「どのくらい経ったかな?」
両膝を抱えたまま、光輝がポツンと言った。
「分かんねえよ。時計持ってねえし。」
篤が応えた。
「ステージに出るところだったもんな。時計どころか財布もスマホも何も持ってないよ。」
流星がそう言い、みんなはため息をついた。誰一人、ポケットに何かを入れている者はいなかった。激しいダンスを踊るわけだし、途中で素早く衣装を替えるので、いちいちポケットに所持品を入れているわけがない。イヤホンとヘッドマイクは装着していたが、既に遠く離れてしまっているので、通信不可能だ。
「でも、みんな一緒で良かった。俺独りだったら不安なんてもんじゃなかったよ。」
涼が少し微笑んで言った。
「そうだよね。もしドッキリだったとしても、7人で騙されるならいいよね。」
光輝も少し微笑んでそう言った。STEは、グループ結成当時に誓い合った約束事がある。それは、決してお互いを騙さない事。誰に、どんなにお願いされようと、メンバー内でドッキリを仕掛けるのもNG。そうしないと、お互いを信頼できないから。言い合いをしたり、時には取っ組み合いの喧嘩をした事もあるが、騙したり、欺いたりした事はない。みな、それだけは胸を張って言えた。だから、お互いを信じ合っていた。
「最近忙しかったから、こうやって7人で集まって話すのって、久しぶりだよね。」
碧央がポツリと言った。
「そうだな。」
大樹が応える。
「結成当時はよく話し合ったよなあ。口喧嘩はしょっちゅうだったし。ははは。」
流星が笑って言った。
「でも、最後はいつも仲直りしてたじゃん。俺、ハラハラしてたけど、最後にハグし合ってるのを見て、いつも安心してたんだよ。」
一番年下の瑠偉が言った。
「へえ、瑠偉、ハラハラしてたんだ。」
篤が言うと、
「まだ子供だったからね。」
と、瑠偉が言った。
「結成当時かあ、懐かしいなあ。」
碧央がそう言うと、7人の頭の中は、7年前へと飛んだ。
7年前、STEを作った立役者は、社長の植木直哉(うえき なおや)である。植木は学生時代、青年海外協力隊に参加し、帰国して大学を卒業すると、NPO法人に就職。様々なボランティア活動をした。当時はオゾン層の破壊や砂漠の拡大、エルニーニョ現象などが問題になり始めた頃だった。植木は、環境破壊と地球温暖化、それに伴う人々の飢餓や疫病の蔓延など、多くの課題を憂いていた。その後も海洋プラスチック問題や山火事、水害の多発など、問題は山積み。それなのに……。
「先進国はこの地球の問題に無頓着過ぎる!とくにこの日本だ!日本人の意識は低すぎる!」
と、植木は憤りを禁じ得なかった。
そこで、同志である内海彰吾(うつみ しょうご)と相談し合った。
「どうしたら、日本人の意識を高められるだろう。」
「まずは、問題に気づいてもらう事だろうな。」
内海が言った。
「よく、アメリカの有名俳優なんかがボランティア活動をすると、話題にはなるよな。だが、日本の著名人は国内の被災地には出向いても、もっとグローバルな環境問題にまでは触れてくれない。」
植木が言うと、
「若い人たちに影響力のある人が、発信してくれるといいんだけどなあ。」
内海がそう言って、腕組みをして考えて込んだ。すると植木がハッとして、
「そうだ、アイドルだよ!若者に人気のあるアイドルが発信すれば、若者が耳を傾けるし、それ以上に、行動に移してくれる!」
と言った。
「だが、どこのアイドルに頼むんだ?何をしてもらうにも金がかかるぞ。」
当然、無理だ。内海は暗にそう言った。
「だから、アイドルを作っちまえばいいんだよ。俺たちが、これから作るんだ。」
植木はそう言って笑ったが、内海はぽかんとした顔で、ただその顔を見たのだった。
両膝を抱えたまま、光輝がポツンと言った。
「分かんねえよ。時計持ってねえし。」
篤が応えた。
「ステージに出るところだったもんな。時計どころか財布もスマホも何も持ってないよ。」
流星がそう言い、みんなはため息をついた。誰一人、ポケットに何かを入れている者はいなかった。激しいダンスを踊るわけだし、途中で素早く衣装を替えるので、いちいちポケットに所持品を入れているわけがない。イヤホンとヘッドマイクは装着していたが、既に遠く離れてしまっているので、通信不可能だ。
「でも、みんな一緒で良かった。俺独りだったら不安なんてもんじゃなかったよ。」
涼が少し微笑んで言った。
「そうだよね。もしドッキリだったとしても、7人で騙されるならいいよね。」
光輝も少し微笑んでそう言った。STEは、グループ結成当時に誓い合った約束事がある。それは、決してお互いを騙さない事。誰に、どんなにお願いされようと、メンバー内でドッキリを仕掛けるのもNG。そうしないと、お互いを信頼できないから。言い合いをしたり、時には取っ組み合いの喧嘩をした事もあるが、騙したり、欺いたりした事はない。みな、それだけは胸を張って言えた。だから、お互いを信じ合っていた。
「最近忙しかったから、こうやって7人で集まって話すのって、久しぶりだよね。」
碧央がポツリと言った。
「そうだな。」
大樹が応える。
「結成当時はよく話し合ったよなあ。口喧嘩はしょっちゅうだったし。ははは。」
流星が笑って言った。
「でも、最後はいつも仲直りしてたじゃん。俺、ハラハラしてたけど、最後にハグし合ってるのを見て、いつも安心してたんだよ。」
一番年下の瑠偉が言った。
「へえ、瑠偉、ハラハラしてたんだ。」
篤が言うと、
「まだ子供だったからね。」
と、瑠偉が言った。
「結成当時かあ、懐かしいなあ。」
碧央がそう言うと、7人の頭の中は、7年前へと飛んだ。
7年前、STEを作った立役者は、社長の植木直哉(うえき なおや)である。植木は学生時代、青年海外協力隊に参加し、帰国して大学を卒業すると、NPO法人に就職。様々なボランティア活動をした。当時はオゾン層の破壊や砂漠の拡大、エルニーニョ現象などが問題になり始めた頃だった。植木は、環境破壊と地球温暖化、それに伴う人々の飢餓や疫病の蔓延など、多くの課題を憂いていた。その後も海洋プラスチック問題や山火事、水害の多発など、問題は山積み。それなのに……。
「先進国はこの地球の問題に無頓着過ぎる!とくにこの日本だ!日本人の意識は低すぎる!」
と、植木は憤りを禁じ得なかった。
そこで、同志である内海彰吾(うつみ しょうご)と相談し合った。
「どうしたら、日本人の意識を高められるだろう。」
「まずは、問題に気づいてもらう事だろうな。」
内海が言った。
「よく、アメリカの有名俳優なんかがボランティア活動をすると、話題にはなるよな。だが、日本の著名人は国内の被災地には出向いても、もっとグローバルな環境問題にまでは触れてくれない。」
植木が言うと、
「若い人たちに影響力のある人が、発信してくれるといいんだけどなあ。」
内海がそう言って、腕組みをして考えて込んだ。すると植木がハッとして、
「そうだ、アイドルだよ!若者に人気のあるアイドルが発信すれば、若者が耳を傾けるし、それ以上に、行動に移してくれる!」
と言った。
「だが、どこのアイドルに頼むんだ?何をしてもらうにも金がかかるぞ。」
当然、無理だ。内海は暗にそう言った。
「だから、アイドルを作っちまえばいいんだよ。俺たちが、これから作るんだ。」
植木はそう言って笑ったが、内海はぽかんとした顔で、ただその顔を見たのだった。