植木はクラウドファンディングで資金を集めた。大金とまでは行かなかったが、メンバーをボランティア活動に連れて行くための資金くらいは集まったのだ。
平日の夜にはダンスと歌のレッスンを始めた。だが、先生を雇う金はない。そこも、ボランティアを募った。ダンスの先生はアメリカ人のマーク・ブライエン。彼はプロのダンス講師だが、この、地球を救おうというプロジェクトに参加したいと言って、引き受けてくれたのだった。ついでに英語も教えられるということで、レッスン中は英語のみを使う事になった。本当は日本語も話せるマークだったが、メンバーの前では一切日本語を使わなかった。
「ほら、ムーン、ずれてるよ!」
と、英語で言う。ちなみに、メンバー7人の苗字から、マークは英語のニックネームを付けていた。月島流星はムーン、不知火篤はファイヤー、水沢涼はウォーター、木崎大樹はウッド、金森光輝はゴールド、土橋碧央はクレイ、日野瑠偉はサン。
「そうそう、いいよ。そこ、もっと力強く!」
マークが英語で叱咤激励をする、そして、みんな何を言われてもイエス、くらいしか言えない中、
「これでも頑張ってるんだ!この振り付け、速過ぎでしょう!できないよ!」
流星だけは1人、英語でまくし立てるのだった。
レッスンを何回かこなした後、マークが植木と内海にこっそりと、
「やばいよ、やばい。鳥肌立ったよ。ムーンはまあまあだけど、あとの6人はダンスのセンスがすごい!あの揃い方はびっくりだよ。植木、良かったね!」
と、興奮して話したのだった。
一方、歌の方は牧口健(まきぐち けん)という、カラオケ教室の講師が指導を引き受けてくれた。
「今の若い子はよく音楽を聴いているから、みんな歌が上手いね。感心したよ。金森くんのハイトーンボイスには驚いたな。土橋くんのハスキーボイスも痺れるね。それにしても、よく集めたねえ、あの子たち。才能あふれる上にイケメンだし。特に目がいい。何かを一生懸命やる目だよ。」
牧口がそう話してくれたので、植木はガッツポーズをした。
そして、隔週の土曜日には、ボランティア活動に参加した。最初に行ったのは、神奈川県の海岸のゴミ拾いである。
「おはよう!はい、これ着てね。」
メンバーが現れると、植木はそれぞれに黒いTシャツを渡した。
「おはようございます。これ、着るんですか?」
瑠偉は、渡された物と植木たちが着ているTシャツを見比べた。
「そうだよ。ほら、背中にグループ名が入っているよ!」
テンションの高い植木に、瑠偉は苦笑いをした。おそろいの服を着るのがちょっと恥ずかしい年頃である。
「え!Tシャツ作ったんですか?いいですねえ。あ、これが俺たちのグループ名なんですか?」
Tシャツを渡された涼がそう聞いた。
「そう、Save The Earth。いいだろう?」
植木がそう言うと、涼は何も言わずに微笑んだ。
なんだかんだ、7人のメンバーと植木、内海がおそろいのTシャツを着た。Tシャツの背中には、白抜きの文字で「Save The Earth」と書いてあり、その下に青い地球の写真がどーんとプリントしてあった。胸には背中の模様がそのまま小さくしたものがプリントしてある。
そして9人は、大きなビニール袋をそれぞれに持ち、ゴミ拾いを始めた。朝早いし、子供たちはみな眠そうだ。
「ほら、ちゃんとしろよ。こんなにゴミがあって、これが海に流れ出たら大変な事になるんだからな。」
流星だけは意識が高い。
「君たち、ただゴミを拾うだけじゃなくてさ、こうやってTシャツを着てグループの宣伝も兼ねているんだから、愛想良くしないと。いつSNSで写真が出回るか分からないぞ。」
内海がそう言って、みんなを鼓舞したが、
「SNSって言ったって。ここに参加している人って、お年寄りばっかりじゃん。望み薄そうだよ。」
と、悪態をつく篤。だがその直後、近くを通りかかった若い女子3人が、こちらをしきりに見ているのが目についた。すかさず、植木がその女子たちの近くへ寄って行った。
「あの、このTシャツってどこの団体さんですか?」
女の子がそう聞いてきた。
「Save The Earthって言って、うちのアイドルなんだよ。」
植木が応える。
「えー!アイドルですか?へえ。」
女子たちは興味津々である。
「写真撮ってもOKだよ。」
植木はそう言うと、近くにいるメンバーを手招きした。嬉しいのと照れくさいのを精一杯隠し、篤と碧央と、碧央に引っ張られた瑠偉が植木の所へ走って行った。
「じゃあ、撮りますね!」
女子がキャピキャピしながらスマホを向ける。篤と碧央と瑠偉は、ポーズを取った。
「これ、インスタに載せちゃおう。」
「私もー!」
「ありがとうございました!」
女子たちは去って行った。
「さあ、どんどん拾ってこー!」
テンションの上がった篤だった。
その後も、時々通りすがりの人に見られ、写真を撮られた。おそろいの服を着たイケメンが7人もいるのだから、目立つのだ。最後には、ボランティア活動を一緒にしていたおばちゃんたちにまで、
「アイドルなの?そうなのー。可愛い子たちだと思ったのよー。」
などと興味を持ってもらったのだった。
「俺たち、まだアイドルだって言えないんじゃない?」
大樹がそう言って心配したが、
「君たちはもう、れっきとしたアイドルだよ。そうだな、求められたらすぐにパフォーマンスを披露できるように、1曲作っておかないといけないな。」
と、植木に言われたのだった。
平日の夜にはダンスと歌のレッスンを始めた。だが、先生を雇う金はない。そこも、ボランティアを募った。ダンスの先生はアメリカ人のマーク・ブライエン。彼はプロのダンス講師だが、この、地球を救おうというプロジェクトに参加したいと言って、引き受けてくれたのだった。ついでに英語も教えられるということで、レッスン中は英語のみを使う事になった。本当は日本語も話せるマークだったが、メンバーの前では一切日本語を使わなかった。
「ほら、ムーン、ずれてるよ!」
と、英語で言う。ちなみに、メンバー7人の苗字から、マークは英語のニックネームを付けていた。月島流星はムーン、不知火篤はファイヤー、水沢涼はウォーター、木崎大樹はウッド、金森光輝はゴールド、土橋碧央はクレイ、日野瑠偉はサン。
「そうそう、いいよ。そこ、もっと力強く!」
マークが英語で叱咤激励をする、そして、みんな何を言われてもイエス、くらいしか言えない中、
「これでも頑張ってるんだ!この振り付け、速過ぎでしょう!できないよ!」
流星だけは1人、英語でまくし立てるのだった。
レッスンを何回かこなした後、マークが植木と内海にこっそりと、
「やばいよ、やばい。鳥肌立ったよ。ムーンはまあまあだけど、あとの6人はダンスのセンスがすごい!あの揃い方はびっくりだよ。植木、良かったね!」
と、興奮して話したのだった。
一方、歌の方は牧口健(まきぐち けん)という、カラオケ教室の講師が指導を引き受けてくれた。
「今の若い子はよく音楽を聴いているから、みんな歌が上手いね。感心したよ。金森くんのハイトーンボイスには驚いたな。土橋くんのハスキーボイスも痺れるね。それにしても、よく集めたねえ、あの子たち。才能あふれる上にイケメンだし。特に目がいい。何かを一生懸命やる目だよ。」
牧口がそう話してくれたので、植木はガッツポーズをした。
そして、隔週の土曜日には、ボランティア活動に参加した。最初に行ったのは、神奈川県の海岸のゴミ拾いである。
「おはよう!はい、これ着てね。」
メンバーが現れると、植木はそれぞれに黒いTシャツを渡した。
「おはようございます。これ、着るんですか?」
瑠偉は、渡された物と植木たちが着ているTシャツを見比べた。
「そうだよ。ほら、背中にグループ名が入っているよ!」
テンションの高い植木に、瑠偉は苦笑いをした。おそろいの服を着るのがちょっと恥ずかしい年頃である。
「え!Tシャツ作ったんですか?いいですねえ。あ、これが俺たちのグループ名なんですか?」
Tシャツを渡された涼がそう聞いた。
「そう、Save The Earth。いいだろう?」
植木がそう言うと、涼は何も言わずに微笑んだ。
なんだかんだ、7人のメンバーと植木、内海がおそろいのTシャツを着た。Tシャツの背中には、白抜きの文字で「Save The Earth」と書いてあり、その下に青い地球の写真がどーんとプリントしてあった。胸には背中の模様がそのまま小さくしたものがプリントしてある。
そして9人は、大きなビニール袋をそれぞれに持ち、ゴミ拾いを始めた。朝早いし、子供たちはみな眠そうだ。
「ほら、ちゃんとしろよ。こんなにゴミがあって、これが海に流れ出たら大変な事になるんだからな。」
流星だけは意識が高い。
「君たち、ただゴミを拾うだけじゃなくてさ、こうやってTシャツを着てグループの宣伝も兼ねているんだから、愛想良くしないと。いつSNSで写真が出回るか分からないぞ。」
内海がそう言って、みんなを鼓舞したが、
「SNSって言ったって。ここに参加している人って、お年寄りばっかりじゃん。望み薄そうだよ。」
と、悪態をつく篤。だがその直後、近くを通りかかった若い女子3人が、こちらをしきりに見ているのが目についた。すかさず、植木がその女子たちの近くへ寄って行った。
「あの、このTシャツってどこの団体さんですか?」
女の子がそう聞いてきた。
「Save The Earthって言って、うちのアイドルなんだよ。」
植木が応える。
「えー!アイドルですか?へえ。」
女子たちは興味津々である。
「写真撮ってもOKだよ。」
植木はそう言うと、近くにいるメンバーを手招きした。嬉しいのと照れくさいのを精一杯隠し、篤と碧央と、碧央に引っ張られた瑠偉が植木の所へ走って行った。
「じゃあ、撮りますね!」
女子がキャピキャピしながらスマホを向ける。篤と碧央と瑠偉は、ポーズを取った。
「これ、インスタに載せちゃおう。」
「私もー!」
「ありがとうございました!」
女子たちは去って行った。
「さあ、どんどん拾ってこー!」
テンションの上がった篤だった。
その後も、時々通りすがりの人に見られ、写真を撮られた。おそろいの服を着たイケメンが7人もいるのだから、目立つのだ。最後には、ボランティア活動を一緒にしていたおばちゃんたちにまで、
「アイドルなの?そうなのー。可愛い子たちだと思ったのよー。」
などと興味を持ってもらったのだった。
「俺たち、まだアイドルだって言えないんじゃない?」
大樹がそう言って心配したが、
「君たちはもう、れっきとしたアイドルだよ。そうだな、求められたらすぐにパフォーマンスを披露できるように、1曲作っておかないといけないな。」
と、植木に言われたのだった。