今日も言葉の海を泳ぐ。

一時は世間をお騒がせしていた君のこと、心配していたんだ。
少しずつ回復していると知って、良かったと心を撫でおろす。
秋になるとピカピカに輝きを放つ君に、さらに心を奪われる。

湯気を纏って登場する君は、最強だ。
まさに死闘を繰り広げた末に、勝利の栄光を手にしたボクサーなみの熱気。
そこに、拍手喝采が響き渡る。
その光景に見慣れてしまったけど、君がいなくなった時の喪失感を考えるだけで、
胸が痛くなる。

君がいないと、私だめみたい。
だめみたいなの私だけではないみたい。
たまに、浮気してしまうけど、気づいたんだ。
やっぱり、君が一番だと。
君は仲間を作るのが上手だ。君には何人の相方がいるんだろう。
手の上で転がされて、相手と共に抱きしめられる君。
そこで待ってて、放置してしまい、君を怒らせてしまうこともある。
本当にごめん。

繰り広げられる朝一緒に過ごす相手にふさわしいのは、君かあいつか論争。
私は君のことを推している。
「あぁ、遅刻する~」と一緒に駆け出し、運命の出会いを果たすことは出来ないけど
そんなこと気にするな。
でも、最近、君の要素を加えたあいつの存在も悪くないと思い始めたんだ。
たまには、あいつと手を取り合っても悪くないのではないかと。

「ありがとう」という言葉だけでは足りないほど
君に伝えたいことがまだ沢山ある。
一途に思うことは出来ないけれど、
君のこと嫌いにはなれない。

身勝手なのはわかっている。
でも、許してほしい。
これからもよろしくね。

これは、「日本の食卓」という舞台を支えてきた変幻自在の立役者の君に送る言葉。
色なき風と共に運ばれてくる甘い匂いに
ふと、手招きされる

澄んだ青の中 静かに輝く太陽
君は落ち葉の毛布にくるまり
銀色のパジャマをまとって 眠っていた

寝ていた所 起こしてごめん

じんわりと伝わるぬくもり
手から伝わり 心の奥まで
沁みていく

口に運ぶと 優しさがふんわり広がっていく
そして 焦げた皮の香ばしさが
少しだけほろ苦くて
秋の深さをそっと教えてくれる

幸せという名の毛布で包んでくれた君に
「ありがとう」とそっと別れを告げて
前に向かって
今日も歩いていく
そのままの君も美しいけど
真っ赤に染まった君をそっと連れ出し
太陽の光に照らしたくなる

「行っておいで」と背中をそっと押し
過保護な私は小さな窓から見守る
日光浴を受けて、君がゆっくり伸びをするたび
思わず笑みがこぼれる

鼻腔をかすめる甘酸っぱい香りで目が覚め
思わず話しかけたくて窓を開けたくなるけど
心を鬼にして見守る
ふと気づけば窓越しに映る自分の頬も
君に染められてほんのり赤くなる

君はゆっくりと 熱を帯び
蜜が溢れて黄金色に輝く
その姿に心が躍る

ひとくち頬張れば
ほっとする優しさ広がり
温かな甘さが心の奥まで沁みわたる
ほんのりと甘さ残るその余韻に、ため息がもれる

今日も一日がんばった自分に
ご褒美としてバニラアイスのせちゃおう
冷たい空気が夜を纏う
カーテンを閉めて、席に着く
テーブルの中心に置かれた湯気を纏って登場した君に
歓声が湧き上がる

今日のメンバーは誰かなと
熱気に満ちたグラウンドへ視線を注ぐ

キムチ監督の指揮のもと 
野菜、きのこ、お肉、豆腐が勢揃い
サポーターの応援に応え、やる気に満ちている

私の注目選手は豆腐
サポーターや仲間の声で頬を赤く染める
思わず心がやけどしてしまいそうだ

試合は終盤戦へ
ここで とっておきの選手を投入
今日選ばれたのは…ごはん選手!
うどん、ラーメン選手はまた次の試合で

仲間に迎え入れられ、さらなる熱気に包まれる

箸で選手たちにそっと溶き卵を差し入れる
会場に試合終了のホイッスルが響き渡る

そして、熱戦を終えて颯爽と会場を後にする君
食卓に拍手喝采が鳴り響く
気づいたら頼んでしまっている君
君の姿を見つけると 安心する自分がいる
それはまさに好きということなのか
そうかもしれない

キャベツの千切りに寝そべっている君
タマネギ、たまにピーマンと肩を組んだりして
甘辛いタレに包まれている君たちが
なぜだか、とても頼もしい

ごはんを引き寄せるようなその魅力、
お味噌汁までも参加して
心が躍り出しそうになる

薄切りの豚肉が熱々のフライパンで
熱狂的なフラメンコを踊っていたのだと思うと
胸がじんわりと熱くなる

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