「みんな揃ってるかー? って那賀野か!?」
 声をかけたのは最後に到着した課長だった。着物姿の紗都に目を丸くしている。

「いや、見違えた。着物が似合うんだなー」
「ありがとうございます」
 紗都は照れながら頭を下げた。さきほどのやりとりを知ってか知らずか、課長は続けて言う。

「今度は全員着物で新年会やるか!」
 えー、とあちこちから声が上がる。
「嫌です」
「課長、権力を振りかざしちゃだめですよ」
「冗談だよ、冗談!」
 抗議の声に笑いながら答え、課長は座敷に上がる。

 課長が場の空気を変えてくれたことでようやく紗都はほっとした。
「行きましょっか」
「……うん」
 千与加に言われ、紗都は彼女と並んで席に着いた。



 明けて月曜日はクリスマスだった。
 出勤した紗都は、席で眠そうにパソコンを立ち上げている千与加を見つけ、そばに寄る。

「おはよ」
「おはよーございまーす」
 千与加がだるそうに答える。