アリーナは通常通りに学校へ行った。
今日もマリン達はアリーナにまとわりつく。
アリーナはマリンに友達になるのは嫌だと再度伝えた。
すると取り巻きの男子がアリーナに掴み掛かろうとした。そこへ女子達がやって来てアリーナを庇い転んで怪我をしてしまう。
その怪我をした女子はリリーだった。そして怪我をさせた男子はマーク。
そんな騒ぎを聞きつけて数人の教師が駆けつけた。
マークは教師達に職員室へ連れて行かれた。
リリーは保健室へアリーナが付き添った。

リリーは骨折までではないが左手首の捻挫で全治1週間ほどの怪我だった。
「リリーごめんなさい。私を庇って…怪我しちゃって…。」アリーナは泣きながらリリーに謝った。
「ううん、いいの。これでマークとは婚約は解消ね。」ほろりと涙を流した。
「ごめんなさい。」
手当が終わリリーは早退した。

職員室では、マークに対して教師が言う。
「なぜ女子に対してあんな事をした?」
「アリーナがマリンに友達になって欲しいと言われたのに嫌だって断ったから。」
「それは、アリーナとマリンのことで周りがどうこうする事ではないんじゃないか?」
「いや、マリンが友達になりたいって言っているのになぜ断る。アリーナがおかしいです。マリンの友達になぜならないんだ。」目が虚ろでおかしな言動ばかりを繰り返す。
「怪我をしたのが誰かわかってるのか?」
「えっ?わかりません…。」
「リリーだよ。」
「リリー?」
「君の婚約者だろう?」
「婚約者?」
マークは婚約者を覚えていない様子だった。
その事から、マークは停学となりしばらく自宅謹慎をする事になった。

そんな騒ぎがあとアリーナは校庭の隅にあるベンチに座り落ち込んでいた。
そこへブルーノが猫の姿でやって来た。
「アリーナごめんにゃ。あの時、あの女の子が先に飛び出して来てオレが出て行けなかったにゃ。」
「ううん。私がもっと上手く言っていればこんな事にならなかったんだよ。」
「そんな事ないにゃ。嫌なものは嫌って言っていいんだにゃ。それにアイツは魔女なんだし。」
小声で話しているとそこへ1人でマリンがやって来た。
ブルーノはアリーナの前に立ちマリンを威嚇をする。
「あらー猫ちゃん。こっちにおいでー。怖くないよー。」
ブルーノは怖い顔で威嚇する。
それを無視してマリンは
「ねぇ、アリーナ。あなたの婚約者今日はお迎えに来ないの?この間お迎えに来ていたでしょう?貴方の婚約者って素敵よねー。仲良くしたいわ。だからーお友達になって。」
「嫌よ。絶対嫌。」
「どうして?」
アリーナは青ざめた。
そこへ取り巻きの男子達がやって来た。
「マリンこんなところにいたのかい?」
「チッ!」
マリンは舌打した。
アリーナはその隙に足早にそこから立ち去った。ブルーノも警戒しつつアリーナについて行った。

「もしかして狙っているのはヘンリック?だからしつこく友達になりたがっていたの?」
「そのようだにゃ。あのクソ女。」
「この間お迎えに来た時に見られてたんだわ。」
「とりあえず、今日は帰ろうアリーナ。」
「うん。」


家に帰ると家令から
「お嬢様が学校に行った後にヘンリック様がお越しになりこれをお渡しするようにと。」
そう言われお花と手紙を渡された。
さっそく部屋に行き手紙を読む。

ヘンリックは無事に封印を解き魔力の制御ができるようになった。
少し離れた訓練場で魔力の訓練をすることにした。取り敢えず7日間訓練をする。
あの石は教会に預けたから安心して。
帰って来たら、ドレスを作りに行こう。
それまで会えないけどごめんね。
そんな内容だった。

アリーナはヘンリックを心配した。
すぐにでも会いたいと思った。
ブルーノが隣で心配そうにアリーナを見ている
「明日も学校にいくのかにゃ?」
「うん…試験があるの。」
「試験が終わったらどうするにゃ?」
「もうすぐ夏季休暇で休みになるんだけど。それまで休んだ方がいいのかな?」
「そうだにゃー。騒ぎが収まるまで休んだ方がいいだろうにゃ。」
「お父様に相談してみる。」


夕方になり父が帰って来た。
学校での出来事は父の耳にも入っていた。
「アリーナを庇って怪我をしたリリー嬢にお見舞いをしないといけないね。」
「そうねぇなにがいいかしら?」と母がアリーナに聞く。
「うん。リリーは婚約解消するって言ってたの。申し訳なくて……。」
「まぁ。なんて事でしょ。」
「その事は2人とその両親が話し合って決める事だからね。でも、なんだかマーク君の様子がおかしいらしいから話し合いはしばらく出来ないんじゃないかな?」
「そう…。私がマリンと友達になるのは嫌だって言ったからこんな事になっちゃったの。もう少しなんとかできたかもしれないのに…。」
「本当はあの魔女が悪いんだにゃ!アリーナは悪くないにゃ。」
「どういう事かな?」
「アイツはアリーナと友達になればヘンリックとどうにかなれると思ってるんにゃ!!だからアリーナにしつこく友達になれって言ったんにゃ。まわりのヤツらは魅了で操られてるからマリンが言ったことをなんとしてでも叶えてやるんにゃ。」
「そう言うことか。」と父は言った。
「もし仮に、アリーナが友達になったらとしたら、マリンはヘンリックに会った時に魅了をかけるにゃ。魔力で弾くこともできるが今のヘンリックはまだ出来ないにゃ。」
「そうだね。まだ出来ないだろうね。」
「学校には私みたいな目にあっている人が他にもいるの。その人たちって婚約者は学校にいないのよ。」
「おそらく、学校以外で魅了を使う気なんだろうにゃ。あぁーあのアイツが持ってるやつがあれば大丈夫なんだがにゃー。」
「なんだいそれは?」
「第一王子が着けてるやつ。最高級品の攻撃を弾く魔道具にゃ。あれは魅了も弾くにゃ。」
「なんでブルーノはそれを知ってるのかな?」
「あ"っ!!」
「ばかっ!ブルーノ!!」
「それを知っているのは王家に使える一部の者だけなんだけどねぇ。」
「…オレがアイツから聞いたにゃ…。そういえば内緒だって言ってたにゃ……。」
「そうだねぇ内緒だよねぇ。」
「お父様ごめんなさい。」
「お父さんごめんなさいにゃ。」
「これは王家の機密事項なんだよねぇ。誰にも言ってはいけないんだよ。気をつけるようにね。」
「はい。」
「はいにゃ。」
「それで学校のことなんだけど。明日は試験があるから行くつもりなんだけど、その後夏季休暇まで休んだ方がいいかなって思ってるの。お父様はどう思う?」
「そうだねぇ。そろそろ学校にも調査が入るから休んでいいと思うよ。」
「調査?」
「そうだよ。まぁこれは私の仕事と関係があるから教えてあげられないけどね。」
「ふぅん?では休みます。」
「わかったよ。明日の試験は頑張るんだよ。」
「はい。」
父はアリーナの頭を撫でて微笑んだ。
「ブルーノ、アリーナを頼むよ。」
「オレにまかせろにゃん。」そう胸を張った。
ブルーノはお父さんの仕事ってなんだろうにゃ?と思った。