桜が満開の春、大学のキャンパスは花びらで埋め尽くされていた。新入生たちが初々しい笑顔を浮かべる中、僕は一人、図書館の静かな場所で本を読んでいた。そんなとき、ふとした拍子に後ろから声をかけられた。
「その本、面白いですか?」
振り返ると、明るい茶色の髪をした女の子が微笑んで立っていた。彼女の名前は沙紀。僕は彼女が持っていた本をちらりと見て、少しドキリとした。彼女の優しい目と笑顔が、なぜか心に残った。
「うん、すごく面白いよ」と僕は答えた。その日を境に、沙紀との交流が始まった。彼女は明るくて元気な性格で、僕の地味な生活に色を加えてくれる存在になっていった。
季節が進むにつれて、沙紀との距離が近づいていった。毎日のように一緒に図書館で勉強したり、近くのカフェでおしゃべりをしたり。彼女の明るさは、僕の暗い部分を照らしてくれるようだった。
ある日、彼女が僕に言った。「アキ、私、君といると楽しい。もっと色々な場所に行きたいな」
その言葉に心が温かくなり、思わず「僕も、君と一緒にいたい」と答えていた。何気ない言葉の裏に、少し特別な感情が芽生えていることに気づいてしまった。
夏が訪れ、キャンパスは緑に包まれていた。僕たちは近くの海へ行くことにした。砂浜でのんびり過ごし、波の音を聞きながら楽しい時間を共有した。その瞬間、ふとしたことで手が触れ合い、ドキリとした。
「アキ、どうしたの?」沙紀が不思議そうに聞いた。
「なんでもないよ、ただ、楽しいなって思って」と無理に笑顔を作る。でも、その後、心の中で気持ちが高鳴っているのを感じた。
帰り道、沙紀が「私、アキのことが好きかもしれない」と言った瞬間、心臓が止まるかと思った。「僕も、好きだよ」と返事をすると、彼女の目が驚きで大きくなった。
それから、僕たちは付き合うことになった。初めてのデートや手をつなぐことが新鮮で、何気ない日常が一瞬で特別なものに変わっていった。沙紀との時間は、どんな瞬間も幸せに感じた。
しかし、そんな幸せな日々も長くは続かなかった。夏が終わり、沙紀が実家の事情でしばらく町を離れることになった。彼女の告白を聞いたとき、僕は無力感に襲われた。
「また会えるよね?」と不安そうに尋ねる沙紀に、「必ず戻ってくるから」と約束した。
沙紀がいなくなった日々は、とても寂しいものだった。彼女の笑顔や声が思い出され、心に空洞ができたような気がした。だけど、その空洞を埋めるために、僕は自分を成長させようと努力した。勉強に励み、サークル活動にも参加するようになった。
時折、沙紀からのメッセージが心を温かくしてくれた。「アキのことを思うと、頑張れるよ」と。
数ヶ月が経ち、沙紀が戻る日がついに来た。待ちわびた彼女の姿を見つけた瞬間、心が躍った。「おかえり、沙紀!」と声をかけると、彼女も満面の笑みで「ただいま、アキ」と返してくれた。
再会した瞬間、何も言わずに抱きしめ合った。その瞬間、全ての寂しさや不安が吹き飛び、再び二人の関係が戻ったことを実感した。
沙紀と再び過ごす日々が始まり、お互いの気持ちもさらに深まっていった。共に成長し、共に支え合うことで、僕たちの愛は確かなものになった。
「これからも、ずっと一緒にいようね」と沙紀が言ったとき、僕は心から頷いた。「うん、一緒に色々なことを経験していこう。」
四季が巡り、二人の時間はいつまでも続いていく。その中で、僕たちの恋は、まるで季節の花のように美しく咲き誇っていた。