「その、だからさ、俺たち付き合わね?」
薄暗い部屋の中、青白く浮いた太腿に蚊が止まる。ぼんやり眺めた後、押し潰した。濡れた指先をシーツに擦り付ける。
「おい、聞いてんの?」
肩を掴まれたので振り向くと、下着一枚の男が不機嫌顔でこちらを見ていた。
校則違反の明るい髪、枕元に置かれた煙草の箱。最後に、伸びた爪を見て眉を顰めた。女の扱い方も知らないくせに自信だけは一丁前のバカな男。
もう一度男の顔を見たらふっと笑いが漏れた。それを何と捉えたのか男が勢いづいたようにべらべらと喋りだす。
「俺さ、前からお前のこと良いなと思ってたんだよね。お前っていつもぼっちじゃん?なのに、可愛いし、その辺の群れてるヤツらと違って高嶺の花って感じがしてさ、マジ良いよ」
男の話をテレビの雑音のように聞き流しながら散らばった制服を身に纏う。そして、振り向きざまに吐き捨てた。
「アンタの名前なんだっけ」