「いらっしゃいませ」
雅俊は、コンビニの白の青のシマシマの制服を着て、レジ横に立っていた。
「あのさ、タバコ」
「はい、どちらのおタバコにしますか?」
「マイセンで?」
「はい? マイセン、すいません。番号でおっしゃっていただきませんか?」
「だーかーら!!」
奥の方から店長の渋谷が大きな声を聞きつけて出てきた。
「はいはいはい。どした、どした?」
「店長、お客様が」
額に筋を出しながら、聞く。
「ちょっと、あんた、店長なの?」
横柄な態度をとる小太りのお客が話し出す。
「はい、いらっしゃいませ。どうなさいましたか?」
「マイセンって言ってんのに、番号で言えって、どういう教育してんの?」
「大変申し訳ございません。高校生なもので、指導力不足でございました。お客様がおっしゃいます『マイセン』は『マイルドセブン』というおタバコの銘柄ですね。現在、名称が変わりまして、『メビウス』というものがありますが、こちらでよろしいでしょうか?」
「え?!まじで?! 名前変わったの? そっか、仕方ないな。何、め?メビ?」
「こちらが『メビウス』です。」
店長は棚から、青いパッケージを取り出した。
「んじゃ、それの5mgちょうだい。」
「かしこまりました。はい、齋藤くん、レジしてくれる?」
「あ、はい」
雅俊は、慌てて、タバコを受け取り、バーコードをスキャンした。お客さんはブツブツと文句を言いながらも財布から小銭をジャラジャラと出した。
「こちらは500円です」
「ちょっと、こっから取ってくれる?」
雅俊は面倒ながらも、100円玉4枚と50円玉1枚10円玉5枚を分けて、提示した。
「こちらの500円でよろしいでしょうか」
「ああ。」
「ちょうどお預かりいたします」
レジスターに小銭をしまって、商品のタバコとレシートを手渡した。
「ありがとうございました」
無事にお客さんが帰っていく。雅俊は、誰もいない店内でため息を大きくついた。
「店長、あのお客さんなんですか。超面倒臭いですね」
「タバコの銘柄ね、昔流行ったマイルドセブンってあるのよ。それをマイセンマイセンって略していう人いたからさ。でも、それ、もうどこにも売ってないわけよ。ああいう人時々いるから気をつけてね」
「そうなんですね。タバコも覚えるの大変っすよ。電子タバコ銘柄もあるし、ややこしいっす」
「そうだね。まぁ、基本は番号で言ってもらおう。間違えちゃうから。さっきみたいにわからなくなったら、また呼んでね。俺、あっちで仕込みやってるからさ」
「了解っす。ありがとうございます」
雅俊は、レジを抜けて、棚卸し作業に移動した。ちょうど、配送トラックが到着したところだった。すると、出入り口の自動ドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
棚卸し作業をしながら、声を出した。歩く様子が背中で感じられた。パッと振り向いて、後ろを通りかかったお客さんを見ると、
同じ学校に通う3年の平澤凛汰郎だった。手には売り場から持ってきた炭酸ジュースのペットボトルをしっかりと持っていた。
「あ、先輩」
「…………」
凛汰郎は雅俊だと気づいていたが、知らない人の素ぶりをした。陽気な雅俊があまり好きじゃなかった。
「無視っすか。別にいいっすけどね」
届いたばかりのおにぎりの棚にどんどん補充していく。
「あんた、白狼の何だよ」
「え、急に話すの? えっと…。彼氏かなぁ? ってそうなれるといいなって思ってるんで、邪魔しないでくださいね」
声の調子が急に低くなった。下の棚を並べていた体をおこして凛汰郎の前にたちはばかる。身長が少しだけ雅俊の方が大きかった。
「そちらの商品をお買い上げですか?」
突然、後輩の態度から店員にモードを変えた。凛汰郎はレジ横の棚にペットボトルを置いた。目の前に雅俊がいるにも関わらず、ベルを鳴らした。
「お客様、こちらにいます!」
雅俊が体を曲げてアピールする。
「チェンジで!」
指で合図する。
「キャバクラか!?」
「ちっ……」
目と目で睨みあいのバトルが始まる。まるでコブラとマングースのように、はたまた犬と猿の喧嘩のように火花が飛び散った。
それに気づいた渋谷店長がささっと、凛汰郎が持ってきたペットボトルのバーコードを読み取った。
「お客様。お待たせしました。こちらは、150円です」
「はい。これでお願いします」
凛汰郎は財布からプリペイドカードを見せた。
「プリペイドカードですね。スライドしていただけますか?」
店長は2人の睨みあいを気にせず、レジ作業に没頭した。凛汰郎は手元だけ素直に言うことを聞いていた。
「お買い上げありがとうございました」
渋谷店長は、雅俊の頭をぐいっと下げて、丁寧にお辞儀を同時にした。凛汰郎は鬼のような目でこちらを見ながら、静かに立ち去って行った。
「ちょっと斎藤くん。公私混同しないでもらえるかな? 他のお客様にも影響するから」
「す、すいませんでした。気をつけます」
反省しつつ、棚卸作業に戻る雅俊だった。コンビニの中から煌々と光るLEDライトが、外の駐車場を照らしていた。凛汰郎は、道端に転がる石ころを蹴飛ばしながら、つまらなそうな顔をして、ペットボトルの飲み物をぐびぐび飲び、家路を急いだ。
雅俊は、コンビニの白の青のシマシマの制服を着て、レジ横に立っていた。
「あのさ、タバコ」
「はい、どちらのおタバコにしますか?」
「マイセンで?」
「はい? マイセン、すいません。番号でおっしゃっていただきませんか?」
「だーかーら!!」
奥の方から店長の渋谷が大きな声を聞きつけて出てきた。
「はいはいはい。どした、どした?」
「店長、お客様が」
額に筋を出しながら、聞く。
「ちょっと、あんた、店長なの?」
横柄な態度をとる小太りのお客が話し出す。
「はい、いらっしゃいませ。どうなさいましたか?」
「マイセンって言ってんのに、番号で言えって、どういう教育してんの?」
「大変申し訳ございません。高校生なもので、指導力不足でございました。お客様がおっしゃいます『マイセン』は『マイルドセブン』というおタバコの銘柄ですね。現在、名称が変わりまして、『メビウス』というものがありますが、こちらでよろしいでしょうか?」
「え?!まじで?! 名前変わったの? そっか、仕方ないな。何、め?メビ?」
「こちらが『メビウス』です。」
店長は棚から、青いパッケージを取り出した。
「んじゃ、それの5mgちょうだい。」
「かしこまりました。はい、齋藤くん、レジしてくれる?」
「あ、はい」
雅俊は、慌てて、タバコを受け取り、バーコードをスキャンした。お客さんはブツブツと文句を言いながらも財布から小銭をジャラジャラと出した。
「こちらは500円です」
「ちょっと、こっから取ってくれる?」
雅俊は面倒ながらも、100円玉4枚と50円玉1枚10円玉5枚を分けて、提示した。
「こちらの500円でよろしいでしょうか」
「ああ。」
「ちょうどお預かりいたします」
レジスターに小銭をしまって、商品のタバコとレシートを手渡した。
「ありがとうございました」
無事にお客さんが帰っていく。雅俊は、誰もいない店内でため息を大きくついた。
「店長、あのお客さんなんですか。超面倒臭いですね」
「タバコの銘柄ね、昔流行ったマイルドセブンってあるのよ。それをマイセンマイセンって略していう人いたからさ。でも、それ、もうどこにも売ってないわけよ。ああいう人時々いるから気をつけてね」
「そうなんですね。タバコも覚えるの大変っすよ。電子タバコ銘柄もあるし、ややこしいっす」
「そうだね。まぁ、基本は番号で言ってもらおう。間違えちゃうから。さっきみたいにわからなくなったら、また呼んでね。俺、あっちで仕込みやってるからさ」
「了解っす。ありがとうございます」
雅俊は、レジを抜けて、棚卸し作業に移動した。ちょうど、配送トラックが到着したところだった。すると、出入り口の自動ドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
棚卸し作業をしながら、声を出した。歩く様子が背中で感じられた。パッと振り向いて、後ろを通りかかったお客さんを見ると、
同じ学校に通う3年の平澤凛汰郎だった。手には売り場から持ってきた炭酸ジュースのペットボトルをしっかりと持っていた。
「あ、先輩」
「…………」
凛汰郎は雅俊だと気づいていたが、知らない人の素ぶりをした。陽気な雅俊があまり好きじゃなかった。
「無視っすか。別にいいっすけどね」
届いたばかりのおにぎりの棚にどんどん補充していく。
「あんた、白狼の何だよ」
「え、急に話すの? えっと…。彼氏かなぁ? ってそうなれるといいなって思ってるんで、邪魔しないでくださいね」
声の調子が急に低くなった。下の棚を並べていた体をおこして凛汰郎の前にたちはばかる。身長が少しだけ雅俊の方が大きかった。
「そちらの商品をお買い上げですか?」
突然、後輩の態度から店員にモードを変えた。凛汰郎はレジ横の棚にペットボトルを置いた。目の前に雅俊がいるにも関わらず、ベルを鳴らした。
「お客様、こちらにいます!」
雅俊が体を曲げてアピールする。
「チェンジで!」
指で合図する。
「キャバクラか!?」
「ちっ……」
目と目で睨みあいのバトルが始まる。まるでコブラとマングースのように、はたまた犬と猿の喧嘩のように火花が飛び散った。
それに気づいた渋谷店長がささっと、凛汰郎が持ってきたペットボトルのバーコードを読み取った。
「お客様。お待たせしました。こちらは、150円です」
「はい。これでお願いします」
凛汰郎は財布からプリペイドカードを見せた。
「プリペイドカードですね。スライドしていただけますか?」
店長は2人の睨みあいを気にせず、レジ作業に没頭した。凛汰郎は手元だけ素直に言うことを聞いていた。
「お買い上げありがとうございました」
渋谷店長は、雅俊の頭をぐいっと下げて、丁寧にお辞儀を同時にした。凛汰郎は鬼のような目でこちらを見ながら、静かに立ち去って行った。
「ちょっと斎藤くん。公私混同しないでもらえるかな? 他のお客様にも影響するから」
「す、すいませんでした。気をつけます」
反省しつつ、棚卸作業に戻る雅俊だった。コンビニの中から煌々と光るLEDライトが、外の駐車場を照らしていた。凛汰郎は、道端に転がる石ころを蹴飛ばしながら、つまらなそうな顔をして、ペットボトルの飲み物をぐびぐび飲び、家路を急いだ。