湊は、大学から帰る途中だった。

ポケットに入れていたスマホが鳴った。

「はい」

湊が電話に出ると、慧からだった。

『湊か。大学はどうだ?』

「楽しいですよ。授業が一年のうちは多いのでそこが大変ですけど」

湊は苦笑して言った。

『そうか。忙しいところ悪いが、聞きたいことがある。今からその写真を送るから、それに見覚えがあったら教えてくれ』

慧から送られてきた写真を見た。

「この本、どこにあったんですか?」

『学校の図書室だそうだ。隼人と柏木が見つけたんだが…』

「そうですか。かなり古い本に見えますね。高嶺先生は見覚えはないんですよね?」

『俺も千輝も、他の先生たちに本の整理を頼まれていたんだが、最初にみた時はなかった』

湊は顎に手をあてた。

「俺も見覚えはありません。でも似たようなものは、みたことがあります。何かわかったら連絡しますね。あと、夏休みにある集まりですが、真白ちゃんたちも連れてきてください。琉晴さんが興味があると言っていました」

『渚から聞いてる。神宮家の屋敷でやるらしいな』

「特に真白ちゃんは一人にしない方がいいと姉さんも言っていました」

『そうだな。柏木は巻き込まれやすい。本人にも気をつけるように伝えておく。それじゃあな』

電話が切れると、湊は大きく息を吐いた。

「一応、護衛は頼んであるけど、本当にあの人たちに任せてよかったのかな」

湊は京都に来て日が浅い時に、琉晴から会わせたい人がいると言われた。

それは以前、湊の家に来ていた玄道充だったのだ。

琉晴は、充の他にもあと三人の護衛をつけるのだという。

他にも要たちの術具の扱い方に関しても教えてくれるとのことだった。

「あの子たちが巫女の術具を使いこなせていないのは事実だし、その方がいいのかもしれないんだけど…」

自分自身もよく知らない相手だったので、不安があった。

「まずは、会ってみてからどうするか決めてもらおうかな。俺も色々やらなきゃいけないこともあるし」


天音はカフェで待ち合わせをしていた。

「天音」

天音の名前を呼んだのは、一人の男性だった。

「お父さん…」

テーブル席の天音の向かいに座った。

「元気にしてたか?」

「うん」

「そうか。…一緒に住んでいる子達とも仲良くしているか?」

「うん。二人とも優しいから」

天音の父親は、ホッとした様子だった。

「いきなり連絡して悪かった」

「大丈夫。お母さんは、元気?」

「あぁ、元気だよ。それで天音さえよかったら、顔を見せてあげてほしい」