金井は推しキャラや、作品はわからないが、クオリティが高いレイヤーの撮影に一通り満足した。そして、更衣室で着替えを済ませてキャリーを引く。
まだまだイベント終了まで時間があるので、更衣室は空いており、快適だった。
参加者のコスプレイヤーは、夢中で撮影をしている。本当はまだこの場所にいたいのに、帰らなければならない。後ろ髪を引かれる思いだ。
学校で出された課題を残したまま、このイベントにやってきたのである。
学業を疎かにしたら、いくらコスプレ趣味に理解がある家族であってもコスプレ禁止と言うかもしれない。
欲望を振りきるように、わざと人通りが少ない場所を通り、駅に向かうことにした。
人の声はすっかり聞こえなくなり、木々の音がざわざわとこだまする。ようやく振りきれたとひと安心して、ほっと胸を撫で下ろす。次はちゃんと課題を終わらせてから来ようと誓った。
「あ、あの、すみません」
背後から蚊の鳴くような声が聞こえた。
振り向くと知らないおじさんがいた。なよなよ、もぞもぞという表現が相応しいか、頼りなさげな雰囲気をしていた。
「はい?」
あたりを見渡して自分しかいないことを確認する。もし、自分じゃなかったら恥ずかしいからだ。
「あの、この辺で落とし物をしてしまって……大切なものなので一緒に探して貰えませんか?」
あたりを見渡せば、ぽつぽつと人がいるが、つかれきったスーツの人や、スマホの画面に夢中な人や、カップルがいちゃついており、金井でも声をかけるのは戸惑いそうな雰囲気を放っている。
本音を言えば、誘惑を振り切ったから、さっさと家に帰りたい。だが、このおじさんは勇気を振り絞って声をかけてきたのかもしれない。
「ほ、ほんの少しの時間……なら」
「あぁ、ありがとう」
おじさんは神に出会ったかのように、手を合わせ拝むように、明るい笑顔を見せた。
おじさんがなくしたのは、嫁さんの写真らしい。カバンから財布を出したとき、風に煽られて木々の間に入っていってしまったようだ。
いくら昼間でも、影になっていると薄暗くて気味が悪い。虫も飛んでいるし、早く切り上げたくなった。
がさりと草を踏む音が聞こえた。見つかったのかと思い、振り向こうとすると、金井は転んだ。
否、転んだのではなく、転ばされたのだ。
たよりなさげなおじさんが、荒く息を切らし、金井にのし掛かっているのだ。
「な、なに……! んぐっ」
抵抗しようとするも、体格差がそれを許さない。手のひらで口を塞がれてしまった。
「んぐーっ!」
「おかしなことをしたら……わかるな?」
これは痴漢だ!
叫びたくても、口を塞がれ、叫べない。恐怖から全身に寒い物が走る。
誰か、助けて!
心の声だけは大きくとも、誰にも聞こえない。ただただ頭の中で響くのみ。
「きみのミハルちゃんのコスプレかわいかったよぉ……! 男の子なんだね。こんなことされたいから女の子の格好していたのかな?」
デュフデュフという音が相応しい声が金井の耳を犯す。コスプレ中に目をつけられていたのだろう。
汗ばんだ生暖かい手で身体をまさぐられる。震えが止まらない。気持ち悪い。抵抗出来ない貧弱な体を持つ自分が恨めしい。
「おっ、バズりネタはっけ~ん」
軽くさわやかな声が聞こえた。
「何だよてめぇ」
おじさんのドスのきいた声が金井の頭上で響く。
「あまり下手な事を言わないように。眉間にしわがよったの映ってるよ! ばっちりね」
「! 撮りやがったな!」
「SNSに晒したらおっさんの人生台無しだね!」
楽しそうに弾んだ声で男は喋る。
「ざけんな! 消せ!」
おじさんが更に大きな声を出すと同時に体が軽くなった。呼吸も楽になり、ほっと一安心した。
何が起こったのか、腰を抜かしたまま仰向けになると、すさまじい光景が視界に入った。
おじさんが振り上げた拳を優雅にかわし、さわやか声の青年の長い脚がおじさんを蹴り上げた。逆光だったが、シルエットだけでもとてもかっこよかった。まるで戦隊もののヒーローだ。
「ちくしょう!」
反撃にあったおじさんは逃げて行った。
「次こんなことをしたら、拡散するからな!」
追い打ちをかけるように、さわやか声は言葉で釘を刺した。
「立てる?」
さわやか声が手を差し伸べてきた。木々生い茂る中で顔が見えない。だが、よくよく声を聞いてみれば、全く初めて聞く声ではない気がする。
手を引かれ、太陽の下に出る。
そこにはクラスの一軍。陽キャの小沢颯真(おざわそうま)がいた。
「あ、同じクラスの……えぇと、ちょいまち。今思い出す。カネダくん!」
「金井です」
「あぁ、ごめんごめん。で、大丈夫?」
「ありがとう」
小沢はツーブロックのヘアスタイルをワックスでバッチリ決めており、耳には小ぶりなピアスをつけている。顔のパーツはバランスよく配置されており、まるで人形のような美しさを持っている。ついじいっと見つめてしまった。
ベンチにつれていかれ、座らされる。小沢はボディバッグからウェットティッシュを取り出し、金井の顔をごしごしと拭いてくれた。ちょっと力強く、痛かったが、彼の女子力の高さに驚いた。
「警察いく?」
その言葉で現実に引き戻された。
「あ、ううん。家帰って課題やらなきゃ」
「あー、あれね。出さなきゃ面倒だよね。じゃ、駅まで送るよ」
一緒になって歩き出すが、無言が何となく気まずい。
小沢も大きなキャリーを引いており、同じイベントに参加していたのだろうか。仲間だったらいいな、なんて期待をこめて聞いてみた。
「小沢くんもコスプレしてたの?」
小沢は金井をじぃっと見つめた。目力のある視線が、金井の胸を勢いよく撃ち抜く。
そして、ニヤリと歯を見せると、楽しそうに笑った。
「まぁ、そんなところだ」
やった! 金井の胸の中で閃光が走った。こんな身近に同じ趣味の人がいたなんて。
それに、優しいときた。仲良くなれたらいいなぁ。色んなポジティブな感情が、胸の中を短距離走のごとく走り抜けていく。一切運動をしてないのにも関わらず、興奮で胸がドキドキする。少しでも気を抜いたら、さっきの痴漢みたいに荒い呼吸をしそうだ。
高鳴る胸と、呼吸をどうにかこうにか押し殺し、トドメに、唇を噛みしめる。落ち着けよ、自分。ゆっくり口を開くと、
「何のコスプレしたの?」
やや早口で言った。
「ヤミくんは今日も憂鬱のヤミくん女装メイドバージョン」
小沢が女装だって? コスプレイヤーだったのも意外だし、何より女装もするなんて急に親近感が沸いた。
「わ! 写真見たいなぁ」
普段はロクにしゃべれないくせに、同じ趣味だと知ると、口に油を指したかのようによく動く。
「カメラ、キャリーの中」
小沢はキャリーを指差した。金井が持っているキャリーより一回りは大きく、布の量が多いメイド服も、ウィッグも、一眼レフを入れても、まだ余裕がありそうだ。
「そっか……」
少し残念に思ったが、SNSのアカウントを教えて貰えれば、後でゆっくり見られるだろう。それを聞こうとして口を開いたら、小沢が先に口を開いた。
「金井のコスプレ写真みたいんだけど」
「あ、うん。いいよ」
金井は、自撮り棒で自分のコスプレ写真を撮っていたのがあったため、スマホを取り出すと、ミハルのコスプレ写真を見せた。
「おぉ……可愛いな」
まじまじと見つめられると恥ずかしくなり、スマホをポケットにしまった。
「金井は衣装手作りなの?」
「うん。手作りだよ。小沢くんは?」
「俺は既製品だ。以前、作ろうと思ったら見事にゴミが出来上がった。百均の布だったからまぁ痛くもかゆくもなかったけど。ところで、金井は女装レイヤーなの?」
「何でもするけど、今の推しが女の子だから、女装が多いかな」
金井は思った。百均の布なんて衣装を作れたものではない。だって、布が小さすぎる。でも、スカートを膨らませるためにはくパニエっぽいものを百均の材料だけで作っている人もいるし、それで作ってみようと思ったのだろうか?
「ふうん。俺のもそうだ」
俺のも? 何だか引っかかる言い方だが、たまたま噛んだにすぎないだろう。それより、もっとお話がしたい。
「ウィッグメーカーはどこがお気に入り?」
無難な質問を投げかけた。
「セイファーとなんだらけ」
「なんだらけのウィッグ買ったことないや。今度買ってみようかな。確か秋葉原と中野と池袋と渋谷に店舗あったよね? それにしても、セイファーってかなり昔に倒産したんじゃ?」
元コスプレイヤーの母親といにしえのコスプレ界隈の話をしていた時、「セイファーってもうないのね……安くてありがたいメーカーだったのよ」としんみり話していた。
「そうだな。中古屋で手に入れたものだけど、なかなか良い物だった」
「……なるほど」
以前、興味本位で調べてみた事があるが、ウィッグメーカーのセイファーは検索エンジンを利用しても、今では詳細が出てこないレベルの古いメーカーだ。なんだらけはアニメ系の商品を買い取り、中古販売する店である。事業のひとつに、新品でコスプレ用ウィッグを販売しているが、あまりメジャーではない気がする。だが、何かひっかかる。この二つのメーカーには何か共通点があったような……。思い出せない。
何はともあれ、小沢は本当にコスプレが大好きなんだなという収穫を得た。
雑談をしているうちに、駅についた。
小沢は金井と同じ路線だったようで、途中で降りていった。
遠い存在だと思っていた人が同じ趣味で、胸の高鳴りが収まらない金井であった。
まだまだイベント終了まで時間があるので、更衣室は空いており、快適だった。
参加者のコスプレイヤーは、夢中で撮影をしている。本当はまだこの場所にいたいのに、帰らなければならない。後ろ髪を引かれる思いだ。
学校で出された課題を残したまま、このイベントにやってきたのである。
学業を疎かにしたら、いくらコスプレ趣味に理解がある家族であってもコスプレ禁止と言うかもしれない。
欲望を振りきるように、わざと人通りが少ない場所を通り、駅に向かうことにした。
人の声はすっかり聞こえなくなり、木々の音がざわざわとこだまする。ようやく振りきれたとひと安心して、ほっと胸を撫で下ろす。次はちゃんと課題を終わらせてから来ようと誓った。
「あ、あの、すみません」
背後から蚊の鳴くような声が聞こえた。
振り向くと知らないおじさんがいた。なよなよ、もぞもぞという表現が相応しいか、頼りなさげな雰囲気をしていた。
「はい?」
あたりを見渡して自分しかいないことを確認する。もし、自分じゃなかったら恥ずかしいからだ。
「あの、この辺で落とし物をしてしまって……大切なものなので一緒に探して貰えませんか?」
あたりを見渡せば、ぽつぽつと人がいるが、つかれきったスーツの人や、スマホの画面に夢中な人や、カップルがいちゃついており、金井でも声をかけるのは戸惑いそうな雰囲気を放っている。
本音を言えば、誘惑を振り切ったから、さっさと家に帰りたい。だが、このおじさんは勇気を振り絞って声をかけてきたのかもしれない。
「ほ、ほんの少しの時間……なら」
「あぁ、ありがとう」
おじさんは神に出会ったかのように、手を合わせ拝むように、明るい笑顔を見せた。
おじさんがなくしたのは、嫁さんの写真らしい。カバンから財布を出したとき、風に煽られて木々の間に入っていってしまったようだ。
いくら昼間でも、影になっていると薄暗くて気味が悪い。虫も飛んでいるし、早く切り上げたくなった。
がさりと草を踏む音が聞こえた。見つかったのかと思い、振り向こうとすると、金井は転んだ。
否、転んだのではなく、転ばされたのだ。
たよりなさげなおじさんが、荒く息を切らし、金井にのし掛かっているのだ。
「な、なに……! んぐっ」
抵抗しようとするも、体格差がそれを許さない。手のひらで口を塞がれてしまった。
「んぐーっ!」
「おかしなことをしたら……わかるな?」
これは痴漢だ!
叫びたくても、口を塞がれ、叫べない。恐怖から全身に寒い物が走る。
誰か、助けて!
心の声だけは大きくとも、誰にも聞こえない。ただただ頭の中で響くのみ。
「きみのミハルちゃんのコスプレかわいかったよぉ……! 男の子なんだね。こんなことされたいから女の子の格好していたのかな?」
デュフデュフという音が相応しい声が金井の耳を犯す。コスプレ中に目をつけられていたのだろう。
汗ばんだ生暖かい手で身体をまさぐられる。震えが止まらない。気持ち悪い。抵抗出来ない貧弱な体を持つ自分が恨めしい。
「おっ、バズりネタはっけ~ん」
軽くさわやかな声が聞こえた。
「何だよてめぇ」
おじさんのドスのきいた声が金井の頭上で響く。
「あまり下手な事を言わないように。眉間にしわがよったの映ってるよ! ばっちりね」
「! 撮りやがったな!」
「SNSに晒したらおっさんの人生台無しだね!」
楽しそうに弾んだ声で男は喋る。
「ざけんな! 消せ!」
おじさんが更に大きな声を出すと同時に体が軽くなった。呼吸も楽になり、ほっと一安心した。
何が起こったのか、腰を抜かしたまま仰向けになると、すさまじい光景が視界に入った。
おじさんが振り上げた拳を優雅にかわし、さわやか声の青年の長い脚がおじさんを蹴り上げた。逆光だったが、シルエットだけでもとてもかっこよかった。まるで戦隊もののヒーローだ。
「ちくしょう!」
反撃にあったおじさんは逃げて行った。
「次こんなことをしたら、拡散するからな!」
追い打ちをかけるように、さわやか声は言葉で釘を刺した。
「立てる?」
さわやか声が手を差し伸べてきた。木々生い茂る中で顔が見えない。だが、よくよく声を聞いてみれば、全く初めて聞く声ではない気がする。
手を引かれ、太陽の下に出る。
そこにはクラスの一軍。陽キャの小沢颯真(おざわそうま)がいた。
「あ、同じクラスの……えぇと、ちょいまち。今思い出す。カネダくん!」
「金井です」
「あぁ、ごめんごめん。で、大丈夫?」
「ありがとう」
小沢はツーブロックのヘアスタイルをワックスでバッチリ決めており、耳には小ぶりなピアスをつけている。顔のパーツはバランスよく配置されており、まるで人形のような美しさを持っている。ついじいっと見つめてしまった。
ベンチにつれていかれ、座らされる。小沢はボディバッグからウェットティッシュを取り出し、金井の顔をごしごしと拭いてくれた。ちょっと力強く、痛かったが、彼の女子力の高さに驚いた。
「警察いく?」
その言葉で現実に引き戻された。
「あ、ううん。家帰って課題やらなきゃ」
「あー、あれね。出さなきゃ面倒だよね。じゃ、駅まで送るよ」
一緒になって歩き出すが、無言が何となく気まずい。
小沢も大きなキャリーを引いており、同じイベントに参加していたのだろうか。仲間だったらいいな、なんて期待をこめて聞いてみた。
「小沢くんもコスプレしてたの?」
小沢は金井をじぃっと見つめた。目力のある視線が、金井の胸を勢いよく撃ち抜く。
そして、ニヤリと歯を見せると、楽しそうに笑った。
「まぁ、そんなところだ」
やった! 金井の胸の中で閃光が走った。こんな身近に同じ趣味の人がいたなんて。
それに、優しいときた。仲良くなれたらいいなぁ。色んなポジティブな感情が、胸の中を短距離走のごとく走り抜けていく。一切運動をしてないのにも関わらず、興奮で胸がドキドキする。少しでも気を抜いたら、さっきの痴漢みたいに荒い呼吸をしそうだ。
高鳴る胸と、呼吸をどうにかこうにか押し殺し、トドメに、唇を噛みしめる。落ち着けよ、自分。ゆっくり口を開くと、
「何のコスプレしたの?」
やや早口で言った。
「ヤミくんは今日も憂鬱のヤミくん女装メイドバージョン」
小沢が女装だって? コスプレイヤーだったのも意外だし、何より女装もするなんて急に親近感が沸いた。
「わ! 写真見たいなぁ」
普段はロクにしゃべれないくせに、同じ趣味だと知ると、口に油を指したかのようによく動く。
「カメラ、キャリーの中」
小沢はキャリーを指差した。金井が持っているキャリーより一回りは大きく、布の量が多いメイド服も、ウィッグも、一眼レフを入れても、まだ余裕がありそうだ。
「そっか……」
少し残念に思ったが、SNSのアカウントを教えて貰えれば、後でゆっくり見られるだろう。それを聞こうとして口を開いたら、小沢が先に口を開いた。
「金井のコスプレ写真みたいんだけど」
「あ、うん。いいよ」
金井は、自撮り棒で自分のコスプレ写真を撮っていたのがあったため、スマホを取り出すと、ミハルのコスプレ写真を見せた。
「おぉ……可愛いな」
まじまじと見つめられると恥ずかしくなり、スマホをポケットにしまった。
「金井は衣装手作りなの?」
「うん。手作りだよ。小沢くんは?」
「俺は既製品だ。以前、作ろうと思ったら見事にゴミが出来上がった。百均の布だったからまぁ痛くもかゆくもなかったけど。ところで、金井は女装レイヤーなの?」
「何でもするけど、今の推しが女の子だから、女装が多いかな」
金井は思った。百均の布なんて衣装を作れたものではない。だって、布が小さすぎる。でも、スカートを膨らませるためにはくパニエっぽいものを百均の材料だけで作っている人もいるし、それで作ってみようと思ったのだろうか?
「ふうん。俺のもそうだ」
俺のも? 何だか引っかかる言い方だが、たまたま噛んだにすぎないだろう。それより、もっとお話がしたい。
「ウィッグメーカーはどこがお気に入り?」
無難な質問を投げかけた。
「セイファーとなんだらけ」
「なんだらけのウィッグ買ったことないや。今度買ってみようかな。確か秋葉原と中野と池袋と渋谷に店舗あったよね? それにしても、セイファーってかなり昔に倒産したんじゃ?」
元コスプレイヤーの母親といにしえのコスプレ界隈の話をしていた時、「セイファーってもうないのね……安くてありがたいメーカーだったのよ」としんみり話していた。
「そうだな。中古屋で手に入れたものだけど、なかなか良い物だった」
「……なるほど」
以前、興味本位で調べてみた事があるが、ウィッグメーカーのセイファーは検索エンジンを利用しても、今では詳細が出てこないレベルの古いメーカーだ。なんだらけはアニメ系の商品を買い取り、中古販売する店である。事業のひとつに、新品でコスプレ用ウィッグを販売しているが、あまりメジャーではない気がする。だが、何かひっかかる。この二つのメーカーには何か共通点があったような……。思い出せない。
何はともあれ、小沢は本当にコスプレが大好きなんだなという収穫を得た。
雑談をしているうちに、駅についた。
小沢は金井と同じ路線だったようで、途中で降りていった。
遠い存在だと思っていた人が同じ趣味で、胸の高鳴りが収まらない金井であった。