弍 お迎え


 下賜の話を聞いてすぐに帝から文が届いた。内容は、下賜される方のことが書かれていた。
 その方は皇国の西側の領地・華陽(かよう)の領主で皇国四神と呼ばれており、皇国の結界を張り代々守護神と呼ばれているらしい。
 だけど、そんな情報があっても私にはどうすることもできない。普通のお妃さまだったら調べるように言いつけるのだろうが私は第一聴こえないし誰も声をかけてくれないからそれもできなかった。私にできるのはここを出ていく準備だけなので荷物が少ない私にはすぐに終わってしまったのだけど。
 私は大人しくその日を待ち、当日の朝を迎えた。
 一人支度をして、華陽の領主様が迎えに来るらしく呼ばれるまで待機していると女官がやってきた。私が話せないことは皆知っていることなのでほとんど話すことなく、女官に連れられて三年間お世話になった私が与えられていた部屋を出た。

 女官に連れられて来たのは帝のいる髙御座と呼ばれる部屋へと入室した。そこには帝とここでは見たことのない男性がいた。この人が華陽の領主様なのだろうか……それに一緒に連れているのは白虎?
「お初にお目にかかります、咲良さま。私は、領主代理として参りました(げん)と申します。そして、こちらは白虎様」
 男性はまるで私が耳の聞こえないことを知っているのか、普段からゆっくりな話し方なのか、ゆっくりと話してくれた。そのおかげで全て聞き取れたけど、謎は深まる……どうしてこんなところに白虎様がいらっしゃるのだろうか。
 この国では、白虎様は神獣であると同時に見られれば幸せが舞い込んでくるとか言われているらしい。
「……華陽の屋敷では、白虎様のお世話がかりを私がしております。なのでついて来てしまって、先ほども帝には謝罪したのですが」
 あぁ、そうなのね。それにしても帝とこの方は仲がいいのだろうか……帝はクスクスと笑っているし、心を許しているみたいだ。
「そういうわけで、咲良さま。すぐにこちらを発とうと思いますが大丈夫でしょうか」
 私は首を縦に振った。
「ありがとうございます。……それでは、行きましょう」
 玄様は帝と話すと一度礼をして私を引き連れて高御座から下がった。