して製造して、何度も改良を重ねてやっと販売し始めたんです」
 こんなのがあるだなんて知らなかった。後宮でもずっと閉じこもって過ごしていたし、情報は入ってこないから私が知っているわけがない。
 そんな話をしている間に自動車は目の前に停まり、御者が降りてきてドアを開けてくれた。馬車よりは低いため乗りやすかった。

 自動車に乗ってすぐに出発した。すると、玄様が抱っこしていた白虎さまがジィーッとこちらを見てきていて落ち着いてみるととっても可愛らしい。
「咲良様、華陽に到着まで半日かかります。なので休憩しながら行きましょう」
 玄様がこれからの日程を説明してくれたがよくわからないまま、外の景色を見ながら自動車に揺られた。